塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸水素ナトリウム、無水硫酸ナトリウム
- 関
- 瀉下薬
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/12/13 15:47:18」(JST)
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経口腸管洗浄剤(けいこうちょうかんせんじょうざい)とは腸管内容物を洗浄流去する為の経口の薬剤である。主に大腸内視鏡検査や大腸手術の前処理として使用される。ゴライテリー液とも呼ばれる。
マグコロール、ニフレック、ムーベン、オーペグ、スクリット、ニフプラス等の商品名で販売されている。マグコロールはスポーツドリンクに似た味であり、比較的飲みやすいとされる。味が悪く飲みにくいとされていたニフレックとムーベンは2004年にレモン味に変更され、若干ではあるが飲みにくさが改善された。[1][2]
目次
- 1 概要
- 2 使用方法
- 3 副作用
- 4 注釈
- 5 関連項目
概要[編集]
成分は クエン酸マグネシウムあるいは、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸水素ナトリウム、無水硫酸ナトリウムを配合したものであり、腸管での電解質組成と等張になるように調製してある。粉末として包装されているので用時に水に溶解させて使用する。腸管での水分吸収は電解質が吸収されることで発生する腸管内と体内の間の浸透圧差に応じて水分が移動する為である。一方、腸管で吸収できる電解質の量には限りがある為、等張の電解質液を大量に経口摂取すると浸透圧差が小さくなる。それ故、経口摂取した水分の殆どが腸管に滞留し峻下作用を表す。また継続的に投与することで腸管内の固形物を流去させる。経口腸管洗浄剤に先立って、前日および当日には低残渣の検査食の使用や食事制限が施される。また他の下剤を併用する場合もある。
使用方法[編集]
通常2L程度を使用するが、その全量を適宜分割して2時間程度の時間をかけて経口投与する。一日の最大使用量は4Lとされている。そして腸内の固形物を効率よく洗浄するために最初の500mL程度はゆっくりと飲むことが指示される。投与開始1時間ほどで肛門からの排泄が始まるが、その時点でも経口投与は継続する。排泄される液は当初は腸管内の固形物や濁りを含むが、排泄が進むにつれて澄明になり最終的には胆汁由来の着色(黄色)が認められる透明な液体が排泄されると腸内洗浄は十分である。液が残存すると内視鏡検査等の障害となるので腸管洗浄剤の排泄が完了してから検査あるいは手術に臨むことになる。
大腸造影の場合は、造影剤の付着を避けるため、クエン酸マグネシウムを用いる。
副作用[編集]
副作用としては、峻下作用を持つために腹部膨満感、ゴロゴロ、腹痛、吐き気などを催す場合もある。また、消化管には一日当たり約8リットルの消化液が分泌され、通常はその分泌された水の全量が再吸収されるが、経口腸管洗浄剤により水分の再吸収が抑制されるので脱水症状を引き起こす場合がある。その際には、めまい、ふらつき、さむけ、脱力感、一過性の血圧低下などの症状が現れる。
経口腸管洗浄剤は腸管穿孔あるいは腸閉塞の患者には使用禁忌である。また腸閉塞になることが疑われる患者に使用することで実際に腸閉塞に陥ったり、腸閉塞で壊死していた腸管が出血、腸管穿孔するなど重篤な副作用が現れる例があるので、重篤な便秘状態の患者は検査前の診察時にその点を医者によく説明すべきである。[3]
他の注意すべき副作用として、糖尿病治療患者への食事制限に起因する低血糖症、低ナトリウム血症、ショック、アナフィラキシー様症状、マロリー・ワイス症候群などがある。
注釈[編集]
- ^ 味の素株式会社 ニフレック
- ^ 日本製薬株式会社 ムーベン
- ^ 経口腸管洗浄剤「ニフレック」等による腸管穿孔及び腸閉塞に関する緊急安全性情報の発出について
関連項目[編集]
Japanese Journal
- 30.CIIPS患者の排便障害に対するニフレック洗腸(一般演題,第41回日本小児消化管機能研究会)
- 山口 貴也,稲次 直樹,吉川 周作,増田 勉,内田 秀樹,久下 博之,横谷 倫世,山岡 健太郎,下林 孝好,稲垣 水美
- 日本大腸肛門病学会雑誌 64(2), 62-66, 2011-02-01
- … 腸管拡張を抑え,良好な術野展開を可能にするための最適な前処置法の確立.方法:腹腔鏡下手術を行った67例をmagnesium citrate(MGC,マグコロールP®高張液)またはpolyethylene glycol electrolyte solution(PEG,ニフレック®等張液)を前処置として使用した2群に割り付け,手術時の小腸および大腸の拡張をスコア化し比較検討する.結果:全症例および大腸癌症例において,MGCがPEGと比較し小腸(上部,中部,下部)およ …
- NAID 10029094959
Related Links
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
ニフレック配合内用剤
組成
塩化ナトリウム
塩化カリウム
炭酸水素ナトリウム
無水硫酸ナトリウム
- 1袋(137.155g)中:11.37g
- 添加物として、マクロゴール4000(ポリエチレングリコール4000:等張化剤)、サッカリンナトリウム水和物、香料を含有する。
禁忌
- 胃腸管閉塞症及び腸閉塞の疑いのある患者[腸管穿孔を起こすおそれがある。]
- 腸管穿孔[腹膜炎その他重篤な合併症を起こすおそれがある。]
- 中毒性巨大結腸症[穿孔を引き起こし腹膜炎、腸管出血を起こすおそれがある。]
効能または効果
- 大腸内視鏡検査、バリウム注腸X線造影検査及び大腸手術時の前処置における腸管内容物の排除
- 本品1袋を水に溶解して約2Lとし、溶解液とする。
通常、成人には、1回溶解液2〜4Lを1時間あたり約1Lの速度で経口投与する。ただし、排泄液が透明になった時点で投与を終了し、4Lを超えての投与は行わない。
大腸内視鏡検査前処置
検査当日に投与する場合
- 当日の朝食は絶食(水分摂取のみ可)とし、検査開始予定時間の約4時間前から投与を開始する。
検査前日に投与する場合
- 前日の夕食後は絶食(水分摂取のみ可)とし、夕食後約1時間以上経過した後、投与を開始する。ただし、前日の朝食、昼食は残渣の少ないもの、夕食は固形物の入っていない液状食とする。
バリウム注腸X線造影検査前処置
- 検査当日の朝は絶食(水分摂取のみ可)とし、検査開始予定時間の約6時間前から投与を開始する。通常、成人には、溶解液の投与開始時にモサプリドクエン酸塩として20mgを溶解液(約180mL)で経口投与する。また、溶解液投与終了後、モサプリドクエン酸塩として20mgを少量の水で経口投与する。
大腸手術前処置
- 手術前日の昼食後は絶食(水分摂取のみ可)とし、昼食後約3時間以上経過した後、投与を開始する。
- 排便、腹痛等の状況を確認しながら慎重に投与すること。
約1Lを投与しても排便がない場合には、腹痛、嘔気、嘔吐のないことを必ず確認したうえで投与を継続し、排便が認められるまで十分観察すること。2Lを投与しても排便がない場合は投与を中断し、腹痛、嘔吐等がないことを確認するとともに、腹部の診察や画像検査(単純X線、超音波、CT等)を行い、投与継続の可否について、慎重に検討すること。
また、高齢者では特に時間をかけて投与すること。
本剤をバリウム注腸X線造影検査に用いる際には、2回目のモサプリドクエン酸塩水和物を投与した後はバリウム注腸X線造影検査までは飲食物の摂取を行わないこと。
慎重投与
- 狭心症、陳旧性心筋梗塞の患者[本剤投与により体が冷えるため、まれに胸痛を起こすおそれがある。]
- 腎機能障害を有する患者[まれに嘔吐があらわれることがある。]
- 腸管狭窄、高度な便秘の患者[腸閉塞及び腸管穿孔を起こすおそれがある。]
- 腸管憩室のある患者[腸管穿孔を起こしたとの報告がある。]
- 高齢者[腸管穿孔、腸閉塞を起こした場合は、より重篤な転帰をたどることがある。]
- 腹部手術歴のある患者[腸閉塞を起こしたとの報告がある。]
- 誤嚥を起こすおそれのある患者[「重要な基本的注意」の項参照]
重大な副作用
ショック、アナフィラキシー様症状
- ショック、アナフィラキシー様症状を起こすことがあるので、観察を十分に行い、顔面蒼白、血圧低下、嘔吐、嘔気持続、気分不良、眩暈、冷感、蕁麻疹、呼吸困難、顔面浮腫等があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
なお、自宅で服用させる場合は、「重要な基本的注意」の項を参照し、指導すること。
腸管穿孔、腸閉塞、鼡径ヘルニア嵌頓
- 腸管穿孔、腸閉塞、鼡径ヘルニア嵌頓を起こすことがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、腹部の診察や画像検査(単純X線、超音波、CT等)を行い、適切な処置を行うこと。
なお、自宅で服用させる場合は、「重要な基本的注意」の項を参照し、指導すること。
低ナトリウム血症
- 嘔吐によって低ナトリウム血症をきたし、意識障害、痙攣等があらわれることがあるので、この様な症状があらわれた場合には、電解質補正等の適切な処置を行うこと。
なお、自宅で服用させる場合は、「重要な基本的注意」の項を参照し、指導すること。
虚血性大腸炎
- 虚血性大腸炎を起こすことがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと。
なお、自宅で服用させる場合は、「重要な基本的注意」の項を参照し、指導すること。
マロリー・ワイス症候群
- 嘔吐、嘔気に伴うマロリー・ワイス症候群を起こすことがあるので、観察を十分に行い、吐血、血便等が認められた場合には、適切な処置を行うこと。
なお、自宅で服用させる場合は、「重要な基本的注意」の項を参照し、指導すること。
薬効薬理
腸管内洗浄効果
- 本剤の反復経口投与により、ラット(非絶食、絶食及び盲腸切除非絶食)では水様便を排泄して腸管内容物が有意に減少するのが観察され、明らかな腸管内洗浄効果が確認された。同様に、イヌ(16時間絶食)においても本剤の反復経口投与により水様便を排泄し、これが次第に透明液となるのが観察され、明らかな腸管内洗浄効果が確認された4)。また、モサプリドクエン酸塩水和物との併用投与により、モルモットでは結腸内水分重量が減少し、さらに結腸内洗浄効果が増強された5)。
電解質バランスに及ぼす影響4)
- 本剤はイヌ(16時間絶食)及びラット(24時間絶食)において、血清Na+、Cl-及び血液pHをほとんど変化させず、血清電解質バランスを大きく崩さなかった。またラット(24時間絶食)における尿量及び尿中電解質の変化は、生理食塩液及びBES(balanced electrolyte solution)に比し少なかった。
★リンクテーブル★
[★]
商品
[★]
- 英
- polyethylene glycol、polyethyleneglycol、PEG
- 同
- マクロゴール macrogol
- 商
- Colovate, Colyte, GoLYTELY
- (免疫グロブリンの処理)テタノブリン、ヘブスブリン、グロベニン、ヴェノグロブリン
- (経口腸管洗浄剤)ムーベン、ニフプラス、ニフレック
- (軟膏)ウレパール、フルコート、マクロゴール
- 関
- トリトン、ポリオキシエチレン
[★]
- 英
- intestinal lavage
- 関
- 洗腸
- 下剤の投与よりも強力な腸管内排出効果が期待されたが、エビデンスがない実験的医療にとどまる。(SQ.480)
- 適応は腸管球種が比較的遅い物質で他に有効な治療手段のない中毒
- 注入液にはポリエチレングリコール電解液(ニフレック)を用いる
[★]
塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸水素ナトリウム、無水硫酸ナトリウム