- 74歳の男性。発熱、咳および易疲労感のため来院した。3か月前から疲れやすさを自覚していたが、4日前から38℃台の発熱と咳とが出現した。意識は清明。体温38.6℃。脈拍96/分、整。血圧138/82mmHg。眼瞼結膜は蒼白。右下肺野にcoarse cracklesを聴取する。
- 血液所見:赤血球210万、Hb7.2g/dl、Ht22%、網赤血球6‰、白血球3,000(桿状核好中球3%、分葉核好中球46%、好酸球2%、好塩基球3%、単球12%、リンパ球34%)、血小板8.2万。
- 血清生化学所見:総蛋白6.5g/dl、アルブミン4.0g/dl、尿素窒素22mg/dl、クレアチニン1.6mg/dl、尿酸8.3mg/d、総コレステロール126mg/dl、総ビリルビン0.8mg/dl、AST40単位、ALT35単位、LDH520単位(基準176~353)、Na140mEq/l、K4.2mEq/l、Fe260μg/dl、フェリチン340ng/ml(基準20~120)。CRP3.4mg/dl。
- 骨髄血塗沫鉄染色標本を以下に示す。この疾患について正しいのはどれか。
- (1) 白血球機能異常はない。
- (2) 無効造血がみられる。
- (3) 2相性赤血球がみられる。
- (4) 白血病に移行することはない。
- (5) Philadelphia染色体がみられる。
- a. (1)(2)
- b. (1)(5)
- c. (2)(3)
- d. (3)(4)
- e. (4)(5)
[正答]
※国試ナビ4※ [099A032]←[国試_099]→[099A034]
★リンクテーブル★
[★]
- 71歳の男性。感冒症状のため近医を受診した際に赤沈の亢進を指摘され、精査のため来院した。3年前に大腸ポリープの内視鏡切除術を受けた。自覚症状はなく、全身状態も良好である。尿所見:蛋白(-)、糖(-)。血液所見:赤沈45mm/1時間、赤血球435万、Hb14.7g/dl、Ht43%、白血球7,100、血小板19万。血清生化学所見:総蛋白8.2g/dl、アルブミン4.3g/dl、IgG2,235mg/dl(基準960~1,960)、lgA356mg/dl(基準110~410)、IgM150mg/dl(基準65~350)、尿素窒素12mg/dl、クレアチニン1.0mg/dl、総ビリルビン0.9mg/dl、AST20単位、ALT18単位、LDH243単位(基準176~353)。CRP0.1mg/dl。血清免疫電気泳動写真を以下に示す。対応として適切なのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [099A033]←[国試_099]→[099A035]
[★]
- 30歳の男性。上腹部の違和感を訴えて来院した。2週前、乗用車を運転中に交通事故を起こし、ハンドルで腹部を強打した。上腹部に圧痛を伴う表面平滑な腫瘤を触れる。腹部超音波検査で膵頭部に径8cm大の嚢胞性病変を認める。この疾患で正しいのはどれか。
- a. 破裂しない。
- b. 自然消失しない。
- c. 膵癌を合併しやすい。
- d. 嚢胞内容の主成分は粘液である。
- e. 血清アミラーゼ値が上昇する。
[正答]
※国試ナビ4※ [099A031]←[国試_099]→[099A033]
[★]
- 英
- myelodysplastic syndrome, MDS
まとめ
- 異常な幹細胞(造血幹細胞レベルでの原因不明の質的異常)から単クローン性に血球が産生される疾患であり、慢性・非可逆性に進行する。治療不応性の経過をとり、予後不良であり、高率に白血病に移行する。汎血球減少がみられ、また形態の異常がみられる。NAPスコアは減少する。骨髄では無効造血がみられ、正形成~過形成となる。症状は無症状であることがあり、ある場合は汎血球減少に基づく症状である。治療は造血幹細胞移植が根治量であるが、適応がない場合は免疫抑制薬、ステロイド、造血因子(蛋白同化ステロイド)の投与、また赤血球、血小板の輸血を行う。
概念
- 異常な幹細胞(造血幹細胞レベルでの原因不明の質的異常)から単クローン性に血球が産生される
- 無効造血による血球減少、異形成(血球形態異常)、治療不応性、前白血球病的(白血病への移行)性質
- 本疾患に含まれる不応性貧血は難病に指定されている。
疫学
- 中高年層に好発し、50歳以上が70%以上。男女比は1.6:1。
病因
- 続発性:ファンコニ貧血
- 薬剤性・医原性:化学物質、放射線、抗悪性腫瘍薬(アルキル化剤)
- 放射線や抗悪性腫瘍薬(アルキル化剤)による悪性腫瘍は治療後5-7年後に起こることが多く、MDSを経てAMLとなる。染色体異常は-5/5q or -7/7q-が多い。
分類
- FAB分類とWHO分類がある。芽球の比率におけるMDSの定義が異なり、FAB分類では芽球の比率30%未満。WHO分類では芽球の比率20%未満としている。これ以上は急性白血病としている。
FAB分類
WHO分類
病態
- 造血幹細胞に発生した遺伝子異常に基づく血球減少症。
- 染色体異常は40-60%で認められ、-5、5q-、-7、7q-や第8染色体のトリソミーがある。
検査
末梢血
- 汎血球減少(1-3系統):(頻度)汎血球減少47.9%、貧血+血小板減少17.7%、貧血+白血球減少17.2%、貧血13.2%
-
- 数:正球性~大球性の貧血。ときに小球性。網赤血球数は低下するが、ときに上昇
- 形態:大小不同や奇形
- 数:好中球減少。
- 形態:好中球の過分葉。偽ペルゲル・フェット核異常。顆粒の減少。NAPスコア低下
骨髄
- 正形成~過形成 ← 造血能は失われておらず、補償的に過形成となるのではないか?異常な血球が産生される結果、無効造血をきたす。
- 80-90%の症例:正~過形成骨髄
- 10-20%の症例:低形成 → 再生不良貧血との鑑別必要
- 芽球比率は予後を左右する
鉄代謝
- 無効造血を反映
症状
- 無症状であることがあり、健診の血液検査異常で見つかることがある。
- 汎血球減少に基づく諸症状。
- 赤血球減少:貧血(動悸、息切れ、倦怠感)
- 白血球減少:不明熱、易感染性(発熱、咽頭痛)
- 血小板減少:出血傾向
合併症
- 約1/3の症例で急性骨髄性白血病(AML)に進展 ← 異常造血幹細胞の増殖は前白血病状態であり、進展は遺伝子異常の付加がきっかけとなる。
- Sweet症候群(急性好中球性皮膚症)(発熱、好中球増加、好中球湿潤性紅斑)
- 壊疽性膿皮症
治療
- 同種造血幹細胞移植:根治療法。適応は55歳以下。
- 免疫抑制薬、ステロイド、造血因子(蛋白同化ステロイド)
- 赤血球、血小板の輸血。
- 参考1
- リスクで治療法が変わる。
-
- 貧血:赤血球輸血、(輸血後鉄過剰症に対して)鉄キレート剤、(低EPO例)エリスロポエチン、(del5q例)レナリドミド
- 血小板減少:(<10,000/ulで出血症状を伴う)血小板輸血
- 好中球減少:(感染を併発したときに)G-CSF
- 重篤な造血不全による症状:アザシチジン
ガイドライン
- 1. 造血細胞移植ガイドライン骨髄異形成症候群(成人)
- http://www.jshct.com/guideline/pdf/2009MDS.pdf
参考
- 1. 難病情報センター | 不応性貧血(骨髄異形成症候群)
- http://www.nanbyou.or.jp/entry/327
- 2. 財団法人国際医学情報センター:がん Info / 骨髄異形成症候群
- http://www.imic.or.jp/cancer/c2033.html
- http://ganjoho.jp/public/cancer/data/MDS.html
- 4. [charged] 骨髄異形成症候群の臨床症状および診断 - uptodate [1]
- 5. IV.MDS の治療 1. 本邦における診療のガイドライン (京都大学 内山 卓/石川隆之)2005.4.4 改訂
- http://plaza.umin.ac.jp/~mhlw-mds/doctor/MDS.pdf
症例
- 78歳男性。微熱と全身倦怠感のため来院した。赤血球220万、Hb6.2g/dL、Ht23%、白血球2700、骨髄球3%、後骨髄球4%、好酸球3%、好塩基球2%、血小板3.6%、LDH 320IU/dL、CRP 3.4mg/dL、骨髄の過形成像、微小巨核球。
国試