出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/06/17 07:41:34」(JST)
この項目では、力(ちから)全般について説明しています。タロットのカードについては「力 (タロット)」を、—力(りょく)については「バズワード」をご覧ください。 |
力(ちから)とは、
この項では 4 の自然科学における力について説明する。
力という概念は、何かに内在すると想定されている場合と、外から影響を及ぼすと想定されている場合がある。古代より思索が重ねられてきた。
プラトンは物質はプシュケーを持ち運動を引き起こすと考え、デュナミスという言葉に他者へ働きかける力と他者から何かを受け取る力という意味を持たせた。
アリストテレスは『自然学』という書を著したが、物質の本性を因とする自然な運動と、物質に外から強制的な力が働く運動を区別した。
6世紀のピロポノスは、物質そのものに力があると考えた。
アラビアの自然哲学者ら(アラビア科学)の中にはピロポノスの考えを継承する者もいた。
14世紀のビュリダンは、物自体に impetus(インペトゥス、いきおい)が込められているとして、それによって物の運動を説明した。これをインペトゥス理論と言う。
ベルギー出身のオランダ人工学者シモン・ステヴィン (Simon Stevin、1548 — 1620) は力の合成と分解を正しく扱った人物として有名である。1586年に出版した著書 "De Beghinselen Der Weeghconst " の中でステヴィンは斜面の問題について考察し、「ステヴィンの機械」と呼ばれる架空の永久機関が実際には動作しないことを示した[注 1]。つまり、どのような斜面に対しても斜面の頂点において力の釣り合いが保たれるには力の平行四辺形の法則(英語版)が成り立っていなければならないことを見出したのである。
力の合成と分解の規則は、ステヴィンが最初に発見したものではなく、それ以前にもそれ以後にも様々な状況や立場で論じられている。同時代の発見として有名なものとしてガリレオ・ガリレイの理論がある。ガリレオは斜面の問題がてこなどの他の機械の問題に置き換えられることを見出した。
その後、フランスの数学者、天文学者であるフィリップ・ド・ラ・イール (1640 — 1718) は数学的な形式を整え、力をベクトルとして表すようになった[注 2]。
ルネ・デカルトは渦動説 (Cartesian Vortex) を唱え、「空間には隙間なく目に見えない何かが満ちており、物が移動すると渦が生じている 」とし、物体はエーテルの渦によって動かされていると説明した[7][8]。
現代の力学に通じる考え方を体系化した人物として、しばしばアイザック・ニュートンが挙げられる。ニュートンはガリレオ・ガリレイの動力学も学んでいた。またデカルトの著書を読み、その渦動説についても知っていた(ただしこの渦動説の内容ついては批判的に見ていた)。
ニュートンは1665年から1666年にかけて数学や自然科学について多くの結果を得た。特に物体の運動について、力の平行四辺形の法則(英語版)を発見している。この結果は後に『自然哲学の数学的諸原理』(プリンキピア、1687年刊)の中で運動の第2法則を用いて説明されている[9]。
ニュートンはその著書『自然哲学の数学的諸原理』において、運動量 (quantity of motion) を物体の速度と質量 (quantity of matter) の積として定義し、運動の法則について述べている。ニュートンの運動の第2法則は「運動の変化は物体に与えられた力に比例し、その方向は与えられた力の向きに生じる 」というもので、これは現代的には以下のように定式化される。
ここで dp/dt は物体が持つ運動量 p の時間微分、F は物体にかかる力を表す。このニュートンの第2法則は、第1法則が成り立つ慣性系において成り立つ。
ニュートン自身は第2法則を微分を用いた形式では述べていない。運動の変化 (alteration of motion) を運動量の変化と解釈するなら、それは力積に相当する。
詳細は「エネルギー保存の法則」を参照
熱力学が形成される19世紀前半までは、現在のエネルギーに相当する概念が力(羅: vis, 英: force, 独: Kraft)と呼ばれていた。 たとえば、ルドルフ・クラウジウスは1850年の論文 ,,Über die bewegende Kraft der Wärme "[10]で熱力学第一法則について述べているが、Kraft という語を用いているし、その英訳でも Force が用いられている。
現在の運動エネルギーに対応する概念について、1676年から1689年の頃にゴットフリート・ライプニッツは vis viva と名付けた。これは当時の運動に関する保存則の議論の中で、保存量として提案されたものである。
1807年に、トマス・ヤングは vis viva にあたる概念をエネルギーと名付けたが、直ぐ様それが一般に用いられることはなかった。 力学の言葉として運動エネルギーやポテンシャル・エネルギーが定義されるのは1850年以降のことで、運動エネルギーは1850年頃にウィリアム・トムソンによって、位置エネルギーは1853年にウィリアム・ランキンによってそれぞれ定義されている[11]。
古典力学 | ||||||||||
運動の第2法則 |
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歴史 | ||||||||||
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表・話・編・歴
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力 force |
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量記号 | F |
次元 | M L T −2 |
種類 | ベクトル |
SI単位 | ニュートン (N) |
CGS単位 | ダイン (dyn) |
FPS単位 | パウンダル (pdl) |
MKS重力単位 | 重量キログラム (kgf) |
CGS重力単位 | 重量グラム (gf) |
FPS重力単位 | 重量ポンド (lbf) |
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古典力学における力(英語: force)は運動量の時間変化によって定義される。
ここで F は物体に働く力、p は物体の運動量、t は慣性系の時刻を表す。ニュートン力学において運動量は速度 v と慣性質量 m の積で表され、
また速度 v の時間微分は加速度 a であることから、物体の慣性質量は一定である場合について、次の関係が成り立つ。
この方程式は慣性系においてのみ成り立ち、慣性系は運動の第1法則によって定義される。
古典力学では、力は物体(あるいは場)の間で行われる相互の運動量の交換を示すものとされており、ベクトル量として表現されている。力の時間による積分(力積)は物体の運動量の変化量に等しい、とされる。つまり、運動が変化することと、力が作用することとは等価であるとされているのである。
力は文脈によって、相互作用 (interaction)、作用 (action) などとも呼ばれる。ただし、相互作用はポテンシャルを指すこともあり、また作用は解析力学においては力と異なる概念として定義されている。
静力学では力は基本的な状態量になる。力を構成する要素は、力の大きさ (magnitude)、力の向き (direction)、作用線の方向、作用線の位置である[12]。作用線 (line of action) とは力が及ぼされる点(作用点)を通り、力の向きに対して平行な直線のことである。 また、力が2体力である場合には、力を及ぼすものと力が及ぼされるものとの組を考えることができる。すべての力が2体力であるなら、それぞれの力は互いに独立であり、物体にかかる正味の力 (net force) はそれぞれの独立な力の単純な和として表される[12]。
たとえば、物体 A に物体 B, C が力を及ぼしている場合、物体 A に働く正味の力は、
と分解することができる。ここで F A は物体 A に働く正味の力、F B → A, F C → A はそれぞれ物体 B, C が物体 A に及ぼしている力を表す。このことは A に力を及ぼす物体が増えても同様に成り立つ。
その物体の速度が変化しないとき、力が釣り合っていると言う。例えば、自動車が時速 40 km/h のまま直進しているとき、車体にかかる力は釣り合っている。この時、エンジン等によって動かされた車輪が加速しようとする力と車軸や空気の摩擦によって減速しようとする力が釣り合っている、と考えるのである。
力の合成とは、ある点に働く複数の力を 1 つの等価な力として表すことを言う。またその逆の操作を力の分解と呼ぶ。合成された力のことを合力 (resultant force) という。 力はベクトルとして定義されているので、ベクトル空間における加法の規則に従い合成と分解を行うことができる。
力の合成や分解をするための手続きは力の平行四辺形(英語版)を用いる。
連続体力学などの分野では、力は次の 2 つに分類される。
力は物理学の根幹にかかわるものであるが、力の定義づけは自明ではないともいわれる[4]。アイザック・ニュートンは『自然哲学の数学的諸原理』において力と質量について明確な定義を与えていない。現代的な視点では、ニュートン力学における力は運動の第2法則 F = ma によって定義されるものと解釈されるが、この解釈のもとでは、比例定数の慣性質量 m が未定義な量であるために、力と慣性質量の定義が独立しておらず、不満である。そのため、力と質量の定義を分離すべきという批判がなされている[4]。
(18世紀後半~19世紀前半頃に西欧で科学と呼ばれるある種の知識が生まれた、と科学史家らによってされる訳だが)、その「科学」では、人間の眼に見えることや肉体的に感覚できることを重視し、反対に肉眼に見えないことや肉体で感覚できないことは軽視して言説から除こうとする考え方が1つの大きな流れとしてあった。肉眼で見えないことの実在を信じられない人々は、そうした目に見えないことに関する記述を「形而上的」と呼びつつ遠ざけた[注 4]。[要出典]
こうした考え方を特に徹底して行おうとする人々にとっては、(物体の《位置》という概念ならば、眼で見え測ることができるので、受け入れることができると思われたが)、物体に働いているとされた“力”なるものについては、実際には誰も見たことも無いし、手で触れたこともないので、受け入れたくない概念であった。エルンスト・マッハやグスタフ・キルヒホフは、「運動の説明に“力”という得体の知れない概念を持ち込んでいる」と述べて、それを嫌い、力という概念を一切排除した力学を自ら構築した。[要出典]
また19世紀末の科学界で隆盛を誇っていたオストヴァルトらのエネルギー論からも、古典力学的“力”の概念は盛んに批判された。さらに電磁気学が成立すると、電磁気的自然論からも古典力学的“力”の概念は批判された。[要出典]NASAのサイトでは「自由物体の動きに変化を起こしたり、あるいは固定物体に応力を与える基となるagent(エージェント)[17]」といった説明になっている。
詳細は「基本相互作用」、「ワインバーグ=サラム理論」、および「量子色力学」を参照
物理学の素粒子論において相互作用は、電磁相互作用、弱い相互作用、強い相互作用、重力相互作用の 4 つに分類される。
英語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります。
The Mathematical Principles of Natural Philosophy (1729)
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英語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります。
The Mathematical Principles of Natural Philosophy (1846)
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