- 英
- The Bethesda System TBS
- 関
- 扁平上皮内病変
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/06/17 20:47:01」(JST)
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医会分類(いかいぶんるい)は日本産婦人科医会が検討している「ベセスダシステム2001準拠子宮頸部細胞診報告様式」のこと。従来の日母分類に代わる子宮頸癌の新しい細胞診報告様式を目指している。
- 日本産婦人科医会第17回記者懇談会(H20.12.10)で発表した[1]。懇談会では子宮頸がん検診の精度管理、細胞診報告様式・HPV検査の解説がなされ、報告様式についての意見が求められた。
目次
- 1 解説
- 1.1 標本の種類
- 1.2 標本の適否
- 1.3 細胞診判定
- 2 臨床的な位置づけ
- 3 背景
- 4 課題
- 5 参考図書
- 6 脚注
- 7 関連項目
解説
ベセスダシステム2001準拠子宮頸部細胞診報告様式(通称:ベセスダシステム、医会分類)では、
①標本の種類
②標本の適否
③細胞診判定
④細胞所見 等
の欄が用意されている。
標本の種類
子宮頸部擦過材料をスライドに塗った標本と米国で主流になっている液状検体の2種がある。
- 液状検体を用いる方法はLBC(liquid-based cytology)と呼ばれ米国では主流となっている。LBC標本は観察しやすいものの、LBC専用採取容器代がかさむ[2]。
標本の適否
作製された細胞診標本が病変部検査に適しているかどうかで適正と不適正に分かれる。適正の場合に次の細胞診判定に進むことができる。
- 細胞が採取されていないときや出血・高度炎症などのために判定できないとき、不適正検体となる。不適正は偽陰性を減少させるためにも欠かすことのできない判定結果である。したがって不適正の場合は再検査。
細胞診判定
陰性、扁平上皮系異型、腺系異型に分かれている。
陰性は次回定期検診。
扁平上皮系異型と腺系異型の場合は次の対応に進む。次の対応は、
①HPV検査
②6ヶ月以内の細胞診再検
③コルポスコピー
④生検 等
である。
- 次の対応がHPV検査や6ヵ月後の細胞診再検であるのは判定がASC-US(アスクユーエス、アスカス)の場合である。
- 次の対応がコルポスコピー、生検となるのは判定がASC-H(アスクエッチ),LSIL,HSIL,SCCおよび腺系異常(AGC等)である。
臨床的な位置づけ
ベセスダシステム(THE BETHESDA SYSTEM[3])は子宮頸部細胞診がスクリーニングではあるものの、病変部診断を示すことがありmedical consultationとなることが考慮されている。細胞診結果が臨床所見、他の臨床検査結果、生検結果等と組み合わされ、患者にとって最終診断となり治療に結びつくものとなる。
背景
子宮頸癌は胃癌とともに最近10年間で死亡率および罹患率はほぼ横ばいになっているが、20歳代、30歳代の子宮頸癌患者は激増している。この世代の女性人口10万人当たり1990年には15人を超え、2001年には30人を超えた(0期を含む)。また多くの子宮頸癌はヒトパピローマウイルス(HPV)感染によって生じることが分かっている。HPV感染の機会が増えたということでもある。HPV感染と20歳代、30歳代の子宮頸癌増加は一種の社会問題といえ、子宮がん予防や検診について議論の機会が増えている。
子宮頸癌の予防策はHPV感染予防と子宮がん検診による異形成の検出が基本である。感染予防のためにはHPVワクチンが開発中である。HPV感染後は子宮がん検診によって前癌状態である異形成(感染して癌になるまでの細胞変化)を検出することが必要である。
- HPV(ヒトパピローマウイルス)の検査としては遺伝子検査が行われる。HPV検査でウイルス感染有無やウイルスの型別分類等が明らかとなる。ウイルスに感染した子宮頚管細胞が異形成の段階にあるかどうかは細胞診で検査される。
課題
- 医会分類では米国で主流となっているベセスダシステムを採用し、従来の日母分類を強化したものとなっている。従来のクラス分類よりも検査費用が高くなり、新たな医療基盤システム投資が必要になるなどの課題がある。
- 検診は市町村がその費用を持っており、新しい報告様式が現在の日母分類に置き換わるかどうかは未知である。今後、要再検や要精密検査を広く拾い上げるための検診法として経費面からも検証がなされる。
- 検診以外にも医療機関内で利用されると考えられるが、病理診断科に関連して細胞診の診療報酬をホスピタルフィーとするかドクターフィーとするか、その按分などもこれから検証がなされる。産婦人科医が実施する場合は問題にはなりにくいものの、細胞診専門医・病理専門医を含む医師が行う細胞診断について診療報酬を整備し、病変部記述診断について責任を果たせる環境づくりが必要となる。
- 子宮頸部の細胞診は受診した医療機関ではなく外部検査機関に検査委託されることが多い。細胞診検査は検査所等が受託しており、医療機関内での検査人員削減等とも関連し、細胞診検査の外部委託傾向が強まっている。より安価な衛生検査所を選ぶことで医療機関の儲けはより大きくなり、検査所もより安価に受託することが市場競争に勝ち残るための戦術となる。ベセスダシステムがもつ病変診断という医行為の要素と、日本でのがん検診ビジネスモデルの関係については評価が定まっていない。
- また検診料金のあり方や安価で受託した場合の細胞診検査士テクニカルコストや精度管理コストのあり方については議論が十分ではない。日母分類が国際的に通用しないという理由で医会分類が導入されたという背景もある。
参考図書
- ベセスダシステム2001アトラス D.ソロモン/編 R.ネイヤー/編 平井康夫/監訳 シュプリンガー・ジャパン 2007年11月 (ISBN 978-4-431-10010-2)
- ベセスダシステム2001準拠子宮頚部細胞診報告様式の運用の実際と注意点 病理と臨床 2009 Vol.27 No.12 p.1130-1139 今野 良ほか
脚注
- ^ http://www.jaog.or.jp/know/kisyakon/17_081210.pdf 子宮頸がん検診の精度管理の向上にむけて - ベセスダ分類とHPV検査 -
- ^ 容器代は600円弱(定価ベース)。
- ^ http://nih.techriver.net/index.php THE BETHESDA SYSTEM WEBSITE ATLAS
関連項目
- 病理学的検査/細胞診検体
- 診断細胞診/細胞診断
- パップテスト
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Japanese Journal
- 子宮頸がん検診へのベセスダシステム2001導入による不適正検体の頻度の実際とその推移
- 高野 浩邦,河西 十九三,早田 篤子,立花 美津子,石塚 康夫,茂木 真,小竹 譲,生水 真紀夫,佐々木 寛,田中 忠夫
- 日本臨床細胞学会雑誌 50(3), 158-162, 2011-05-22
- NAID 10028110009
Related Links
- 日本臨床細胞学会. 細胞診専門医会. 2008.6.8. ベセスダシステムについて. 川崎医科 大学 森谷卓也. 1. 子宮頸部細胞診における. ベセスダシステム(2001)導入の意義. ー 病理医の立場からー. 川崎医科大学 病理学2・現代医学教育博物館. 森谷 卓也 ...
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- 英
- cervical cancer, cancer of the cervix, cancer of the uterine cervix, uterine cervical cancer, endocervical carcinoma
- ラ
- carcinoma colli uteri
- 同
- 子宮頸癌
- 関
- 子宮頚部、子宮、腫瘍
概念
疫学
- 95%扁平上皮癌、5%腺癌。腺癌の割合は年々増えてきている。
- 腺癌は若年者で多く、高分化型腺癌である。原因は不明
- 子宮頚癌:子宮体癌=90:10 ← とにかく子宮頚癌が多い
- 50歳前後
病因
- HPV遺伝子型の16,18型で7割を占める。他のハイリスク型は31,33,35,45,52,58である。
- 感染者の90%が治癒するが、10%は持続感染する。
- 持続感染者の一部が5-10年を経て異形成から子宮頚癌に進展する。
病理
扁平上皮癌
腺癌
- 腺上皮類似の細胞より構成され、腺管形成傾向を示す。表層では乳頭状に、深部では腺管形成を示して増殖する。粘液を産生している細胞が認められる。
- 腺癌は手術で根治治療できない場合、放射線や化学療法が奏効しづらく予後不良である。
リスクファクター
- 発展途上国在住、活発な性行動、低所得階級、多産婦、喫煙、ピル、ステロイド、HIV、眼瞼親身受診、他のSTD
症状
- 初期:上皮内癌(臨床進行期では0期)および微小浸潤癌(Ia期)のほとんどが無症状(⇔子宮体癌では不正出血) ← 検診が重要となる
- 浸潤癌:不正性器出血、接触出血あるいは帯下など
- 周辺臓器浸潤:骨盤痛、血尿、下血
検査
細胞診
ベセスダシステム
|
推定病変
|
用語説明
|
日母分類
|
NILM
|
非腫瘍性病変, 炎症
|
陰性
|
I/II
|
ASC-US
|
軽度扁平上皮内病変(LSIL)疑い
|
意義不明異型扁平上皮
|
II/IIIa
|
ASC-H
|
高度扁平上皮内病変(HSIL)疑い
|
高度病変を除外できない異型扁平上皮
|
III/IIIb
|
LSIL
|
HPV感染, 軽度異形成
|
軽度扁平上皮内病変
|
IIIa
|
HSIL
|
中等度異形成, 高度異形成, 上皮内癌
|
高度扁平上皮内病変
|
IIIa, IIIb, IV
|
SCC
|
扁平上皮癌(微小浸潤含む)
|
扁平上皮癌
|
V
|
AGC
|
腺異形成, 腺系病変疑い
|
異型腺細胞
|
III
|
AIS
|
上皮内腺癌
|
上皮内腺癌
|
IV
|
adenocarcinoma
|
腺癌
|
腺癌
|
V
|
other
|
その他のがん
|
その他の悪性腫瘍
|
V
|
HPV検査
- スクリーニング検査押して行われる
- 癌または前癌病変の発見率95%。細胞診と組み合わせると発見率は100%。
コルポ診
- コルポスコープと呼ばれる拡大鏡を用いて子宮頚部粘膜表面を拡大し、観察。
- 3-5%の酢酸を子宮頚部に接触させ、それによる変化も所見とする。
画像検査
- T2:淡い高信号(中~高信号)。子宮頚部間質は低信号。このコントラスト差を利用して浸潤の程度を把握する。水平断ではstromal ring(子宮内腔を取り囲む低信号)の消失がみられる
- T1Gd造影:腫瘍は低信号となる。周囲組織浸潤を見積もるために使用される
臨床進行期
出典不明
子宮頸癌
|
0期(上皮内癌)
|
上皮内癌
|
・円錐切除(挙児希望) ・円錐切除or単純子宮全摘術(挙児希望なし)
|
I期 子宮頚部に限局
|
Ia期 微小浸潤癌
|
Ia1期
|
(微小浸潤癌) 病理組織 間質浸潤 深さ3mm以内 幅7mmを超えない
|
・円錐切除(挙児希望) ・単純子宮全摘術(挙児希望なし)
|
Ia2期
|
(微小浸潤癌) 病理組織 間質浸潤 深さ3-5mm以内 幅7mmを超えない
|
・(準)広汎子宮全摘術+骨盤リンパ節郭清術 ・広汎子宮全摘術
|
Ib期
|
Ib1期
|
4cm以下
|
・広汎子宮全摘術
|
Ib2期
|
4cmを超える
|
・広汎子宮全摘術 ・放射線療法 ・同時科学放射線療法
|
II期 頸部を超えて進展かつ 骨盤壁or膣壁下1/3に達しない
|
IIa期
|
膣壁浸潤のみ
|
・広汎子宮全摘術 ・放射線療法 ・同時科学放射線療法
|
IIb期
|
子宮傍組織浸潤のみ
|
・広汎子宮全摘術 ・放射線療法 ・同時科学放射線療法
|
III期 骨盤壁に達するor 膣壁浸潤下1/3
|
IIIa期
|
膣壁浸潤下1/3
|
・放射線療法 ・同時科学放射線療法
|
IIIb期
|
骨盤壁に達する
|
・放射線療法 ・同時科学放射線療法
|
IV期 膀胱,直腸の粘膜へ浸潤or 小骨盤を超えて進展
|
IVa期
|
膀胱,直腸の粘膜へ浸潤
|
・放射線療法 ・同時科学放射線療法
|
IVb期
|
小骨盤を超えて進展
|
・放射線療法 ・化学療法
|
妊娠と治療
- 0期(CIN), Ia期:分娩まで経過観察し、分娩後治療(円錐切除もしくは単純子宮全摘術)
- Ib期:原則的に広汎子宮全摘出術 ← 妊娠継続は母体へのリスクが大きすぎるため(周辺臓器浸潤、転移など?)。
診断
- 視診、内診、直腸診、細胞診、コルポスコピー、組織診、尿路系検査、単純X線撮影、超音波検査、CT、MRI、腫瘍マーカー、リンパ管造影、ガリウムシンチグラム。
- 新臨床進行期分類(日産婦1997, FIGO 1994)(参考4)により治療前に病期を決定する。決定の根拠とできる診察&検査は以下の通りである。触診、視診、コルポスコピー、診査切除、頸管内掻爬、子宮鏡、膀胱鏡、直腸鏡、排泄性尿路造影、肺及び骨のX線検査。なお、子宮頸部円錐切除術は臨床検査とみなす。
治療
手術療法
化学療法
放射線療法
- 適応:(1)腫瘍切除後に顕微鏡的に癌の残存が疑われる、(2)リンパ節転移あり、(3)骨盤近くまで浸潤、(4)脈管内浸潤有り、(5)膣摘出不十分 (NGY.223)
- QB Q-288
- 外部照射:(Ib1?~II)広汎子宮全摘術後に膣断端陰性
- 外部照射+腔内照射(遠隔操作式後装填法 RALS):(Ib1?~II)広汎子宮全摘術後に膣断端陰性、あるいはIII,IV期
- ガイドライン2
進行期
|
外部照射(Gy)
|
腔内照射(Gy/ 回,A点線量)
|
全骨盤
|
中央遮蔽
|
Ⅰ
|
0
|
45~50
|
'29/5
|
Ⅱ
|
小
|
0
|
45~50
|
'29/5
|
大
|
20
|
30
|
'23/4
|
Ⅲ
|
小~中
|
20~30
|
20~30
|
'23/4
|
大
|
30~40
|
20~25
|
'15/3~20/4
|
ⅣA
|
30~50
|
10~20
|
'15/3~20/4
|
- 総照射線量は進行期によって変わる。ガイドライン2によれば、外部照射は45-70Gyまでありうる。施設ごとに放射線治療のプロトコールは異なる。例えば、参考7を参照すると、外部照射は最大54Gyである。
合併症
- ガイドライン2
- 急性期:悪心(放射線宿酔)、下痢、膀胱炎、皮膚炎(特に下方へ延長した照射野を設定した場合の会陰部)、白血球減少症
- 晩発性(grade3以上の頻度):直腸炎(出血)(5?10%)、膀胱炎(出血)(5%以下)、小腸障害(腸閉塞)(5%以下)皮下組織繊維化・浮腫(下腹部)、腟粘膜の癒着・潰瘍、膀胱腟瘻、直腸腟瘻、骨折、下肢浮腫
予後
- 参考3
病期
|
症例数
|
5年相対生存率
|
I期
|
1137
|
92.1%
|
II期
|
447
|
69.8%
|
III期
|
428
|
48.9%
|
IV期
|
151
|
17.2%
|
ガイドライン
- http://www.jsgo.gr.jp/guideline/keigan.html
- 2. 放射線治療計画ガイドライン・2008 - 日本放射線専門医会・医会,日本放射線腫瘍学会,日本医学放射線学会編集
- http://www.kkr-smc.com/rad/guideline/2008/
参考
- http://www.gan-pro.com/public/cancer/cervical.html
- http://ganjoho.jp/public/cancer/data/cervix_uteri.html
- 4. 臨床進行期分類(日産婦1997年、FIGO1994年)
- http://plaza.umin.ac.jp/~jsog-go/CC/CC_youkou_main9.htm
- http://www.kawasaki-m.ac.jp/pathology2/pdf/Bethesda-moriya.pdf
- 6. [charged] Invasive cervical adenocarcinoma - uptodate [1]
- 7. 子宮頸癌の進行期別線量配分
- http://web.sapmed.ac.jp/radiol/uterus.html
国試
- 105E059:治療。放射線治療を行う際、貧血を改善しないと効果が低下するから輸血すべし、らしい。
- 102I041:コルポスコピー所見で高度の白色上皮を呈する子宮頚部癌上皮内腫瘍(CIN)。細胞診ではクラスIIIb
[★]
- 英
- system
- 関
- 系、体系、体制、方式