オルニチン回路
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/12/26 22:07:34」(JST)
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尿素回路(にょうそかいろ、Urea cycle)、またはオルニチン回路(Ornithine cycle)と呼ばれるこの回路は、アンモニアから尿素を生成する代謝回路である。この代謝回路は、1932年にハンス・クレブスとクルツ・ヘンゼライトによって初めて発見された。(クレブスのクエン酸回路は1937年に発見)。ほとんどの陸上脊椎動物がこの回路を有し、これら一連の反応は肝細胞のミトコンドリア、サイトゾル内で起こる。
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 目次
1 回路の調節2 尿素回路の反応系3 カルバモイルリン酸シンターゼ(CPS)4 関連項目5 外部リンク | 
回路の調節
尿素回路の反応速度はN-アセチルグルタミン酸の濃度に依存している。なぜなら第一段階の反応であるアンモニアと炭酸からカルバモイルリン酸を生成する反応を触媒する酵素:カルバモイルリン酸シンテターゼ I (CPS I)は、N-アセチルグルタミン酸によってアロステリックに活性化されるためである。
アミノ酸分解の速度が上がるとその脱アミノ反応によりグルタミン酸の合成速度が上がり、これがシグナルとなってN-アセチルグルタミン酸の合成速度が上がる。その結果、CPS I が活性化されて尿素回路が活発になる。N-アセチルグルタミン酸はグルタミン酸N-アセチルトランスフェラーゼによってグルタミン酸とアセチルCoAから合成され、特異的ヒドラーゼによって分解される。
尿素回路の反応系
反応系の第4段階で生成したフマル酸はクエン酸回路と同じ経路でオキサロ酢酸に変えられ糖新生に使われる。
| 段階 | 反応物 | 生成物 | 酵素 | 場所 | 
| 酵素名 | 略号 | EC番号 | 
| 1 | アンモニア + 炭酸 + 2ATP | 2ADP + リン酸 + カルバモイルリン酸 | カルバモイルリン酸シンテターゼI | CPS I | 6.3.4.16 | ミトコンドリア | 
| 2 | カルバモイルリン酸 + オルニチン | シトルリン + リン酸 | オルニチントランスカルバモイラーゼ | OTC | 2.1.3.3 | 
| 3 | シトルリン + アスパラギン酸 + ATP | AMP + ピロリン酸 + アルギニノコハク酸 | アルギニノコハク酸シンテターゼ | ASS | 6.3.4.5 | サイトゾル | 
| 4 | アルギニノコハク酸 | フマル酸 + アルギニン | アルギニノコハク酸リアーゼ | ASL | 4.3.2.1 | 
| 5 | アルギニン + 水 | 尿素 + オルニチン | アルギナーゼ | ARG I | 3.5.3.1 | 
カルバモイルリン酸シンターゼ(CPS)
真核生物には、カルバモイルリン酸シンターゼI (CPS I) とカルバモイルリン酸シンターゼII (CPS II) の2種類のカルバモイルリン酸シンターゼがある。ミトコンドリアにあるCPS Iはアンモニアからカルバモイルリン酸を合成して尿素回路にそれを供給し、サイトゾルにあるCPS IIはグルタミンのアミノ基からカルバモイルリン酸を合成してオロト酸を経由するピリミジン塩基の生合成経路に供給している。
関連項目
- 高アンモニア血症
- アミノ酸の代謝分解
- クエン酸回路
- 尿酸
外部リンク
- The chemical logic behind the urea cycle
- オルニチン研究会「オルニチンサイクル」
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| 代謝 (異化, 同化) |  
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| タンパク質 | タンパク質生合成 ·  アミノ酸 ·  アミノ酸合成 ·  アミノ酸の代謝分解 |  
|  |  
| 炭水化物 | 
| 同化 | 糖新生 ·  グリコーゲン合成 ·  光合成 (炭素固定) |  
|  |  
| 炭水化物異化 | 解糖系 ·  グリコーゲンの分解 ·  発酵 ·  細胞呼吸 ·  キシロース代謝 |  
|  |  
| 他 | ペントースリン酸経路 |  |  
|  |  
| 脂肪 | β酸化 ·  脂肪酸の合成 |  | 
 
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 広島県におけるタンデムマス新生児スクリーニング10年間の経験
- 但馬 剛,佐倉 伸夫,津村 弥来,宇都宮 朱里,原 圭一,白尾 謙一郎,岡田 賢,西村 裕,小野 浩明,中常 千代美,渡川 美弥子,吉井 千代子,濱川 以行,畑 郁江,重松 陽介
- 日本マス・スクリーニング学会誌 = Journal of Japanese Society for Mass-screening 20(3), 217-222, 2010-12-01
- NAID 10028165718
 
 
- 〈原著〉ラット短腸症候群モデルにおけるシトルリン添加中心静脈栄養療法の有用性の検討
- 森下 祐次,米倉 竹夫,山内 勝治,八木 誠,塩﨑 均,大柳 治正
- 近畿大学医学雑誌 35(2), 83-90, 2010-06-00
- … 結論:中心静脈栄養にシトルリン添加することより短腸症候群によるシトルリンをはじめ尿素回路を構成するアミノ酸値が上昇し,さらに肝の酸化ストレスや腸管粘膜委縮も改善した. …
- NAID 120002318013
 
 
- PO-131 短腸症候群における栄養学的予後因子としての尿素回路関連アミノ酸濃度(消化管機能不全と管理,ポスターセッション,病気の子供達に笑顔 小児外科に夢そして革新を,第47回 日本小児外科学会学術集会)
 
Related Links
- 尿素回路 腸管内などで産生されたアンモニアは、血液中を肝臓に輸送され、尿素、グルタミン酸、グルタミンに変換される。 尿素回路は、肝臓の肝細胞に存在し、体内で生成された有毒なアンモニアを、無毒な尿素に変換する。
- アンモニアが高濃度になると脳のアンモニア除去系[グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(逆行)とグルタミンシンテターゼの2つ]に負担がかかる(尿素回路の酵素の不足は知能障害や無気力,無感覚などの症状を呈する)。
Related Pictures





 
★リンクテーブル★
  [★]
- 英
- ornithine cycle
- 同
- 尿素サイクル 尿素回路 urea cycle、クレブス-ヘンゼライト回路 Krebs-Henseleit cycle、オルニチンサイクル
- 関
- オルニチン、尿素
ミトコンドリア内の反応
1) アンモニア + 炭酸 + 2ATP → ADP + Pi + カルバモイルリン酸 
            5)から
            ↓
2) カルバモイルリン酸 + オルニチン → シトルリン + Pi 
                   ↓
                   3)へ
サイトソルの反応
  2)から
  ↓
3) シトルリン + アスパラギン酸 + ATP → AMP + ピロリン酸 + アルギニノコハク酸 
4) アルギニノコハク酸 → フマル酸 + アルギニン 
5) アルギニン + 水 → 尿素 + オルニチン 
               ↓
               2)へ
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ornithine
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----------mitochondria
|
ornithine
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|<-carbamoyl phosphate {ornithine transcarbamoylase}
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citrulline
|
----------mitochondria
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citrulline
|
|<-aspartate {argininosuccinate synthase}
|
argininosuccinate
| 
|->fumarate {argininosuccinase}
|
arginine
|
|<-H2O
|           {arginase}
|->urea
|
ornithine
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臨床関連
  [★]
- 英
- urea
- 同
- カルバミド carbamide、ウレア
- 商
- アセチロール、イソジンシュガーパスタ、ウリモックス、ウレア、ウレパール、カフコデN配合、ケラチナミン、ケラベンス、コンベルビー、ノルニチカミン、パスタロン、パステルハップ 、ビタルファ、ピロニック、プラチアミン、ブロバリン、ブロムワレリル尿素 、ベギン、ユービット、ワイドコール
- 関
- 尿素クリアランス、ウレアーゼ
 O=C(NH2)2
生合成
分解
- 尿素はウレアーゼにより加水分解されて二酸化炭素とアンモニアを生じる。ヘリコバクター・ピロリ菌や尿路の細菌がウレアーゼを産生している
腎臓
- 多くの組織では浸透圧物質として無効であるが、腎臓のネフロンの多くの部位では有効な浸透圧物質である (文献名不明 p.373)
- 再吸収:近位尿細管、集合管(ADH作用時)
- 分泌 :ヘンレプールの細い部分
- GFRが低下すると血中尿素濃度と血中クレアチン濃度は上昇し、GFRが正常の1/3-1/4になると顕著となる。
腎髄質での尿濃縮機構
- 腎臓における尿の濃縮は(1)腎髄質の浸透圧勾配(NaClと尿素が形成)と(2)集合管による水透過性に支配されている。
- 尿素が腎髄質の浸透圧勾配に重要な役割を果たしている。
- シスプラチンは尿素サイクルを抑制し、尿濃縮機構を障害する。
外用薬
- 皮膚角質の水分保持力を増強させ、また角質溶解作用などにより角化皮膚をしっとりさせ、皮膚の状態を正常化させる。
- アトピー性皮膚炎、魚鱗癬、老人性乾皮症、掌蹠角化症、苔癬、進行性指掌角皮症などに使用される。
- 炎症を来している部位への外用により刺激感を生じる。
- 潰瘍、びらん、創面への直接塗布は避けるようにする。
臨床関連
- GFRが低下して血中に窒素化合物が蓄積している状態
 
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- 英
- (電気)circuit、(代謝)cycle
- 関
- サイクル、周期
  [★]
- 英
- tract
- ラ
- tractus