出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/07/14 12:11:57」(JST)
Toll様受容体(トルようじゅようたい、Toll-like receptor:TLRと略す)は動物の細胞表面にある受容体タンパク質で、種々の病原体を感知して自然免疫(獲得免疫と異なり、一般の病原体を排除する非特異的な免疫作用)を作動させる機能がある。脊椎動物では、獲得免疫が働くためにもToll様受容体などを介した自然免疫の作動が必要である。
TLRまたはTLR類似の遺伝子は、哺乳類やその他の脊椎動物(インターロイキン1受容体も含む)、また昆虫などにもあり、最近では植物にも類似のものが見つかっていて、進化的起源はディフェンシン(細胞の出す抗菌性ペプチド)などと並び非常に古いと思われる。さらにTLRの一部分にだけ相同性を示すタンパク質(RP105など)もある。
TLRやその他の自然免疫に関わる受容体は、病原体に常に存在し(進化上保存されたもの)、しかも病原体に特異的な(宿主にはない)パターンを認識するものでなければならない。そのためにTLRは、細菌表面のリポ多糖(LPS)、リポタンパク質、べん毛のフラジェリン、ウイルスの二本鎖RNA、細菌やウイルスのDNAに含まれる非メチル化CpGアイランド(宿主のCpG配列はメチル化されているので区別できる)などを認識するようにできている。
TLRは特定の分子を認識するのでなく、上記のようなある一群の分子を認識するパターン認識受容体(英語版)の一種である。
Toll遺伝子は1980年代にショウジョウバエで正常な発生(背腹軸の決定)に必要な遺伝子として発見された("Toll"はドイツ語で"規格はずれな"の意味[出典])が、1996年には、真菌に対する免疫にも働いていることが明らかになった。
さらに1997年、哺乳類にもToll遺伝子と相同性の高い遺伝子が見つかり、これがToll-like receptorと命名された。
ほとんどの哺乳動物で10から15種類のTLRが確認されている。ヒトでは10種類(TLR1からTLR10と呼ばれる)があり、他の種でもそれらの多くに対応するものがあるが、一部はない(例えばTLR10に対応する遺伝子はマウスにもあるが、レトロウイルスにより破壊されている)。またヒトにはないが他種にあるものもある。
TLRは特に哺乳動物で詳しく研究されており、この項ではそれについて詳述する。TLRの機能は知られているすべての生物で似ているため、基本的には同一モデルで説明できる(ただし少なくとも昆虫では活性化の様式が異なる:昆虫のTLRの項参照)。各TLRは、病原体のもつ特異的分子(または分子の特異的な組合せ)により活性化されて二量体を形成することで機能する。
多くのTLRはホモ二量体(同種分子からなる)として働くが、TLR2はTLR1やTLR6との間でヘテロ二量体をつくり、これらは互いに特異性が異なる。
またTLRは完全な機能を得るのに他の補助因子が必要なこともあり、この例としてはTLR4がある。全てのLPSの認識にはMD-2が必要であり、CD14とLPS結合タンパク質(LBP)はLPSのMD-2への提示を促進することが知られている。
このようにして活性化されたTLRは、細胞内シグナル伝達経路を介して、転写因子であるIRFやNF-κBを活性化し、それぞれIFN-α、IFN-βまたは、IL-1、IL-6、IL-8などサイトカインを誘導し、獲得免疫、あるいは炎症を誘導する。
細菌は、ファゴサイトーシスで取り込まれて消化され、その抗原はヘルパーT細胞(CD4+ T細胞)に呈示される。
ウイルス因子に対しては、インターフェロン(抗ウイルス活性をもつサイトカイン)を産生する。感染細胞はタンパク質産生を中止し、アポトーシスに至る。
現在知られているTLRの活性を下の表にまとめた。
受容体 | リガンド | 下流のシグナル伝達経路 |
---|---|---|
TLR1 | トリアシルリポタンパク質 | 不明 |
TLR2 | リポタンパク質; グラム陽性菌のペプチドグリカン; リポテイコ酸; 真菌の多糖; ウイルスの糖タンパク質 | MyD88依存性TIRAP |
TLR3 | 二本鎖RNA(一部のウイルスにある)、ポリI:C(合成核酸) |
MyD88非依存性TRIF/TICAM |
TLR4 | リポ多糖; ウイルスの糖タンパク質 | MyD88依存性TIRAP; MyD88非依存
性TRIF/TICAM/TRAM |
TLR5 | フラジェリン | MyD88依存性IRAK |
TLR6 | ジアシルリポタンパク質 | 不明 |
TLR7 | 合成低分子化合物(抗ウイルス剤イミダゾキノリンなど); 一本鎖RNA | MyD88依存性IRAK |
TLR8 | 合成低分子化合物; 一本鎖RNA | MyD88依存性IRAK |
TLR9 | 非メチル化CpG DNA | MyD88依存性IRAK |
TLR10 | 不明 | 不明 |
TLR 11 | 尿道感染細菌にある分子(詳細不明) | MyD88依存性IRAK |
ヒトには10種類のTLR分子が存在する。マウスはTLR10が存在しないもののTLR11,12, 13とヒトには存在しないTLRを持つ。また、哺乳類以外では鶏にはTLR2やTLR1が二つ存在し、また、魚ではヒトには存在しないTLR21やTLR22を持つ。
一方で、ヒトのTLR1,2,3,4,5,7,8,9は魚からヒトまでの広範な脊椎動物で発見され、脊椎動物の大部分のTLRは保存されている。しかし、脊索動物であるホヤではTLRが非常に少なく、脊椎動物に進化してから現在のTLRファミリーが形成されたと考えられている。
ショウジョウバエではTLRが元来のTollを含め9種見つかっている。しかしいずれも脊椎動物とは異なり、病原体分子を直接結合するものではない。現在知られているところでは、体液中にあるパターン認識タンパク質(PGRP、GNBPなど)に標的が結合するとプロテアーゼカスケードが活性化され、最終的にSpätzleというタンパク質が活性化され、これがToll受容体に結合して機能する。
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一般的作動薬 | 受容体 | G protein subunit | 作用 |
アドレナリン ノルアドレナリン |
α1 | Gq | 血管平滑筋収縮 |
α2 | Gi | 中枢交感神経抑制、インスリン放出抑制 | |
β1 | Gs | 心拍数増加、収縮力増加、レニン放出、脂肪分解 | |
β2 | 骨格筋筋弛緩、内臓平滑筋弛緩、気道平滑筋弛緩、グリコーゲン放出 | ||
β3 | 肥満細胞脂質分解亢進 | ||
アセチルコリン | M1 | Gq | 中枢神経 |
M2 | Gi | 心拍数低下 | |
M3 | Gq | 外分泌腺分泌亢進 | |
ドーパミン | D1 | Gs | 腎臓平滑筋弛緩 |
D2 | Gi | 神経伝達物質放出を調節 | |
ヒスタミン | H1 | Gq | 鼻、器官粘膜分泌、細気管支収縮、かゆみ、痛み |
H2 | Gs | 胃酸分泌 | |
バソプレシン | V1 | Gq | 血管平滑筋収縮 |
V2 | Gs | 腎集合管で水の透過性亢進 |
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