出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/10/29 21:05:11」(JST)
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。 |
自殺関与及び同意殺人罪 | |
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法律・条文 | 刑法202条 |
保護法益 | 生命 |
主体 | 人 |
客体 | 人 |
実行行為 | 自殺の教唆・幇助、(承諾に基づく)殺害 |
主観 | 故意犯 |
結果 | 結果犯、侵害犯 |
実行の着手 | 自殺行為をした時点、生命侵害の現実的危険を惹起した時点 |
既遂時期 | 死亡した時点 |
法定刑 | 6ヶ月以上7年以下の懲役又は禁錮 |
未遂・予備 | 未遂罪(203条) |
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日本の刑法 |
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刑事法 |
刑法 |
刑法学 ・ 犯罪 ・ 刑罰 |
罪刑法定主義 |
犯罪論 |
構成要件 ・ 実行行為 ・ 不作為犯 |
間接正犯 ・ 未遂 ・ 既遂 ・ 中止犯 |
不能犯 ・ 因果関係 |
違法性 ・ 違法性阻却事由 |
正当行為 ・ 正当防衛 ・ 緊急避難 |
責任 ・ 責任主義 |
責任能力 ・ 心神喪失 ・ 心神耗弱 |
故意 ・ 故意犯 ・ 錯誤 |
過失 ・ 過失犯 |
期待可能性 |
誤想防衛 ・ 過剰防衛 |
共犯 ・ 正犯 ・ 共同正犯 |
共謀共同正犯 ・ 教唆犯 ・ 幇助犯 |
罪数 |
観念的競合 ・ 牽連犯 ・ 併合罪 |
刑罰論 |
死刑 ・ 懲役 ・ 禁錮 |
罰金 ・ 拘留 ・ 科料 ・ 没収 ・ 牢死 |
法定刑 ・ 処断刑 ・ 宣告刑 |
自首 ・ 酌量減軽 ・ 執行猶予 |
刑事訴訟法 ・ 刑事政策 |
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プロジェクト 刑法 (犯罪) |
自殺関与・同意殺人罪(じさつかんよ・どういさつじんざい)とは、刑法第202条に規定されている罪の総称である。個別には、人を教唆して自殺させる自殺教唆罪(簡単に言うと「死ね」など言って人を自殺させようとすること)、人を幇助して自殺させる自殺幇助罪(自殺のための道具や場所、知識などを提供すること)、人の嘱託を受けてその人を殺害する嘱託殺人罪、人の承諾を得てその人を殺害する承諾殺人罪(同意殺人罪)を言う。
殺人罪の減刑類型であり、法定刑は全て、6ヶ月以上7年以下の懲役又は禁錮と殺人罪よりも軽い。これらの罪の未遂も罰せられる(刑法第203条)。
行為者が直接手を下したかどうかで区別される。自殺を決心している人に毒薬を提供するのは自殺関与で、本人の依頼を受けて毒薬を飲ませるのは同意殺人となる。判断が困難なケースもあるが、いずれにせよ同一構成要件内の犯罪なのでその区別はさほど重要ではない。
他者の自殺を教唆・幇助すると自殺関与となる。
自殺はその未遂も含めて処罰されないのにも関わらず、自殺関与が処罰されるのは何故かという疑問に対しては以下のように説明される。
まず、自殺が処罰されない理由として、自殺は違法な行為であるが、刑法の責任主義の観点から、責任が阻却されるため処罰されないとする立場と、自殺を違法ではない、違法性が阻却されるため処罰されないとする立場がある。 前者の立場は、自殺という違法な行為に関与した者をその共犯として捉え、処罰できるのであると説明する。 一方、自殺は違法ではないとする後者の立場は、共犯云々とは関係なく、本人には自己の生命を処理する自由があり、生命のあり方を決める事ができるのは本人だけだと考え、他人の意思決定に影響を及ぼし生命を侵害する行為自体が違法となる為、処罰できると説明する立場がある。
自殺の決意を抱かせる事によって人を自殺させた場合に自殺教唆罪となる。この自殺の決意は自殺者の自由な意思決定に基づくものでなければならず、行為者が脅迫などの心理的・物理的強制を与えた事によって、自殺する以外に道がないと思わせたような場合には、その決意は自由な意思決定とは言えず、自殺教唆ではなく殺人となる。 また、意思能力がなく、自殺の意味を理解していない者に自殺の方法を教えて自殺させたような場合にも、自殺者の決意は自由な意思決定とは言えず、殺人となる。
自殺を決心している人に、自殺を容易にする援助を行うと自殺幇助罪となる。
被害者が自己の死に対して真摯な同意を与えている場合に、その人を殺害すると同意殺人となる。
被害者が自殺を決心する過程や、殺害に対して同意を与える決心をする過程で錯誤があった場合にどのように扱うかが問題となる。 心中を持ちかけ、後から追死すると騙して自殺させた場合について、自殺の決意は「真意に添わない重大な瑕疵ある意思」であり、自殺者の自由な意思決定に基づくものではないとして、殺人罪の成立を認めた判例がある(最判昭和33年11月21日刑集12巻15号3519頁)。 この判例は、追死するという事が本質的に重大な事実であり、それに対する錯誤があるので自殺の決意は真意に基づくものではないと述べるが、学説の中には死という結果それ自体に対しては錯誤がないから、重大な瑕疵があるとは言えず、自殺教唆罪が成立すると述べるものもある。
同意殺人罪の着手時期については、殺人罪と同じである。自殺関与罪については、自殺の実行行為開始時であるという説と、自殺を教唆・幇助した時であるという説が対立している。両者の違いは、自殺関与が処罰される根拠の違いとリンクしている。
自殺関与を共犯と理解するなら、通説的見解である共犯従属性説により、正犯が実行に着手しないと共犯も成立しないのであるから、自殺関与罪の着手時期は自殺の実行開始時であると説明できる。一方、自殺関与を独立した犯罪と理解するなら、その犯罪行為の実行時、即ち自殺を教唆・幇助した時であると説明できる。
両説の違いは、自殺を教唆・幇助された者が、決心しながら翻意して実行しなかった時に生ずる。前者なら犯罪不成立だが、後者なら自殺教唆・幇助の未遂罪が成立する事になる。
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