出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/05/13 22:28:35」(JST)
糖尿病の治療では糖尿病患者における血糖の調節を行う治療行為について述べる。
血糖コントロールの目標は糖尿病性昏睡や低血糖を起こすことなく、糖尿病慢性期合併症を予防することである。
初期糖尿病の治療で重要なのが、食事療法と運動療法である。高血糖ストレスによるインスリン分泌細胞の疲弊、死滅が進行する前に開始することが望ましい。耐糖能異常の段階から生活習慣の修正や体脂肪減量を行うことが糖尿病患者の発生を防ぐために推奨されている。体脂肪の中でも内臓脂肪の減量が重要とされ、インスリン抵抗性を解除し、高血糖状態からインスリン分泌低下の悪循環を和らげることができる。これは糖尿病の進行がどの段階でもいえることである。糖尿病の診断がつく前、いわゆる境界型糖尿病の段階から行うべき治療である。特にIGTといわれる境界型糖尿病では大血管障害のリスクが高いため積極的な治療が必要と考えられており、ビグアナイド薬やαグルコシダーゼ阻害剤(以下αGI薬と表記)といった経口血糖降下薬も生活習慣の改善には劣るが効果があるといわれている。これらの内服は食事、運動の改善が不可能な患者にも一定の効果はあるもの糖尿病の進行を必ずしもくいとめられるわけではなく、治療方法もガイドライン化されていない。
糖尿病の治療は食事、運動といったインスリン抵抗性を改善させる治療からインスリンといった血糖を下げるものなど様々なものがあるが、合併症予防という観点では治療効果判定は血糖コントロールで行う場合が多い。
糖尿病のコントロール状態は食前または食後血糖値、またHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)を測定することで評価する。HbA1cは、ヘモグロビンに糖が付着したもので、過去1~2ヶ月の平均的な血糖値を反映する。一方、グリコアルブミンは過去数週間の血糖変化と、食後血糖を反映する検査値である。
実際の治療目標は、血糖値に関して理想的には食前110mg/dL以下(近年、アメリカでは100mg/dL以下を推奨している)、食後140mg/dL未満を目標とする。HbA1cに関しては日本糖尿病学会によると、5.8%以下は優、5.8-6.5%は良、6.5-8.0%は可(6.5-7.0%は不十分、7.0-8.0%は不良)、8.0%以上は不可と評価される。臨床研究によると、HbA1cが6.5%をこえたり、食後血糖値が180mg/dLを越えると、その後の合併症の危険度が増大することがわかっている。[1]また、細小血管合併症においては血糖コントロール閾値は認められていない。[2]
糖尿病患者はインスリンそのものの分泌のタイミングが健康な人よりも遅いことが多いか、分泌されても感受性が低下しているため、食前よりも食後の高血糖を起こしやすく、なおかつ血糖降下薬を用いてもコントロールが難しい(一日の血糖平均値は低下する)。食後数時間のみが高血糖状態であることを「隠れ糖尿病」と表現することもある。一日のうち数時間のみが高血糖でも、長い年月にわたりその状態が継続すると、通常の糖尿病と同様に合併症発生のリスクにさらされる。このようにとりわけ食後の血糖値をいかにして正常範囲に保つかが、今後の糖尿病の合併症予防の課題といえる。
経口薬の開始はインスリンの適応から外れていることが前提である。そのためインスリンの適応から示す。またどうような治療をした場合も管理目標は日本糖尿病学会のガイドライン[3]ではHbA1c <6.5%、食後2時間の血糖値<180mg/dLとなっている。国際糖尿病連合の「食後血糖値の管理に関するガイドライン」[4]では、食後2時間で血糖値<140mg/dLとなるよう謳っている。
HbA1cが極めて高い場合、HbA1c 8.0%までは速やかに下げても良いが、それ以後はゆっくりと血糖値を下げて行く必要がある。急速で厳格な血糖値の低下によって逆に低血糖の発生や網膜症の進展・増悪をきたす場合があるためである。高血圧は高血糖に次ぐ網膜症のリスク要因である[5]。
糖尿病治療の基本はエネルギーの制限である。日常の生活強度に合った食事をする必要がある。目安としては、デスクワークの多い成人男性では、1500kcal~1600kcal(約20単位)ということになる。また近年エネルギー制限だけではなく糖質の制限といった食事療法もおこなわれている。
食後血糖値を上昇させる唯一の栄養素が糖質であり、超低糖質食の実践者が2型糖尿病でインスリン分泌能が低下していたにもかかわらずその過半数の人の空腹時血糖値や HbA1c は正常値を維持しており、また、その他の数値も正常であり、超低糖質食の効果と長期安全性についても確認できたとする報告がある[6]。
医師の指導に従って、自分に適した運動メニューを作り実行する。いきなり激しい運動をするのは避け、徐々に運動を習慣づけるのがよい。筋への糖取り込み率を高め、インスリン抵抗性を改善する働きもある。
インスリン療法としては強化インスリン療法とその他の治療法に分けられる。インスリン療法の基本は健常者にみられる血中インスリンの変動パターンをインスリン注射によって模倣することである。健常者のインスリン分泌は基礎インスリン分泌と、食事後のブドウ糖やアミノ酸刺激による追加インスリン分泌からなっている。これをもっともよく再現できるのは強化インスリン療法であるが、手技が煩雑であるのがネックである。今後の糖尿病管理も強化インスリン療法を行うのなら、患者教育なども行い導入する価値はあるが、手術や処置で一時的に経口血糖降下薬を用いられないという場合、生活スタイルから強化インスリン療法を行うのが不可能な場合はその他の療法が選択される。
強化インスリン療法とは、インスリンの頻回注射。または持続皮下インスリン注入(CSII)に血糖自己測定(SMBG)を併用し、医師の指示に従い、患者自身がインスリン注射量を決められた範囲で調節しながら、良好な血糖コントロールを目指す方法である。基本的には食事をしている患者では、各食前、就寝前の一日四回血糖を測定し、各食前に超速効型インスリン、就寝前に持効型インスリンの一日四回を皮下注にて始める。オーソドックスなやり方としては各回3~4単位程度、一日12~16単位から始める。量を調節する場合は2単位程度までの変更にとどめた方が安全である。
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基礎インスリン分泌が保たれているような患者では、速効型(または超速効型)インスリンの毎食前3回注射など強化インスリン療法に準じた注射方法がある。また頻回のインスリン注射が困難な患者や強化インスリン療法が適応とならない患者では混合型または中間型の一日1回~2回投与という方法もある。具体的にはNを朝食前に一回打ちにしたり、混合型製剤を朝食前、夕食前の2回打ちにし、食後血糖を抑えるためαグルコシターゼ阻害薬を併用した入りするなどがオーソドックスといわれている。病棟などではインスリンスライディングスケールという方法をとることがある。これは各食前の血糖値に基づいてその時にうつインスリンを決定するという方法であり、短期間ならば良いが血糖の変動を激しくするので避けたほうが良い。このような投与法でもインスリン量は0.2単位/kgにて開始し、0.5単位/kgまで増量可能である。中間型を2回打ちする場合は朝:夕を2:1または3:2の比率とすることが多い。中間型インスリンが一日10単位以上の場合は一日二回と分けることが多い。
食事をしないIVHの患者では高カロリー輸液にRを混ぜることもある。この場合はグルコース10gにつきR1単位から始めて血糖を測定から至適量を決めていく。
糖尿病性ケトアシドーシスや非ケトン性高浸透圧性昏睡の場合、インスリンを投与することがある。糖尿病性緊急症を疑ったら、まずはRを10単位静注する。以後は0.1単位/kg/hrにて点滴静注する。血糖が250~300mg/dl、HCO3>18、pH>7.3になるまで続ける。インスリン投与にて低カリウム血症となるためカリウムを補充する必要がある。これはインスリンがカリウムを消費することと糖尿病性緊急症の時はアシドーシスがあるためカリウムが高めに測定されるということの二つの理由で説明できる。
インスリン療法の絶対的適応例では入院による導入が望ましいといわれているが、相対的適応例におけるインスリン療法の開始や経口血糖降下薬からの切り替えの場合は外来で行うことが多い。この際、インスリン量の調節のため外来を頻回にすることで対処することが多い。外来での導入に関しての危険性を評価するには
を確認することが望ましい。これらに該当するようならば糖尿病専門医がいる施設や教育入院を用いないと外来でのコントロールは危険である。
インスリン療法では注意するべきことがいくつかある。インスリンの導入では皮下注射を自分で行えなければならない、血糖自己測定(SMBG)ができなければならない。シックディの対応、低血糖の対応といった問題を克服しなければ自宅では行うことができない。入院中は看護師の管理によって教育が不十分でも管理可能だが、退院前にこれらの教育がなされていなければ大きな事故につながりかねない。
特に気をつけることが低血糖の対応である。低血糖発作は初期ならばブドウ糖を摂取することで改善できる。しかしこのあと、低血糖になったからということで次の投与のインスリンを自己判断でスキップしてしまう場合が多い。低血糖が起こった場合は責任インスリンの調節をし再発予防を行わないと意味がないのでこういったことには十分留意する。
インスリン療法を開始すると膵機能が回復してくることがある。この目安はインスリン必要量の低下によって判断する。この場合はインスリン療法を中止できることもある。
αGIなどの経口血糖降下薬の中にはインスリンと併用できるものもある。SU剤で二次無効となったとき、内服薬を中止せず就寝前に持効性インスリンを投与することで糖毒性が解除されSU薬の効果が再び現れることもある。
BMIが25を超えて軽症糖尿病である場合、肥満によるインスリン抵抗性による可能性が高いと考えられる。そのため肥満の解消が最優先事項となる。そのためには食事療法、運動療法が重要なのは言うまでもない。そして経口血糖降下薬を用いるのなら肥満を助長しない薬であることが望ましいと考えられる。その後の治療効果判定が難しくなるからである(たとえば、血糖値は下降傾向になったが太りましたという結果にしても、改善傾向ではない可能性がある)。インスリン分泌促進薬は副作用として体重増加がよく知られているため、この時点ではふさわしくないためそれ以外の薬を用いるべきである。体重に対する影響としてはビグアナイド薬が不変から減少傾向、αGI薬は不変、チアゾリジン誘導体は効果が出る場合は浮腫の副作用以外に体重が若干増加する傾向が知られている。
以上のことを踏まえるとまずはビグアナイド薬、塩酸メトホルミン(メルビン®)からはじめ、副作用の胃腸障害によって服薬困難であればαGIやチアゾリジン誘導体に切り替える。また心不全の既往があればメルビン®、アクトス®ともに適応外となるためベイスン®、グルコバイ®といったαGIを処方するという流れが考えられる。但し、適応外さえ守ればこれらのくすりはどれを使ったから明らかに悪いということはない。定期的にフォローアップし、効果判定をしていくことが大切である。特にアクトス®は全く効果がない場合もある(量が足りないのかといったところで悩む)ので、思い切った変更が必要である。
こういった症例も1990年代はSU薬での治療が主流であった。作用機序からも明らかであるように食後高血糖(インスリンの追加分泌の初期分泌能の低下)はαGIや速効型インスリン分泌促進薬スターシス®やグルファスト®がよい適応となる。SU薬はインスリンの基礎分泌を高める薬であり、追加分泌を促す作用はない。そのため食後高血糖が低下するように基礎分泌をあげてしまうと空腹時に低血糖となり、空腹感を覚え過食となり治療がうまくいかないこともあった。歴史的にはこういった背景もあり、速効型インスリン分泌促進薬スターシス®は販売開始となったのだが、皮肉なことにこのような血糖値のパターンの患者でもSU剤にてコントロール良好となった例ではスターシス®やグルファスト®は効果があまり良くないといことが明らかになった。そのためスターシス®は当初、現場では効かない薬と思われていた。2008年現在は血糖値の変化パターンは同一だがスターシス®が効果的な場合とSU薬が効果的な場合が存在し、治療を行うまで区別することはできないと理解されている(実際には食事、運動療法が全くできていない効果がないことも多々あり、生活習慣病治療の難しいところである)。
以上のことを踏まえるとこういった症例では第一選択としてスターシス®を用いて、効果不十分ならばスターシス®とグルコバイ®、ベイスン®の併用療法、それでも効果がなければ薬効が低めのSU剤、具体的にはグリミクロン®を用いるといった方法が考えられる。
注意すべきことはほぼ同じ作用機序であるにも関わらず、SU薬はインスリン基礎分泌のみを上昇させ、ナテグリニド(スターシス®)はインスリン追加分泌のみを上昇させる。基礎分泌と追加分泌両方が足りないということは多々あるのだが、保険診療上SU薬とナテグリニドの併用は認められていない。併用したいときはナテグリニドをαGIで代用することとなっている。
具体的にはHbA1c>8%である場合のアプローチを考える。この場合重症度には相当な幅があるため、まずはインスリンの適応に入るのかどうかを検討する。インスリンの適応がなければ経口血糖低下薬の出番である。HbA1c>8%となるくらいの高血糖の場合は追加分泌障害も存在する可能性があるが基本的には基礎分泌が足りていないためSU薬は良い適応となる。SU薬を少量から開始し、血糖値の減少を見ながら徐々に増量していく。アマリール®であったら1~2mg/day,オイグルカン®であったら1.25~2.5mg/dayあたりから開始することが多い。効果不良例では最も薬効の強いSU剤であるオイグルカン®5.0mg(分1、分2問わない)あたりまで増加させるが、ここまでやって効果不良の場合SU剤の増量よりも多剤併用療法に切り替えた方がうまくいくことが多い。SU剤にて全く効果がない場合を一時無効といい、インスリンの適応となる。はじめは効果があったのに徐々に効果がなくなっていくことを二次無効という。原因としては食生活の乱れ、肥満の悪化、膵臓β細胞の疲弊(持続的な高血糖にさらされると膵臓β細胞の破壊が進行することが知られている)が考えられる。基本的には効果判定は食事、運動を踏まえた生活歴と体重、血糖値の2~3か月の推移にて判断する。2次無効と判断した場合はまずは2剤併用療法を行う。問題点として肥満によるインスリン抵抗性の増大を考えるのならビグアナイド薬メルビン®やチアゾリジン薬アクトス®、インスリン初期分泌の障害が気になるのならαGI薬であるグルコバイ®といった具合に軽症糖尿病時と同様の考え方で2剤目を選ぶ。この状態で3ヶ月ほどで効果判定を行い、さらに効果不良であれば3剤併用療法となる。これでも効果不十分ならばいよいよインスリン導入ということとなる。インスリンの導入では皮下注射を自分で行えなければならない、血糖自己測定(SMBG)ができなければならない。シックディの対応、低血糖の対応といった問題が生じてくるので、この段階になる前に説明しておくことが望ましい。重要なことはインスリン治療を開始することで膵臓のインスリン分泌能が回復してきて、経口血糖降下薬すら不要になることがあること(一生インスリンを打ち続けなければならないということではない)、食事運動療法が上手くいっていなければ教育入院を機会に改善できる可能性があるということである。コントロール不良も食事、運動療法をせず高血糖持続で体重減少となるとかなりひどい状態が考えられる(こういった状態で食事、運動をしっかりやりましたと平気でいう患者もいる、定期的にフォローしている患者ならばおかしいことに気がつけるが、初診でたまたま来た患者がこのような状態であると判断できない)が、体重が増えて血糖値が高値というのはインスリン自体は分泌されているのでインスリン導入にて改善の見込みはある場合がある。設備のある病院ならばインスリン分泌能、インスリン抵抗性を客観的に測定するべきである。
リラグルチド(Victoza ™)、エキセナチド(BYETTA ™、Bydureon ™)、リキシセナチド(Lyxumia ™)はGLP-1受容体アゴニスト(作動薬)である。GLP-1は腸管で生成されるホルモンで、インスリン分泌・グルカゴン抑制効果を示し血糖値を低下させる。GLP-1アゴニストはGLP-1受容体に結合しこれらの作用を引き起こすほか、血糖が比較的低いときにはこれらの作用が弱まるため結果として低血糖の副作用が少ないとされる。これまでに、メトホルミン+スルホニルウレア製剤でも至適な血糖コントロールを得られなかった方(ピオグリタゾンを加えるのでないならインスリンを使用するしかないような状況)において、インスリン・グラルギンとほぼ同じだけの効果を示す等有用性が高いことを示す研究結果が得られている[7]。ただし、長期的な副作用などは十分調べられている訳ではない。欧米ではもともと一日二回の注射薬として認可されたが、週1回の大量投与でも非劣性を証明している[8]。
現在、日本では上記3薬が用いられており、ビデュリオンは週一回投与型である。経口剤・経鼻剤など、後続のGLP-1アゴニストの開発も続けられている。
◯◯gliptinといった名称の薬物で、GLP1アゴニストと同様にインスリン分泌増加、グルカゴン分泌抑制効果を示す。DPP4は上記のGLP-1、ならびにGIPを分解する酵素なので、この酵素の作用を阻害することでGLP-1の効果を増強する。DPP4阻害薬は、注射薬であるGLP1アゴニストとは異なり経口薬であるという大きなメリットがある。
2009年12月11日にシタグリプチン(商品名 ジャヌビア®・グラクティブ®)が日本で上市された。アメリカとヨーロッパが本年一月に発表した共同声明によれば、DPP4阻害剤・GLP-1アナログのいずれもまだ十分検証がなされていないので、慎重に選択された状況でのみ使用すべきであると勧告されている[9]。
ナトリウム依存性グルコース輸送担体2(sodium-dependent glucose transporter 2; SGLT2)は主に腎臓の近位尿細管で、原尿からのブドウ糖の再吸収を担っている。SGLT2阻害薬はこの再吸収を阻害することで高血糖状態を改善する[10]。
◯◯gliflozinといった名称の薬物で、イプラグリフロジン(製品名:スーグラ®)、トホグリフロジン(デベルザ®、アプルウェイ®)、ダパグリフロジン(フォシーガ®)、ルセオグリフロジン(ルセフィ®)が薬価収載されている[11]。
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糖尿病との関係 | 疾患 | 臨床的特徴 |
糖尿病が直接病因に関与する疾患 | 糖尿病性手関節症(diabetic cheiroarthropathy) | コントロール不良の糖尿病に多い。原因不明の皮膚硬化が徐々に進行し、手指の屈曲拘縮を来し手全体に及び、強皮症と誤診される。手指を合わせることができない(Prayer徴候)。 |
シャルコー関節 | 頻度は低い(1%)が、長期糖尿病コントロール不良患者に多い。通常、足根中足関節などの中足部が多く、足底表面、前足部、中足部に潰瘍形成の合併を認めることがあり、骨髄炎との鑑別が困難な例あり。 | |
糖尿病性骨溶解(diabetic osteolysis) | 原因不明の足趾の末節骨や基節骨の骨吸収が起こリ、足痛の原因となる。X線ではickedcandy変形を呈し、骨髄炎との鑑別が困難。 | |
糖尿病性筋梗塞 | 外傷、感染、腫瘍がなく大腿部などに急激に増大する疼痛を伴う腫瘤を認める。生検は出血の危険があるため行わない。通常1~2カ月で自然寛解する | |
糖尿病性筋萎縮症(diabetic amyotrophy) | 糖尿病性末梢神経障害の一型。大腿前部の痛みで、時に脱力や萎縮が非対称性に起きる。CPKの上昇はなく、脳脊髄液で軽度蛋白上昇以外の有意な所見はない。神経伝導速度.筋電図では神経原性変化を認め、筋生検では炎症細胞浸潤を伴わない筋線経の萎縮あり。 | |
直接の関係は不明だが糖尿病患者に頻度が高い疾患 | 癒着性関節包炎(凍結肩または五十肩) | 糖尿病患者の10-33%にみられる。長期2型糖尿病を有する女性に多く、肩の痛みと可動域障害を呈する。約半数が両側性だが非利き手側で症状が強い。炎症反応やX線異常を認めず、数週~数カ月で自然寛解する。 |
複合性局所疼痛症候群1型(complex regional pain syndrome CRPS) | 四肢の疼痛、皮膚色変化、皮膚温の変化、浮腫、可動域制限などの症候を呈するまれな症候群。 | |
手掌屈筋鍵炎 | 糖尿病患者の5-33%に認められる。長期に罹患した女性に多く、利き手側の母指に頻度(75%)が高いが、どの指にもみられる。 | |
Dupuytren拘縮 | 手掌筋膜の短縮と肥厚(有痛性結節)を生じ、第4、5指の屈曲拘縮を呈する。1型糖尿病で長期に罹患した患者に多いが、血糖コントロールとの関係はない。 | |
手根管症候群 | 手根管症候群の全患者の最大15%に糖尿病を認める。 | |
広汎性特発性骨増殖症(diffuse idiopathic skeletal hyperostosis DISH) | 2型糖尿病患者の約20%にみられ、50才以上の肥満患者に多い。頭部、腰部のこわばリ、関節の可動域制限を呈する。全身の腱付着部痛を呈することもある。 | |
その他 | 感染性関節炎や骨髄炎 | 血糖上昇による免疫力低下が感染症リスクを上昇させることによる |
正常 糖尿病型 空腹時血糖値 <110mg/dL ≧126mg/dL and or 75g OGTT2時間値 <140mg/dL ≧200mg/dL
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