出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/09/14 15:55:59」(JST)
本来の表記は「胆囊癌」です。この記事に付けられた題名は記事名の制約から不正確なものとなっています。 |
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胆嚢癌(たんのうがん)は、胆嚢から発生する悪性腫瘍である。早期に発見されることが少なく、有効な治療法に乏しいため、全体的には予後の悪い癌である。発症率はハンガリー共和国やチリ共和国、日本で高く民族間での差が認められる。
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胆嚢癌は胆嚢内腔の上皮より発生する。初期の癌は胆嚢内腔に沿って平坦に発育することが多いが、胆嚢内腔にポリープ状に突出し超音波検査などで発見されることもある。癌はやがて胆嚢壁に浸潤し、リンパ管や神経に沿って転移を起こす。さらに増大した癌が胆管を閉塞すると黄疸や胆管炎を起こし、この時点で初めて自覚症状が出現する。癌は肝臓、十二指腸、結腸など周辺臓器を巻き込むとともに、肝臓、リンパ節、腹膜などに転移し、やがて個体を死に至らしめる。
厚生労働省による人口動態調査によると、日本における2006年の胆嚢癌および肝内胆管を除く胆道癌(胆管癌、乳頭部癌)による死者は16,855人で、男7,942人、女8,913人である。胆嚢癌は女性に多く、男女比は1:2~1:5である。8~9割の症例に胆石がみられる。
胆石症、胆嚢炎、膵胆管合流異常症、原発性硬化性胆管炎などが危険因子として知られている。そのほか、潰瘍性大腸炎、クローン病なども危険因子である。 新潟大学らの研究グループによる日本及びハンガリー共和国、チリ共和国での疫学的調査により幾つかの要因が明らかになっている[1]。
初期には症状がなく、胆石症などを契機に偶然発見されることが多い。進行癌になると、黄疸、右季肋部痛、食欲不振、全身倦怠感、体重減少などが出現する。検診で胆道系酵素(ALP, γ-GTPなど)の異常値を指摘され発見されることもある。
画像所見により癌の診断および進行度の判定を行う。胆嚢癌の進行度(Stage)はIからIVの4段階で表現される。国際的にはUICCのTNM分類が、日本国内では胆道癌取扱い規約が用いられる。
早期の胆嚢癌は外科的切除によりほぼ治癒する。進行胆嚢癌に対しては、外科的切除、化学療法(抗がん剤)、放射線療法を含む集学的治療が行われる。
根治切除(認識できる癌を残さず取る手術)が可能な場合に行われる。肝転移や腹膜転移を有する症例は切除による治療効果が望めないため、通常は対象とならない。2008年現在においても進行胆嚢癌に対する手術術式は統一されておらず、有効性に対する議論が続いている。
胆嚢のみを切除する術式である。リンパ節転移のない早期胆嚢癌に行われる。2008年現在ではそのほとんどが腹腔鏡下に行われる。
胆嚢近傍の肝実質(肝床部)も胆嚢と一緒に切除する術式。肝床切除術ともいう。胆嚢癌は肝床部に浸潤しやすいことから、肉眼で見えない癌の取り残しを防ぐ意味合いがある。同時に所属リンパ節郭清も行われる。進行胆嚢癌に対する手術術式としては比較的ポピュラーであるが、解剖学的区分を無視した肝切除に異論もある。
胆嚢に加え、肝臓の一部(S4a, S5)を解剖学的区分に沿って切除する術式。胆嚢から肝へ流入する静脈はまずこの領域へ入ることから、初期の肝転移はこの領域に発生するという理論に基づいている。微小転移が含まれる可能性が高い領域を系統的に切除することにより肝転移再発を抑制し、生存率を向上させることが狙いであるが、拡大胆嚢摘出術に対する優位性は明らかではない。
胆嚢、肝外胆管に加え、肝臓の右側半分強(体積比では約7割)を切除する術式。癌の浸潤が肝右葉の主要な動脈やグリソン鞘に及ぶ場合に行われる。
癌の浸潤範囲により、肝中央二区域切除術、肝右三区域切除術などが行われる。
上述した各種術式に膵頭十二指腸切除を加えるもの。癌が膵臓や十二指腸に浸潤している場合に検討される。また進行胆嚢癌に対し、膵頭周囲リンパ節の完全郭清を目的に行われることもある。肝と膵を同時に切除するという非常に侵襲の大きい術式であり、リスクを上回るメリットがあるかどうか特に慎重に検討される。
切除不能な進行胆嚢癌に対し行われる。確立された標準治療法は存在しないが、2008年現在ではゲムシタビンが進行胆道癌に対する事実上の標準治療薬と見なされている。なお、日本ではTS-1が胆道癌に対する効能・効果を取得しており、臨床第II相試験では30.5%の良好な奏効率を示したことから、核となりうる薬剤として期待されている。
進行胆嚢癌の根治切除後に術後補助化学療法として行われることもあるが、胆嚢癌の治療成績を向上させるという科学的根拠は2008年の時点では存在しない。
癌の縮小や症状の改善を期待して放射線の照射が行われることがある。
胆管の閉塞による胆汁のうっ滞(閉塞性黄疸)に対する治療法である。内視鏡を用いて乳頭部からチューブを挿入し、閉塞部の前後をバイパスする方法(ERBD, ENBD)と、体表から超音波ガイド下に肝内胆管へチューブを差し入れて胆汁を排出する方法(PTCD)がある。
早期胆嚢癌は切除されれば予後は良好で、Stage Iの5年生存率はおおむね90%を超える。Stage IIでも切除後の5年生存率は60%程度であるが、StageIII以降の治療成績はきわめて不良であり、5年生存は稀である。切除不能な胆道癌(胆嚢癌以外も含む)に対するゲムシタビン単剤投与の生存期間中央値は7.6ヶ月と報告されている。
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リンク元 | 「cancer of the gallbladder」「胆嚢腫瘍」「胆のう癌」 |
関連記事 | 「胆嚢」「嚢」 |
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
Henry Gray (1825-1861). Anatomy of the Human Body. 1918.
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