- 英
- euthanasia、assisted suicide、euthanize
- 関
- 自殺幇助、幇助自殺
WordNet
- the act of killing someone painlessly (especially someone suffering from an incurable illness) (同)mercy_killing
PrepTutorEJDIC
- 安楽死術;安楽死
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/08/16 21:22:21」(JST)
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この項目では、ヒトの安楽死について説明しています。動物の安楽死処分については「殺処分」をご覧ください。 |
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この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。 |
安楽死(あんらくし,英語表記は"euthanasia")とは、患者本人の自発的意思に基づく要求に応じて、患者の自殺を故意に幇助してに死に至らせること(積極的安楽死)、および、患者本人の自発的意思に基づく要求に応じ、または、患者本人が意思表示不可能な場合は患者本人の親・子・配偶者などの自発的意思に基づく要求に応じ、治療を開始しない、または、治療を終了することにより、結果として死に至らせること(消極的安楽死)である。
目次
- 1 積極的安楽死
- 1.1 積極的安楽死の法的扱い
- 1.1.1 名古屋安楽死事件の判例
- 1.1.2 東海大学病院安楽死事件の判例
- 2 積極的安楽死に関する議論
- 2.1 積極的安楽死を法律で容認賛成の主張
- 2.2 積極的安楽死を法律で容認反対の主張
- 2.3 積極的安楽死を認めている国
- 3 消極的安楽死
- 4 障害者に対する安楽死
- 5 動物に対する安楽死
- 6 安楽死を扱った作品
- 7 脚注
- 8 関連項目
- 9 外部リンク
積極的安楽死
「回復不可能な病気・障害」+「終末期」+「耐えがたい心身の苦痛」を伴う疾患の患者の自発的意思に基づく要求に応じて、法律が定める積極的安楽死の条件を満たした場合、医師が患者を死に至らせること。一般的に致死量の薬物を投与する方法が採用される、広い意味での尊厳死と同義語または類義語として使われる。
積極的安楽死の法的扱い
日本においては積極的安楽死は法的で明示的に認めておらず、刑法上殺人罪の対象となる。
名古屋安楽死事件の判例
1962年(昭和37年)の名古屋高裁の判例では、以下の6つの条件(違法性阻却条件)を満たさない場合は違法行為となると認定している。
- 回復の見込みがない病気の終末期で死期の直前である。
- 患者の心身に著しい苦痛・耐えがたい苦痛がある。
- 患者の心身の苦痛からの解放が目的である。
- 患者の意識が明瞭・意思表示能力があり、自発的意思で安楽死を要求している。
- 医師が行う。
- 倫理的にも妥当な方法である。
東海大学病院安楽死事件の判例
1995年(平成7年)の横浜地裁の判例では、下記の4つの条件(違法性阻却条件)を満たさない場合は違法行為となると認定している。
- 患者が耐えがたい激しい肉体的苦痛に苦しんでいる。
- 患者の病気は回復の見込みがなく、死期の直前である。
- 患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために可能なあらゆる方法で取り組み、その他の代替手段がない。
- 患者が自発的意思表示により、寿命の短縮、今すぐの死を要求している。
積極的安楽死に関する議論
日本では、積極的安楽死を法律で容認するかについて議論されているが、法律で明示的に容認はしていない。
積極的安楽死を法律で容認賛成の主張
- 生に対する要求と死に対する要求、治療を受けるか受けないか、延命するかしないか、患者の自己決定権は最大限尊重されるべき。
- キリスト教文化圏の国では個人尾自己決定権を尊重して、積極的安楽死が法律や判例で容認されている国があり、日本も見習うべき。
- 生命の継続・延命を強要し、心身の耐え難い苦痛を継続させることは虐待や拷問であり、死生観の強要である。
- あらゆる形態・手段による延命治療は有害無益な医療であり、医療費の公費負担は回復する見込みがある医療に限定して使うべきである。
積極的安楽死を法律で容認反対の主張
- 下記の主張をする集団からの圧力により、患者の自己決定権・生存権が侵害され、死を強要される可能性がある。
- 日本は過剰な社会保障費・医療費を浪費しているので、社会保障費・医療費を削減すべき。
- 就業世代が高齢者のために、健常者が回復不可能な病人のために、過剰な医療費負担を強いられているので医療費を削減すべき。
- あらゆる形態・手段の延命治療は無価値で無駄な医療であり、延命治療に対して医療費を公費負担は一切すべきではない。
積極的安楽死を認めている国
- スイス - 1942年
- アメリカ(オレゴン州) - 1994年「尊厳死法 (Death with Dignity Act)」成立
- オランダ - 2001年「安楽死法」可決。
- ベルギー - 2002年「安楽死法」可決。
- ルクセンブルク - 2008年「安楽死法」可決。
- アメリカ(ワシントン州) - 2009年
消極的安楽死
患者本人の自発的意思に基づく要求に応じ、または、患者本人が意思表示不可能な場合は患者本人の親・子・配偶者などの自発的意思に基づく要求に応じ、医師が病気・障害を治すため、または、病気・障害の進行を遅らせるための治療を開始しない、または、治療を終了することにより、結果として死に至らせることである。日本の法律において消極的安楽死は、刑法199条の殺人罪、刑法202条の殺人幇助罪・承諾殺人罪にはならない。
日本でも世界の諸国でも、終末期の患者には延命可能性が全くないかまたは長くても月単位なので、終末期の患者に対する延命治療は、皇族・王族・大統領・首相などの特別な社会的地位の人を例外として一般的ではなく、終末期の患者に対する消極的安楽死は広く普及している。
治療により回復の可能性がある患者、回復の可能性はなくても死に至るまで長い年月がかかる患者など、終末期ではない患者の場合は、大部分の人は一般的に病気からの回復や生命・健康の維持の欲求を持っているので、消極的安楽死が選択される事例よりも、治療による回復や延命が選択される事例が多数派である。
障害者に対する安楽死
「T4作戦」および「生きるに値しない命」も参照
障害者は安楽死させるべきと主張する者も存在する。ナチス・ドイツにおいては障害者を「恩寵の死」(Gnadentod) の名の下に殺害するT4作戦などで安楽死処分が行われた。ナチスの安楽死対象は障害者だけではなく「民族の血を汚す」とされたものが対象であり、「極度の近視」や「夜尿症」を含む障害者や、浮浪者などの反社会分子も含まれた。強制収容所などに置いても安楽死は行われ、ホロコーストの一環となった。
日本でも、太田典礼は安楽死を説く傍ら、「劣等遺伝による障害児の出生を防止することも怠ってはならない」「障害者も老人もいていいのかどうかは別として、こういう人がいることは事実です。しかし、できるだけ少なくするのが理想ではないでしょうか。」と主張したことから、障害者や老人の安楽死を促したと批判を受けた。
動物に対する安楽死
動物一般の安楽死については「殺処分」を、競走馬については「予後不良_(競馬)」を参照
日本では年間数十万頭の犬猫などの動物に対して殺処分が行われている。殺処分そのものを無くしていくべきであるという世論や国の方針は出ているが、緊急の現実問題として、殺処分の方法を現在の炭酸ガスで苦しめて殺すより薬物等による安楽死を選択すべきだという意見が出てきている。数は少ないが、行政によっては既に安楽死処分を導入しているところもある。
安楽死を扱った作品
- 森鴎外『高瀬舟』
- 安部公房『箱男』
- カール・ビンディング、アルフレート・ホッヘ 著、 森下直貴、佐野誠 訳・著、『「生きるに値しない命」とは誰のことか――ナチス安楽死思想の原典を読む 』 窓社 2001 ISBN 4896250362
- ブラック・ジャック(主人公であるブラック・ジャックとは逆の考えを持った登場人物、ドクターキリコは安楽死を積極的に行う)
- ブラックジャックによろしく
- 天 天和通りの快男児(重要キャラクター・赤木しげるがアルツハイマー型認知症を発症し、意識があるうちに自ら安楽死(広義での尊厳死)を選ぶというエピソードがある)
- 『渚にて』 ネビル・シュート 著
- 『安楽病棟』 帚木蓬生 著
- 『安楽死事件 : 模擬裁判を通してターミナルケアのあり方を問う』 奥野善彦著
- 『神の手』(小説)久坂部羊 著
- 終の信託
脚注
関連項目
- 尊厳死
- 自殺
- 終末期医療
- 生命倫理学
- 患者学
- 自己決定権
- 東海大学安楽死事件
- 優生学
- 生きるに値しない命
- 自殺関与・同意殺人罪
外部リンク
- World Health Organization>Search>"euthanasia"
- World Medical Association>Search>"euthanasia"
- USA Government Portal Site>Search>"euthanasia"
- USA Government>Department of Health and Human Services>National Institutes of Health>National Library of Medicine>PubMed>Search>"euthanasia"
- 厚生労働省>検索>"安楽死"
- Encyclopædia Britannica>Search>"euthanasia"
- Columbia Encyclopedia>Search>"euthanasia"
- Stanford Encyclopedia of Philosophy>Search>"euthanasia"
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Japanese Journal
- アートな時間 映画 朽ちた手押し車 : 老人介護、安楽死を描く 三國主演の唯一の未公開作
- 立法情報 ベルギー 子どもの安楽死の合法化 : 安楽死の年齢制限の撤廃
- ベルギー 子供等に安楽死認める改正法案が上院で可決 (WORLD NEWS(№72))
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- 1班では安楽死 について、2班では医療過誤について、3班は睡眠について、4班は脳死・臓器移植について 取り組んでいきました。 取り組みにあたっては、試行錯誤のくりかえしでした。 この班活動を行うことによって新たな発見ができ ...
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★リンクテーブル★
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- 89歳の女性。 1年前から Parkinson病のため療養病床に入院中である。 71歳でParkinson病を発症し、 86歳で Hoehn & Yahrの臨床重症度分類 5度となり、ベッド上の生活となった。 87歳で家族とのコミュニケーションも困難になった。 3か月前から食事量が減り誤嚥性肺炎を 2回起こしている。意思表示は困難であるが、家族の声かけにわずかに表情が緩むこともある。家族は献身的な介護を続けており、 1日でも長く生きてほしいと願っている。家族と今後の方針を話し合うことになった。胃瘻を含む経管栄養や中心静脈栄養など人工的栄養補給の選択肢を説明した。
- 家族が方針を決めるのを支援する際に、医師が伝える内容として適切なのはどれか。
- a 「一旦方針を決定すると変更できません」
- b 「これまでの本人の価値観を十分尊重してください」
- c 「人工的栄養補給を行わないと安楽死とみなされます」
- d 「最終的な方針決定には病院の倫理委員会の許可が必要です」
- e 「いずれ死亡するので無駄な人工的栄養補給は行うべきではありません」
[正答]
※国試ナビ4※ [108F023]←[国試_108]→[108F025]
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- 82歳の女性。直腸癌で入院したが、肝、肺および骨への転移があり、病名を知った本人の強い希望で退院した。在宅で療養し、自宅で最期を迎えることを希望している。86歳の夫との二人暮らしである。夫は妻の病名を知っており、強い不安を感じている。夫は妻のそばにいたいと考えているが、妻の死を受け入れることができていない。疼痛に対して医師の往診で塩酸モルヒネ徐放錠の服薬指導を受けているほか、訪問看護サービスと医師に紹介されたボランティアの訪問とを受けている。患者は2週前からはほぼ寝たきりでトイレヘも行けず、少量の流動食をとるだけである。数日前から衰弱が激しく、呼吸困難が出現し、意識も混濁してきた。
- 在宅医療を担当する医師の対応として適切なのはどれか。
- a. 再入院の説得
- b. 抗癌化学療法の開始
- c. 気管挿管
- d. 安楽死の助言
- e. 夫への精神的ケア
[正答]
※国試ナビ4※ [100D022]←[国試_100]→[100D024]
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- 62歳の女性。体の痛みや全身倦怠感のために1か月前に入院した。再発乳癌で治療を受けていたが、病状が進行し緩和治療が必要になった。現在症状コントロールは良好である。最近になって「もう治療を止めてほしい。死にたい。」という発言がみられ、表情も乏しくなった。
- この患者への対応として最も適切なのはどれか。
- a. 患者をなるべく一人にしておく。
- b. 患者の気持ちや考えを詳しく聞く。
- c. 頑張るよう励ます。
- d. 一旦治療を中断する。
- e. 安楽死の求めに応じる。
[正答]
※国試ナビ4※ [098F023]←[国試_098]→[098F025]
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- 死に係わる事柄の説明で正しいのはどれか。 2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [105G027]←[国試_105]→[105G029]
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- a. 我が国では安楽死は法律で認められている。
- b. 我が国では尊厳死と安楽死とは同義とされている。
- c. 尊厳死は患者の意思にかかわらず家族の意見で決めることができる。
- d. リビングウィルは終末期医療に関する患者の意思表明文書である。
- e. 我が国では「尊厳死宣言文書」は法に基づいて患者が作成する。
[正答]
※国試ナビ4※ [098E037]←[国試_098]→[098E039]
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- a 家族の許諾に基づいて実施できる。
- b 安楽死の条件を定めた法律はない。
- c リビングウィルに基づいて実施できる。
- d 未成年者が対象であれば認められている。
- e 実施に関するプロセス・ガイドラインがある。
[正答]
※国試ナビ4※ [109H016]←[国試_109]→[109H018]
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- a 安楽死を選択できる。
- b 本人が自由意志で作成する。
- c 心肺蘇生術を受けるために作成する。
- d 一度作成すると内容の変更はできない。
- e 患者の判断能力がない場合は家族が作成できる。
[正答]
※国試ナビ4※ [106G003]←[国試_106]→[106G005]
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[正答]
※国試ナビ4※ [113B001]←[国試_113]→[113B003]
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幇助自殺、自殺幇助、安楽死
- 関
- euthanasia、euthanize、physician-assisted suicide
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- 英
- assisted suicide
- 関
- 安楽死、幇助自殺、医師自殺幇助
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- 英
- assisted suicide
- 関
- 安楽死、自殺幇助
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- 英
- death
- 同
- 死亡、脳死、心臓死
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- 英
- ease、comfort
- 関
- 安静、緩和、和らげる、楽しみ