出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/06/08 16:01:42」(JST)
カキ | |||||||||||||||
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ヨーロッパヒラガキ
Ostrea edulis Linnaeus, 1758 |
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分類 | |||||||||||||||
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100 g (3.5 oz)あたりの栄養価 | |
エネルギー | 339 kJ (81 kcal) |
炭水化物 | 4.95 g |
- 食物繊維 | 0 g |
脂肪 | 2.3 g |
- 飽和脂肪酸 | 0.51 g |
- 一価不飽和脂肪酸 | 0.358 g |
- 多価不飽和脂肪酸 | 0.894 g |
タンパク質 | 9.45 g |
- トリプトファン | 0.106 g |
- トレオニン | 0.407 g |
- イソロイシン | 0.411 g |
- ロイシン | 0.665 g |
- リシン | 0.706 g |
- メチオニン | 0.213 g |
- シスチン | 0.124 g |
- フェニルアラニン | 0.339 g |
- チロシン | 0.302 g |
- バリン | 0.413 g |
- アルギニン | 0.689 g |
- ヒスチジン | 0.181 g |
- アラニン | 0.572 g |
- アスパラギン酸 | 0.912 g |
- グルタミン酸 | 1.285 g |
- グリシン | 0.591 g |
- プロリン | 0.386 g |
- セリン | 0.423 g |
水分 | 82.06 g |
ビタミンA相当量 | 81 μg (9%) |
ビタミンB1 | 0.067 mg (5%) |
ビタミンB2 | 0.233 mg (16%) |
ビタミンB3 | 2.01 mg (13%) |
パントテン酸(ビタミンB5) | 0.5 mg (10%) |
ビタミンB6 | 0.05 mg (4%) |
葉酸(ビタミンB9) | 10 μg (3%) |
ビタミンB12 | 16 μg (667%) |
ビタミンC | 8 mg (10%) |
カルシウム | 8 mg (1%) |
鉄分 | 5.11 mg (41%) |
マグネシウム | 22 mg (6%) |
マンガン | 0.643 mg (32%) |
セレン | 77 μg (110%) |
リン | 162 mg (23%) |
カリウム | 168 mg (4%) |
塩分 | 106 mg (5%) |
亜鉛 | 16.62 mg (175%) |
%はアメリカにおける成人向けの 栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
カキ(牡蛎、牡蠣、硴、英名:oyster)は、ウグイスガイ目イタボガキ科に属する二枚貝の総称、あるいはカキ目もしくはカキ上科に属する種の総称。海の岩から「かきおとす」ことから「カキ」と言う名がついたといわれる。古くから、世界各地の沿岸地域で食用、薬品や化粧品、建材(貝殻)として利用されてきた。
食用にされるマガキやイワガキなどの大型種がよく知られるが、食用にされない中型から小型の種も多い。どの種類も岩や他の貝の殻など硬質の基盤に着生するのが普通である。基盤に従って成長するため殻の形が一定せず、波の当たり具合などの環境によっても形が変化するため、外見による分類が難しく、野外では属さえも判別できないこともある。このため、未だに分類が混乱しているものも少なからずあり、外見に惑わされない分子系統などを使った分類がなされつつある。
養殖する方法は、カキの幼生が浮遊し始める夏の初めにホタテの貝殻を海中に吊るすと幼生が貝殻に付着するので、後は餌が豊富な場所に放っておくだけというものである。野生のものは餌が少ない磯などに付着するため、総じて養殖物の方が身が大きくて味も良い。欧米では種牡蠣を原盤(フランス語ではクペール)という網状の円盤で採取するが、ある程度大きくなるとそれから外して網籠に入れて干満の差が大きい場所の棚に置くか干潟にばら撒いて育成する。この方式はホタテガイで種牡蠣を海中につけっぱなしにしておく日本の方式よりも身が大きくなりやすい。(カキ養殖に関してはen:Oyster farmingも参照のこと)
一旦岩などに付着すると、一生ほとんど動かないため、筋肉が退化し内臓がほとんどを占めている。日本テレビの科学番組『所さんの目がテン!』ではハマグリの内臓を寄せ集めてカキフライもどきを作ったところ、20人中18人が騙されたという結果が出た[1]。
干潮時には水が無い場所に住む場合が多く、グリコーゲンを多く蓄えている。これにより、他の貝と違って水が無い所でも1週間は生きていられる。
英語でカキを指す“oyster”は日本語の「カキ」よりも広義に使われ、岩に着生する二枚貝のうち、形がやや不定形で表面が滑らかでないもの一般を指し、アコヤガイ類やウミギク科、あるいはかなり縁遠いキクザルガイ科などもoysterと呼ばれることがある。
グリコーゲンのほか、必須アミノ酸をすべて含むタンパク質やカルシウム、亜鉛などのミネラル類をはじめ、さまざまな栄養素が多量に含まれるため、「海のミルク」とも呼ばれる[3]。カキフライのような揚げものや、鍋物の具にして食べるほか、新鮮なものは網焼きにしたり生食したりする。
食用としての歴史は非常に長く、世界中で食され、人類が親しんできた貝の一つである。一般的に肉や魚介の生食を嫌う欧米食文化圏において、カキは例外的に生食文化が発達した食材であり、古代ローマ時代から珍重され、養殖も行われていた。生ガキはフランス料理におけるオードブルとなっている。また、生ガキをメニューの中心に据える「オイスターバー」と呼ばれるレストランも存在する。ナポレオン、バルザック、ビスマルクなどがカキの愛好家であったことが知られている[3]。
日本では縄文時代ごろから食用されていたとされ、多くの貝塚から殻が発見されており、ハマグリに次いで多く食べられていたと考えられている[3]。室町時代ごろには養殖も行われるようになったという。大坂では明治時代まで広島から来るかき船が土佐堀、堂島、道頓堀などで船上での行商を行い、晩秋の風物詩となっていた。
かつては広島や東北などの産地から消費地まで輸送するのに時間がかかったため、日本ではカキの生食は産地以外では一般化せず、もっぱら酢締めや加熱調理で食された。日本人では武田信玄や頼山陽などがカキの愛好家であったことが知られている[3]。
日本人がカキを生で食べるようになったのは、欧米の食文化が流入した明治時代以降であり、生食文化が欧米から輸入された珍しい食材である。
古くから食べられてきたカキであるが、その一方で「あたる」食品(食材)としても知られている。カキの食中毒が注目されるのは非加熱状態で食べられる機会が多いことと関係している。
現代の日本国内で流通している生食用のカキは、食中毒を極力回避するために生産・流通段階でいくつかの対策がとられている[4]。例えば、生食用として販売されるカキには加工基準が設けられ、カキそのものを対象として規格基準が設けられている。さらに、保存基準、表示基準も規定されている[5]。具体的には、加工基準としては、食品衛生法或いは厚生労働省通知に基づき
のどちらかであることが規定されている[7]。また、規格基準としては、細菌数E.coli(大腸菌)最確数、V. parahaemolyticus(腸炎ビブリオ)最確数も規定されている。これらに加えさらに厳しい指導基準を各生産地域が設けている場合もある[8]。なお、生食用カキの上記加工基準を満たすために、紫外線殺菌された海水中や人工海水などを充分に循環させた環境下にて絶食状態として数日間飼育される場合がある。この場合、貝表面や貝内部に取り込まれた細菌の大部分を貝内から排出させほぼ無菌状態になることとは引き替えに、同様の処理がされていないものに比べ身が痩せてしまうこともあるので、加熱処理用のものよりも味が劣ることがある[9]。
現代において、食中毒症状を引き起こす原因としては貝毒、細菌(腸炎ビブリオ、大腸菌など)とウイルス(特にノロウイルス)がよく知られているが、どの原因も生育環境(海水)に由来するものであり、二枚貝特有の摂餌行動などによって貝内部、特に消化器官(中腸腺など)に取り込まれ濃縮されるものである。
貝毒以外の食中毒の予防のために留意すべきことは、
という点である。
詳細は「貝毒」を参照
貝毒は貝が捕食する海水中の有毒プランクトンを蓄積したものである。対策として、生育海水中の植物プランクトンの種類および貝に含まれる毒が定期的に検査されている[6](参照:マウスユニット)。有毒プランクトンの発生し易い時期は3月から5月。広島県立総合技術研究所の研究によれば、濾過海水中で一定期間飼育することで、毒の量を規制値以下に減毒できるとしている[10]。
細菌は海水中に常時一定数存在するものであり、ごく少量であれば食中毒症状を引き起こすことはない。しかし、気候や水質、保存方法などによっては細菌が大量に増殖することもあり、生食する際には注意が必要である。なお、現代の日本国内の生食用カキの場合は上述のように流通段階では十分な対策が取られている。むしろ、残った少量の細菌を増殖させてしまうような環境に放置することの方が危険である。
産卵期にはカキは精巣と卵巣が非常に増大し、食用とはならない。一般にカキとして認識されているマガキの場合は、グリコーゲン含量が増える秋 - 冬にかけてが旬とされており、英名に「R」のつかない月、すなわちMay, June, July, Augustの5、6、7、8月は産卵期であり食用には適さないとされている[3]。ただし、春から夏に旬を迎えるイワガキと呼ばれる種類のカキもあり、それぞれ養殖も盛んであることからマガキに限らないならば通年食べることができる。また、産地によっては、水温などの条件により旬が変わることもある。
カキの殻の表面は剃刀の刃のように薄いものが重なっており、生食の際には軍手などの手袋を用いないと手のひらに無数の傷がつく。網焼きや生食では身だけでなく汁もともに吸う。多くの人はカキの身にのみ栄養があると考えているが、身が浸されている殻の中の海水を含む汁にも多くの栄養素が含まれていることが知られている。
貝殻は牡蠣(ボレイ)といい、焼成してから粉砕した粉は『日本薬局方』に「ボレイ」および「ボレイ末」として記載の生薬である[15]。ボレイの歴史は古く梁の陶弘景が『神農本草経』を修訂した『神農本草経集注』に収載されている。現在市販されているものはマガキの左殻が普通である。
「ボレイ末」は炭酸カルシウム (CaCO3) が主成分で、リン酸塩、他マグネシウム、アルミニウム、ケイ酸塩、酸化鉄などを含有する。
処方例として、安中散、桂枝加竜骨牡蠣湯、柴胡加竜骨牡蠣湯などに使われる。また、農薬として、長期的に使用すると除草効果(雑草の根張りが悪くなる)があるとされる。
薬理作用として、かき肉には血糖低下(カキ身エキス)、免疫増強作用(中性多糖類)、牡蠣制酸などの作用があるとされる。
薬用以外には天然炭酸カルシウムとして、あるいは1000℃程度に焼成すると牡蠣灰などとも呼ばれる酸化カルシウム (CaO) が主成分のものとなるので、消しゴムの添加剤などの工業用や食品添加物、砂糖精製用助剤などに利用することも行われている。
東京都では食品として安全に流通させるために、生食用かきを取り扱う場合、保健所長への届出を必要とさせている。届け出を行うと『生食用かき取扱い届済』ステッカーが交付される[16]。
同時に、大腸菌、腸炎ビブリオ、腸管出血性大腸菌O157、ノロウイルス、貝毒等の項目の検査と履歴の保存を指導している。また、生食用カキが原因となる食中毒が発生した際に、速やかな調査と食中毒事故の拡大を防止する目的で、採取海域の表示を義務付けている。
日本の2009年における牡蠣水揚げ量は209200トン。内訳は広島県が105900トンでシェア約50%、宮城県が48100トンでシェア約23%、岡山県が18300トンでシェア約8%、以下岩手県、兵庫県、三重県、北海道、石川県、福岡県、長崎県、香川県、新潟県、愛媛県、京都府…と続いている。広島県は大規模業者が多いのに対し、宮城県は個人での生産が多く、牡蠣生産に携わる漁業関係者は宮城県が一番多い。また、同年の輸入量は14,892トンであり、輸入量の93%を韓国からのものが占めていた。
日本全国の主な産地は次の通り。これらの産地ではシーズンを迎えると、観光客向けの大規模なツアーやイベントを企画したりして、観光振興に一役買っている。
北海道厚岸町のシングルシード(蛎殻を砕いたものに各一匹の幼生を付着させて育てたもの)のカキ「カキえもん」、三重県の「的矢かき」・「浦村かき」、広島県の3倍体のカキ「カキ小町」、北海道寿都町の「寿(ことぶき)カキ」など、各産地ごとにブランド化した牡蠣を売り出すなど、新しい動きもみられる。特に三重県の的矢かきは生食かき養殖技術発祥の牡蠣である[17]。
香港郊外の流浮山は牡蠣の焼き物などの料理が有名な養殖地であったが、近くの深圳の工業化によって、海水の汚染が酷くなり、衰退している。
古来からの和名は「おかきのかい」あるいは「かき」であり、密集している貝を掻き取ることが語源と考えられている[18]。
ウィクショナリーにかきの項目があります。 |
植物のカキ(柿)とは同音だが、共通語ではアクセントの位置が異なる。カキ(貝)の場合はカキであり、これは「夏季」「夏期」「下記」「火気」「花器」「火器」「花卉」等の熟語などとも同じ。他方、カキ(柿)はカキである(それぞれ太字にアクセント)。
ウィクショナリーに蠣の項目があります。 |
「蛎」「蠣」だけでカキの意味を表す。しかし実際には「牡」の文字も用いて「牡蛎」「牡蠣」と表記することもある。これは一般に貝は雌雄で色の異なる部分[19]があり、白い物が雄と考えられていたのに対し、カキは全身が白い[20]ことから「牡しかいない貝」と誤解されたことに由来する。
実際にカキの生殖巣においては精巣と卵巣が入り混じっていることもあり、その区別は肉眼では不可能で、顕微鏡を使用しなければならない。
中国語では「牡蛎」「牡蠣」(ムーリー、拼音: mǔ lì[21])も使われるが、専門用語的であり、口語では「蠔」、簡体字で「蚝」(ハオ、拼音: háo)が用いられる。
閩南語や台湾語では「オーアー、台湾語仮名 オヲアア」と別の語が使われる。中国では「蚝仔(蠔仔、拼音: háozǐ)」と表記し、台湾では同音の旁を使った「蚵仔(拼音: hézǐ)」という漢字表記が作成された。
カキの身のような色として、生牡蠣色がある。
ヨーロッパヒラガキ
フランスのベロンでの養殖
岩に付着した貝殻
海辺のコンクリートに付着したカキ(夏)
海辺のコンクリートに付着したカキ(冬)
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