ジャカビ
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ルキソリチニブ
IUPAC命名法による物質名
IUPAC名
(3R )-3-cyclopentyl-3-[4-(7H -pyrrolo[2,3-d]pyrimidin-4-yl)pyrazol-1-yl]propanenitrile
臨床データ 販売名
ジャカビ, Jakavi Drugs.com
monograph MedlinePlus
a612006 ライセンス
EMA:リンク 、US FDA:リンク 胎児危険度分類
法的規制
AU : 処方箋薬(S4)
CA : ℞ -only
JP : 劇薬、処方箋医薬品
UK : 処方箋のみ (POM)
US : ℞ -only 投与方法
経口、外用(日本では外用は未発売) 薬物動態データ 生物学的利用能
95%[1] 血漿タンパク結合
97%[1] 代謝
肝代謝 (主に CYP3A4による)[1] 半減期
2.8-3 時間[1] 排泄
尿中排泄 (74%), 糞中排泄 (22%)[1] 識別 CAS番号
941678-49-5 ATCコード
L01XE18 (WHO ) ChemSpider
25027389 UNII
82S8X8XX8H KEGG
D09959 ChEMBL
CHEMBL1789941 別名
INCB018424, INC424 化学的データ 化学式
C 17 H 18 N 6 分子量
306.37 g/mol
SMILES
C1CCC(C1)C(CC#N)N2C=C(C=N2)C3=C4C=CNC4=NC=N3
InChI
InChI=1S/C17H18N6/c18-7-5-15(12-3-1-2-4-12)23-10-13(9-22-23)16-14-6-8-19-17(14)21-11-20-16/h6,8-12,15H,1-5H2,(H,19,20,21)/t15-/m1/s1
Key:HFNKQEVNSGCOJV-OAHLLOKOSA-N
テンプレートを表示
ルキソリチニブ (Ruxolitinib)、開発コード:INC424またはINCB18424)は血液増殖性疾患である骨髄線維症の治療薬であり[2] [3] 、日本では2014年7月4日に承認された。また「真性多血症」の治療薬として2015年9月に承認された[4] 。商品名ジャカビ 、ノバルティス製造販売。そのほか、海外では悪性リンパ腫[5] 、膵癌[5] 、乾癬、円形脱毛症[6] の臨床試験が実施されている。
国際共同第III相臨床試験(COMFORT-I および COMFORT-II)によって、脾腫の縮小、消耗性の臨床症状の改善および全生存期間の延長が確認された[7] [8] [9] [10] 。
作用機序
ルキソリチニブはヤヌスキナーゼ阻害剤であり、JAK1およびJAK2サブタイプに選択的に作用し[11] [12] 、骨髄線維症に関する異常なJAKシグナルを阻害する。JAK1およびJAK2はSTATとサイトカイン受容体との結合を仲介し、血球系細胞の増殖にかかわる遺伝子を発現させる。
副作用
重大な副作用として添付文書に記載されているものは、
骨髄抑制(血小板減少症(40.9%)、貧血(37.5%)、好中球減少症(4.3%))、感染症(帯状疱疹(2.6%)、尿路感染(1.9%)、結核(0.2%)等)(10.4%)、出血(脳出血等の頭蓋内出血(0.2%)、胃腸出血(0.8%)、処置後出血(0.2%)、鼻出血(1.7%)、血尿(0.6%)等)、
進行性多巣性白質脳症(頻度不明)、間質性肺疾患(頻度不明)、肝機能障害(AST(GOT)(3.2%)、ALT(GPT)(4.1%)の上昇等)、心不全(0.6%)
である[13] 。
免疫に関する副作用は帯状疱疹(1.9%)ならびに日和見感染症(頻度不明)[14]
代謝に関する副作用は体重増加(7.1%)
臨床検査値に関する副作用はALT異常(25.2%)、AST異常(17.4%)およびコレステロール増加(頻度不明)
承認取得状況
2011年11月、米国のFDAが承認(原発性骨髄線維症、真性多血症に続発した骨髄線維症、および本態性血小板血症に続発した骨髄線維症を含む、中間リスクまたは高リスクの骨髄線維症)[15] 。
2012年4月、EUのEMAが承認(原発性骨髄線維症(慢性突発性骨髄線維症)、真性多血症後の骨髄線維症、または本態性血小板血症後の骨髄線維症の成人患者における脾腫または諸症状の治療薬)[16] 。
2014年7月、日本の厚生労働省が承認(骨髄線維症)[17] 。
2015年9月、日本で承認(真性多血症(既存治療が効果不十分または不適当な場合に限る))。
出典
^ a b c d e “Jakafi (ruxolitinib) dosing, indications, interactions, adverse effects, and more”. Medscape Reference . WebMD. 2014年2月16日 閲覧。
^ Mesa, Ruben A.; Yasothan, Uma; Kirkpatrick, Peter (2012). “Ruxolitinib”. Nature Reviews Drug Discovery 11 (2): 103–4. doi:10.1038/nrd3652. PMID 22293561.
^ Harrison, C; Mesa, R; Ross, D; Mead, A; Keohane, C; Gotlib, J; Verstovsek, S (2013). “Practical management of patients with myelofibrosis receiving ruxolitinib”. Expert Review of Hematology 6 (5): 511–23. doi:10.1586/17474086.2013.827413. PMID 24083419.
^ “医療用薬6製品 新効能などを追加承認”. ミクス (2015年9月28日). 2015年9月28日 閲覧。
^ a b Natoli, Cori Anne (May 5, 2012), “Incyte looks to ride on drug's success”, The News Journal , http://www.delawareonline.com/article/20120506/BUSINESS/205060304/Incyte-looks-to-ride-on-drug-s-success 2012年5月6日 閲覧。
^ Xing, Luzhou et al (2014). “Letter, Alopecia areata is driven by cytotoxic T lymphocytes and is reversed by JAK inhibition”. Nature Medicine . doi:10.1038/nm.3645. Advance online publication retrieved 17 August 2014
^ “JAK inhibition with ruxolitinib versus best available therapy for myelofibrosis”. N. Engl. J. Med. 366 (9): 787–98. (March 2012). doi:10.1056/NEJMoa1110556. PMID 22375970. http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1110556?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%3dpubmed .
^ “A double-blind, placebo-controlled trial of ruxolitinib for myelofibrosis”. N. Engl. J. Med. 366 (9): 799–807. (March 2012). doi:10.1056/NEJMoa1110557. PMC: 4822164. PMID 22375971. http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1110557?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%3dpubmed .
^ “Challenges facing JAK inhibitor therapy for myeloproliferative neoplasms”. N. Engl. J. Med. 366 (9): 844–6. (March 2012). doi:10.1056/NEJMe1115119. PMID 22375977. http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMe1115119?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%3dpubmed .
^ ASCO Annual Meeting 2011: JAK Inhibitor Ruxolitinib Demonstrates Significant Clinical Benefit in Myelofibrosis Archived 2011年11月21日, at the Wayback Machine.
^ “Ruxolitinib, a selective JAK1 and JAK2 inhibitor for the treatment of myeloproliferative neoplasms and psoriasis”. IDrugs 13 (6): 394–403. (June 2010). PMID 20506062.
^ “Targeting myeloproliferative neoplasms with JAK inhibitors”. Curr. Opin. Hematol. 18 (2): 105–10. (March 2011). doi:10.1097/MOH.0b013e3283439964. PMID 21245760. http://Insights.ovid.com/pubmed?pmid=21245760 .
^ “ジャカビ錠5mg 添付文書” (2015年9月). 2016年7月3日 閲覧。
^ Wysham, NG; Allada G; Sullivan DR (2013). “An opportunistic infection associated with ruxolitinib, a novel janus kinase 1,2 inhibitor.”. Chest 143 (5): 1478–9. doi:10.1378/chest.12-1604. PMID 23648912.
^ “ルキソリチニブリンのFDA承認” (プレスリリース), http://www.cancerit.jp/17384.html 2014年9月3日 閲覧。
^ “ノバルティスのルキソリチニブ、骨髄線維症の治療薬としてEUにおける承認勧告をCHMPから取得” (プレスリリース), http://www.novartis.co.jp/news/2012/pr20120427.html 2014年9月3日 閲覧。
^ “抗悪性腫瘍剤「ジャカビ錠5mg」の製造販売承認を取得” (プレスリリース)
UpToDate Contents
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1. 原発性骨髄線維症のマネージメント management of primary myelofibrosis [show details] …of ruxolitinib . An alternative myelosuppressive therapy (eg, hydroxyurea) may be necessary to control progressive leukocytosis or increasing blasts during withdrawal of ruxolitinib . Ruxolitinib can …
2. 移植片対宿主病の予防および治療に使用される免疫抑制剤の概要 overview of immunosuppressive agents used for prevention and treatment of graft versus host disease [show details] …studies demonstrated significant activity for ruxolitinib in mouse models of GVHD . Small trials and retrospective reviews suggest that the efficacy of ruxolitinib in acute and chronic GVHD is comparable to …
3. 急性移植片対宿主病の治療 treatment of acute graft versus host disease [show details] …when ruxolitinib is discontinued in myelofibrosis . Dose reduction should be gradual rather than abrupt, caution is advised to monitor for a withdrawal-like syndrome, and resumption of ruxolitinib (and …
4. 真性多血症の予後および治療 prognosis and treatment of polycythemia vera [show details] …to ruxolitinib remained on therapy (83 percent); none of the patients assigned to BAT remained on that therapy and 88 percent crossed over to ruxolitinib . The majority of responses with ruxolitinib were …
5. 慢性移植片対宿主病の治療 treatment of chronic graft versus host disease [show details] …when ruxolitinib is discontinued in myelofibrosis . Dose reduction should be gradual rather than abrupt, caution is advised to monitor for a withdrawal-like syndrome, and resumption of ruxolitinib (and …
Japanese Journal
骨髄線維症におけるルキソリチニブ によるGvHD治療
森 康雄
臨床血液 60(8), 953-959, 2019
<p>移植片対宿主病(GvHD)は同種移植後の非再発死亡の原因としてもっとも頻度が高い。ステロイド不応例の予後は不良であるが,標準的な2次治療は確立していない。GvHDの病態形成に関わるサイトカインを阻害するこれまでの試みは,単一では十分な効果が得られていない。Jak1/2阻害薬であるruxolitinibはIFN-γ,IL-2,IL-6など複数のサイトカインを同時に抑制することが可能 …
NAID 130007702164
JAK阻害薬を中心に (特集 骨髄増殖性腫瘍(MPN)の分子病態と診断・治療のup-to-date)
ルキソリチニブ とMF (特集 血液腫瘍の最近のトピックス : 新たに保険承認されたあるいは適応拡大された造血器腫瘍に対する薬剤)
Related Links
【薬剤師監修・作成】「ルキソリチニブ(JAK阻害薬)」体内で血液系細胞の分化・増殖、TNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインのシグナル伝達などに深く関わるJAL(ヤヌスキナーゼ)を阻害することで骨髄線維症や真性多血症などの骨髄 ...
ルキソリチニブ(JAK阻害薬)の効果・作用機序や副作用、一般的な商品や特徴を解説しています。「処方薬事典」は日経メディカルが運営する医療・医薬関係者向け医薬品検索データベースです。
ジャカビ錠5mgは、ルキソリチニブ(JAK阻害薬)に分類される。 ルキソリチニブ(JAK阻害薬)とは、体内で血液系細胞の分化・増殖、TNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインのシグナル伝達などに深く関わるJAL(ヤヌスキナーゼ)を ...
Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
ジャカビ錠5mg
組成
成分・含量
1錠中ルキソリチニブリン酸塩6.6mg(ルキソリチニブとして5mg)
添加物
乳糖、セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドン、無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム
禁忌
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人(「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照)
効能または効果
骨髄線維症
真性多血症(既存治療が効果不十分又は不適当な場合に限る)
骨髄線維症の場合
患者のリスク分類、脾臓の大きさ等について、臨床成績の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分理解した上で、適応患者の選択を行うこと。
病理組織学的検査を行い、骨髄線維症と診断された患者に使用すること。
真性多血症の場合
ヒドロキシカルバミドによる適切な治療を行っても十分な効果が認められない場合、又はヒドロキシカルバミドによる治療が不適当と判断される場合に本剤の投与を考慮すること。
臨床試験に組み入れられた患者の脾臓の大きさ等について、臨床成績の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分理解した上で、適応患者の選択を行うこと。
骨髄線維症の場合 通常、成人には本剤を1日2回、12時間毎を目安に経口投与する。用量は、ルキソリチニブとして1回5mg〜25mgの範囲とし、患者の状態により適宜増減する。
真性多血症の場合 通常、成人にはルキソリチニブとして1回10mgを開始用量とし、1日2回、12時間毎を目安に経口投与する。患者の状態により適宜増減するが、1回25mg1日2回を超えないこと。
全効能共通
他の抗悪性腫瘍剤との併用について、有効性及び安全性は確立していない。
十分な効果が認められず、血球数から増量可能と判断できる場合は、1回の投与量を5mgずつ2週間以上の間隔をあけて増量することができる。ただし、本剤の初回投与後、4週間は増量しないこと。
肝機能障害患者又は腎機能障害患者では、未変化体又は活性代謝物の血中濃度が上昇するとの報告があるため、減量を考慮するとともに、患者の状態をより慎重に観察し、有害事象の発現に十分注意すること。
骨髄線維症の場合
本剤の投与開始にあたっては、血小板数に基づき下記を参考に開始用量を決定すること。
血小板数注) :20万/mm3 超
血小板数注) :10万/mm3 以上20万/mm3 以下
開始用量:1回15mg 1日2回
注)血小板数5万/mm3 以上10万/mm3 未満の患者に対する開始用量の情報は限られているため、臨床成績の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分理解した上で、本剤の投与の可否を慎重に検討すること。血小板数5万/mm3 以上10万/mm3 未満の患者に投与可能と判断する場合、1回5mgを1日2回から投与を開始するとともに、観察を十分に行い、有害事象の発現に十分注意すること。血小板数5万/mm3 未満の患者に対する投与は避けること。
本剤の投与中に血小板数が減少した場合、下記を参考に減量又は休薬を考慮すること。なお、血小板数が休薬前の数値以上に回復した場合には、1回5mgを1日2回から投与を再開できる。ただし、患者の状態をより慎重に観察し、有害事象の発現に十分注意すること。
血小板数:10万/mm3 以上12.5万/mm3 未満
1回あたりの用量(1日2回) 25mg:20mg 20mg:変更なし 15mg:変更なし 10mg:変更なし 5mg:変更なし
血小板数:7.5万/mm3 以上10万/mm3 未満
1回あたりの用量(1日2回) 25mg:10mg 20mg:10mg 15mg:10mg 10mg:変更なし 5mg:変更なし
血小板数:5万/mm3 以上7.5万/mm3 未満
1回あたりの用量(1日2回) 25mg:5mg 20mg:5mg 15mg:5mg 10mg:5mg 5mg:変更なし
血小板数:5万/mm3 未満
1回あたりの用量(1日2回) 25mg:休薬 20mg:休薬 15mg:休薬 10mg:休薬 5mg:休薬
本剤の投与中に好中球数が500/mm3 未満に減少した場合には休薬すること。なお、好中球数が休薬前の数値以上に回復した場合には、1回5mgを1日2回から投与を再開できる。ただし、患者の状態をより慎重に観察し、有害事象の発現に十分注意すること。
真性多血症の場合
血小板数が5万/mm3 以上10万/mm3 未満の患者における開始用量の情報は得られていないため、臨床成績の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分理解した上で、本剤の投与の可否を慎重に検討すること。血小板数5万/mm3 以上10万/mm3 未満の患者に投与可能と判断する場合、低用量から投与を開始するとともに、観察を十分に行い、有害事象の発現に十分注意すること。血小板数5万/mm3 未満の患者に対する投与は避けること。
本剤の投与中に血小板数又はヘモグロビンが減少した場合、下記を参考に減量又は休薬を考慮すること。減量幅は、1回の投与量として5mgとする。なお、血小板数及びヘモグロビンが休薬前の数値以上に回復した場合には、1回5mg1日2回から投与を再開できる。ただし、患者の状態をより慎重に観察し、有害事象の発現に十分注意すること。
血小板数
5万/mm3 以上、10万/mm3 未満:減量 5万/mm3 未満:休薬
ヘモグロビン
8g/dL以上、12g/dL未満:減量 8g/dL未満:休薬
本剤の投与中に好中球数が1,000/mm3 未満に減少した場合には休薬すること。なお、好中球数が休薬前の数値以上に回復した場合には、1回5mgを1日2回から投与を再開できる。ただし、患者の状態をより慎重に観察し、有害事象の発現に十分注意すること。
慎重投与
重度の腎機能障害(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)のある患者及び透析中の末期腎障害患者〔血中濃度が上昇するおそれがある。〕(【薬物動態】の項参照)
肝機能障害のある患者〔血中濃度が上昇するおそれがある。〕(【薬物動態】の項参照)
結核の既感染者(特に結核の既往歴のある患者及び胸部レントゲン上結核治癒所見のある患者)〔結核を活動化させるおそれがある。〕(「重要な基本的注意」の項参照)
感染症(敗血症、肺炎、ウイルス感染等)を合併している患者〔免疫抑制作用により病態を悪化させるおそれがある。〕(「重要な基本的注意」の項参照)
高齢者(「高齢者への投与」の項参照)
重大な副作用
骨髄抑制
血小板減少症(40.9%)、貧血(37.5%)、好中球減少症(4.3%)があらわれることがあるので、定期的に血液検査(血球数算定、白血球分画等)を実施するなど患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には休薬、減量、投与中止等の適切な処置を行うこと。
感染症(10.4%)
細菌、真菌、ウイルス又は原虫による重篤な感染症(帯状疱疹(2.6%)、尿路感染(1.9%)、結核(0.2%)等)や日和見感染が発現又は悪化することがあり、死亡に至った症例が報告されている。本剤投与中及び投与終了後は患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には休薬、減量、投与中止等の適切な処置を行うこと。
進行性多巣性白質脳症(頻度不明)
進行性多巣性白質脳症があらわれることがあるので、本剤投与中及び投与終了後は患者の状態を十分に観察し、意識障害、認知障害、麻痺症状(片麻痺、四肢麻痺)、言語障害等の症状があらわれた場合には、MRIによる画像診断及び脳脊髄液検査を実施するとともに、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
出血
脳出血等の頭蓋内出血(0.2%)(初期症状:頭痛、悪心・嘔吐、意識障害、片麻痺等)、胃腸出血(0.8%)、処置後出血(0.2%)、鼻出血(1.7%)、血尿(0.6%)等があらわれることがあり、死亡に至った症例が報告されている。本剤投与中は定期的に血液検査を実施するなど患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
間質性肺疾患(頻度不明)
間質性肺疾患があらわれることがあるので、患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
肝機能障害
AST(GOT)(3.2%)、ALT(GPT)(4.1%)の上昇等を伴う肝機能障害があらわれることがあり、死亡に至った症例が報告されている。本剤投与中は定期的に肝機能検査を実施するなど患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと。
心不全(0.6%)
心不全があらわれることがあるので、患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
薬効薬理
作用機序
骨髄線維症及び真性多血症の患者では多くの場合、JAK2 遺伝子の変異等によるJAK2キナーゼの恒常的な活性化が認められている。ルキソリチニブは、in vitro で野生型及び変異型(V617F)のJAK2活性を阻害し、そのシグナル伝達を抑制した。20,21) また、骨髄線維症における臨床症状の原因の一つと考えられているIL-6の細胞内シグナル伝達に関わるJAK1の活性を阻害した。20) 変異型JAK2(V617F)を発現させたマウス腫瘍細胞株を移植したマウスにおいて、ルキソリチニブは脾臓重量を減少させ、炎症性サイトカインであるIL-6及びTNF-αの血中濃度の上昇を抑制した。22,23) 変異型JAK2(V617F)を発現するマウス由来骨髄細胞を移植し、赤血球数増加等の真性多血症様の症状を呈したマウスにおいて、ルキソリチニブは赤血球数、白血球数及び脾臓重量を減少させた。24)
有効成分に関する理化学的知見
一般名
ルキソリチニブリン酸塩(Ruxolitinib Phosphate)
化学名
(3R )-3-Cyclopentyl-3-[4-(7H -pyrrolo[2,3-d ]pyrimidin-4-yl)-1H -pyrazol-1-yl]propanenitrile monophosphate
分子式
分子量
性状
白色の粉末である。水にやや溶けやすく、エタノールにやや溶けにくく、アセトニトリルに極めて溶けにくい。
融点
分配係数
−0.057(1-オクタノール/pH1.0緩衝液)、2.562(1-オクタノール/pH4.3緩衝液)、2.814(1-オクタノール/pH7.4緩衝液)
★リンクテーブル★
[★]
poly(多) + cyt (細胞) + mia(血症) vera(真性?)
ラ
polycythemia vera PCV PV
同
真性赤血球増加症 、真性赤血球増多症
オスラー病 Osler disease ,オスラー・ワーケ病 オスラー-ヴァケー病 Osler-Vaquez disease ,ヴァケー病 Vaquez disease
関
骨髄増殖性疾患 (MPD )
概念
慢性骨髄増殖性疾患 の一つ。
多能性血液幹細胞の腫瘍性増殖により、赤血球数の絶対的増加と循環赤血球量の増加を呈する。
赤血球の他に、白血球、血小板も増加するが、リンパ球は増加しない。
病因
多能性幹細胞の異常により、血球が腫瘍性に増殖することが原因とされる。
疫学
新患発生数:100万人対2人/年
50-60歳に多い。
症状
循環赤血球量の増加 → 循環血液量の増加+血液粘稠度の亢進:循環障害による頭痛、めまい、耳鳴り、倦怠感、知覚異常、呼吸困難など → 高血圧、狭心症・心筋梗塞、間欠性跛行
血球の増加:脾腫(70%の症例)、赤ら顔(口唇、頬部、鼻尖、耳) →肝臓や脾臓の腫大は髄外造血による
骨髄
ヒスタミンの放出:皮膚の掻痒感、消化性潰瘍
尿酸の放出増加:高尿酸血症 → 痛風
検査
赤血球:増加
白血球:増加
血小板:増加
リンパ球:正常
血液生化学
遺伝子検査
特殊検査
循環赤血球量:増加(男性36 mL/kg以上、女性32 mL/kg以上) ← RIを使うはず
骨髄穿刺
鉄代謝
診断
インスリン様成長因子Iに対する感受性の亢進、Bcl-2ファミリーに属するBcl-XLの発現亢進、エリスロポエチン受容体の発現パターンの異常、トロンボポエチン受容体の発現低下、チロシンホスファターゼの発現異常、エリスロポエチン受容体遺伝子の異常
診断基準
2008年WHOによる真性多血症診断基準
大基準
1. Hb>18.5g/dl(男性)、>16.5/dl(女性) もしくは 年齢、性別、住居している緯度から換算したHbかHtが9.9%以上増加している もしくは Hb>17g/dl(男性)、>15g/dl(女性)で鉄欠乏性貧血などの改善以外にHbが本人の基準値よりも2g/dl以上持続上昇している もしくは 赤血球数が予想値の25%を超えて上昇している
2. Jak2V617Fかもしくは同様の変異が存在する
小基準
1. 骨髄の3系統が増生を示す
2. 血清エリスロポイエチンがおおよそ正常値を示す
3. 内因性の赤芽球コロニー形成を認める
鑑別診断
治療
治療目標:生命予後は良好であり、10年生存率は50%異常が期待できる。合併症となる血栓症の予防が主眼となる。
瀉血:Ht 42-47% ← 血管閉塞症の頻度が低下する
血圧や脈拍の経過を見ながら月1-2回、1回200-400ml程度で行う。
高齢者や心血管障害を有する例では1回100-200ml頻回の瀉血が望ましい
抗血栓療法:血栓症の既往、もしくはリスクが高いときには抗血小板薬を処方。
抗癌薬投与:ヒドロキシウレア が第一選択で、不応例や不耐例の場合はルキソリチニブ 。以前は40歳以上ではブスルファン とされていた。
放射性同位体:32P
高尿酸血症を有する場合にはフェブリクやアロプリノールを処方。
血栓症リスク
Barbui T, et al.(J Clin Oncol. 2011 ; 29 : 761)
リスク分類
予後因子
低リスク
年齢<60歳、かつ血栓症の既往なし
高リスク
年齢≧60歳、または血栓症の既往がある
予後
生存は平均6-10年。5年生存率約75%, 10年生存率約55%
主な死因は、消化管出血や脳血管障害
長期生存
25%の症例で骨髄線維症へ移行
まれに急性白血病を発症。32Pによる治療を受けた患者に多い
USMLE
Q book p.245 32
first aid step1 2006 p.278
国試
参考
総論 - 造血器腫瘍診療ガイドライン - 造血器腫瘍診療ガイドライン
http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/1_4.html#soron
PV瀉血療法後のHt目標値を45%にすることは勧められるか
http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/1_4.html#cq7
真性多血症の治療ガイド - ノバルティスファーマ株式会社
http://product.novartis.co.jp/jak/tool/JAK00193GG0002.pdf
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商品名
会社名
成分
薬効分類
薬効
【希少疾病用医薬品】