出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/01/10 15:23:02」(JST)
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ミオパチー(ミオパシー、Myopathy, (複)-ies)とは、Myo-(筋肉)と-pathy(病、苦痛)からなる単語であり、一般的には筋肉の疾患の総称を指し、非常に多くの病気を含んでいる。筋疾患の症状の大半は、筋肉(骨格筋)が萎縮することによっておこる筋力の低下である。筋肉が萎縮する原因には大まかに2つあるが、1つは筋肉自体に問題がある場合であり、もう1つは筋肉を動かす神経に問題がある場合である。前者を筋原性疾患(ミオパチー、Myopathies)といい、後者を神経原性疾患(ニューロパチー、Neuropathies)という。ミオパチーの中では筋ジストロフィー (Muscular Dystrophy)が非常に有名であり、ニューロパチーでは筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis、ALS)がよく知られている。いずれも極度の筋力低下を伴う重篤な難病である。
目次
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筋肉の萎縮は体幹に近い部分から進行するタイプ(近位型、proximal)と体幹から離れた手足から進行していくタイプ(遠位型、distal)が存在し、近位型の方が圧倒的に多い。また、遺伝性(Hereditary)のものと散発性(Acquired or Sporadic)のものとに大別される。原因別に分類すると、遺伝性、内分泌性、代謝性、免疫不全、炎症性等、種々の要因により多くのタイプのミオパチーが存在する。一般的に、炎症性のものは筋炎(Myositis)と呼ばれる。ミオパチーに分類される疾患は種類が多く、すべてを記載することはできないが、代表的なものを以下に列挙する。
1. 筋ジストロフィー(Muscular Dystrophies) a)デュシェンヌ型筋ジストロフィー b)ベッカー型筋ジストロフィー c)肢帯型筋ジストロフィー d)顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー e)眼筋咽頭型筋ジストロフィー f)エメリ•ドレフュス型筋ジストロフィー g)先天性筋ジストロフィー h)遠位型筋ジストロフィー(遠位型ミオパチー) i)筋強直性ジストロフィー
2. 遠位型ミオパチー(Distal Myopathies) a) 縁取り空胞型遠位型ミオパチー b) 三好型遠位型ミオパチー c) 眼咽頭型遠位型ミオパチー d) Welander型遠位型ミオパチー
3. 先天性ミオパチー(Congenital Myopathies) a) ネマリンミオパチー b) ミオチューブラーミオパチー c) 還元小体ミオパチー d) セントラルコア病 e) 先天性筋線維タイプ不均等症
4. 甲状腺中毒性ミオパチー(Thyrotoxic Myopathy) a) 甲状腺中毒性四肢麻痺 b) 甲状腺中毒性周期性四肢麻痺 c) 甲状腺機能低下ミオパチー
5. 糖原病(Glycogenoses) a) 糖原病I型(フォンギールケ病) b) 糖原病II型(ポンペ病) c) 糖原病III型(フォーブス病) d) 糖原病IV型(アンダーソン病) e) 糖原病V型(マッカードル病) f) 糖原病VI型(ハース病 ) g) 糖原病VII型(垂井病)
6. 周期性四肢麻痺(Periodic Paralysis)
7. ミトコンドリアミオパチー(Mitochondrial Myopathy)
8. ステロイドミオパチー(Steroid Myopathy)
9. アルコール性ミオパチー(Alcoholic Myopathy)
10. 炎症性ミオパチー(Inflammatory Myopathies) a) 封入体筋炎 b) 皮膚筋炎 c) 多発筋炎 d) サルコイドミオパチー
11. 内分泌性ミオパチー(Endocrine Myopathy)
12. 脂質蓄積障害性ミオパチー
13. HIV-associated Myopathies
14. Hyaline Body Myopathy
15. 重症筋無力症(Myasthenia Gravis)
16. 筋無力症候群(Myasthenic Syndrome)
17. ミオグロビン尿症(Myoglobinuria)
18. ダノン病(Danon Disease)
筋肉を思い通りに動かすには、筋肉が正常に機能するとともに、筋肉に動かす指令を伝える神経が正常に機能しなければならない。したがって、どちらか一方にでも問題があれば、結果として筋肉は思い通りには動かせなくなってしまう。筋肉は絶えずある程度の負荷を与えなければ、萎縮していく運命にある。健常人は特に運動をしなくても、日常生活をしているだけで筋肉には最低限の負荷が与えられるため、問題となることはほとんどない。すなわち、普通に生活をしているだけでも、無意識のうちにかなりの筋力を使っているのである。ところが、筋原性であれ、神経原性であれ何らかの原因で筋肉に異常を来たし筋肉の動きに制約が生じてしまうと、筋肉は徐々に萎縮を始め、さらに筋力が低下してしまうという悪循環に陥ってしまう。
ミオパチーに分類される疾患の多くは遺伝子疾患である。骨格筋は筋細胞からなる筋繊維が束となっており、筋肉を構成する細胞と種々のタンパク質が、複雑かつ精巧なネットワークを形成して筋肉という組織を形づくり機能させている。遺伝子の塩基配列はタンパク質のアミノ酸配列を指定する設計図であり、遺伝子に異常があれば異常なタンパク質が生成される結果となる。この異常なタンパク質で構成された筋肉は何らかの欠陥をかかえており、どの遺伝子(タンパク質)にどんな異常があるかによっても様相は異なるが、時には致命的となる場合もある。上述した筋ジストロフィーにもいくつかのタイプが存在するが、デュシェンヌ型筋ジストロフィーは骨格筋を構成するジストロフィンという巨大なタンパク質をコードするdystrophin遺伝子の変異によるものであり、変異の様式により、重度なデュシェンヌ型と軽度なベッカー型に分類されている。筋肉を構成するタンパク質には巨大なものが多く、同じ遺伝子内の変異でも、変異の様式により症状に違いが生じ得る。また、代謝に重要なミトコンドリアもDNA(遺伝子)を保持しているが、ミトコンドリアDNAに変異があれば、筋肉などのエネルギー消費の激しい組織に症状が現れることが多い。
ミオパチーは種類が多く原因も多岐にわたっている。したがって、治療法もそれぞれ異なってくるが、根本的な治療法がないものも多い。近年、筋ジストロフィーをはじめとする筋疾患のモデル動物の作製、治療法の開発が積極的に行われつつある。また、iPS細胞の開発は再生医療に大きなインパクトを与えたが、まだまだ発展途上の段階であり、本格的に臨床応用されるまでにはかなりの時間を要するものと考えられている。
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リンク元 | 「筋疾患」 |
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筋疾患 | 神経疾患 | |
myopathy | neuropathy | |
筋力低下 | 近位筋優位 | 遠位筋優位 |
神経原性 | 筋原性 | |
下位運動ニューロン障害 | ||
筋萎縮 | 遠位筋中心 | 近位筋中心 |
線維束性攣縮 | あり | なし |
筋電図 | 高振幅 | 低振幅 |
long duration | short duration | |
giant spike | ||
(代償的な筋線維の興奮) | ||
筋逸脱酵素 | ー | CK↑ |
筋生検 | 群性萎縮(小角化線維) | 孤発性萎縮(筋線維の大小不同、中心核の増加) |
疾患 | ALS | 筋ジストロフィー |
SPMA | 多発性筋炎 |
遺伝性 | 遺伝性ミオパチー | 筋ジストロフィー |
ミトコンドリアミオパチー | ||
非遺伝性 | 外因性筋障害 | ステロイドミオパチー |
crush syndrome | ||
ischemia | ||
炎症性ミオパチー | 多発筋炎・皮膚筋炎 | |
内分泌性・代謝疾患性 | 甲状腺機能低下症 | |
低カリウム性ミオパチー | ||
アルコール性ミオパチー | ||
その他 |
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