出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/06/01 20:22:15」(JST)
この項目に含まれる文字「鞘」は、オペレーティングシステムやブラウザなどの環境により表示が異なります。 |
髄鞘をもつ末梢ニューロンの模式図。軸索にシュワン細胞が幾重にも巻き付くことによって髄鞘が形成されている。 |
---|
樹状突起
細胞体
軸索
核
ランヴィエ絞輪
軸索末端
シュワン細胞
ミエリン鞘
|
神経科学において髄鞘 (ずいしょう、myelin sheath) は、脊椎動物の多くのニューロンの軸索の周りに存在する絶縁性のリン脂質の層を指す。 ミエリン鞘とも言う。コレステロールの豊富な絶縁性の髄鞘で軸索が覆われる[1]ことにより神経パルスの電導を高速にする機能がある。
髄鞘はグリア細胞の一種であるシュワン細胞とオリゴデンドロサイト (乏突起または稀突起グリア細胞、en:oligodendrocyte) からなっている。 シュワン細胞は末梢神経系の神経に髄鞘を形成し、一方オリゴデンドロサイトは中枢神経系の神経での髄鞘を形成している。 大脳では大脳皮質の内側に髄鞘化された神経細胞の軸索の線維が集まっており、髄鞘中のリン脂質によって見た目が相対的に白く見えるので、白質と呼ばれている。
髄鞘は伝導性が低いために、髄鞘化されていることによって神経線維の内外の抵抗は5000倍に、静電容量は50分の1となる。この絶縁性の高い髄鞘が存在することの主たる機能は、髄鞘化された神経線維(有髄線維)に沿った神経パルスの伝導速度が速くなることである。線維は完全に髄鞘に覆われているわけではなく、数十 µm から数 mm おきに存在する間隙を残して髄鞘化されている。この間隙はランヴィエの絞輪と呼ばれている。髄鞘化されていない線維では神経パルスは連続的に伝わるが、線維がランヴィエの絞輪を残して髄鞘化され絶縁されることによって、パルスはこれらの間隙の間を跳躍的に伝導する。これを跳躍伝導という。ランヴィエの絞輪にはパルスの伝導にかかわるイオンチャネルが特に多く存在している。髄鞘が傷害される脱髄疾患では神経の伝導速度が低下するため、多様な症状が起こることとなる。
また髄鞘は軸索から電流が漏れ、短絡することを防ぐ、電線の絶縁材のような働きをしている。 さらに末梢の神経線維が切断されたときにも、髄鞘は線維が再生するための経路を確保する。しかし哺乳類の中枢神経系では髄鞘化されているかどうかに関わらず線維は再生しない。
スフィンゴ脂質の一種であるスフィンゴミエリン(Sphingomyelin)(SPH)は、動物の細胞膜中に存在しており、特に神経細胞の軸索を膜状に覆うミエリン鞘の構成成分としてよく知られている。
脱髄は、神経を絶縁しているミエリン鞘の崩壊であり、白質ジストロフィ(en:Leukodystrophy)、シャルコー・マリー・トゥース病のような多発性硬化症、急性散在性脳脊髄炎、横断性脊髄炎(en:transverse myelitis)、慢性炎症性脱髄性多発性神経炎、ギラン・バレー症候群、中央脳梁ミエリン症(en:central pontine myelinosis)、遺伝性脱髄疾患を含む代表的な神経変性である自己免疫疾患である。悪性貧血を罹患している患者は、迅速に適切な診断がなされなければ、神経損傷をも罹患することになる。悪性貧血に続く亜急性連合性脊髄変性症は、些細な末梢神経障害から会話、認識、意識などをつかさどる中枢神経に重大な損傷を与えることができる。ミエリンが崩壊すると、神経に沿った信号伝達が障害を受け、失われ、ついには神経が失われてしまう。
腫瘍壊死因子(TNF)[2]やインターフェロンの指令を受けたサイトカインの過剰生産により脱髄を生じさせている炎症を含めた疾患が免疫系の関連で脱髄に関係しているかもしれない。
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
国試過去問 | 「108G022」 |
リンク元 | 「神経線維の分類」「乏突起膠細胞」「運動終板」「シュワン鞘」「シュワン細胞」 |
拡張検索 | 「橋中心髄鞘崩壊症」「髄鞘形成不全」「髄鞘染色」 |
B
※国試ナビ4※ [108G021]←[国試_108]→[108G023]
神経線維 | 髄鞘 | 直径(μm) | 伝導速度(m/s) | |
Aα | 有髄 | 12-20 | 70-120 | 体性運動(運動神経)、自己受容(筋の感覚神経) |
Aβ | 有髄 | 5-12 | 30-70 | 触圧覚 |
Aγ | 有髄 | 3-6 | 15-30 | 筋紡錘への運動神経 |
Aδ | 有髄 | 2-5 | 12-30 | 痛覚、温度覚 |
B | 有髄 | <3 | 3-15 | 交感神経節前線維 |
C | 無髄 | 0.4-1.2 | 0.5-2 | 交感神経節後線維、痛覚 |
線維群 | 神経線維 | 機能 |
Ia群線維 | Aα | 筋紡錘のらせん系終末 |
Ib群線維 | Aα | 腱紡錘 |
II群線維 | Aβ | 触圧受容器 |
III群線維 | Aδ | 自由終末 |
IV群線維 | C | 自由終末 |
Aδ | 局在のはっきりした痛み | 機械的受容器 | 外骨膜 |
C | Aδの後に続く鈍い痛み | ポリモーダル受容器 | 骨膜、筋膜、関節包、血管など |
ミエリン鞘 髄鞘 |
シュワン鞘 | ||
有髄神経 | 中枢神経 | ○(シュワン細胞) | |
末梢神経 | ○(希突起膠細胞) | ○ | |
無髄神経 | × |
ミエリン鞘 髄鞘 |
シュワン鞘 | ||
有髄神経 | 中枢神経 | ○(シュワン細胞) | |
末梢神経 | ○(希突起膠細胞) | ○ | |
無髄神経 | × |
ミエリン鞘 髄鞘 |
シュワン鞘 | ||
有髄神経 | 中枢神経 | ○(シュワン細胞) | |
末梢神経 | ○(希突起膠細胞) | ○ | |
無髄神経 | × |
橋中心髄鞘融解 : 34 件 橋中心髄鞘融解症 : 20 件 中心橋髄鞘融解 : 12 件 中心橋髄鞘融解症 : 6 件 橋中心髄鞘崩壊 : 約 1,610 件 橋中心髄鞘崩壊症 : 約 974 件 中心橋髄鞘崩壊 : 14 件 中心橋髄鞘崩壊症 : 12 件 橋中心脱髄症 : 2 件 中心橋脱髄症 : 8 件
.