- 英
- Gram negative cocci
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/11/18 03:14:20」(JST)
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グラム陰性菌(グラムいんせいきん、英: Gram-negative bacteria)とはグラム染色においてクリスタルバイオレットによる染色が脱色される細菌の総称[1]。グラム陽性菌ではクリスタルバイオレットは脱色されない。グラム染色試験では対比染色として通常はサフラニン (en:safranin) がクリスタルバイオレットの後に加えられ、全てのグラム陰性菌は赤あるいは桃色に染色される。
かつてグラム陰性の真正細菌には、グラキリクテスGracilicutesというラテン語の分類名が与えられ、門相当として扱われた。命名はグラム陰性菌の薄い細胞壁にちなんでおり、ラテン語のgracilisグラキリス(細い、貧弱な)とcutisクティス(皮膚)の合成語であった。
目次
- 1 特徴
- 2 代表的な種
- 3 病原性
- 4 治療法
- 5 引用文献
- 6 関連項目
- 7 外部リンク
特徴
グラム陰性菌の特徴は下記のとおりである。
- 細胞質性の膜
- 薄いペプチドグリカン層(グラム陽性菌ではより厚い層である)
- ペプチドグリカン層の外側の外膜はリポ多糖類(リピドA、グラム陽性菌にはない)、多糖類、O抗原より構成される)により覆われている
- 特定の分子のための微細孔にように働くポリンが外膜に存在する
- ペプチドグリカン層と二番目の細胞膜の間にペリプラスム領域 (en:periplasmic space) と呼ばれる領域が存在する
- S層はペプチドグリカンよりもむしろ外膜に直接接触している
- 鞭毛を持つ細菌では鞭毛には2つではなく4つの補助のリングが存在する。
- タイコ酸およびリポタイコ酸 (en:lipoteichoic acid) は存在しない
- リポタンパク質は多糖類の基部に接触する
- 多くの種で芽胞を形成しない(例外としてCoxiella burnettiは芽胞様の構造物を形成する)
例外として古細菌の存在がある。古細菌も細菌と同様にグラム染色が行われ、多くは陰性である。しかし細胞壁の構造は大きく異なっており、そもそも外膜やペプチドグリカン層自体が欠如している。その他、膜や鞭毛の構造も異なる。
代表的な種
プロテオバクテリアはグラム陰性菌の主要なグループであり、大腸菌 (Escherichia coli)、サルモネラ、腸内細菌科、シュードモナス、モラクセラ、ヘリコバクター、ステノトロフォモナ、ブデロビブリオ、酢酸菌、レジオネラ、そしてWolbachiaなどのα-プロテオバクテリアが含まれる。他の代表的なグラム陰性菌のグループとしてシアノバクテリア、スピロヘータ、緑色硫黄細菌、バクテロイデスが含まれる。
グラム陰性菌は真正細菌の系統の大部分を占める。代表的なグラム陽性菌であるフィルミクテス門と放線菌門、一部の種がグラム陽性に染まるクロロフレクサス門とデイノコックス・テルムス門を除けば、ほとんど全ての真正細菌がグラム陰性に染まると言っても過言ではない。ただし、ドメイン真正細菌の中でフィルミクテス門と放線菌門は2番目と3番目に大きな門なので、記載種数はややグラム陽性菌の方が多い。
医学関係のグラム陰性の球菌は性行為感染症(淋菌)、髄膜炎(髄膜炎菌)、呼吸器症状(カタラリス菌)を引き起こす3種が含まれる。
医学関係のグラム陰性の桿菌は多数存在する。主に呼吸器系の障害を引き起こす桿菌としてインフルエンザ菌、肺炎桿菌 (en:Klebsiella pneumoniae)、レジオネラ・ニューモフィラ (en:Legionella pneumophila)、緑膿菌などがあり、泌尿器系に障害を引き起こす桿菌として大腸菌、ミラビリス変形菌 (en:Proteus mirabilis)、Enterobacter cloacae、セラチア菌 (en:Serratia marcescens)などがあり、消化器系に障害を引き起こすヘリコバクター・ピロリ、ゲルトネル菌 (en:Salmonella enteritidis)、チフス菌 (en:Salmonella typhi)などがある。
グラム陰性菌は病院の集中治療室のおいて菌血症を引き起こし、二次的に髄膜炎や人工呼吸器が関与した肺炎を引き起こすAcinetobacter baumaniiと関連がある。
病原性
グラム陰性菌の病原性には、細胞壁のある種の成分が関与している[1]。
グラム陰性菌の膜の外葉は脂質部位が内毒素として機能する複雑なリポ多糖類 (LPS) により構成されている。 循環系に内毒素が侵入した場合、発熱、呼吸促拍、低血圧を引き起こす。エンドトキシンショックを引き起こすと死亡することがある。ヒトではLPSはサイトカイン産生、免疫系の活性化による先天性免疫反応 (en:innate immune response) を引き起こす。炎症はサイトカイン産生による通常の反応であり、宿主にとって害となり得る。
治療法
グラム陰性菌の特徴の1つである外膜は、細胞壁の内膜(ペプチドグリカン)に作用する抗生物質、色素、洗剤から細菌を保護している。 このためグラム陰性菌はリゾチームやペニシリンに対する抵抗性を有する。 一方、EDTAを伴うリゾチーム、抗生物質のアンピシリンなどは病原性を持つグラム陰性菌の外膜に対抗するために発展した。クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、ナリジクス酸も有効である。
引用文献
- ^ a b Salton MJR, Kim KS (1996). Structure. in: Baron's Medical Microbiology (Baron S et al, eds.) (4th ed. ed.). Univ of Texas Medical Branch. ISBN 0-9631172-1-1. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/bv.fcgi?rid=mmed.section.289.
関連項目
- Braun's lipoprotein (en:Braun's lipoprotein)
外部リンク
- 3D structures of proteins from inner membranes of Gram-negative bacteria
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Japanese Journal
- グラム陰性球菌 (感染対策に役立つ臨床微生物 らくらく完全図解マニュアル) -- (感染対策に関わる 微生物の基礎知識と対策)
- <総説>プラークおよびプラーク関連疾患の解析(大学院修了者との1999〜2001年にわたるプロジェクト研究成果)
- 竹内 宏,山本 宏治,永原 國央,大友 克之,永山 元彦,田辺 俊一郎,梶本 忠保,大橋 静江,山田 敏彦,山本 正剛,松木 なみ子,作 誠太郎
- 岐阜歯科学会雑誌 29(3), 121-163, 2003-02-20
- … colonizerのグラム陰性線状菌と二層性の定常的細菌構築を形成したことは共通していた.歯肉縁下プラークでは,この二層性の定常的構築が,いわゆるtooth-associated plaqueの主要細菌であり,その表面にグラム陰性球菌群や桿菌群が増殖し,いわゆるenithelium-associated plaqueを形成すると見なし得た.そして,tooth-associated plaque中の細菌叢はとくに二層性構築形成細菌の菌叢が変化しないのに対して,epithelium-associated plaque中の細 …
- NAID 110000051290
Related Links
- こうした判定のミスを予防するために、操作に慣れるまでは対照となる検体(例えば グラム陰性の対照に大腸菌、グラム陽性の対照にブドウ球菌)を同じスライドグラス上で 一緒に染色して、染まり方を確認するのが薦められる。 後染色はサフラニンによる ...
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★リンクテーブル★
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- 64歳の男性。発熱、咳および痰が4日前に出現し、市販の感冒薬を服用したが、改善しないため来院した。
- 体温39℃。呼吸数30/分。脈拍108/分、整。血圧100/86mmHg。胸部では右背部でcoarse crackles(湿性ラ音)を聴取する。胸部エックス線写真で右中肺野に浸潤影を認める。
- 喀痰のGram染色標本を以下に示す。
- 起因菌はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [096I015]←[国試_096]→[096I017]
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- 64歳の男性。発熱、咳および痰が4日前に出現し、市販の感冒薬を服用したが改善しないことを主訴に来院した。体温39.2℃。呼吸数30/分。脈拍108/分、整。血圧100/86mmHg。胸部では右背部でcoarse cracklesを聴取する。胸部エックス線写真で右中肺野に浸潤影を認める。喀痰のGram染色標本を以下に示す。起因菌はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [101H018]←[国試_101]→[101H020]
[★]
- ラ
- Veillonella
- 同
- Veillonella属、ベイヨネラ、ベイロネラ属、ベイロネラ
- 関
- 細菌
[show details]
- アトポビウム属細菌、ゲメラ属細菌、ベイロネラ属細菌、アシドアミノコッカス属細菌、メガスフェラ属細菌等
- http:www.patentjp.com/13/L/L100983/DA10003.html
- ヒトの細菌叢に含まれる細菌(2)
- ヒトの口腔、消化管、膣の常在菌叢(normal flora)に含まれる。(2)
- 感染症において単離されることは稀。(2)
- たまに髄膜炎、骨髄炎、人工関節感染、胸膜肺感染症、心内膜炎、細菌血症のような重症感染症でベイヨネラ属が単独で病原体として単離されることがある。(2)
種類
- Veillonella dispar (2)
- Veillonella atypica (2)
- Veillonella parvula (2)
- Veillonella montpellierensis (2)
参考文献
- http://en.wikipedia.org/wiki/Veillonella
- 2. Veillonella montpellierensis Endocarditis
- http://www.cdc.gov/NCIDOD/EID/vol11no07/pdfs/04-1361.pdf
[★]
- 日
- 髄膜炎菌
- 英
- meningococcus
- 関
- 細菌、ナイセリア属
生物的特徴
感染経路
- 高頻度:関節炎
- まれ :化膿性結膜炎、副鼻腔炎、心内膜炎、肺炎
培養(SMB.215)
- 3-10%CO2存在下で24時間培養
- 血液感染培地、チョコレート培地
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- ラ
- Enterococcus faecium
- 日
- エンテロコッカス・フェシウム
- 同
- フェシウム菌
- 関
- 腸球菌属
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- 英
- Moraxella
- 関
- 細菌
モラクセラ属
ブランハメラ亜属
- 球菌
モラクセラ亜属
- 桿菌
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- 英
- negativity、negative、cryptic
- 関
- 潜在性、ネガティブ、負、隠れた、否定的
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- 英
- fungus、fungi、microbial
- 関
- 菌類、真菌、真菌類、微生物
[★]
- 英
- rhm
- 同
- 照射線量率定数 exposure rate constant
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- 英
- coccus
- 関
- 細菌