アルプラゾラム
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IUPAC命名法による物質名 |
8-chloro-1-methyl-6-phenyl-4H-
1,2,4-triazolo(4,3-a)(1,4)benzodiazepine
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臨床データ |
胎児危険度分類 |
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法的規制 |
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投与方法 |
経口 |
薬物動態データ |
生物学的利用能 |
80-90% |
代謝 |
肝臓 |
半減期 |
6-12 時間 |
排泄 |
腎臓 |
識別 |
CAS番号 |
28981-97-7 |
ATCコード |
N05BA12 |
PubChem |
CID: 2118 |
DrugBank |
APRD00280 |
KEGG |
D00225 |
化学的データ |
化学式 |
C17H13ClN4 |
分子量 |
308.8 |
アルプラゾラム(Alprazolam)は、ベンゾジアゼピン系の短期間作用型抗不安薬および筋弛緩薬の一種。半減期は約14時間。日本では商品名ソラナックス、コンスタンで知られ、後発医薬品も多数出ており、適応は、心身症における身体症状と不安・緊張・抑うつ・睡眠障害である。
すべてのベンゾジアゼピンは乱用薬物である。向精神薬に関する条約のスケジュールIVに指定されている。麻薬及び向精神薬取締法の第三種向精神薬である。連用後の急激な減量により、痙攣発作、せん妄、振戦、 不眠、不安、幻覚、妄想等の離脱症状のおそれがあるため、慎重に徐々に減量する旨が添付文書に記載されている。
目次
- 1 適応
- 2 有効性
- 2.1 パニック障害
- 2.2 不安障害
- 2.3 頭痛、頸椎症、腰痛症、肩こり
- 3 薬理
- 4 副作用
- 5 社会と文化
- 6 出典
- 7 関連項目
適応
日本での適応は、心身症(胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、自律神経失調症)における身体症候ならびに不安・緊張・抑うつ・睡眠障害である。
日本では、ソラナックス(ファイザー)、コンスタン(武田薬品工業)やメデポリン(沢井製薬)、アゾリタン(テバ製薬)、アルプラゾラム「トーワ」(東和薬品)、カームダン(共和薬品工業)という商品名で発売されている。
有効性
アルプラゾラムは一般的に不安障害、パニック障害、および化学療法における吐き気に対して使用される[1] 。FDAラベルでは、医師はこの医薬品の効果を定期的に再評価すべきであると勧告している[2]。
パニック障害
アルプラゾラムは深刻な不安およびパニック発作に対しての救済に効果がある[2]。しかしSSRIが開発されたことにより第一選択肢からは外され、豪州では耐性・依存・乱用リスクのためアルプラゾラムはもはやパニック発作の治療には推奨されなくなった[3]。パニック障害に対しアルプラゾラムの効果は4~10週までに限られるという証拠が存在する。しかしパニック障害の患者は、利益を失したにもかかららず8ヶ月以上治療を続けたままにされている[2][4]
米国において、アルプラゾラムはパニック障害(対人恐怖を伴うものでも)に、アメリカ食品医薬品局(FDA)の認可を受けている[2]。World Federation of Societies of Biological Psychiatry (WFSBP)は2002年に、アルプラゾラムを薬物耐性・依存の経歴のない患者の治療抵抗性パニック障害に対して推奨している[5]。
不安障害
米国では、アルプラゾラムは不安障害、短期間の不安救済にFDA認可されている。アルプラゾラムは抑うつを伴う不安に対し効果がある。体系的な臨床試験によると不安障害への適用は4週間までに限られる。[2]
英国ではアルプラゾラムの処方は、深刻な不安に対し短期間(2-4週間)限りの治療に推奨される。[4][6][7]
長期間のアルプラゾラム投与は抑うつを引き起こす[8]。
頭痛、頸椎症、腰痛症、肩こり
日本の整形外科においては、筋弛緩作用により頭痛、頸椎症、腰痛症、肩こり対策に処方されている。
薬理
脳にあるGABA受容体に結合することにより、神経細胞の活動を抑制させる。
服用してから15分〜30分で最大効果が得られ、半減期は14時間ほどである。
副作用
倦怠感、脱力感、集中力低下、眠気、頭痛、めまい、性欲減衰、瞳孔拡大等。
依存性と離脱
「ベンゾジアゼピン依存症」および「ベンゾジアゼピン離脱症候群」も参照
アルプラゾラムとその他のベンゾジアゼピンは身体的依存・薬物耐性を引き起こし、長期投与後の減薬・断薬時にはベンゾジアゼピン離脱症候群を引き起こす[9][10]。もし投与量が推奨量よりも多い場合、または患者の身体適応に応じて徐々の減薬を行うことなく服用をやめた場合、離脱症状が起こる可能性は高くなる[11][12][13]。
アルプラゾラムの治療効果に対しての耐性により、アルプラゾラムは長期使用の効果がないという見解があり、物議を醸している[14][15]。
身体的依存はアルプラゾラム治療の結果として起こるのが普通である。離脱症状と反跳症状のため、中止時には離脱の影響を最小限に抑えるために投与量の漸減が必要である。
症状は穏やかなものは不快・不眠症、主要なものは発汗・不安・腹痛・筋肉のけいれん・嘔吐・抑うつ・震え、そしてまれに発作・自殺念慮・自殺などがある。[16]
アルプラゾラムの断薬は、その深刻な反跳と離脱症状のため特に困難であるとされている。パニック障害に対してのベンゾジアゼピン治療効果はそのリスクを上回ることが罹患率と死亡率のデータで示唆されている[17]。
社会と文化
アルプラゾラムは米国で最も処方され[18]、かつ最も乱用されているベンゾジアゼピンである[16]。
法的状況
国際的には、アルプラゾラムは国連の向精神薬に関する条約にてスケジュールIV指定である[19]。
- 米国では、アルプラゾラムは処方薬であり、規制物質法に基づき麻薬取締局(DEA)にてSchedule IV規制の薬物である[20]。
- 英国では、1971年薬物乱用法の分類にてベンゾジアゼピンはClassC(スケジュール4)の薬物である[21]。国民保健サービス(NHS)では処方禁止(NHSブラックリスト)であり、プライベート医療の処方箋によってのみ使用できる[22]。
- アイルランドでは、アルプラゾラムはアイルランド薬物乱用法(英語版)においてスケジュール4薬物である[23]。
- スウェーデンでは、1968年Narcotics Drugs Act法にてList IV(スケジュール4)の処方薬である[24][25]。
- オランダでは、アルプラゾラムはオランダアヘン法(英語版)にてList2薬物であり、処方薬である。
出典
- ^ “Alprazolam”. The American Society of Health-System Pharmacists. 2011年5月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年4月3日閲覧。
- ^ a b c d e “FDA approved labeling for Xanax revision 08/23/2011 (PDF)”. Federal Drug Administration. p. 4 (2011年8月23日). 2011年9月14日閲覧。 “Anxiety Disorders – XANAX Tablets (alprazolam) are indicated for the management of anxiety disorder (a condition corresponding most closely to the APA Diagnostic and Statistical Manual [DSMIII-R] diagnosis of generalized anxiety disorder) or the short-term relief of symptoms of anxiety. Anxiety or tension associated with the stress of everyday life usually does not require treatment with an anxiolytic... Panic Disorder – XANAX is also indicated for the treatment of panic disorder, with or without agoraphobia... Demonstrations of the effectiveness of XANAX by systematic clinical study are limited to 4 months duration for anxiety disorder and 4 to 10 weeks duration for panic disorder; however, patients with panic disorder have been treated on an open basis without any apparent loss of benefit. The physician should periodically reassess the usefulness of the drug for the individual patient.”
- ^ Moylan, S.; Giorlando, F.; Nordfjærn, T.; Berk, M. (2012). “The Role of Alprazolam for the Treatment of Panic Disorder in Australia” (PDF). The Australian and New Zealand Journal of Psychiatry 46 (3): 212–224. doi:10.1177/0004867411432074. PMID 22391278. http://www.barglow.com/moylan2012alprazolam.pdf.
- ^ a b “Xanax (Alprazolam) Clinical Pharmacology – Prescription Drugs and Medications at RxList”. RxList. First DataBank (2008年7月). 2014年5月1日閲覧。
- ^ Borwin Bandelow, Josef Zohar, Eric Hollander, Siegfried Kasper & Hans-Jurgen Moller (2002-08). “World Federation of Societies of Biological Psychiatry (WFSBP) guidelines for the pharmacological treatment of anxiety, obsessive-compulsive and posttraumatic stress disorders”. The world journal of biological psychiatry : the official journal of the World Federation of Societies of Biological Psychiatry 3 (4): 171-199. PMID 12516310.
- ^ NetDoctor (2006年10月1日). “Xanax”. netdoctor.co.uk. 2007年8月2日閲覧。
- ^ The British National Formulary (2007年). “Alprazolam”. BNF. 2007年8月2日閲覧。
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- ^ Tesar GE (1990). “High-potency benzodiazepines for short-term management of panic disorder: the U.S. experience”. J Clin Psychiatry 51 (Suppl): 4?10; discussion 50-3. PMID 1970816.
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- ^ UK Gov (1991年). “Misuse of Drugs Act 1971 (c. 38)”. The UK Statute Law database. 2011年8月11日閲覧。
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- ^ “Misuse Of Drugs (Amendment) Regulations”. Irish Statute Book. Office of the Attorney General (1993年). 2011年8月11日閲覧。
- ^ “Läkemedelsverkets föreskrifter (LVFS 2011:10) om förteckningar över narkotika [Medical Products Agency on the lists of drugs]” (Swedish) (PDF) (プレスリリース), Sweden: スウェーデン医療製品庁, (2011年10月), http://www.lakemedelsverket.se/upload/lvfs/LVFS_2011-10.pdf
- ^ “Alprazolam STADA 2 mg tablett”. スウェーデン医療製品庁. 2014年5月1日閲覧。
関連項目
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ウィキメディア・コモンズには、アルプラゾラムに関連するメディアがあります。 |
- ベンゾジアゼピン
- ベンゾジアゼピン依存症
- ベンゾジアゼピン離脱症候群
- ベンゾジアゼピンの長期的影響
- グレープフルーツジュース
抗不安薬 (N05B) |
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GABAA PAMs |
ベンゾジアゼピン
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アジナゾラム アルプラゾラム Bretazenil ブロマゼパム Camazepam クロルジアゼポキシド クロバザム クロナゼパム クロラゼプ酸 クロチアゼパム クロキサゾラム ジアゼパム ロフラゼプ酸エチル エチゾラム フルジアゼパム Halazepam Imidazenil Ketazolam ロラゼパム メダゼパム Nordazepam Oxazepam ピナゼパム プラゼパム トフィソパム
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カルバミン
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エミルカメート メブタメート メプロバメート (Carisoprodol, Tybamate) フェンプロバメート エキパックス
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非ベンゾジアゼピン
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アベカルニル アジピプロン アルピデム CGS-9896 CGS-20625 ジバプロン ELB-139 Etifoxine ファシプロン GBLD-345 Gedocarnil ICI-190,622 L-838,417 NS-2664 NS-2710 オシナプロン パゴクロン Panadiplon Pipequaline RWJ-51204 SB-205,384 SL-651,498 TP-003 TP-13 TPA-023 Tracazolate Y-23684 ZK-93423
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その他
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クロルメザノン エタゾレート エタノール (アルコール) Kavalactone (カヴァカヴァ) タツナミソウ属 吉草酸 (セイヨウカノコソウ)
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α2δ VDCC Blockers |
ガバペンチン プレガバリン
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5-HT1A作動薬 |
アザピロン系: ブスピロン ゲピロン タンドスピロン; Others: Flesinoxan Oxaflozane
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H1 拮抗薬 |
Diphenylmethanes: Captodiame ヒドロキシジン; Others: Brompheniramine クロルフェニラミン Pheniramine
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CRF1 拮抗薬 |
Antalarmin CP-154,526 Pexacerfont Pivagabine
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NK2 拮抗薬 |
GR-159,897 Saredutant
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MCH1 拮抗薬 |
ATC-0175 SNAP-94847
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mGluR2/3 作動薬 |
エグルメガド
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mGluR5 NAMs |
フェノバム
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TSPO 作動薬 |
DAA-1097 DAA-1106 Emapunil FGIN-127 FGIN-143
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σ1 作動薬 |
Afobazole Opipramol
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Others |
Benzoctamine Carbetocin Demoxytocin メフェノキサロン オキシトシン Promoxolane トリメトジン WAY-267,464
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