出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/01/11 02:39:12」(JST)
IUPAC命名法による物質名 | |
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6-(2,3-dichlorophenyl)-1,2,4-triazine-3,5-diamine
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臨床データ | |
胎児危険度分類 |
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法的規制 |
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投与方法 | 経口投与 |
薬物動態データ | |
生物学的利用能 | 98% |
代謝 | 肝臓 |
半減期 | 31-38時間 |
排泄 | 尿中94% 糞便中2% |
識別 | |
CAS番号 | 84057-84-1 |
ATCコード | N03AX09 |
PubChem | CID: 3878 CID 3878 |
DrugBank | DB00555 |
KEGG | D00354 |
化学的データ | |
化学式 | C9H7Cl2N5 |
分子量 | 256.091g/mol |
ラモトリギン(Lamotrigine、)は、抗てんかん薬の一つである。また、双極性障害の気分安定薬としても処方される。日本では2008年よりグラクソ・スミスクラインより商品名ラミクタールで販売され、適応は抗てんかん薬として、また双極性障害の気分エピソードの抑制である。
薬事法による劇薬および処方箋医薬品である。スティーブンス・ジョンソン症候群など重篤な皮膚症状の副作用があり、2012年1月には医薬品医療機器総合機構(PMDA)より、用量の多い場合に発症しやすくなるため用量遵守についての注意喚起がなされ[1]、2015年には死亡例をうけて厚生労働省から安全性速報が出され用量遵守の警告を含むよう添付文書が改定された[2]。ラモトリギンはグルクロン酸抱合を受け代謝されるため、バルプロ酸のようなこの代謝の阻害作用のある医薬品と併用された場合には用量は変わってくる[3]。
2008年、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、199の二重盲検試験を分析し、データに用いられた24週間では、抗てんかん薬服用時の自殺念慮や自殺企図が2倍―てんかん用途では3.5倍、精神科では1.5倍―に高まることを警告した(それ以上の期間は単に未調査)[4]。2009年4月23日以降、認可されたすべての抗てんかん薬に警告表示が追加された[5]。日本でも、自殺企図の既往や自殺念慮を有する場合に注意書きがある[6]。
Na+チャネルを抑制することにより、神経膜を安定させ、グルタミン酸などの興奮性神経伝達物質の遊離を抑え、抗けいれん作用を示すと考えられている。なお、双極性障害に対して効果を示す機序は明らかになっていない。
けいれん動物モデルにおいて抗けいれん作用が示されている。抗けいれん作用は、フェニトインやジアゼパムに比べ高いとされている。
日本での適応は以下である。
使用上の注意には、双極性障害の急性期の有効性と安全性は確立されていないと記載されている。
グラクソ・スミスクライン株式会社より販売されている。 日本では、100mgと25mg、小児用に5mgと2mgが販売されている。
販売例 | ||||
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バルプロ酸ナトリウムを含む製剤や、その他抗てんかん薬との併用により、投薬量、漸増量が異なる。医師の指示の下、服薬する。血中濃度を保つ必要があるため、定期的に服薬する必要がある。
2012年1月には医薬品医療機器総合機構(PMDA)より、用量遵守についての注意喚起がなされ、皮膚症状の発生頻度は、日本での統計では、服用量を遵守した場合に2.9%、承認された用量より多い場合には10.4%であった[1]。
2015年2月には、死亡例をうけて厚生労働省から安全性速報が出された[2]。
日本うつ病学会、日本神経精神薬理学会、日本臨床精神神経薬理学会の理事長は連名で声明を行い、医師に対して、ラモトリギンの効果と安全性、特に皮膚症状について説明し同意を得て、用量と投与間隔、併用薬を確認するようお願いしている[3]。なお用量が守られなかった場合には、救済制度は適用されない[3]。
日本うつ病学会による双極性障害の診療ガイドラインは、スティーブンス・ジョンソン症候群など皮膚症候群に注意し、少量からの漸増の推奨に言及している[7]。うつ病エピソードでは、リチウム、クエチアピン、オランザピンと同じく、「推奨される」に分類され、ラモトリギンには有効と無効の報告があり、無効の報告を解析すると重症では有効であった[8]。維持期では「最も推奨される」リチウムに続いて、いくつかの「推奨される」薬剤の1つである[8]。双極性障害II型の維持期では証拠が少なく、薬物療法が考慮されるのは頻回かつ重症のうつ病やI型の家族歴などが考えられケースによる[9]。
海外では双極性障害に対して、一時は、第一選択薬であったが、2008年の出版バイアスの調査[10]により急性のエピソードやラピッド・サイクルに有効性が見られなかった[11]。急性期に対する有効性や安全性は確立されていない[6]。
バルプロ酸またはフルボキサミン使用例にラモトリギンを追加投与する際、添付文書上は25mg/隔日又は25mg/日と定められているが、50mg/日から開始した為に、薬剤性過敏症症候群をきたし死亡した症例が報告されている[12]。
2014年内にラモトリギンを服用していた4人が、重度の皮膚障害を発症した後に死亡したことが判明した。医療機関から処方された同薬を適正量を超えて服用したとみられており、皮膚障害が出た後も投薬が続けられていた[13]。
高齢者では、生理機能が低下しているため慎重投与が必要である。
妊娠中の投与に関する安全性が認められていない。海外での調査において妊婦の服用により、大奇形発現リスクの増加は認められてはいないが、慎重投与が必要である。授乳中の婦人には、投薬中は授乳を避けること。
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ラミクタール錠小児用2mg
バルプロ酸ナトリウムを併用する場合 | バルプロ酸ナトリウムを併用しない場合 | バルプロ酸ナトリウムを併用しない場合 | |
バルプロ酸ナトリウムを併用する場合 | (1)本剤のグルクロン酸抱合を誘導する薬剤注1)を併用する場合 | (2)(1)以外の抗てんかん薬注2)を併用する場合 | |
1・2週目 | 12.5mg/日 (25mgを隔日投与) |
50mg/日 (1日1回投与) |
バルプロ酸ナトリウムを併用する場合に従う。 |
3・4週目 | 25mg/日 (1日1回投与) |
100mg/日 (1日2回に分割して投与) |
バルプロ酸ナトリウムを併用する場合に従う。 |
5週目以降 | 1〜2週間毎に25〜50mgずつ漸増する。 | 1〜2週間毎に最大100mgずつ漸増する。 | バルプロ酸ナトリウムを併用する場合に従う。 |
維持用量 | 100〜200mg/日 (1日2回に分割して投与) |
200〜400mg/日 (1日2回に分割して投与) |
バルプロ酸ナトリウムを併用する場合に従う。 |
バルプロ酸ナトリウムを併用する場合 | バルプロ酸ナトリウムを併用する場合 | バルプロ酸ナトリウムを併用しない場合 | バルプロ酸ナトリウムを併用しない場合 | |
本剤のグルクロン酸抱合を誘導する薬剤注1)を併用する場合 | 本剤のグルクロン酸抱合を誘導する薬剤注1)を併用しない場合 | (1)本剤のグルクロン酸抱合を誘導する薬剤注1)を併用する場合 | (2)(1)以外の抗てんかん薬注2)を併用する場合 | |
1・2週目 | 0.15mg/kg/日 (1日1回投与) |
0.15mg/kg/日 (1日1回投与) |
0.6mg/kg/日 (1日2回に分割して投与) |
バルプロ酸ナトリウムを併用する場合に従う。 |
3・4週目 | 0.3mg/kg/日 (1日1回投与) |
0.3mg/kg/日 (1日1回投与) |
1.2mg/kg/日 (1日2回に分割して投与) |
バルプロ酸ナトリウムを併用する場合に従う。 |
5週目以降 | 1〜2週間毎に最大0.3mg/kgずつ漸増する。 | 1〜2週間毎に最大0.3mg/kgずつ漸増する。 | 1〜2週間毎に最大1.2mg/kgずつ漸増する。 | バルプロ酸ナトリウムを併用する場合に従う。 |
維持用量 | 1〜5mg/kg/日 (最大200mg) (1日2回に分割して投与) |
1〜3mg/kg/日 (最大200mg) (1日2回に分割して投与) |
5〜15mg/kg/日 (最大400mg) (1日2回に分割して投与) |
バルプロ酸ナトリウムを併用する場合に従う。 |
単剤療法の場合 | バルプロ酸ナトリウムを併用する場合 | バルプロ酸ナトリウムを併用しない場合注3) | バルプロ酸ナトリウムを併用しない場合注3) | |
単剤療法の場合 | バルプロ酸ナトリウムを併用する場合 | (1)本剤のグルクロン酸抱合を誘導する薬剤注1)を併用する場合 | (2)(1)以外の薬剤注4)を併用する場合 | |
1・2週目 | 25mg/日 (1日1回投与) |
12.5mg/日 (25mgを隔日投与) |
50mg/日 (1日1回投与) |
単剤療法の場合に従う。 |
3・4週目 | 50mg/日 (1日1回又は2回に分割して投与) |
25mg/日 (1日1回投与) |
100mg/日 (1日2回に分割して投与) |
単剤療法の場合に従う。 |
5週目 | 100mg/日 (1日1回又は2回に分割して投与) |
50mg/日 (1日1回又は2回に分割して投与) |
200mg/日 (1日2回に分割して投与) |
単剤療法の場合に従う。 |
6週目以降 | 200mg/日 (最大400mg/日) (1日1回又は2回に分割して投与) (増量は1週間以上の間隔をあけて最大100mgずつ) |
100mg/日 (最大200mg/日) (1日1回又は2回に分割して投与) (増量は1週間以上の間隔をあけて最大50mgずつ) |
6週目300mg/日 7週目以降300〜400mg/日 (最大400mg/日) (1日2回に分割して投与) (増量は1週間以上の間隔をあけて最大100mgずつ) |
単剤療法の場合に従う。 |
リンク元 | 「抗てんかん薬」「Lamictal」 |
関連記事 | 「トリ」 |
系 | 薬物 | 大発作 | 小発作 | 皮質焦点発作 | 精神運動発作 | ミクローヌス発作 | 異型小発作 | てんかん重積 | 二次的全般発作 | 副作用 | 作用機序 |
バルビツール酸 | フェノバルビタール | ○ | ○ | 眠気、呼吸抑制、ポルフィリン尿症 | GABAA受容体に作用 | ||||||
プリミドン | ○ | × | ○ | ○ | × | ||||||
ヒダントイン | フェニトイン | ○ | × | ○ | 小脳症状(萎縮)、肝障害、骨髄抑制、 心室細動、歯肉増殖、フェニトイン中毒 |
不活性化状態のNaチャネルに結合 | |||||
エトトイン | ○ | ○ | ○ | ||||||||
オキサゾリジン | トリメタジオン | ○*1 | 催奇形性(最強) | シナプス前・後部に作用し伝達物質放出と 伝達物質への感受性に影響 | |||||||
サクシニミド | エトスクシミド | ○ | Cl-チャネルを開口させることによって、 GABA神経機能を亢進 | ||||||||
フェニル尿素 | アセチルフェネトライド | ○*2 | |||||||||
イミノスチルベン | カルバマゼピン | ○ | ○ | 小脳症状、発疹、骨髄抑制、肝障害 | Naチャネルをブロックする | ||||||
ベンズイソキサゾール | ゾニサミド | ○ | ○ | ○ | ○ | 体重減少、眠気、腎尿管結石 | T型のCa2+電流を抑制、 電位依存性のNa+チャネルの不活性化の状態を延長 | ||||
炭酸脱水素酵素阻害薬 | アセタゾラミド | ○ | ○ | ○ | 炭酸脱水素酵素阻害 | ||||||
ベンゾジアゼピン | ジアゼパム | ○ | ○*3 | 呼吸抑制、眠気 | GABAA受容体に作用 | ||||||
クロナゼパム | ○ | ○ | 眠気、めまい、小脳症状 | ||||||||
GABA分解酵素阻害薬 | バルプロ酸 | ○ | ○*4 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 悪心・嘔吐、肝障害、 高アンモニア症、毛髪の変化、催奇形性 |
GABA分解酵素阻害 |
*1 第一選択薬ではない *2 他薬が無効な精神運動発作のみに使用 *3 てんかん重積の第一選択薬 *4 第一選択薬
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