多臓器機能障害症候群
- 同
- MODS
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/07/14 21:00:51」(JST)
[Wiki ja表示]
多臓器不全 |
分類及び外部参照情報 |
ICD-9 |
995.92 |
eMedicine |
med/3372 |
MeSH |
D009102 |
プロジェクト:病気/Portal:医学と医療 |
テンプレートを表示 |
多臓器不全(たぞうきふぜん、英: MOF; multiple organ failure)とは、生命維持に必要な複数の臓器の機能が障害された状態のこと。現代救急医療の最大の課題のひとつとされている。局所障害が枢要臓器に影響することによるPrimary MOFと、全身性炎症反応症候群から発展して生じるSecondary MOFがある。
概要
MOFという概念が注目されるようになった背景には、救急医療の発達がある。MOFは本来、死に至る上で誰もが通る過程であるが、救急医療が発達する以前においては、MOFから死への距離が非常に短く、ほとんど不可分であった。しかし、出血や腎不全、急性呼吸窮迫症候群など、死の前段階における症候を一つ一つ克服した結果として、1970年代より、集中治療中の患者の死因として、MOFが問題視されるようになってきたものである。
MOFの基本的な病態は、急性炎症反応とこれにともなう各種サイトカインなど化学伝達物質の発現増大によって、全身において同時多発的に障害を生じることにある。主な障害は下記のとおりである。
- 血管拡張と血流分布異常
- NF-κBの活性化によってもたらされるもので、血液分布異常性ショック(英語版)を誘発する。ただし後述の血管内皮障害が進展すると血管は収縮に転じる。
- 心収縮性の障害
- アドレナリンβ受容体とアデニル酸シクラーゼの間の情報伝達を阻害してカテコラミン反応性が低下することで生じるもので、心原性ショックを誘発する。
- 血管透過性亢進
- 好中球浸潤に伴うエラスターゼ放出による細胞障害などによって生じるもので、急性呼吸窮迫症候群や循環血液量減少性ショック(英語版)などを誘発する。
- 血管内皮障害
- NF-κBやケモカイン受容体の活性化によってもたらされるもので、微小血栓形成による塞栓や血流鬱滞を誘発する。
- 糸球体濾過量減少
- 血流分布異常や血管内皮障害による虚血、また炎症性サイトカインによって生じるもので、急性腎不全に発展する恐れが大である。
「多臓器」の定義はやや曖昧であるが、日本では多くの場合、肺・肝臓・腎臓・消化器系・循環器系・中枢神経系・凝固・線溶系の7つの機能のうち2つ以上が短期間ないし同時に不全になったときとされる。
重症度の判定には、SOFAスコアやAPACHE-IIスコアなど、いくつかの指標が提案されている。SOFAスコア(Sequential Organ Failure Assessment score)は簡便であるために比較的多用されており、2009年新型インフルエンザの世界的流行に際してマックマスター大学を中心として策定されたトリアージプロトコルでも採用された。
SOFAスコア
|
0 |
1 |
2 |
3 |
4 |
呼吸機能
PaO2/FiO2 [mmHg] |
x>400 |
400≧x>300 |
300≧x>200 |
200≧x>100
呼吸補助下 |
100≧x
呼吸補助下 |
凝固機能
血小板数 [×103/mm2] |
x>150 |
150≧x>100 |
100≧x>50 |
50≧x>20 |
20≧x |
肝機能
ビリルビン値 [mg/dL] |
<1.2 |
1.2〜1.9 |
2.0〜5.9 |
6.0〜11.9 |
>12.0 |
循環機能
血圧低下 |
なし |
平均動脈圧<70 mmHg |
ドパミン≦5γ
あるいはドブタミン投与
(投与量を問わない) |
ドパミン>5γ
あるいはエピネフリン≦0.1γ
あるいはノルエピネフリン≦0.1γ |
ドパミン>15γ
あるいはエピネフリン>0.1γ
あるいはノルエピネフリン>0.1γ |
中枢神経機能
Glasgow Coma Scale |
15 |
14〜13 |
12〜10 |
9〜6 |
6未満 |
腎機能
クレアチニン値 [mg/dL] |
1.2未満 |
1.2〜1.9 |
2.0〜3.4 |
3.5〜4.9
あるいは尿量が500mL/日未満 |
>5.0
あるいは尿量が200mL/日未満 |
現在のところ、各臓器の機能不全を個々に治療することはできるものの、これらが関連して一時に発生した場合、それぞれに対処していく以外に治療法がないのが現状である。このことから、MOFの状態に陥る以前にこれを予防することが最重要であり、その前段階である全身性炎症反応症候群(SIRS)の時点で対策を講じることが必要である。
参考文献
- Canadian Medical Association. “Appendix 1: Scoring criteria for the Sequential Organ-Failure Assessment (SOFA) score (PDF)” (英語). 2010年9月5日閲覧。
- 小濱啓次 『救急マニュアル 第3版』 医学書院、2005年。ISBN 978-4-260-00040-6。
救急医学(救急医療) |
|
病院前救護
(JPTEC) |
バイスタンダー |
善きサマリア人の法 - 応急手当普及員 - 救命講習 - 患者等搬送乗務員基礎講習 - 応急手当指導員 - 赤十字救急法救急員 - 緊急即時通報現場派遣員基礎講習 - ライフセービング - メディックファーストエイド - 野外救急法
|
|
救急隊 |
救急救命士 - 救急車 - 日本の救急車 - ドクターカー - ドクターヘリ(航空救急)
|
|
一次救命処置 |
国際ガイドライン - 心肺蘇生法 - 応急処置 - 救急処置 - 自動体外式除細動器 - RICEの法則 - 止血
|
|
カーラーの救命曲線 - 救命の鎖
|
|
|
|
初期診療
(JATEC) |
医療機関 |
救急指定病院 - 救急救命室 - 救命救急センター - 高度救命救急センター - 小児初期救急センター
|
|
外傷 |
創傷 - 脊髄損傷 - 腹腔内出血 - 肺挫傷 - 外傷性大動脈破裂 - 大動脈解離 - 心タンポナーデ - フレイルチェスト - 気胸 - 血胸 - 動物咬傷 - 虫刺症 - 熱傷 - 凍傷 - 溺水 - 窒息 - 骨折 - 服毒
|
|
病態・症候 |
外傷死の3徴 - 低体温症 - 熱中症 - 挫滅症候群 - 全身性炎症反応症候群 - ショック - 多臓器不全
|
|
二次救命処置 |
二次心肺蘇生法 - ABCDEアプローチ
|
|
|
災害医療 |
災害拠点病院(東京都災害拠点病院) - DMAT - JMAT - DPAT - トリアージ - CBRNE - 72時間の壁
|
|
軍事医療 |
衛生兵 - 軍医 - 従軍看護婦 - 衛生科 (陸上自衛隊) - 機上救護員 - 降下救助員 - 救難員 - 医官 - 歯科医官 - 防衛医科大学校 - メディック
|
|
被服・資器材 |
感染防止衣 - 術衣
|
|
関連項目 |
日本の救助隊 - 赤十字社 - 国境なき医師団 - 世界の医療団 - 救世軍 - スター・オブ・ライフ
|
|
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- 急性血液浄化療法を施行した体重10kg未満の重症敗血症児の検討
- 全身性炎症反応症候群(SIRS) (特集 迷わない!重症感染症への抗菌薬・抗ウイルス薬) -- (各種感染症・病態における診断の決め手と治療薬の選びかた)
Related Links
- 多臓器不全の原因. 多臓器不全の原因となる侵襲とは重症感染症、外傷、大手術、 ショック、膵炎、大量出血、播種性血管内凝固症候群(DIC)、心不全、低血圧、低酸素 血症、悪性腫瘍などがありますが、頻度的には重症感染症が圧倒的に多いとされています 。 ...
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- multiple organ dysfunction syndrome MODS, multiple organ dysfunctional syndrome
- 同
- 多臓器機能障害、多臓器障害、多臓器損傷、多臓器不全症候群
- 関
- 多臓器不全 multiorgan failure
定義
多臓器不全の構成要素 ICU.642改
[★]
- 英
- syndrome, symptom-complex
- 同
- 症状群
- 関
- [[]]
- 成因や病理学的所見からではなく、複数の症候の組み合わせによって診断される診断名あるいは疾患。
内分泌
先天的代謝異常
高プロラクチン血症
- 分娩後の視床下部障害によるプロラクチン分泌抑制因子の分泌抑制のため、高プロラクチン血症を呈する。
- 分娩に関係なくプロラクチン分泌抑制因子の分泌抑制をきたし、高プロラクチン血症を呈する。
性腺機能低下
- 嗅覚の低下・脱出、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症
- 肥満、網膜色素変性症、知能低下、低ゴナドトロピン性性器発育不全、多指症、低身長
性早熟
- 思春期早発症、多発性線維性骨異形成症、皮膚色素沈着
- 女性型の肥満、性器の発育障害の2主徴を示し、視床下部に器質的障害をもつ疾患群。
脳神経外科・神経内科
[★]
- 英
- organ
- ラ
- viscera
臓器、部位別の血流量比較
安静時の血流 (PT.296)
消化器
|
0.3
|
腎臓
|
0.2
|
脳
|
0.15
|
骨格筋
|
0.15
|
皮膚
|
0.1
|
心臓
|
0.05
|
気道
|
0.05
|
- その他 SP.569 表9-11も参考になるかも。
[★]
- 英
- multiple organ failure MOF
- 同
- 多臓器不全症候群、多臓器機能不全症候群 multiple organ dysfunction syndrome MODS ???????
- 図:ICU.643
- 肺(ARDS)、腎臓、心血管系、中枢神経系に障害を受けやすい。
[★]
- 関
- 機能不全、失敗、不十分、不全症、不足、無能、無能力、弁閉鎖不全、弁閉鎖不全症、機能不全症
[★]
- 英
- failure、insufficiency、(ラ)imperfecta
- 関
- 機能不全、失敗、不十分、不全、不足、弁閉鎖不全、弁閉鎖不全症、機能不全症