中枢 | 消失時期 | 反射 | ||
脊髄 | ~生後3ヶ月 | magnet reflex | ||
歩行反射 | stepping reflex | |||
把握反射 | grasping reflex | |||
非対称性緊張性頚部反射 | asymmetrical tonic neck reflex | 背臥位にした新生児の頭を一方に向けると、顔の向いた方の上下肢は伸展し、後頭側の上下肢は屈曲する | ||
脊髄-橋 | ~生後6ヶ月 | モロー反射 | Moro reflex | 頭を持ち上げて急に落とす動作をした時に両上肢を開き、側方から正中方向に抱きつくような動き |
口唇探索反射 | rooting reflex | |||
緊張性頚反射 | tonic neck reflex | 腹位水平抱きまたは座位で頚を背屈すると上肢が伸展、背筋が緊張し、頚を前屈すると上肢が屈曲し、体幹のトーヌスが減弱する | ||
中脳 | 生後6ヶ月~5歳 | 立ち直り反射 | righting reflex | |
頚立ち直り反射 | ||||
体幹立ち直り反射 | ||||
視性立ち直り反射 | ||||
大脳皮質 中脳 |
生後8ヶ月~終生 | パラシュート反射 | 水平位にして、突然頭を下げると腕が伸びて身体を支えようとすること。 |
反射 | 出現 | 消失 | |
モロー反射 | Moro reflex | 生来 | 3~4 |
口唇探索反射 | rooting reflex | 生来 | 4~7 |
吸啜反射 | sucking reflex | 生来 | 4~7 |
手指把握反射 | palmar grasp reflex | 生来 | 6 |
足底反射 | plantar grasp reflex | 生来 | 10 |
バビンスキー反射 | Babinski reflex | 生来 | 24 |
緊張性頚反射 | tonic neck reflex | 2 | 6 |
Landau反射 | Landau reflex | 3 | 24 |
パラシュート反射 | 9 | 一生 |
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/09/16 21:51:24」(JST)
原始反射(げんしはんしゃ、英: primitive reflexes)は、神経学的に手付かずではない大人は示さないが、正常な幼児が特有の刺激に応えて示す中枢神経系由来の反射行動である。これらの反射は、子供が正常に成長し前頭葉が発達すると失われる[1]。
非定型の神経学的性質を持つ年齢を重ねた子供や大人(例えば脳性麻痺の人々)はこれらの反射を保持していることがあり、原始反射が大人にも再び現われることがある。原始反射の再出現は、(これらには限らないが)認知症(特に前頭側頭葉変性症と呼ばれる一連の稀な病気)や外傷性損傷、脳卒中を含む特定の神経学的症状に帰せられる[2][3]。脳性麻痺者や標準的な知能を持つ者はこれらの反射を抑えることを学ぶことができるが、特定の条件下(非常に強い驚愕反応の間)では反射が再び表面化しうる。反射は非定型の神経学的性質によって影響を受けた領域に限定される(脚にのみ影響のある脳性麻痺者はバビンスキー反射を保持しているが、正常な言語能力を持つ)。片まひの人は、影響のある側の脚にのみ反射が見られる。
原始反射は脳損傷の疑いがある時に前頭葉の機能を検証する目的で主に調べられる。もし原始反射が適切に抑制されていなければ、これらは前頭葉徴候と呼ばれる。非定型原始反射は、自閉症スペクトラムの初期の徴候の可能性としても研究されている[4]。
原始反射は錐体外路機能(多くは誕生時に既に存在する)によって伝えられる。これらはミエリン化の進行と共に皮質脊髄路が機能的を獲得すると失われる。これらは、様々な理由によって錐体路の機能が失われた大人や子供で再び現われることがある。しかしながら、「Amiel-Tisonの神経学的評価法」の出現により、小児集団におけるこういった反射の評価の重要性が低下している[5][6][7]。
原始反射の有用性は様々である。一部の反射は生存に有利に働く(例えば探索反射は乳幼児が母親の乳首を探す助けとなる)。赤ちゃんは空腹かつ他者によって触れられている時のみ探索反射を示し、自分自身によって触れている時は示さない。いくつかの反射は、ヒトの進化の間に赤ちゃんの生存に役立ちそうである(例えばモロ反射)。吸啜反射や把握反射といったその他の反射は、親と乳児との間の喜ばしい相互関係の確立に役立つ。これらの反射は親が、愛情を持って応え、子供により有能に食物を与えるよう促すことができる。加えて、親が赤ちゃんを安心させ、赤ちゃんが受ける苦痛や刺激の量を制御できるようにするのを助ける[8]。
モロ反射は驚愕反応、驚愕応答、驚愕反射と呼ばれることもある。名称は小児科医エルスト・モローによって発見されたことによる。モロ反射は誕生時に存在し、最初の一ヶ月で最大になり、生後2カ月頃に消え始める。乳児の頭の位置が突然変化したり、温度が不意に変化したり、突然の騒音によって驚愕すると、起こる可能性が高い。脚と頭は伸びるのに対して、腕はパッと上がった後パッと戻り、掌は上向きになり、親指は曲がる。腕がまとまると程なく、手はギュッと締まって拳になり、乳児は大声で泣く[9]。この反射は生後3から4カ月で通常は消えるが[10]、6カ月まで続くこともある[11]。この反射の両側欠如は乳児の中枢神経系の損傷と関連しているかもしれないのに対して、片側欠如は出産時外傷による損傷(例えば鎖骨骨折あるいは腕神経叢の損傷)を意味している可能性がある。エルブ麻痺あるいはその他の麻痺もこういった場合に存在することがある[10]。ヒトの進化の歴史において、モロ反射は乳児が持ち歩かれている間、母親にしがみつくのに役立ってきたのかもしれない。乳児がバランスを失うと、モロ反射は乳児を母親に抱きつかせる[8]。
歩行反射は誕生時に存在するが、この時期の乳児は自重を支えることができない。足の裏が平らな面に触れると、乳児は一方の足を逆の足の前に位置させることによって歩行しようと試みる。この反射は力に対する足の重さの比が増加することによって6週頃に消える[12]。8カ月から1歳頃に自発的行動として再び現われる。
探索反射は誕生時に存在し、自発的制御下に次第に来る4カ月頃に消える。探索反射は母乳栄養行動を助ける。新生児は何であれ頬あるいは口をなでるものの方向に頭を向け、頭を移動させることによって目標を探して、目標を発見するまでじわじわと移動の弧を小さくする。このやり方で応答するようになった後、(母乳栄養した場合は誕生後3カ月頃)乳児は探すことなく目標に直接移動するようになる[13]。
吸啜反射は全てのほ乳類に共通であり、誕生時に存在する。吸啜反射は探索反射と母乳栄養に結び付けられる。吸啜反射によって子供は本能的に口の縁に触れたものを何でも吸い、子供が自然に栄養を得るやり方を模倣する。動作は2段階からなる。
緊張性頸反射は非対称性緊張性頸反射としても知られ、生後一ヶ月に示し、4カ月頃に消える。子供の頭が一方の側に向けられた時、向けられた側の腕が伸び、逆側の腕が曲がる(この動作は非常にわずかであることもある)。もし乳児がこの姿勢から抜け出すことができないか6カ月を過ぎても反射が引き起こされ続けるならば、その子供は上位運動ニューロンに障害を持つ可能性がある。研究者らによれば、緊張性頸反射は乳児の手と眼の協調の先駆けである[8]。
手掌把握反射は誕生時に見られ、生後5カ月か6カ月まで続く。物体が乳児の手の中に置かれ、掌をなでた時、指が閉じられ、把握によって物を掴む。この反射をよく観察するには、子供が安全に枕の上に落ちることができるベッドの 上で、乳児に両手の小指を提示し(人差し指は乳児が掴むには大き過ぎる)、徐々に持ち上げるとよい。握りは強いが予測できない程ではない。子供の体重を支えることはできるが、子供は突然前触れ無しに握りを放す可能性もある。手の逆側か横をなでることによって反転した動作を誘導することができる。
足底反射は、足裏の屈曲を含む正常な反射である。足底反射によって、爪先が脛から離れる方向へ移動し、屈曲する。異常足底反射(バビンスキー徴候としても知られる)は、屈曲反射回路に対する上位運動ニューロンの制御が妨害された時に起こる。この結果として、足の背屈(足が脛に向かって曲がり、足の親指が反り返る)が起きる。これは、皮質脊髄路の低いミエリン化が原因で、1歳未満の赤ちゃんにも起こる。これらの経路が成熟型に発達すると、屈曲反射回路が下向きの皮質脊髄入力によって阻害され、正常な足底反射が生じる[14]。バビンスキー反射としても知られ、大人における神経学的異常(例えば上位運動ニューロンの損傷)の徴候である[15]。
ギャラン反射は、誕生時に存在し、生後4カ月から6カ月の間に消えていく。乳児の背中の横側の肌がなでられた時、乳児はなでられた側に向かって揺れる。もしギャラン反射が6カ月を過ぎても残っていると、それは病理学的徴候である。ギャラン反射の名称はロシアの神経学者Johann Susman Glanatに因む[16]。
潜水反射によって、乳児は水のプールの中で顔を下にする。乳児は足を掻いたり、蹴ったりし始める。潜水反射は生後4から6カ月の間に消える。乳児が足の掻きや蹴りによって正常な応答を示すにもかかわらず、乳児を水に入れるのは非常に危険性が高い。乳児はこの動きを行う間に大量の水を飲む可能性があり、したがって保護者は注意して事を進めなければならない。水中に沈められた乳児は水中毒によって死亡する可能性があるため、乳児に対する泳ぎの訓練は、少なくとも3カ月になるまで延期するのが望ましい[8]。
バブキン反射は新生児に起こり、両方の掌への圧力への様々な応答を意味する。乳児は首の屈曲や頭の回転、口を開ける、これらの応答の組み合わせを示す[17]。小さな未熟児はこの反射により敏感であり、妊娠26週の子供に存在することが観察されている[18]。名称はロシアの神経学者ボリス・バブキンに因む。
この反射は子供が直立に支えられ、赤ちゃんの体が(落下した時のように)すばやく前向きに回転した時に少し育った乳児に起こる。赤ちゃんは落下を阻止するかのように腕を前に延ばす。この反射は赤ちゃんが歩くようになる前に長い間見られる。
導入部で言及したように、原始反射が適切に抑制されていない時は、(誤った名称かもしれないが)前頭葉徴候と一般的に呼ばれる。これ以前に言及した反射に加えて、これらには手掌おとがい反射や口とがらし反射、眉間反射が含まれる。
「ハイリスク新生児」という用語は、特に生後数カ月の間に死亡の可能性がかなりあった新生児を意味する。ハイリスク新生児はしばしば、異常な原始反射の応答を示したり、応答を全く欠いたりする。ハイリスク新生児における原始反射の動作は反射によってしばしば違いがある(例えば、正常なモロ反射は示すが、歩行反射が欠如あるいは異常)。新生児における原始反射の正常な動作は高いアプガー指数、高い出生体重、出生後の短い入院期間、よい総合的な精神状態を持つ可能性が高いことを結び付けることができる。
67人のハイリスク新生児における原始反射を調べた最近の横断的研究では、吸啜反射、バビンスキー反射、モロ反射の応答を評価するためにサンプル調査法が用いられた。研究の結果、吸啜反射が最も高く正常に起こり (63.5%)、バビンスキー反射 (58.7%) とモロ反射 (42.9%) が続くことが示された。この研究では、ハイリスク新生児は、原始反射のより周期的な応答や応答の欠如を示し、個々の反射で応答は異なる、と結論付けられた[19]。
しかしながら、ハイリスク新生児や乳児における神経学後遺症を予測する判断材料として「Amiel-Tisonの神経学的評価法」のような単純で効果的な手法の出現によって、原始反射の評価の重要性は低下している[5][6][7]。
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ランダウ反射 : 1 件 ランドー反射 : 77 件 ランドー反射 Landau : 41 件 ランドウ反射 Landau : 10 件 ランドー反射 : 約 267 件 ランドウ反射 : 約 301 件
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[反射]
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