- 英
- amnesia
- 関
- 記憶消失、記憶喪失、健忘症、健忘性
概念
- 記憶障害の1つである。
- 出来事を過去にさかのぼって思い出せない場合や、新たな出来事を覚えることができなくなる場合を指して言う。
- 最も良くある原因としては、頭部外傷、てんかん、片頭痛
分類
鑑別疾患
- V vascular:脳動脈硬化症、脳出血、脳血栓症、脳塞栓症、片頭痛。一過性脳虚血発作。
- I inflammatory:髄膜炎、脳膿瘍、マラリア、脳寄生虫、神経梅毒。発熱性疾患(発熱と健忘を来しうる)
- N neoplasm:原発性脳腫瘍や転移性脳腫瘍は一時的な記憶喪失を起こしうる。
- D deficiency:ウェルニッケ脳症、ペラグラ、悪性貧血。
- I intoxication:LSD、アルコール、臭素化合物、オピオイド。尿毒症、低酸素血症、および肝不全も健忘を来しうる。
- C convulsive:側頭葉てんかん
- A autoimmune:ループス脳炎など
- T trauma:脳挫傷、硬膜外血腫、硬膜下血腫
- E endocrine:低血糖、糖尿病性アシドーシス、副甲状腺機能低下症、低カルシウム血症はてんかんや一過性健忘を来しうる。emotional:ヒステリー、うつ病、統合失調症。仮病。
WordNet
- partial or total loss of memory; "he has a total blackout for events of the evening" (同)memory_loss, blackout
PrepTutorEJDIC
- 記憶喪失症,健忘症
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/03/23 09:30:18」(JST)
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健忘 |
分類及び外部参照情報 |
ICD-10 |
F04, R41.3 |
ICD-9 |
294.0, 780.9, 780.93 |
MedlinePlus |
003257 |
MeSH |
D000647 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 |
テンプレートを表示 |
健忘(けんぼう、Amnesia)は記憶障害のうち、特に宣言的記憶の障害された状態を指す。宣言的記憶(陳述記憶)とは記憶のうち言語で表現できる種類のもの、エピソード記憶や意味記憶のことである。
一般的に言う「もの忘れ」から「記憶喪失」まで含んだ概念である。 なお、健忘の「健」は、甚だの意である。健闘の「健」と同じ意味。
目次
- 1 分類
- 1.1 原因による分類
- 1.2 時間的関係による分類
- 1.3 思い出せない記憶の内容による分類
- 2 疾患と診療
- 2.1 全生活史健忘(Generalized Amnesia)
- 2.2 一過性全健忘(TGA:Transient Global Amnesia)
- 3 健忘を扱った作品
- 4 記憶喪失者の法益の保護
- 5 関連項目
- 6 外部リンク
分類
健忘は様々な病態および症候の総称であり、いくつかの観点から分類ができる。
原因による分類
- 心因性
- 心的外傷やストレスにさらされたことでおこる健忘。精神病理学的には解離の一種に分類され、解離性遁走や譫妄と合併することも多い。脳に器質的な障害はみられない。
- 外傷性
- 頭部外傷をきっかけとしたもの。
- 薬剤性
- 精神作用のある薬剤の使用によるもの。飲酒によるものが体験されることが多く、睡眠導入剤・抗不安薬によるものもよく知られる。
- 症候性
- 全身疾患の症状としての健忘。コルサコフ症候群、正常圧水頭症などでは代表的な症状である。
- 認知症(痴呆)
- 認知症で健忘は必発であり、初期からみられる。また、神経の変性疾患で健忘そのものが症状である疾患もこれに分類される。
時間的関係による分類
- 前向性健忘
- 受傷などをした時点以降の記憶が抜け落ちる状態。記憶障害回復後の出来事を記憶できない症状。記銘、すなわち新しい物事を覚えることができなくなってしまう状態。
- 逆向性健忘
- 受傷・発症より昔の記憶が抜け落ちた状態。ある地点から過去、昔の記憶がなくなってしまう症状。記憶を呼び出す想起の障害つまりある地点から遡っての記憶が引き出せない状態のこと。
- よくドラマなどで使われる「ここはどこ?私は誰?」はこの逆向性健忘と解釈できる。
- その他
- 薬剤性のように、薬剤が有効である間の記憶がない場合は、睡眠導入剤であれば「中途覚醒時健忘」などと表現することがある。
思い出せない記憶の内容による分類
- 全健忘
- 健忘の期間内の記憶すべてが思い出せない状態。
- 部分健忘
- 期間内の記憶のうち、思い出せるものと思い出せないものが混在した状態。
疾患と診療
健忘を主症状とし、疾患概念の確立されたものには以下のようなものがある。
全生活史健忘(Generalized Amnesia)
発症以前の出生以来すべての自分に関する記憶が思い出せない(逆向性・全健忘)状態。自分の名前さえもわからず、「ここはどこ?私は誰?」という一般的に記憶喪失と呼ばれる状態である。「記憶喪失」と同視されている。障害されるのは主に自分に関する記憶であり、社会的なエピソードは覚えていることもある。
多くは心因性。まれに、頭部外傷をきっかけとして発症することがある。発症後、記憶は次第に戻ってくることが多い。治療としては、催眠療法で想起を促すことなどが行われる。
一過性全健忘(TGA:Transient Global Amnesia)
健康だった人が、突然前向性健忘をおこし、新しいことをまったく覚えられなくなるもの。自分の周囲の状況を把握できなくなるため本人は混乱し、同じ質問を繰り返す。
通常24時間以内に回復し、積極的な治療は不要なことが多い。ストレスの多い人に起こりやすく、側頭葉の血流低下が関与しているとみられている。
健忘を扱った作品
健忘はフィクションの設定としても多く用いられている。
「Category:健忘を題材とした作品」を参照
記憶喪失者の法益の保護
記憶喪失者が保護された場合、警察が身元を調べて家族の元へ返すのが普通であるが、ごくまれに記憶喪失者の身元が全く判明しない場合がある。このような場合には取りあえずは生活保護を受けるなどして治療を行うが、長期間に渡って記憶が回復せず、身元も不明な場合には家庭裁判所に就籍許可申立を行い、仮名での戸籍を作ることができる。なお、本来は記憶喪失者を想定した制度ではなく捨て子や迷子などの身元不明者のための制度である。
申し立てが認められれば戸籍謄本と住民票が作成できるので、運転免許試験を受けて運転免許証の交付を受けることもできる。また、実印登録や不動産の登記や契約なども行うことができるので自動車や土地などを購入することも可能となる。
記憶喪失の状況如何によらず、身元が判明した場合には家庭裁判所に申告して仮の戸籍を抹消しなければならない。免許証などの交付を受けている場合はその旨を申告して再交付を受けなければならない。
- 根拠となる法律
- 判例
- 水戸家庭裁判所昭和63年10月7日審判・昭和62年(家)第687号
- 詳細は就籍許可申立事件を参照
関連項目
- 記憶
- 意識障害
- 忘却(もの忘れ)
- 解離性障害
- 解離性同一性障害
- 海馬
- 幼児期健忘
外部リンク
- (百科事典)「Amnesia」 - スカラーペディアにある「健忘」についての項目。(英語)
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 健忘を残したてんかん性病態下で傷害事件を起こした側頭葉てんかんの1例 (特集 医療観察法とその周辺 : 症例と取り組み)
- 症例報告 統合失調症様症状を示した右視床出血の1症例
- 一過性全健忘の高分解能拡散強調イメージング (特集 脳・頭頸部update 2014)
Related Links
- ようこそ!! ナオルコム へ シッカリ食べて ・・・ バリバリ働き ・・・ グッスリ休んで ... 健忘・・→自分がしたことを忘れる症状 (健忘症) 「もの忘れ」:記憶障害の1つ。 1.逆行健忘retrograde Amnesie
- 健忘(けんぼう)は記憶障害のうち、特に宣言的記憶の障害された状態を指す。宣言的記憶(陳述記憶)とは記憶のうち言語で表現できる種類のもの、エピソード記憶や意味記憶のことである。 一般的に言う「もの忘れ」から「記憶喪失 ...
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★リンクテーブル★
[★]
- 次の文を読み、10~12の問いに答えよ。
- 43歳の女性。複視とふらつきとを主訴に来院した。
- 現病歴 : 20日前から下痢を繰り返していた。10日前から複視が出現し、5日前から歩行時にふらつくようになった。
- 生活歴 : 食事は不規則で、約5合の日本酒を毎日10年間飲用していた。
- 現症 : 身長155cm、体重54kg。体温36.5℃。脈拍72/分、整。血圧122/74mmHg。ぼんやりしており、見当識障害がある。両眼の外転制限と全方向性の注視眼振とを認める。歩行は失調性である。両下肢遠位に軽度の筋力低下と手袋靴下型の感覚低下とがある。四肢腱反射は消失しているが、病的反射はみられない。
- 検査所見 : 血液所見:赤沈15mm/1時間、赤血球350万、Hb 9.7g/dl、Ht38%、白血球8,600、血小板13万。血清生化学所見:空腹時血糖96mg/dl、総蛋白6.4g/dl、蛋自分画(アルブミン55.7%、α1-グロブリン3.2%、α2-グロブリン7.1%、β-グロブリン10.6%、γ-グロブリン23.3%)、尿素窒素7mg/dl、クレアチニン0.4mg/dl、アンモニア45μg/dl(基準18~48)、総コレステロール140 mg/dl、総ビリルビン1.5 mg/dl、GOT96単位(基準40以下)、GPT82単位(基準35以下)、CK28単位(基準10~40)、Na138mEq/l、K3.5mEq/l、Cl 100mEq/l、脳脊髄液所見:細胞数3/mm3(基準0~2)、蛋白60mg/dl(基準15~45)、糖66mg/dl(基準50~75)。
- この疾患の後遺症としてよくみられるのはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [095H011]←[国試_095]→[095H013]
[★]
- 次の文を読み、 64~ 66の問いに答えよ。
- 65歳の男性。頭部挫創を主訴に来院した。
- 現病歴:飲酒後、家の階段の下で倒れているところを帰宅した家族に発見された。頭部に挫創を認めたため家族に付き添われて受診した。
- 既往歴:心房細動のためワルファリン内服中。
- 生活歴:定年退職後無職。
- 家族歴:特記すべきことはない。
- 現症:アルコール臭があるが意識は清明。ただし、本人は受傷時のことは覚えていない。脈拍 80/分、不整。血圧 150/90 mmHg。呼吸数 24/分。頭頂部やや後方に 3 cmの挫創があり出血を認めた。身体の他の部位に創傷は認められなかった。検査所見:頭部 CTでは頭蓋骨骨折は認められず、後頭蓋窩にごくわずかな硬膜下血腫が認められた。
- この患者における頭蓋内病変の重症化を予測する上で、最も注意すべきなのはどれか。
- a 健忘
- b 飲酒
- c 年齢
- d 創傷部位
- e ワルファリン内服
[正答]
※国試ナビ4※ [108G063]←[国試_108]→[108G065]
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [107A001]←[国試_107]→[107A003]
[★]
- 解離性(転換性)障害の症状として誤っているのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [099E006]←[国試_099]→[099E008]
[★]
- a. (1)(2)(3)
- b. (1)(2)(5)
- c. (1)(4)(5)
- d. (2)(3)(4)
- e. (3)(4)(5)
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [096H007]←[国試_096]→[096H009]
[★]
- 英
- dissociation、dissection、detachment、unbinding、maceration、dissociate
- 関
- 解体、解剖、精査、切開、脱離、剥離、分離、解離性障害、郭清、浸軟、結合解除、ダイセクション、解離反応、遁走
精神医学
- PSY.53
- 自我の同一性の障害により出現。
- 不安にさらされて圧倒されると心理的防衛機制が働き、適応不能に陥られないようにする。
- 心因性の健忘、遁走、ガンザー症候群、小児症、多重人格などで見られる。
- KPS.222
- 情動的苦悩を避けるために、自分の人格・独自性を、一時的かつ徹底的に一部変更すること。
- 遁走、ヒステリー転換反応はよく見られる解離の現象。
- 対抗恐怖的振る舞い、解離性同一性障害、薬物使用による高揚感、宗教的歓喜などでも見られる
参考
- http://www2.wind.ne.jp/Akagi-kohgen-HP/dissociation_example.htm
- http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A7%A3%E9%9B%A2_(%E5%BF%83%E7%90%86%E5%AD%A6)
[★]
- 英
- Korsakoff syndrome, Korsakov syndrome?
- 同
- Korsakoff症候群
- コルサコフ精神病 Korsakoff精神病 Korsakoff's psychosis Korsakov psychosis。コルサコフ症状群
- 健忘作話症候群 amnesia-confabulatory syndrome、健忘症状群 amnestic syndrome
- 関
概念
頭文字をとって Dr.C...
病因
コルサコフ症候群
- 英語なので、聞き取れなければ作話かどうかわかりません。
<youtube>http://www.youtube.com/watch?v=wDcyBXJAZNM</youtube>
国試
[★]
- 英
- disorientation
- 同
- (国試)見当識障害
- 関
- 見当識。見当識障害、錯乱状態
定義
- 現在の自分および自分が置かれている環境、すなわち日時や場所、周囲の状況や人物などを正しく認識する能力を見当識と呼び、その低下している状態をいう。
要素
- when 日時:今日は何月何日ですか?
- where 場所:ここはどこで、何をするところですか?
- who 人物:となりにいる方はどなたですか?
- why 状況:今日はなぜここの病院に来られたのですか?
見当識を保つ要素
見当識障害をきたす疾患
[★]
- 英
- retrograde amnesia
- 同?
- 逆行健忘、逆行性健忘、逆向健忘
- 関
- 健忘、前向性健忘
[show details]
- 障害を受けた時点以前の記憶を思い出せなくなること。
- 時間軸としては-方向、過去方向なので、逆向性である。
[★]
- 英
- anterograde amnesia
- 同?
- 前向健忘、順向性健忘
- 関
- 逆向性健忘、健忘
[show details]
- 障害を受けた時点以降の記憶を思い出せなくなること
- 時間軸としては+方向、未来方向なので、前向性、順行性である。
[★]
- 英
- alcoholic amnestic syndrome
- 同
- アルコール性コルサコフ症候群 alcoholic Korsakov syndrome
[★]
- 英
- axial amnesia
- 同
- 健忘症候群 amnestic syndrome、コルサコフ健忘 Korsakov amnesia
[★]
- 英
- alcohol amnestic disorder
- 関
- アルコール誘発持続性健忘症
[★]
- 英
- temporary amnesia
- 関
- 一過性健忘症
[★]
コルサコフ症候群。amnestic syndrome