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注意欠陥・多動性障害(ちゅういけっかん・たどうせいしょうがい、英語:Attention Deficit / Hyperactivity Disorder、ADHD)は、多動性、不注意、衝動性を症状の特徴とする発達障害もしくは行動障害。
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注意欠陥・多動性障害は多動性、不注意、衝動性などの症状を特徴とする発達障害の一つと言われているが、DSM-IV-TRでは行動障害に分類されている。じっとしている等の社会的ルールが増加する、小学校入学前後に発見される場合が多い。一般に遺伝的原因があるとされる[1]が、他に適当な診断名がなく同様の症状を示す場合を含む。なお「注意欠陥・多動性障害」はDSM-IV-TRによる正式名である (AD/HD: Attention Deficit / Hyperactivity Disorder)。
注意力を維持しにくい、時間感覚がずれている、様々な情報をまとめることが苦手などの特徴がある。日常生活に大きな支障をもたらすが適切な治療と環境を整えることによって症状を緩和することも可能である。脳障害の側面が強いとされ、しつけや本人の努力だけで症状などに対処するのは困難であることが多い。診断は、多くの精神疾患と同様に問診等で行われ、ADHDに特化した生物学的マーカーや心理アセスメントは開発中であり、一般的でない。ADHDの医学的なあり方に疑問を持つ専門家も多く、アメリカではADHDに関する論争(英語版)が盛んである。DSM-IV-TRでは症状に従い、以下の3種に下位分類がされる。
一般にADHDとして扱われるADDは、多動性が少ない不注意優勢型である場合が多い。子供ではICD-10による多動性障害(たどうせいしょうがい、Hyperkinetic Disorders F90)の診断名が頻繁に適用される。学童期までの発症率は1 - 6%で男子の方が女子よりも高い[2]。 しかし、女子の場合は多動が目立たない不注意優勢型に分類されることが多く、発見が遅れがちである。よって、認知される人数が少ないことが推測され、実際の発症率の男女差はもっと小さいとする説もある[3]。
なお、DSM-IVのアレン・フランセス(英語版)編纂委員長は、DSM-IV発表以降、米国で注意欠陥障害が3倍に増加したことについて、「注意欠陥障害は過小評価されていると小児科医、小児精神科医、保護者、教師たちに思い込ませた製薬会社の力と、それまでは正常と考えられていた多くの子どもが注意欠陥障害と診断されたことによるものです」と指摘している。注意欠陥障害の最も正確な予測因子の一つは入学月である。日本では3月生まれの子どもがクラスで最年少になるが、最年少ゆえの落ち着かない行動などが異常と判断される。フランセスは、「米国では、一般的な個性であって病気と見なすべきではない子どもたちが、やたらに過剰診断され、過剰な薬物治療を受けているのです」と述べている。これは日本も同様である[4][5]。
集中困難・過活動・不注意などの症状が通常7歳までに確認されるが、過活動が顕著でない不注意優勢型の場合、幼少期には周囲が気付かない場合も多い。
年齢が上がるにつれて見かけ上の「多動(落ち着きがなくイライラしているように見える)」は減少するため、かつては子供だけの症状であり、成人になるにしたがって改善されると考えられていたが、近年は大人になっても残る可能性があると理解されている。その場合は多動ではなく、感情的な衝動性(言動に安定性がない、順序立てた考えよりも感情が先行しがち、論理が飛躍した短絡的な結論に至りやすい)や注意力(シャツをズボンから出し忘れる、ファスナーを締め忘れるといったミスが日常生活で頻発する、など)や集中力の欠如が多い[1]。遺伝的な要因もあるとされるため、症状は育て方や本人の努力で完治することはないとも言われている[要出典]。成人にADHDを認めるべきかどうかは医師によって考え方がまちまちであるが、近年では認めないとする意見は少数派である[要出典]。ただし、近年の動向を知らずに「ADHDは子供だけの症状である」と考えている医師は少数ではない[要出典]。
うつ病やPTSD、アスペルガー症候群でも類似の症状を呈する上に合併してしまう事もあり、正確な判断はADHDに理解の深い医師(日本においては極度に少数)の診断でなされる必要がある。またアスペルガー症候群や高機能自閉症との関連については合併症としてではなく、これらの症状全てを自閉症スペクトラムの中に内在する高機能広汎性発達障害(高機能PDD)の一種として区分せずに診断して取り扱うといった見解も出ている[要出典]。
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現在、全世界で、最もよく使われている診断基準(特に統計調査)は、アメリカ精神医学協会が定めたDSM-IV (1994) とその改訂版のDSM-IV-TR (2000) のAD/HDであり、不注意優勢型と多動衝動性優勢型と、その混合型という3つのタイプに分けられる。 DSM-IVではMRIや血液検査等の生物学的データを診断項目にしていない。 1994年に改訂されたWHOの診断基準のICD-10は、ADHDではなく、「多動性障害 (Hyperkinetic Disorder)」とされており、注意の障害と多動が基本的特徴で、この両者を診断の必要条件としている。ICD-10の「多動性障害」は、細部では若干の違いがあるものの、DSM-IVのADHDの「混合型」に匹敵する。
コロラド大学のジリス (Jacquelyn J. Gillis) らの研究では、ADHDを発症した一卵性双生児が二人とも発症するリスクは、ADHDを発症した一卵性ではない兄弟姉妹の場合の11倍 - 18倍になると報告された。ノルウェーのオスロ大学のグヨーネ (Helene Gjone) とサンデット (Jon M. Sundet)、英国のサウサンプトン大学のスティーブンソン (Jim Stevenson) らの研究では、526組の一卵性双生児と389組の二卵性双生児を調べた結果として、最大で80%までADHDの遺伝的要因で説明できると発表した[1]。
ADHDを持つ児童のうち約3割が脳波異常、特にてんかんやナルコレプシー(以前は睡眠癲癇とも称した)に似た脳波を記録することが確認されている[6]。
原因は2007年現在、解明に向けて進んでいるがまだすべてが理解されてはいない。遺伝的な要素が指摘され、一卵性双生児ではきわめて高い頻度で一致し、血縁者に共通してみられることも多い。遺伝的な要素に様々な要因が加わり、症状を発現させる。抑制や自制に関する脳の神経回路が発達の段階で損なわれているという点までは確からしいが、その特定の部位・機能が損なわれる機序は仮説の域を出ない[1]。
機能不全が疑われている脳の部位には、大きく3箇所ある。ADHDの子供達はこれらが有意に縮小していることが見出される。
多くの研究者が、複数の遺伝子異常がこれらの部位の萎縮に関係しているのではないかと考えている[1]。
※2011年、注意欠陥多動性障害の子供は、健康な子供が同じゲームをして働く脳の中央付近の部位の視床と線条体がほとんど働かないことを、理化学研究所分子イメージング科学研究センターなどの研究グループが突き止めたと、新聞報道された[7]。
1990年に米国のNIMHのザメトキン (Zametkin) らのグループは、PETスキャンを用いて、ADHDの成人25人の脳の代謝活性を測定し、対象者群より低下していることを明らかにして、ADHDが神経学的な基盤を持っていることを目に見えるかたちで証明した。 具体的には、健康な前頭前野は行動を注意深く選定し、大脳基底核 (Basal ganglia) は衝動性を抑える働きを持つが、ADHDのケースではそれがうまく作動していない。 エイメン (Amen, 2001) は、脳スペクト画像から、SPECT結果と主な症状から6つのタイプを考案している。
食事とADHDとの関連性について指摘する報告があるが、関連性は十分に証明されていない。 2006年、5000人以上と規模の大きい研究で砂糖の多いソフトドリンクの摂取量と多動との相関関係が観察された[8]。
アメリカやイギリスでは食品添加物などを除去した食事の比較が行われている。 2007年にイギリス政府は、食品添加物の合成保存料の安息香酸ナトリウムと数種類の合成着色料が子供にADHDを引き起こすという研究を受け、これらを含むことが多いドリンクやお菓子に注意を促している[9]。 2008年4月には、英国食品基準庁 (FSA) はADHDと関連の疑われる合成着色料のタール色素について2009年末までにメーカーが自主規制するよう勧告した[10]。ガーディアン紙での報道では大手メーカーは2008年中にそれらを除去する[11]。
最近の睡眠科学では、睡眠がADHDの増加に大きく関わっていると言われている [12]。
2007年末の現在はまだ治療方法は確立されていないが、衝動的な行動を抑制する薬剤の処方によって生活の改善を図っている。やがてADHDの遺伝子診断が行なわれて、適切な薬で根治する日が近いと考えられている[1]。
アメリカで、アメリカ国立精神衛生研究所 (NIMH) が出資した、7歳から9歳の600人近い子供を追跡した大規模な研究であるMTA研究が実施された。結果によれば投薬治療は、3年後の追跡調査では予後の不良に結び付けられており[13]、8年後でも投薬の恩恵は見いだせなかった[14]
覚醒水準を引き上げることで症状を防ごうという理由で、治療には中枢神経興奮薬が用いられる。対症療法であり根治を目指すものではない。日本では一般に、塩酸メチルフェニデート(商品名「リタリン」)が使用されていたが、ADHDへの使用は認可されていなかったため、二次障害のうつ病に対して処方するという形をとっていた。しかし、2007年10月、リタリンの適応症からうつ病が削除され[15]、代わってメチルフェニデートの徐放剤(商品名「コンサータ」)が小児期におけるADHDの適応薬として認可された[16]。コンサータは成人のADHDでの使用はできないが、2011年3月に国内での治験を開始した。[17]。
塩酸メチルフェニデートは覚醒剤として機能するため、長期摂取による依存性や何らかの副作用が懸念されるが、処方に従っている限り薬剤耐性はつきにくく依存の心配を含めて重い副作用は報告されていないとされている。実際、ADHDの場合、止められなくなるどころか飲み忘れて貯めてしまうことがよく見受けられる。特に思春期以前の児童に関しての投薬も依存の危険はないとされるが、米国ではあまりに安易に幼年児にも処方するため、2~3歳児への処方では実際にはADHDではないケースがかなり含まれているのではとの懸念がなされている[1]。メチルフェニデートは前頭前野皮質のノルエピネフリン・トランスポーター (NET) に作用し細胞外ドーパミンの濃度が上昇、治療効果をもたらすという仮説がある。[18]。リタリンは、脳内のドーパミン・トランスポーターとノルアドレナリン・トランスポーターに作用する事で、ドーパミンやノルアドレナリン量を増やす。セロトニン・トランスポーターにはほとんど作用しない[1]。
また、2009年4月にノルアドレナリンの再取り込みを阻害作用を有するアトモキセチン塩酸塩製剤(商品名「ストラテラ」)が認可され、本剤も承認範囲は小児に限定されていたが、2012年8月に成人期のAD/HDへの適応追加の承認を取得した。[19]。
一部にはペモリン(薬剤名ベタナミン錠)が効果を持つ場合もあるが、強い肝臓への副作用が懸念される[要出典]。
ADHDの症状を緩和させるために、カフェイン(コーヒー等の摂取)を補助的に使用している人もいるが[要出典]、当然のことながら薬物の代替となるほどの効果はない(ちなみに、精神疾患にはコーヒーは禁忌とされる[要出典])。
ベタナミン錠もリタリンと同じく規制対象になる可能性が高く、ADHD患者、特に成人期のADHD患者を取り巻く治療薬問題は大変に厳しいものになっている。ベタナミン錠は肝臓への負担が大きいため、アメリカでは製造中止になっている。
精神医療における大麻の有効性が広く認知されるようになった最近では、医療大麻のADHDに対する有効性について現在多数の研究が行われている。[20]規制の緩和された米国やカナダ、英国等で精神科医が医療大麻や大麻の有効成分であるテトラヒドロカンナビノール系製剤を患者に処方する場合が増えており、中枢神経興奮薬に比べ副作用や依存の少ない有力な代替薬として使用されている[21]。
心理療法については、行動療法を薬物療法と組み合わせた場合に最も効果がみられる[22]。また本人の症状をコントロールすることよりも本人の特性にあった環境を整えることが重要である。
ただし、ADHDは後天性のパーソナリティ障害ではなく、先天性の脳機能障害であるという説が有力であるため、その観点からは心理療法の効果はあくまでも生活品質の向上にとどまり、寛解は期待できないともされる[要出典]。
この数年でワーキングメモリにおける障害は、ADHDの主要な障害または中間表現型(エンドフェノタイプ)であることが明らかにされた。神経生理学的にはADHDは脳の前頭葉とドーパミン・システムの変異した機能 (altered function) と関係がありえる。(Castellanos and Tannock, 2002[23]; Martinussen et al., 2005[24])
スウェーデン、カロリンスカ医科大学のクリングバーグらは、コンピュータによるトレーニング・メソッドを開発し、2つの研究 (Klingberg et al. 2002[25], Klingberg et al., 2005[26]) においてワーキングメモリーがトレーニングにより改善可能であり、ADHDの症状を、中枢神経興奮薬のそれに匹敵するイフェクトサイズをもって軽減することを明らかにした。
当時同大学学長であり、世界的なエイズ研究者であるハンス・ウィグゼルは、医学を専門とする同大学ベンチャー・ファンドとしては初めて新薬以外の分野として事業化を支援し、2009年現在スウェーデンでは約1000校の小学校(約15%)において、米国では約100クリニックにて、それぞれ年間3000人以上の児童・成人のADHD改善トレーニングが行われている[27]。
日本では、2007年夏より約半年間のえじそんくらぶ[28]によるワーキングメモリートレーニング評価プロジェクトとして開始された。2008年日本発達障害ネットワーク年次大会にブース出展があり、関係方面への紹介がされた。日本では2009年現在、コグメド・ジャパンがワーキングメモリトレーニングを提供している[29]。
英ヨーク大学のギャザコール、英ノーザンブリア大学のホームズらは、コグメドのワーキングメモリトレーニングを使い、2つの介入 - トレーニングプログラムと中枢神経興奮薬による薬物療法 – のADHDをもつ児童のワーキングメモリ機能へのインパクト(影響)を評価した。薬物療法が視空間ワーキングメモリだけ改善した一方で、トレーニングはすべてのワーキングメモリ要素(視空間、言語のワーキングメモリおよび視空間、言語の短期記憶)で大幅な改善をもたらし、トレーニング効果は6ヶ月後も持続した。IQ成績はいずれの介入でも変化しなかった。Discussionのなかで、“断然に最もドラマティックなワーキングメモリの改善はワーキングメモリトレーニングで観察された。測定されたワーキングメモリのすべての構成要素で有意で大幅な改善が見られ、それぞれにおいて、グループの児童を同年代の平均以下のレベルから平均以内のレベルにもっていった。”と報告し、トレーニングによる視空間・言語すべての要素のワーキングメモリへの全体的な改善が、教室の言語中心の環境における多くの学習活動でワーキングメモリへの重い負荷にしばしば耐えられない児童にとって重要で実用的な利益となろう、としている (Joni Holmes, Susan E. Gathercole 2009[30])。
効果が十分に立証されていないが、薬物治療への拒否感などから一部に支持されている。
詳細は「ADHDに関する論争」を参照
適切な行動を学習させるため目標を達成できたら報酬を、できなかったら罰を与える。
注意をそらす物を周りに置かない。
家庭では、勉強をしているとき外的刺激を減らしたり、子供の注意がそれてしまった時に適切な導きを与えてやったり、ころあいを見計らって課題を与える、褒めることを中心にして親子関係を強化するなどが挙げられる。一例として、「勉強しなさい」と言うよりも机の上にその子供の注意を引きそうな本をさりげなく置いておく、新聞や科学雑誌を購読する等である。
生まれ持った性質は成人後も継続する[31]。成長するにつれて問題行動が目立たなくなる傾向があるため、かつてADHDは子供特有の病気だと思われていた。ADHDを持っていても、症状を補う習慣を身につけることに成功したり、環境や能力に恵まれた者は社会に適応しているといわれる。しかし、大半の者は社会適応に失敗したり、うつ病などを負ったりするため、治療や訓練・教育によって補う必要があるとされる。社会に適応している人にとっても、自分の性質を理解することは生活の質を上げることにつながると思われる。そして、本人だけの問題ではなく、周囲の人間の負担を減らす意味もある。
社会に適応しているかどうかの目安が健常者と異なる点にも注意が必要である。発達障害は得意不得意の差が激しいので、特定分野で成功しても、他の分野で同じぐらい成功しているとは限らない。例えば学業に優れ、難関大学の入学試験や資格試験に合格するなどしても、社会人として求められる素養に欠けていたり、人間関係でつまずいたり、生活が破綻するなどして、問題が顕在化したりする。健常者同様、生きづらさがうつ病などの精神病・神経症の原因にもなり、これを二次的な障害という意味で「二次障害」という。
なお、社会と折り合いをつけられず反社会的行為に及んでしまう割合が、ADHDの診断を受けた者は健常者より高いという研究がある。(いわゆるリスクファクター)。
町沢静夫はADHDの特徴は攻撃性であると述べている[32]。それによると注意欠陥・多動性障害の症状は攻撃性と非行であり、いろいろな小さな悪事を重ね、慢性化すると行為障害となり、18歳以上になると反社会性パーソナリティ障害になることが多いという[33]。 しかし、町沢がADHDと診断した患者のうち、メチルフェニデートの効果があったのは5%[34]である。これは他の研究によって一般に60~80%とされる結果とかけ離れており、町沢の診断したADHDは、典型的なADHDではない可能性がある。つまり彼が専門とする暴力的な児童にADHDのレッテルを張っているだけではないかという疑いである。これについて、町村は米国人と日本人の特性の違いから薬物の効き方に差があると説明している。
ADHDとLD(学習障害)とを同時に罹患する子供は多いが、ADHDを持つ子供が必ずしもLDを発症するわけではない。またADHDは知能の低下をもたらさない。教室で、教師は生徒がADHDを持っていても、多動衝動をコントロールしていれば普通の生徒として評価することがわかっている[要出典]。 学習面においては、計算などの単純作業において障害が原因で健常児と比較してミスが多くなる傾向はあるが、周囲の人間の適切なフォローや本人の意識によってミスを減らすことは可能であるとされている。ADHDだからという理由でレッテルを貼ったり、甘く評価するなどは不適切な対応であるという意見もある[2]。かといって、現在では一般教諭がADHD児に対して常に適切な対応を取ることは容易だというわけではない。
学習機能面以外の問題として、ADHD児は授業中に立ち歩く、他の生徒とずっとおしゃべりをし続けるなど、教諭や他の生徒にとって迷惑な存在になるケースも多い。またノートを取る、宿題をする、提出物を出すなどは「退屈」であるためADHDの児童が苦手とする傾向がある(あるいは好きな教科しかしない)。これは、生徒に対する評価に「授業態度」が決して少なくない割合を占める日本の教育現場においては、本人にとっても困難な状況であるといえる。たとえ知能が高くても学業に結びつかない浮きこぼれの原因になり、授業態度が悪いと内申書で低い評価しか与えられない。
そもそも、教育現場でADHDが注目されるのは、学級崩壊の原因になるような問題児が発生することへの説明としてADHDが槍玉にあがったことという構造がある。教育現場にとって、ADHDといえば授業中に歩く生徒のことであり、他人の迷惑になりにくい不注意優先型の生徒を含むADHDの全体像に対して理解が進んでいるとはいいがたい。
ADHDという分類が妥当であるのかということはADHDの概念を確立したアメリカでも論争が続いている状況であり、児童の保護者、医者双方ともADHDに対する理解は進んでいない。
公的支援は立ち遅れがちだったが、ADHD患者の支援は児童福祉の側面も持つため2005年に発達障害者支援法が成立した。これにより特別支援教育等の支援策に弾みがつくことが期待されている[35]。栃木県では「とちぎ障害者プラン21」を策定、埼玉県では「彩の国障害者プラン21」を計画、千葉県では県議会が平成13年に「日本版ADA(障害者権利法)の制定を求める意見書」を可決した[36]。しかし成人では障害者自立支援法の検討や32条見直しなどにより個人の経済的負担が増えていくものと思われる。成人支援は一部の地域で限定的に行われている。
各都道府県の精神保健福祉センターはADHD専門ではないが、無料または低額で相談・職業訓練・デイケアー・病院等の紹介等各施設独自のサービスを提供している[37]。例として、東京都の思春期・青年期相談でADHDのケースが見受けられた。ただし、東京都など一部の自治体では、相談窓口の電話がつながりにくい状況が続いている。
市町村の保健所でも、ADHDに限らず一般的な疾病のためのサービスや病院等の紹介が受けられることもある。
日本では発達障害者支援法が制定され、以前より支援体制は整ったものの、発達障害を専門とする医師・医療機関が相変わらず少なく、専門医師・機関を見つけて診断や治療までに至るにはまだまだ苦労することが多い。それでも、最近は支援団体や自助団体が各地で設立され、インターネットの普及もあいまって、情報は入手しやすくなりつつある。例えば、ADHDの診療が可能な病院を検索できるサイトも開設されている[38]。 なお、このような検索サイトや医院紹介機関に登録されていなくとも、ADHDを診断できる医師・医療機関は存在する。特に成人ADHDに関しては、Webページなど表向きには小児向けにADHDを診断可としている医師・医療機関でも、実際には成人も診断している場合がある。したがって、医師・医療機関を探す場合、容易に確認・入手できる表面的な情報だけに頼るのではなく、例えば個別に医療機関に電話で確認・相談してみる、ADHDの専門文献の著者名から専門医師・医療機関を割り出すといった努力も少なからず必要であろう。 また、支援体制と称しつつも、事情をよく知らないADHD当事者の弱みに付け込んだ悪徳商法まがいの行為、不正な行為を行う団体、サイトも存在すると言われている(一例として、[39])。したがって、特に支援団体・企業に費用を振り込む、個人情報を登録する、参加するなどの際には、あらかじめインターネット上なり人づてなりの手段により悪い風評が立っていないかを確認するなどの予防線を張ることが確実といえる。
ADHDを障害としてではなく、生物の進化の過程で発現した個性であると捉える枠組みもある[40]。
薬物による治療が社会適合性を改善する反面、個性をつぶすことにつながるのではとの懸念もあがっている[41]。
ADHDだけに限らず、精神的・身体的に他の人とは異なった人たちも、プライドもあれば夢もある個人として扱われるべきであり、障害も含めた個性としての認識するというアプローチもありうる。
障害を理解したうえでの適切なヘルプは必要ではあるが、本人が問題を起こす理由が障害によるものなのか、単に本人の人生経験などの不足が原因で問題が起きているのかについては客観的な視点から判断することは難しく、それだけをもって線引きをすることが容易ではないという問題もある(後者は後述の「自称ADHD」にあたる可能性がある)。
しかしその反面、歴史上の偉人・芸術家・発明家など、天才と言われる人たちの多くがADHDだったのではないかという説がある。ADHDは知能の低下には影響を及ぼさず、むしろ一般よりもかなり高い知能をしめす者も多いとする主張も存在する。実際には診断基準が確立される以前の人物の知能を測定するすべはなく、信憑性が低い。しかし、その説を根拠に「ADHD優越論」を唱える人や、医学的な診断を経ていないにもかかわらずADHDを公言する「自称ADHD」という人たちが存在し、この点は他の障害には見られない特徴といえる。
このような点からも、ADHDへのサポートには他の障害者へのサポートとは異なる面が多くあり、単純ではない。
日本は他の先進国に比べ成人のADHDに対して理解がまだ乏しく、投薬などの具体的な治療を受けることが難しいため、日本人の成人のADHDは自身の将来へ強い不安や閉塞感を持っていることが多い。そのためうつ病や行為障害などの二次障害にかかりやすく、社会に適応できず引きこもりになってしまうケースも多い。[要出典]
米国ではADHDと診断された児童450万のうち100万人が不適切な診断、誤診である可能性が指摘されている。[42]
この「注意欠陥・多動性障害」は、教育に関連した書きかけ項目です。この記事を加筆、訂正などして下さる協力者を求めています(P:教育)。 |
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リンク元 | 「微細脳機能障害」「attention deficit disorder」 |
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