出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/07/17 00:02:41」(JST)
ウィキペディアは医学的助言を提供しません。免責事項もお読みください。 |
突発性発疹(とっぱつせいほっしん)は、ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)初感染による感染症。一部、ヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)によるものも存在する。
「突発疹」「突発性発疹症」とも。俗に「知恵熱」と呼ばれる。
目次
|
ヒトヘルペスウイルス6型または7型初感染による。感染源は主に家族からの水平感染と考えられる。
突発性発疹罹患後、ウイルスは唾液腺の細胞などに潜伏感染し、生涯持続する。一方で感染症に対しては終生免疫を得る。水痘・帯状疱疹ウイルスと違い再活性化はまれであるが、起こった場合には重症となりうる。潜伏感染したウイルスは断続的に主に唾液中に排泄され、水平感染を起こす。
ウイルス感染後の潜伏期間は10〜14日程度と考えられている。発熱の2日程度前から、血液中にウイルスを検出できる。発熱の期間は3〜4日間で、その後は血中に中和抗体が出現し、ウイルスは検出できなくなる。唾液腺細胞のほか、単球やマクロファージなどにもウイルスが潜伏感染すると考えられている。神経系への親和性が高く、熱性痙攣患者の髄液中にHHV-6のDNAを検出できることも多い。
好発年齢は4ヶ月〜1歳で、季節との関連性はみられない。HHV-6のほうがHHV-7よりも初感染は早い傾向がある。
39〜40℃の突然の発熱で発症する。概して全身状態は良好である。発熱時に、軽度の咳や下痢を伴うことがある。中枢神経に感染しやすく、日本人では10%ほどが熱性痙攣を合併する(日本人は欧米人と比べ、熱性痙攣が多いことが疫学調査で明らかになっている)。大泉門の膨隆はさらに多いが、重篤な神経症状を起こすことはまれである。
3〜4日の有熱期の後、解熱するとともに全身に発疹が出現する。発疹は小豆大程度までの浮腫性紅斑(わずかに盛り上がった紅い発疹)であり、教科書的には癒合傾向を示さないとされているが、実際には多少癒合している症例が珍しくない。発疹は3〜4日で瘢痕を残さず治癒する。色素沈着も残さない。
欧米人のHHV-6初感染では発熱のみで発疹がみられないことが多いと報告されており、この差が人種差によるものか生活習慣や環境の差によるものかの検討が必要である。
白血球増多はみられず、CRP上昇もないか、あっても極軽度である。極軽度のトランスアミナーゼ上昇がみられることがある。
ウイルス感染に対する一般的な検査法は、血清抗体価測定である。HHV-6,7各々に、IgG,IgM抗体を測定できる。IgM陽性でIgG陰性ならば初感染を意味し、IgM陰性でIgG陽性の場合は、既に感染したことがあり免疫ができている。
患者血液からウイルス分離またはウイルスDNAを検出することができるが、一般的には行われない。しかしDNA検出(PCR)は迅速に結果が得られるため、造血幹細胞移植後など免疫不全状態の患者や臓器移植後のHHV-6再活性化症候群のように重篤なHHV-6感染症では、有力な検査となる。
重症の熱性痙攣や脳炎などで髄液を採取した場合、髄液からのDNA検出により中枢神経感染を証明できる可能性が高い。
ワクチンがないため予防法はないが、基本的には予後良好な疾患であり、特異的な治療は必要がない。解熱剤、輸液など必要に応じて対症療法を行う。熱性痙攣も、数分内におさまって意識が回復する場合には心配がない。
脳炎などの重篤な合併症があり、血清や髄液にウイルスDNAが証明される例では、ガンシクロビルやフォスカルネットの投与が考慮されるが、有効性についての科学的根拠は不十分である。
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
リンク元 | 「新興感染症」「ヒトヘルペスウイルス6型」「exanthema subitum」 |
関連記事 | 「突発性発疹」「発疹」「突発」「突発性」「症」 |
年 | 病原微生物 | 種類 | 疾患 |
1973 | Rotavirus | ウイルス | 小児下痢症 |
1975 | Parvovirus B19 | ウイルス | 伝染性紅班 |
1976 | Cryptosporidium parvum | 寄生虫 | 下痢症 |
1977 | Eboravirus | ウイルス | エボラ出血熱 |
Legionella pneumophila | 細菌 | レジオネラ症 | |
Hantaanvirus | ウイルス | 腎症候性出血熱 | |
Campylobacter jejuni | 細菌 | 下痢症 | |
1980 | Human T-lymphotropic virus-1 | ウイルス | 成人T細胞白血病 |
Hepatitis D virus | ウイルス | D型ウイルス肝炎 | |
1981 | TSST-1-producing Staphylococcus aureus | 細菌 | 毒素性ショック症候群 |
1982 | Escherichia coli 0157:H7 | 細菌 | 腸管出血性大腸炎、溶血性尿毒症症候群 |
Human T-lymphotropic virus-2(1) | ウイルス | 白血病 | |
Borrelia burgobrferi | 細菌 | ライム病 | |
Rickttsia japonica | 細菌 | 日本紅斑熱 | |
1983 | Human immunodeficiency virus | ウイルス | 後天性免疫不全症候群 |
Helicobacter pylori | 細菌 | 胃炎(胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃癌、MALTリンパ腫) | |
1985 | Enterocytozoon bieneusi | 寄生虫 | 持続性下痢症 |
1986 | Cyclospora cayetanensis | 寄生虫 | 持続性下痢症 |
Prion(2) | プリオン | 牛海綿状脳症 | |
1988 | Human herpesvirus-6 | ウイルス | 突発性発疹症 |
Hepatitis E virus | ウイルス | E型肝炎 | |
1989 | Ehriichia chaffeensis | 細菌 | エールリキア症 |
Hepatitis C virus | ウイルス | C型肝炎 | |
Clamydia pneumoniae | 細菌 | 肺炎、気管支炎 | |
1991 | Guanarito virus | ウイルス | ベネズエラ出血熱 |
Encephalitozoon heilem | 寄生虫 | 結膜炎 | |
Newspecis of Babesia | 寄生虫 | 非定型性バベシア症 | |
1992 | Vibrio choerae 0139 | 細菌 | 新型コレラ |
Bartoneiia henselae | 細菌 | 猫ひっかき病 | |
1993 | Sin Nombre virus | ウイルス | ハンタウイルス肺症候群(成人呼吸窮迫症候群) |
Encephalitozoon cuniculi | 真菌 | ミクロスポリドーシス | |
1994 | Sabia virus | ウイルス | ブラジル出血熱 |
Hendra virus | ウイルス | ウイルス性脳炎 | |
1995 | Human herpesvirus-8 | ウイルス | カポジ肉腫 |
Hepatitis G virus | ウイルス | G型肝炎 | |
1996 | TSE causing agent | プリオン | 新型クロイツフェルト・ヤコブ病 |
Australian bat lyssavirus | ウイルス | ウイルス性脳炎 | |
1997 | Influenza A/H5N1 | ウイルス | トリ型インフルエンザのヒト感染 |
1999 | Nipa hvirus | ウイルス | 急性脳炎 |
2003 | SARS coronavirus | ウイルス | 重症急性呼吸器症候群(SAR) |
-感染症
.