出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/06/25 16:16:35」(JST)
内視鏡(ないしきょう、英: Endoscope)は、主に人体内部を観察することを目的とした医療機器である。
本体に光学系を内蔵し、先端を体内に挿入することによって内部の映像を手元で見ることができる。細長い形状をしている一般的なものの他、カプセル型のものもある。また、観察以外に、ある程度の手術や標本採取ができる性能をもつものもある。
同様の製品は医療分野にとどまらず、直接に観察しにくい構造物の内部の観察用に学術・産業あるいは災害時の被災者発見などに用いられている。ただし一般に「内視鏡」というと医療用のものを意味し、ここでは医療用に限って説明する。
内視鏡の歴史は、古代に遡ることができる。しかし、現代において見られる内視鏡の原型となった機器は、19世紀に登場する。
創世時は「硬性鏡」であり、1805年に、ドイツのフィリップ・ボッチーニが「Lichtleiter(英語Light Conductor:導光器)」を開発し、直腸・膣・尿道・耳・口腔内等の観察を行った記録を最初として、1853年にフランスのアントワーヌ・ジャン・デソルモが「endoscope(内視鏡)」を開発し、膀胱や尿道の観察を行った。その後1868年に、ドイツのフライブルク大学内科学教授のアドルフ・クスマウルが「Magenspiegelung(胃鏡)」で、剣を呑む芸をする大道芸人を対象としてではあるが、世界で初めて生体の胃の観察を行った。
1932年に、ドイツのルドルフ・シンドラーによって「Gastroskopie」が開発され、これは初めての「軟性鏡」と言われているが、現在の「軟性鏡」と異なり、多くの鏡を用いた光学系を利用したもので、照明は先端部の豆電球によって行われた。胃の観察が行われ「Lehrbuch und Atlas der Gastroskopie」という本を出版し、欧米では「胃カメラの父」とも称されている。
1950年10月28日に東京大学医学部附属病院分院の副手だった宇治達郎とオリンパス光学工業(現・オリンパス)の杉浦睦夫、深海正治が、きわめて小さなカメラ本体及び光源(超小型電球)を軟性管の先端に取り付けた「ガストロカメラGT-I」を完成させた。同年に3人を発明者として「腹腔内臓器撮影用写真機(ガストロカメラ)」の名で特許が出願され、1954年に発明協会から創立50周年記念全国表彰として朝日新聞発明賞を、1990年に吉川英治文化賞を受賞している。この開発の経緯は、1980年に吉村昭が読売新聞の朝刊に小説「光る壁画」として連載しており、1981年に新潮社より出版された。現在でも上部消化管内視鏡を総称して俗に「胃カメラ」と呼ぶことがある。
だが、宇治は父親が開業する医院を継ぐために大学を去り研究を中断、その後の研究は宇治から研究を引き継いだ東大病院分院の城所仂と今井光之助や、宇治の研究に着目した同じく東大病院本院の田坂定孝と崎田隆夫達により胃カメラの「改良・普及」が行われ、オリンパスからは深海と中坪寿雄がこれに協力した。田坂は1959年に日本胃カメラ学会(現在の日本消化器内視鏡学会)を発足し、今日の「内視鏡医療」の基礎を開拓した。内視鏡の開発において最大の貢献者は宇治か田坂か?これは今でも議論になる。しかし当人達(いずれも故人)は個人的にお互いを尊敬しあっており、このような偉大な開発は「複数の医師の努力の結晶」と考えるべきであろう。
1960年代になると、光ファイバーを利用したファイバースコープが開発され(ハーショヴィッツ他)、医師の目で直接胃の内部を観察することができるようになった。胃ファイバースコープにはカメラが取り付けられるようになり、客観的な検査結果として他の医師にも供覧できるようになった。
1970年代にはスチルカメラ付きファイバースコープが広く用いられるようになった。電子機器の発達に伴い、スチルカメラにビデオカメラを取り付けた機種や、CCDセンサを取り付けた電子内視鏡(ビデオスコープ)が登場し現在多くの病院で使用されている内視鏡の原型が誕生となった。ビデオ装置を用いると、複数の医師やコメディカルスタッフが同時に病変を確認することができ、診断と治療に大いに役立った。
その後は、超音波センサを取り付けた超音波内視鏡が登場したり、センシング技術の向上だけでなく、軟性管部の改良(口径の縮小、材質の改善)、内視鏡的処置を行うためのサブルーメン(チャネルと呼ぶ)の追加など、内視鏡を直接治療目的で応用するための改良も行われた。
また、画像精度・画質は映像機器の発達と共に大きく発展し、ハイビジョン撮影や、拡大内視鏡による拡大観察が可能となってきた。また、内視鏡の細径化も進んでいき、経鼻内視鏡等も登場してきた。
2000年代になると、イスラエルのギブン・イメージングや、日本のオリンパスがカプセル型の内視鏡の開発を進めた。2007年4月、日本においてもカプセル内視鏡を用いた画像診断システムが承認・実用化された。
一般に以下に大別される。直接接眼レンズをのぞいて、あるいはビデオカメラを接続してモニターに映して観察する。光源は体外の制御装置側にあり、光ファイバーで光を導いて先端部から照射するものが一般的である。LED照明を内視鏡先端に内蔵したタイプも実用化されつつある。
一般に以下の種類が製品化され存在する。
一般に「喉頭ファイバー」と言われている。一般に耳鼻咽喉科にて鼻腔、咽頭、喉頭、食道を観察する。
気管挿管の際に用いられる喉頭鏡(Laryngoscope)とは異なる。
一般に呼吸器内科にて用いられ、気管および気管支を観察する。
一般に消化器内科にて用いられ、食道、胃、十二指腸までの上部消化管を観察する。軟性鏡が使用される。
胆管・膵管を造影する検査のERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)に特化した内視鏡。軟性鏡が使用される。胆管や膵管の造影や、処置に使用される。後方斜視鏡のみが使用される。特殊な内視鏡としては、親子ファイバーという製品も存在し、それを使用することで胆管内部の観察まで可能になる。しかし、効果的な洗浄ができない可能性があり、多剤耐性菌の伝播リスクが生じるとして米食品医薬品局(FDA)は、2015年2月19に日安全性通信(Safety Communication)を発表している[1][2]
内視鏡先端にバルーンが設置されているタイプである。種類としては「ダブルバルーン内視鏡」と「シングルバルーン内視鏡」が存在する。一般に消化器内科にて小腸を観察する。軟性鏡が使用される。
下部内視鏡とも呼ばれ、一般に消化器内科にて直腸~結腸を観察する。軟性鏡が使用される。
胸腔内を観察する。肋骨の間を約1cm切開し内視鏡を挿入する。胸腔鏡を用いた肺や縦隔の手術(VATS)は切開創が小さく体への負担が比較的軽いとされる。硬性鏡が使用される。
腹腔内を観察する。硬性鏡が使用される。多くの場合はへその横を1~2cmほど切開し内視鏡を挿入する。腹腔内はスペースがないため、気腹(腹腔内にガスを送り込んで腹を膨らませること)が行われる。
尿道および膀胱の内腔を観察する。硬性鏡と軟性鏡があり、目的・性別などにより使用する内視鏡を選択する。尿道口から挿入する。前立腺肥大症や膀胱腫瘍では内視鏡手術が広く普及している(TUR-P、TUR-Bt)。
一般に経皮的と経口的があり、胆管の内腔を観察する。胆道病変に対し行われることがある。
関節の観察・処置を行う。
関節鏡とは異なり、関節腔内へ進入するのではなく、皮下組織や筋肉といった間質を分け入る。検査で用いられることはなく、脊柱管近傍の疾患である椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の治療を行う[3]。
冠動脈の観察・処置を行う。冠動脈内病変に対し行われる。
脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア等に用いられる。
一般的に内視鏡を用いた手技・治療は大きく分けて以下の2種類に大別される。
主に内科学領域において行われる内視鏡を用いた治療全般を指して使われることが多い。主に以下の治療がある。
主に外科学領域において行われる内視鏡を用いた手術全般を指して使われることが多い。 内視鏡手術は、手術創が従来の開腹・開胸手術等に比べ小さく、術後の臥床期間を短縮することができ、近年多くの手術で普及している。一般に以下の術式がある。
内視鏡手術は開腹手術ではないと言われることがある。また、一般生命保険会社の解釈と旧簡易保険(現・かんぽ生命保険)の解釈でも違いがある場合が存在する。
内科学・外科学相方の医師によって内視鏡を用いたコラボレーション治療。主に以下の治療がある。
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