グルコース6-リン酸
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/04/21 07:49:45」(JST)
[Wiki ja表示]
グルコース-6-リン酸 |
|
|
IUPAC名
D-Glucopyranose 6-phosphate
|
|
識別情報 |
CAS登録番号 |
56-73-5 |
PubChem |
208 |
ChemSpider |
17216117 |
日化辞番号 |
J40.066A |
KEGG |
C00092 |
MeSH |
Glucose-6-phosphate |
ChEBI |
CHEBI:4170 |
- O[C@H]1[C@H](O)[C@@H](COP(O)(O)=O)OC(O)[C@@H]1O
|
- InChI=1S/C6H13O9P/c7-3-2(1-14-16(11,12)13)15-6(10)5(9)4(3)8/h2-10H,1H2,(H2,11,12,13)/t2-,3-,4+,5-,6?/m1/s1
Key: NBSCHQHZLSJFNQ-GASJEMHNSA-N
InChI=1/C6H13O9P/c7-3-2(1-14-16(11,12)13)15-6(10)5(9)4(3)8/h2-10H,1H2,(H2,11,12,13)/t2-,3-,4+,5-,6u/m1/s1
Key: NBSCHQHZLSJFNQ-SEZHTIIRBF
|
特性 |
化学式 |
C6H13O9P |
モル質量 |
260.136 |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
グルコース-6-リン酸(グルコース-6-リンさん、Glucose-6-phosphate、G6P)とは、6位の炭素がリン酸化したグルコース分子のことである。ロビソンエステルとも言う。細胞中には多量に存在し、細胞に取り込まれたグルコースのほとんどがリン酸化を受けてG6Pになる。
細胞化学の中心的な化合物の一つであるため、G6Pはその後様々な運命をたどる。その始めに、まずは次のどちらかの代謝系に入る。
またこの他に、G6Pは直接グリコーゲンやデンプンなどの貯蔵多糖に変換されることもある。多細胞動物ではグリコーゲンとして肝臓や筋肉に蓄えられ、その他の多くの生物ではデンプンかグリコーゲン顆粒として細胞間組織に蓄えられる。
目次
- 1 G6Pの生産
- 2 運命1:ペントースリン酸経路
- 3 運命2:解糖系
- 4 運命3:グリコーゲンとして貯蔵
- 5 運命4:脱リン酸化され血液中へ放出
- 6 参考文献
- 7 関連項目
G6Pの生産
グルコースから
細胞中ではG6Pはグルコースの6位の炭素をリン酸化することにより作られる。これは多くの生物ではヘキソキナーゼの、高等動物では肝臓中のグルコキナーゼの酵素機能によって触媒される。この反応では1分子のATPが消費される。
グルコースが細胞に取り込まれると直ちにリン酸化が起こるのは、これが拡散してしまうのを防ぐためである。リン酸化により電荷が導入されるので、G6Pは容易に細胞膜を通過することができない。
グリコーゲンから
G6Pは、グリコーゲンの初期分解産物であるグルコース-1-リン酸から、グルコホスホムターゼでリン酸基を転移させることによっても作られる。
運命1:ペントースリン酸経路
NADP+ : NADPHの比率が上昇すると、体はNADPHを増産しようとする。この過程でG6Pはデヒドロゲナーゼにより脱水素化される。この可逆過程はペントースリン酸経路の最初の反応であり、この反応によりNADPHとリブロース-5-リン酸が作られ、多くの分子の合成に供される。またDNAの材料であるヌクレオチドが必要になった時にも、G6Pはペントースリン酸経路に回される。
運命2:解糖系
エネルギーや炭素骨格が必要となった場合には、G6Pは解糖系に入れられる。G6Pはまずグルコースリン酸イソメラーゼにより、フルクトース-6-リン酸に変換される。
G6Pから作られたフルクトース-6-リン酸はその後もう1つのリン酸基が付加され、フルクトース-1,6-ビスリン酸になる。2つ目のリン酸基の付加反応は不可逆反応である。そのためこの反応ではG6Pが不可逆的に分解され、解糖系を通じてATP生産のためのエネルギーを作り出す。
運命3:グリコーゲンとして貯蔵
血中糖濃度が高くなると、余分なグルコースは貯蔵されるようになる。グルコースから生成されたG6Pは、引き続いてホスホグルコースムターゼによりG1Pに変換される。G1Pはウリジン三リン酸(UTP)と結合してリン酸基が外れ、UDP-グルコースとなる。この反応は、この反応の過程で生成されるピロリン酸の加水分解に伴って進む。こうして活性化されたUDP-グルコースは、グリコーゲンシンターゼによってグリコーゲン分子の一部となる。これは、グルコース1分子を貯蔵するのに1分子のATPしか消費しないという意味で、非常に効率の良い貯蔵システムである。グリコーゲン合成は、高いストレスがかかるか血中糖濃度が低下するかして、キナーゼによりリン酸化されると停止する。
エネルギーが必要になると、グリコーゲンホスホリラーゼがグリコーゲン鎖から必要なだけ切り出すことができる。切り出された分子はG1Pであるが、ホスホグルコムターゼによってG6Pに変換され、G6Pホスファターゼによってリン酸基が外されてグルコースとなる。グルコースは細胞膜を通り抜け、血流に乗って必要な場所まで運ばれる。
運命4:脱リン酸化され血液中へ放出
肝臓はグルコース-6-ホスファターゼを持ち、解糖系や糖新生でできたグルコース-6-リン酸のリン酸基を外すことができる。こうしてできたグルコースは血液中に放出され、他の細胞に運ばれる。
参考文献
- Berg, Jeremy M.; Tymoczko, Stryer (2002). Biochemistry (5th ed.). New York: W.H. Freeman and Company. ISBN 0-7167-3051-0. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/bv.fcgi?call=bv.View..ShowTOC&rid=stryer.TOC&depth=10.
関連項目
- グルコース
- グリコーゲン
- グルコース-1-リン酸
- ペントースリン酸経路
- ソラマメ中毒
解糖系 |
|
グルコース - グルコース-6-リン酸 - フルクトース-6-リン酸 - フルクトース-1,6-ビスリン酸 - ジヒドロキシアセトンリン酸 - グリセルアルデヒド-3-リン酸 - 1,3-ビスホスホグリセリン酸 - 3-ホスホグリセリン酸 - 2-ホスホグリセリン酸 - ホスホエノールピルビン酸 - ピルビン酸 - アセチルCoA
|
|
クエン酸回路→
|
|
ペントースリン酸経路 |
|
物質 |
グルコース-6-リン酸 - 6-ホスホグルコノ-1,5-ラクトン - 6-ホスホグルコン酸 - リブロース-5-リン酸 - キシルロース-5-リン酸 - リボース-5-リン酸 - グリセルアルデヒド-3-リン酸 - セドヘプツロース-7-リン酸 - フルクトース-6-リン酸 - エリトロース-4-リン酸 - フルクトース-6-リン酸
|
|
酵素 |
グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ - 6-ホスホグルコノラクトナーゼ - ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ (脱炭酸) - リボース-5-リン酸イソメラーゼ - リブロース-5-リン酸-3-エピメラーゼ - トランスケトラーゼ - トランスアルドラーゼ
|
|
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- 東南アジア系の小児の診療 (特集 グローバリゼーションの中の小児診療) -- (外国人の小児診療)
- 智歯周囲炎から溶血発作を生じたG6PD異常症の1例
- 五島 秀樹,清水 武,川原 理絵,傳田 祐也,野池 淳一,横林 敏夫
- 日本口腔外科学会雑誌 58(6), 376-380, 2012-06-20
- NAID 10031144909
- 智歯周囲炎から溶血発作を生じたG6PD異常症の1例
Related Links
- 栄養・生化学辞典 - グルコース-6-リン酸脱水素酵素の用語解説 - [EC 1.1.1.49].グルコースを酸化することから始まる,ペントースリン酸回路の酵素で,NADPを還元することから,脂肪酸合成のためのNADPHの供給源となる.そのため ...
- MEMO グルコース-6-リン酸(G6P)とは グルコースはグルコース-6-リン酸(glucose-6-phosphate:G6P)に代謝され,細胞内に取り込まれます。G6Pは細胞内で主として解糖系,グリコーゲン合成の原料,またはNADPH生合成の原料 ...
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- glucose 6-phosphate, G6P, G-6-P
- 同
- グルコース-6-リン酸 glucose-6-phosphate
- 関
- グルコース1-リン酸、グルコース、解糖系、糖新生
グルコース6-リン酸の運命(G6P) (FB.451)
- グルコース
- グリコーゲン
- リボース5-リン酸(R5P)
- アセチルCoA
解糖
- 酵素
グリコーゲン分解
糖新生
臨床関連
[★]
- 英
- glucose-6-phosphate dehydrogenase deficiency
- 同
- G6PD欠損症 G6PD deficiency、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、ブドウ糖-6-リン酸脱水素酵素欠損症、glucose-6-phosphate dehydrogenase欠乏症、G6PD欠乏症
- 関
- ペントースリン酸経路、グルコース6-リン酸脱水素酵素 G6PD、血管内溶血、溶血性貧血、グルコース6-リン酸脱水素酵素
- G6PD is a rate-limiting enzyme in HMP shunt (which yields NADPH). NADPH is necessary to keep glutathione reduced, which in turn detoxifies free radicals and peroxides. ↓ NADPH in RBCs leads to hemolytic anemia due to poor RBC defense against oxidizing agents (fava beans, sulfonamides, primaquine) and antituberculosis drugs.
- People of Mediterranean descent can also have G6PD deficiency, but to a much greater degree. Therefore, hemolytic episodes inthe population are more severe(and can be fatal) as compared with those of the African American type, which are usually mild and felf-limited.
- G6PD deficiency is more prevalent among blacks.
- Heinz bodies..altered Hemoglobin precipitates within RBCs.
- Increased malarial resistance.
概念
病因
疫学
遺伝形式
病変形成&病理
症状
診断
検査
治療
予後
予防
[★]
グルコース6-リン酸脱水素酵素
- 英
- glucose-6-phosphate dehydrogenase
- 同
- ヘキソース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ hexose-6-phosphate dehydrogenase G6PD
[★]
- 英
- glucose-6-phosphate isomerase
- 関
- グルコース-6-リン酸イソメラーゼ
[★]
グルコース6-リン酸脱水素酵素
- 同
- G-6-PD
[★]
- 英
- glucose-6-phosphate translocase
[★]
- 英
- glucose, grape sugar, dextrose
- 商
- ブドウ糖注、グルノン
- 関
- GLUT、血中グルコース濃度、血糖値、GLUT
- グルコース1-リン酸、グルコース6-リン酸
分子量
- 血糖 100 mg/dl -> 1000 mg/l ; 1000 mg/l / 180 g/mol ≒5.6 mmol/l = 5.6 mM
尿細管におけるグルコースの再吸収 SP.801
- 近位尿細管における刷子縁で行われる。
- 管腔側に糖/Na+共輸送体 SGLT(SGLT1とSGLT2)が存在し、Naとグルコースを共輸送する
- SGLT2がグルコースの取り込みに貢献している(低親和性、高用量の輸送担体)
- 側底膜にはGLUT2が存在し、血液循環にグルコースを輸送する。
輸液で用いられるグルコース
- 末梢静脈:5%グルコース。5g/100g -> 50g/1L -> 50/180 Eq/L -> 277.78 mEq/L
臨床関連
[★]
- 英
- phosphorus P
- 関
- serum phosphorus level
分子量
- 30.973762 u (wikipedia)
- 単体で化合物としてはP4、淡黄色を帯びた半透明の固体、所謂黄リンで毒性が高い。分子量124.08。
基準値
- 血清中のリンおよびリン化合物(リン酸イオンなどとして存在)を無機リン(P)として定量した値。
- (serum)phosphorus, inorganic 2.5–4.3 mg/dL(HIM.Appendix)
- 2.5-4.5 mg/dL (QB)
代謝
- リンは経口的に摂取され、小腸から吸収され、細胞内に取り込まれる。
- 骨形成とともに骨に取り込まれる。
- 腎より排泄される。
尿細管での分泌・再吸収
- 排泄:10%
尿細管における再吸収の調節要素
臨床検査
- 無機リンとして定量される。
基準範囲
血清
- 小児:4-7mg/dL
- 閉経後女性は一般集団より0.3mg/dL高値となる
尿
測定値に影響を与える要因
臨床関連
参考
- http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%B3
[★]
- 英
- acid
- 関
- 塩基
ブランステッド-ローリーの定義
ルイスの定義
[★]
- 英
- phosphoric acid
- 関
- PO4
- pKa1=2.12
- pKa2=7.21
- pKa3=12.67
[★]
- 英
- course
- 関
- 過程、課程、経過