出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/07/31 03:33:16」(JST)
ヒトTリンパ好性ウイルス(ヒトティーリンパこうせいウイルス、Human T-lymphotropic Virus、HTLV)は、レトロウイルスの一種。HTLV-I, II, III, IVがある。
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特にHTLV-Iは最初に発見された疾患を起こすヒトレトロウイルス。類縁ウイルスにsimian T-lymphotropic virus(=STLV)がある。
宿主であるヒトのT細胞内では核内に移行し、RNAからcDNAを逆転写により生成し、cDNAは宿主ゲノムDNAへインテグレーション(integration)する。integration siteは決まってはいない。messenger mRNA(gag mRNA)を生成した後、スプライシング(splicing)を受け、env mRNAとなる。env RNAはさらにスプライシング(secondary splicing)を受けpX mRNAとなる。px mRNAは複製制御を担うp40tax/p27rex 蛋白をコードする。 これらのmRNAはopen reading frameが異なるため、もとのウイルスゲノムRNAが一本であっても、それぞれのmRNAは異なった蛋白をコードする。感染T細胞は必ずしも死滅するわけではない。そのため、T細胞からT細胞へ感染するほかに、感染したT細胞の増殖によるウイルス増殖もみられる。 HTLVはフリーのウイルス粒子による感染は効率が非常に悪いので[1]、ウイルスの感染には、感染細胞と非感染細胞の細胞間接触が必要である。
HTLV-1は腫瘍ウイルスのひとつで、ウイルス保持者(キャリアと呼ぶ)は生涯の何れかの時点でATL(=adult T-cell leukemia, 成人T細胞白血病)を発症する可能性がある。
1977年に、京都大学の内山卓、高月清らによって、日本の九州出身の白血病患者には特有のT細胞性白血病が多いことから成人T細胞性白血病(adult T-cell leukemia; ATL)という疾患概念を提唱した。その後、1981年に、京都大学の日沼頼夫らによってレトロウイルスが分離され「ATL virus (ATLV)」とした。これは1980年にアメリカ国立衛生研究所のロバート・ギャロらが菌状息肉症患者から分離した、ヒトから初めて発見されたレトロウイルスと同一のウイルスとのちに判明し、名称はHuman T-cell leukemia virus type 1 (HTLV-1)と改められた。
このウイルスは、自然には性行為または哺乳により感染することが多いが、出産時、母体内での感染もある。母乳感染は、母親がHTLV-Iキャリアであることが判明した場合、母乳哺育を行わずに人工乳を用いることによって回避できる。人工的には、血液曝露(感染リンパ球を含んだ輸血)により感染するが、血漿成分輸血、血液製剤ではあまり感染しない。これはcell-to-cell infection(細胞から細胞へ感染)のためだといわれている。日本では現在、献血に際して抗体スクリーニングが行われており、輸血での感染のリスクは低い。また発症率は3~5%と低いため、HTLV-1キャリアであっても生涯発症しない場合もある。
文化人類学的に、HTLV-Iの塩基配列を検討することによって、人類の移動を推測する研究もなされている。夫婦・親子と感染するため、ヒト・ゲノムと同様に、一群のヒト集団(血族)の移動を示唆すると考えられる。ティワナクの項に詳しい。 tax遺伝子をT細胞および胸腺細胞で発現させたトランスジェニックマウスではT細胞性白血病 / リンパ腫を発症する。[2]
Adult T-cell leukemia(ATL)ともいう。
詳細は「成人T細胞白血病」を参照
HTLV-I感染を原因とする白血病/悪性リンパ腫であり、日本、特に九州、沖縄に非常に多いという特徴がある。ATLは初回から薬剤耐性を示すことが少なくなく、標準的な治療法が未だに確立していない。
HAM/TSP(HTLV-I associated myelopathy, HTLV-I関連脊髄症/tropical spastic paraparesis, 熱帯性痙性対麻痺)、HAB(HTLV-I associated bronchitis),HAU(HTLV-I associated uveitis)などがある。
アフリカを中心にみられる。
カメルーンで2005年に発見された。
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ヒト免疫不全ウイルス(HIV) - 後天性免疫不全症候群(エイズ)の原因ウイルスであり、HTLV同様白血球(CD4 Tリンパ球)に感染するレトロウイルス
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