- 英
- bovine virus diarrhea-mucosal disease
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牛ウイルス性下痢・粘膜病(うしういるすせいげりねんまくびょう、英:bovine viral diarrhea-mucosal disease,BVD-MD)とは牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)感染を原因とするウシの感染症。日本では家畜伝染病予防法において届出伝染病に指定されており、対象動物はウシ、スイギュウ。牛ウイルス性下痢・粘膜病による経済的損失は自然状態ではウシ1頭当たり10~40$程度だと推定されている[1]。ウシの下痢を主徴とする牛ウイルス性下痢症と粘膜病変を主徴とする粘膜病の原因ウイルスが同一であることから2つの名称を合わせて本名称となった。
目次
- 1 原因
- 2 疫学
- 3 症状
- 4 診断
- 5 治療
- 6 予防
- 7 関連項目
- 8 参考文献
- 9 外部リンク
原因
BVDVはフラビウイルス科ペスチウイルス属に属するRNAウイルスである。BVDV-1およびBVDV-2の2種が存在する。培養細胞に対する病原性により細胞病原性株(CPE+)、非細胞病原性株(CPE-)に分類される。
疫学
世界中に分布する。BVDVは多くのウシ科動物に感染し、感染動物の分泌物中にウイルスが含まれる。ウシでは免疫寛容を示す持続感染牛(PI牛)が主な感染源となる。
症状
牛ではこのウイルスに感染しても多くの場合は不顕性感染となるが、発熱、下痢、呼吸器症状、粘膜病、早期胚死滅、流産などを引き起こすことがある。妊娠牛が感染すると胎盤を介して胎子にこのウイルスが伝播することがあり、胎齢45~125日の胎子が感染し、流産することなく出生に至った個体は免疫寛容となり、持続感染牛となる。これは牛の免疫能の発達する胎齢は90~120日であり、これ以前の感染ではウイルス抗原を自己タンパク質として認識してしまうためである。また、胎齢100~150日に感染した胎子では内水頭症、脳幹、網膜、視神経の低形成が生じることがある。なお、胎齢150日以降での感染では抗体を有した子牛が娩出される。非細胞病原性株に持続感染している牛に同一血清型の細胞病原性株が重感染した場合あるいは持続感染している非病原性株が突然変異により病原性株に変異した場合に消化器の糜爛、潰瘍を特徴とした粘膜病を発症することがある。粘膜病は急性および慢性の経過をとるが、いずれも致死率は100%に近い。持続感染牛は遅くとも1歳齢までに粘膜病を発症する。
診断
ウイルスの分離同定。ただし、3ヶ月齢未満の仔牛では移行抗体の影響によりBVDV感染個体を陰性と判定してしまう可能性がある。その他の診断法としてRT-PCRが用いられる。
治療
特別な治療法は存在せず、対症療法を行う。持続感染牛は摘発淘汰する。
予防
BVDV-1を免疫原とした生ワクチンが存在するが、このワクチンはBVDV-2に対する効果は低い。持続感染牛の摘発淘汰はBVDVの蔓延に対する有効な手段である。
関連項目
参考文献
- 清水悠紀臣ほか 『動物の感染症』 近代出版 2002年 ISBN 4874020747
- 日本獣医内科学アカデミー編 『獣医内科学(大動物編)』 文永堂出版 2005年 ISBN 4830032006
- 安富一郎ほか 「臨床現場での牛ウイルス性下痢ウイルスに対する取り組み」 『家畜診療』 502号 231-241頁 全国農業共済協会 2005年
- 清水秀茂、栗原永治 「牛ウイルス性下痢・粘膜病免疫寛容牛の発生とその背景について」 『家畜診療』 526号 209~214頁 全国農業共済協会 2007年
- ^ Houe H. (2003). "Economic impact of BVDV infection in dairies". Biologicals. 31 (2): 137–43. PMID 12770546.
外部リンク
- 動物衛生研究所 > 疾病情報 > 家畜の監視伝染病 > 届出伝染病 > 牛ウイルス性下痢粘膜病
- 牛 編 - 牛ウイルス性下痢・粘膜病(届出)
- 牛ウイルス性下痢・粘膜病 (届出伝染病)
家畜伝染病 |
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言葉 |
家畜/家禽 - 牧畜/酪農/養豚/養鶏/養蜂 - 畜産/畜産業
病原体 - 感染 - 感染経路 - 伝染病/感染症 - 海外悪性伝染病 - 人獣共通感染症 - 公衆衛生 - アウトブレイク/パンデミック - ワクチン - 屠殺 - 殺処分 - 検疫
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組織・施設等 |
国際獣疫事務局(OIE) - 国際連合食糧農業機関(FAO) - 農林水産省/農業・食品産業技術総合研究機構/動物衛生研究所 - 検疫所/家畜防疫官 - 家畜保健衛生所/家畜防疫員/獣医師 - 日本家畜商協会/家畜商 - 屠畜場/化製場 - 保健所 - 農業共済組合/農業災害補償制度
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協定・法律等 |
SPS協定(世界貿易機関) - OIEコード(国際獣疫事務局) - 家畜伝染病予防法(農水省) - 狂犬病予防法(厚労省) - 口蹄疫対策特別措置法 - Category:畜産関連法規
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国際獣疫事務局 リスト疾病 |
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複数種 |
炭疽症 - オーエスキー病 - ブルータング - ブルセラ症 - クリミア・コンゴ出血熱 - エキノコックス症 - 口蹄疫 - 心水病 - 日本脳炎 - レプトスピラ症 - 新世界ラセンウジバエ - 旧世界ラセンウジバエ - ヨーネ病 - Q熱 - 狂犬病 - リフトバレー熱 - 牛疫 - 旋毛虫症 - 野兎病 - 水胞性口炎 - 西ナイル熱
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ウシ |
アナプラズマ病 - バベシア症 - 牛疫 - 牛海綿状脳症 - 結核 - 牛ウイルス性下痢 - 牛肺疫 - 牛白血病 - 出血性敗血症 - 牛伝染性鼻気管炎 - 皮膚病 - 悪性カタル熱 - タイレリア症 - トリコモナス病 - ナガナ病
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ヒツジ、ヤギ |
山羊関節炎・脳脊髄炎 - 伝染性無乳症 - 山羊伝染性胸膜肺炎 - 流行性羊流産 - 羊慢性進行性肺炎 - ナイロビ羊病 - 緬羊ブルセラオビス - 小反芻獣疫 - サルモネラ症 - スクレイピー - 羊痘/山羊痘
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ウマ |
アフリカ馬疫 - 馬伝染性子宮炎 - 媾疫 - 東部馬脳炎 - 西部馬脳炎 - 馬伝染性貧血 - 馬インフルエンザ - 馬ピロプラズマ病 - 馬鼻肺炎 - 馬ウイルス性動脈炎 - 鼻疽 - スーラ病 - ベネズエラ馬脳脊髄炎
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ブタ |
アフリカ豚コレラ - 豚コレラ - ニパウイルス感染症 - エキノコックス症 - 豚繁殖・呼吸障害症候群 - 豚水胞病 - 伝染性胃腸炎
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トリ |
クラミジア - 鶏伝染性気管支炎 - 鶏伝染性喉頭気管炎 - 鶏マイコプラズマ病 - あひる肝炎 - 家禽コレラ - 家禽チフス - 鳥インフルエンザ - 伝染性ファブリキウス囊病 - マレック病 - ニューカッスル病 - ひな白痢 - 七面鳥鼻気管炎
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ウサギ |
兎粘液腫 - ウサギ出血病
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ハチ |
アカリンダニ症 - アメリカ腐蛆病 - ヨーロッパ腐蛆病 - スモール・ハイブ・ビートル症 - ミツバチトゲダニ症 - バロア病
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魚類 |
伝染性造血器壊死症 - 伝染性造血器壊死症 - コイ春ウイルス病 - ウイルス性出血性敗血症 - 伝染性膵臓壊死症 - 伝染性サケ貧血 - 流行性潰瘍症候群 - 細菌性腎臓病 - ギロダクチルス症 - マダイイリドウイルス病
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軟体動物 |
Bonamia ostreae感染症 - Bonamia exitiosus感染症 - Marteilia refringens感染症 - Mikrocytos roughleyi感染症 - Perkinsus marinus感染症 - Perkinsus olseni感染症 - Xenohaliotis californiensis感染症
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甲殻類 |
タウラ症候群 - 白点病 - イエローヘッド病 - バキュロウイルス・ペナエイによる感染症 - モノドン型バキュロウイルスによる感染症 - 伝染性皮下造血器壊死症 - ザリガニ病
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その他 |
ラクダ痘 - リーシュマニア症
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家畜伝染病予防法上の監視伝染病 |
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法定伝染病 |
牛疫 - 牛肺疫 - 口蹄疫 - 日本脳炎 - 狂犬病 - 水胞性口炎 - リフトバレー熱 - 炭疽症 - 出血性敗血症 - ブルセラ症 - 結核病 - ヨーネ病 - ピロプラズマ症 - アナプラズマ病 - 牛海綿状脳症 - 鼻疽 - 馬伝染性貧血 - アフリカ馬疫 - 豚コレラ - アフリカ豚コレラ - 豚水胞病 - 家きんコレラ - 高病原性鳥インフルエンザ - ニューカッスル病 - 家きんサルモネラ感染症 - 腐蛆病
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届出伝染病 |
ブルータング - アカバネ病 - 悪性カタル熱 - チュウザン病 - ランピースキン病 - 牛ウイルス性下痢・粘膜病 - 牛伝染性鼻気管炎 - 牛白血病 - アイノウイルス感染症 - イバラキ病 - 牛丘疹性口炎 - 牛流行熱 - 類鼻疽 - 破傷風 - 気腫疽 - レプトスピラ症 - サルモネラ症 - 牛カンピロバクター症 - トリパノソーマ病 - トリコモナス病 - ネオスポラ症 - 牛バエ幼虫症 - ニパウイルス感染症 - 馬インフルエンザ - 馬ウイルス性動脈炎 - 馬鼻肺炎 - 馬モルビリウイルス肺炎 - 馬痘 - 野兎病 - 馬伝染性子宮炎 - 馬パラチフス - 仮性皮疽 - 小反芻獣疫 - 伝染性膿疱性皮膚炎 - ナイロビ羊病 - 羊痘 - マエディ・ビスナ - 伝染性無乳症 - 流行性羊流産 - トキソプラズマ病 - 疥癬 - 山羊痘 - 山羊関節炎・脳脊髄炎 - 山羊伝染性胸膜肺炎 - オーエスキー病 - 伝染性胃腸炎 - 豚エンテロウイルス性脳脊髄炎 - 豚繁殖・呼吸障害症候群 - 豚水疱疹 - 豚流行性下痢 - 萎縮性鼻炎 - 豚丹毒 - 豚赤痢 - 鳥インフルエンザ - 鶏痘 - マレック病 - 伝染性気管支炎 - 伝染性喉頭気管炎 - 伝染性ファブリキウス嚢病 - 鶏白血病 - 鶏結核病 - 鶏マイコプラズマ病 - ロイコチトゾーン病 - あひる肝炎 - あひるウイルス性腸炎 - 兎ウイルス性出血病 - 兎粘液腫 - バロア病 - チョーク病 - アカリンダニ症 - ノゼマ病
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Japanese Journal
- ウシパラインフルエンザウイルス3型,ウシRSウイルスおよびウシウイルス性下痢・粘膜病ウイルス感染のPCRによる検出
- 桐沢 力雄 [他],荻窪 恭明,田島 誉士[他]
- 酪農学園大学紀要. 自然科学編 19(1), 225-237, 1994-10-00
- NAID 110000363077
- 市販牛胎子血清および継代細胞からのウシウイルス性下痢-粘膜病ウイルスの分離
- ウシウイルス性下痢-粘膜病ウイルス持続感染ウシに対する粘膜病の実験的発現
- 中島 永昭 [他],福山 新一,平原 正,高村 恵三,岡田 伸隆,川津 健太郎,宇井 聡,児玉 和夫
- 日本獣医学雑誌 55(1), 67-72, 1993-02-15
- 非細胞病原性ウシウイルス性下痢-粘膜病ウイルス(cBVD-MDV)の持続感染ウシにおいて, 偶然的に発生した粘膜病(MD)例および細胞病原性ウシウイルス性下痢-粘膜病ウイルス(cBVD-MDV)を実験的に重感染させた例について, MDの発現を検討した. 偶然的に発生した症例では, 同居していた持続感染ウシ2頭中1頭にMDが発現した. MDの発現ウシからはcBVD-MDVが分離され, 持続感染ウイル …
- NAID 110003915756
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- 1.原因 牛ウイルス性下痢ウイルス(Bovine viral diarrhea virus: BVDV)はフラビウイルス科ペスチウイルス属に分類されるプラス1本鎖の40~60nmの球形RNAウイルスである。エンベロープを有する。豚コレラやボーダー病と近縁である。
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★リンクテーブル★
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ウシウイルス性下痢粘膜病
[★]
- 英
- virus
- 同
- ウイルス粒子 virus particle、ビリオン virion
- 関
- 微生物学、抗ウイルス薬、国試に出がちなウイルス
感染経路による分類 SMB.374
学名
目(order, -virales), 科(family, -viridae), 亜科(subfamily, -virinae), 属(genus, -virus), 種(species)
増殖過程
- 吸着 absorption
- 侵入 penetration
- 脱殻 uncoating
- ゲノムの複製 replication、遺伝子発現 transcription
- ウイルス粒子の組み立て assembly
- 放出 release
感染の分類
持続時間
ゲノム
- 一本鎖RNA(-)をゲノムとするウイルスはウイルス粒子内にRNA依存性RNA合成酵素を有する。
[★]
- 英
- mucosa (KL), mucous membrane (KH), endometrium (Z. L-20), mucosae (Z. P-27)
- ラ
- tunica mucosa
- 関
- 粘膜固有層、粘膜筋板、粘膜下組織、筋層
定義
粘膜
粘膜下の深層にある組織
[★]
- 英
- diarrhea
- 関
- 下痢症(症候としての下痢)
概念
- 24時間の糞便重量150-200g以上 or 24時間の糞便中の水分量が150-200ml以上のもの
病態
漢方医学
[show details]
[★]
- 英
- disease、sickness
- 関
- 疾病、不調、病害、病気、疾患
[★]
- 英
- cattle
- ラ
- Bos taurus
- 関
- ox