出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/12/03 21:43:06」(JST)
深部感覚(しんぶかんかく、英: deep sensation, bathyesthesia、独: Tiefenempfindung)は、体の深部にあたる皮膚と内臓の中間領域において、機械的刺激によって起こる感覚をいう。
深部感覚は位置覚、運動覚、抵抗覚、重量覚により、体の各部分の位置、運動の状態、体に加わる抵抗、重量を感知する感覚である。深部知覚、深部覚、固有受容性感覚 proprioceptive sense、固有覚ともいわれる。これらの感覚の基礎として存在するのが関節、筋、腱の動きの感覚である。例えば位置覚、運動覚は関節の動きが感知されることで生じる。関節の動きに関連する受容器には関節包のルフィニ小体、関節靭帯のゴルジ受容器がある。筋、腱に存在する受容器は筋紡錘とゴルジ腱器官である。これらの深部受容器からの求心性信号が深部反射を発現させるとともに上行性に大脳皮質感覚中枢へ伝導され、多様な深部感覚が起こる。
関節内にはパチニ小体、自由神経終末が存在するが、パチニ小体は振動受容器のため関節の位置、運動覚には無関係とされ、自由神経終末の機能的意義は明確でない。深部痛覚(深部疼痛、チネル徴候)を深部感覚に含める場合もあり、筋、腱、関節に存在する自由神経終末がこれに関与するという説もある。
平衡感覚は身体内部に存在する内耳迷路によって起こるが深部感覚には含まれず、特殊感覚に属する。また深部感覚と表面領域の感覚である皮膚感覚とをあわせて体性感覚という。
筋紡錘、腱、関節などの身体内部の受容器を深部受容器といい、ここからの求心信号によって起こる反射を深部反射(英:deep sensation reflex, bathyesthesia、独:Tiefenempfindungsreflex)という。深部反射は、皮膚もしくは表皮の感覚受容器の興奮によって起こる皮膚反射 skin reflex もしくは表皮反射 superficial reflex に対応する反射である。筋紡錘を受容器とする腱反射は深部反射にあたり、皮膚の刺激によって起こる屈筋反射、腹壁反射、バビンスキー反射などは全て皮膚反射である。
神経線維再生の過程において、まだ髄鞘に被覆されない軸索の先端部は機械的刺激に対して過敏になる。四肢の表在近くに触れる神経幹内に再生が始まると、皮膚表面を軽く打っても放散性の非常に激しい痛みが発生する。これが時間の経過とともに末梢へ移行する現象をチネル徴候(英: Tinel sign、独: Hoffmann-Tinel-Zeichen、確認者であるフランスの神経科医チネル(Jules Tinel, 1879 - 1952)にちなむ)と呼ぶ。 知覚線維は筋線維の伸張反射受容器 stretch receptor を支配し、通常は痛みとは別の知覚を司るが、脱神経後の筋肉内に知覚神経線維が再生する際には深部疼痛 deep pain を発生させる。この疼痛発生時期は、筋肉に運動終末が再形成されて再び収縮が認められるようになる時期に先行するため、筋肉の圧迫痛が強い場合には神経再生の徴候と認められる。軸策の再生が順調に経過する場合、当初は受傷部に強く現れる陽性徴候が次第に弱まって末梢へ移るため、再生速度を知る目安になる。
『南山堂 医学大辞典』 南山堂 2006年3月10日発行 ISBN 978-4-525-01029-4
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上行性伝導路 | 交叉のレベル | ニューロン | 一次
ニューロンの 種類 |
体性感覚 | 深部感覚 | ||||||
1 | 2 | 3 | 4 | 痛覚 | 温度覚 | 粗大な触圧覚 | 識別性触覚 | ||||
後索-内側毛帯系 | 毛帯交叉 | 脊髄神経節 | 薄束、楔状束 | 視床 | Aβ | ○ | ○ | ||||
外側脊髄視床路 | 脊髄 | 脊髄神経節 | 後角 | 視床 | C | ○ | ○ | ||||
前脊髄視床路 | 脊髄 | 脊髄神経節 | 後角 | 視床 | Aδ | ○ | |||||
脊髄網様体視床路 | 脊髄 | 脊髄神経節 | 後角 | 延髄網様体 | 視床 |
皮膚、特に四肢遠位端無毛部の触圧覚受容器や筋、関節受容器からの太い有髄線維は、脊髄に入り同側の後索を上行する。延髄レベルで、上下肢からの線維はそれぞれ楔状束核、薄束核のニューロンに終わる。これら後索核ニューロンの軸索は交差して内側毛帯となり、その大部分が視床外側部の腹側基底核に、一部は後核群にも終わっている(SP.231)。 深部感覚+繊細な触圧覚、振動覚(B.P-2)
後根から入力を受けた後、直ちに交差して対側の前側索を上行し、視床に達する。 脊髄視床路起始ニューロンには、腹側基底核や後核群など視床外側部に終わるものと、髄板内核など内側部に終わるものがある(SP.231)。 温覚+痛覚+粗大な触圧覚(識別力なし)(B.P-2)
視床下部や大脳辺縁系を介して痛みの情動的側面に関係(SP.231)。 視床、脳幹網様体を介して睡眠覚醒サイクル、意識レベル、注意などに影響を及ぼす(SP.231)。
外受容器 | 内受容器 | |||
接触性受容器 | 遠隔受容器 | 固有受容器 | 内蔵受容器 | |
機械受容器 | 皮膚感覚(触圧覚) | 聴覚 | 平衡感覚、深部感覚(運動覚、位置覚) | 臓器感覚 |
侵害受容器 | 皮膚感覚(痛覚) | 深部痛覚 | 内臓痛覚 | |
光受容器 | 視覚 | |||
化学受容器 | 味覚 | 嗅覚 | (頚動脈洞反射) | |
温度受容器 | 皮膚感覚(温冷覚) | (体温調節反射) |
SI、SII、前部島皮質、前部帯状皮質、補足運動野
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