出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/06/06 12:59:38」(JST)
脳: 脳幹 | |
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大脳
間脳
中脳
橋
延髄
脊髄
小脳
脳の矢状断。延髄、橋、中脳、間脳が脳幹。
脳内での脳幹の位置。赤色で示した部分が狭義の脳幹(下位脳幹)。オレンジ色で示した部分(間脳)まで含めて脳幹とする事もあり。
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名称 | |
日本語 | 脳幹 |
英語 | brain stem, brainstem |
ラテン語 | truncus encephali |
関連構造 | |
上位構造 | 脳 |
構成要素 | 広義では間脳および下位脳幹(橋、延髄、中脳)、狭義では下位脳幹と同じ意味で用いられる。 |
画像 | |
アナトモグラフィー | 三次元CG |
関連情報 | |
IBVD | 体積(面積) |
Brede Database | 階層関係、座標情報 |
NeuroNames | 関連情報一覧 |
NIF | 総合検索 |
MeSH | Brain+Stem |
グレイの解剖学 | 書籍中の説明(英語) |
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脳幹(のうかん、英: brain stem)は、中枢神経系を構成する器官集合体の一つ。延髄と橋、中脳と間脳を合わせて脳幹と呼ぶ。狭義の「脳幹」では間脳すなわち視床および視床下部を除外するが、この意味をより明確に表すため下位脳幹 lower brainstem という用語が用いられる。また、脳幹・(間脳)・小脳・大脳を合わせて脳と呼ぶ。
脳幹は多種多様な神経核から構成されており、その機能も当然ながら多様であり、この小さな部分に多数の生命維持機能を含む。
ヒトの場合で説明する。脳幹、および小脳は椎骨動脈系で栄養される。椎骨動脈は前脊髄動脈と後下小脳動脈(PICA)を分枝しした後、左右が合流して脳底動脈となる。脳底動脈は基本的に橋腹側部の脳底溝に沿って上行し、中脳の脚間窩で左右の後大脳脳脈(PCA)に分枝する。脳底動脈からの主要分枝は前下小脳動脈(AICA)と上小脳動脈(SCA)であるが、他に橋動脈という穿通枝も分枝している。橋動脈には傍正中動脈、短回旋動脈、長回旋動脈の3群が知られている。
特徴ある症候群を以下にまとめる。
部位 | 症候群 | 障害の部位 | 病巣側の症状 | 病巣反対側の症状 |
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延髄 | ワレンベルグ症候群(Wallemberg症候群、延髄外側症候群) | PICA還流域、延髄外側部 | 顔面の温痛覚障害(三叉神経脊髄路核)、小脳失調(下小脳脚)、ホルネル症候群(延髄網様体)、めまい、眼振(前庭神経核)、軟口蓋、咽頭、喉頭の麻痺(疑核) | 頸部以下の半身の温痛覚障害(脊髄視床路) |
デジュリン症候群(Dejerine症候群、延髄正中症候群) | 前脊髄動脈灌流域、延髄内側部 | 舌半分の萎縮、麻痺(髄内舌下神経核以下) | 顔面を除く片麻痺(交叉前錐体路)、頸部以下の触覚と深部知覚障害(内側毛帯) | |
バビンスキー・ナジョット症候群(Babinski-Nageotti症候群) | ワレンベルグ症候群とでデジュリン症候群の合併(単一の血管領域ではない) | ワレンベルグ症候群とでデジュリン症候群の合併 | ワレンベルグ症候群とでデジュリン症候群の合併 | |
橋 | ミルズ症候群(Mills症候群、橋上部外側症候群) | SCA灌流域、橋上部外側部 | 小脳失調(交叉前の上小脳脚)、不随意運動(交叉前の上小脳脚)、ホルネル症候群(橋網様体)、口蓋ミオクローヌス(ギラン・モラレの三角) | 顔面を含む半身温痛覚障害(三叉神経毛帯、脊髄視床路)、聴力障害(外側毛帯) |
レイモンド・セスチン症候群(Raymond-Cestan症候群、橋上部被蓋症候群) | 橋上部被蓋部 | 小脳失調(交叉前の上小脳脚)、MLF症候群、病巣側への側方注視麻痺(前頭眼野~PPRFへの交叉後線維)、口蓋ミオクローヌス(ギラン・モラレの三角) | 顔面を含む半身知覚障害(三叉神経毛帯、脊髄視床路、内側毛帯) | |
グルネ症候群(Grenet症候群、橋中部被蓋症候群) | 橋中部被蓋 | 顔面半分の温痛覚と触覚障害(三叉神経核)、咬筋麻痺(三叉神経運動核)、小脳失調(中小脳脚) | 頸部以下の半身の温痛覚障害(脊髄視床路) | |
橋下部外側症候群 | AICA灌流域、橋下部外側部 | 顔面半分の温痛覚障害(三叉神経脊髄路核)、小脳失調(中小脳脚)、ホルネル症候群(橋網様体)、難聴(上オリーブ核近傍の聴覚路)、顔面神経麻痺(髄内の核以下) | 頸部以下の半身の温痛覚障害(脊髄視床路) | |
ミヤール・ギュブレール症候群(Millard-Gubler症候群、橋下部腹側症候群) | 橋下部腹側部 | 外転神経麻痺(髄内の核以下)、顔面神経麻痺(髄内の核以下) | 片麻痺(錐体路) | |
フォヴィル症候群(Foville症候群) | 橋下部腹側に接する | 外転神経麻痺(髄内の核以下)、顔面神経麻痺(髄内の核以下)、病巣側への側方注視麻痺(PPRF) | 片麻痺(錐体路) | |
中脳 | ウェーバー症候群(Weber症候群) | 中脳上丘レベル | 動眼神経麻痺(髄内の動眼神経) | 片麻痺(大脳脚における錐体路) |
ベネディクト症候群(Benedikt症候群) | 中脳上丘レベル | 動眼神経麻痺(髄内の動眼神経) | 不全片麻痺(交叉前の赤核脊髄路、大脳脚におけつ交叉前錐体路)、上下肢不随意運動(赤核) | |
クロード症候群(Claude症候群) | 中脳下丘レベル | 動眼神経麻痺(髄内の動眼神経) | 小脳失調(交叉後の上小脳脚) |
また、病巣側、病巣反対側で症状に差がない場合もある。以下の様な症候群も知られている。
部位 | 症候群 | 障害の部位 | 症状 |
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橋 | 閉じ込め症候群(locked-in症候群) | 橋腹側の広範な病変 | 意識は清明(橋網様体は正常)、垂直性眼球運動と開閉眼以外の随意運動は消失(皮質橋路、錐体路) |
ocular bobbing | 橋の広範な病変 | 両眼球が急速に沈下してゆっくりと戻る。 | |
中脳 | パリノー症候群(Parinaud症候群) | 赤核背側部 | 垂直性注視麻痺(riMLF)と輻輳麻痺(責任神経核不明) |
アーガイル・ロバートソン瞳孔 | 視蓋全域からEW核への間の障害 | 対光反射消失、輻輳調節反射正常 |
神経変性疾患は脳幹の委縮を伴うことが多い。これらは頭部MRIのT1WIにて評価される場合が多い。以下に脳幹の計測値を記す(臨床神経学 35.126-130,1995 八木下ら)。
部位 | 正常測定値(mm) |
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中脳視蓋 | 2.6±0.6 |
中脳被蓋 | 11.1±1.4 |
橋上部被蓋 | 6.5±0.8 |
橋上部底部 | 17.4±1.4 |
橋下部被蓋 | 4.6±1.9 |
橋下部底部 | 15.3±1.0 |
延髄 | 11.3±1.4 |
第四脳室前後径 | 11.7±1.7 |
第四脳室横径 | 15.4±2.3 |
脳幹を様々な角度から見た動画。脳幹は後頭骨に開いた大後頭孔という穴を通して、脊髄とつながっている。(画像出典:Anatomography)
脳幹を剖出して側面から見た図。
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