高血圧
- 英
- hypertension, HT, high blood pressure
- 同
- (国試)高血圧症
- 関
- 低血圧
概念
- 高血圧はそれ自体で有害な症状を呈する疾患ではないが、長期的には血圧が高いほどQOLや生命予後に影響を与える重大な疾患に罹患する可能性を高める。重大な疾患とは脳卒中や心血管病である。それ故に、治療目標としては、高血圧と関連する疾患の発症を抑制しうる程度まで高圧することが治療目標となる(ガイドライン 外来診療2012)
疫学
- 罹患患者人口は4000万人以上とされているが、受診しているのは半数に満たないとされている。脳卒中は収縮期血圧が10mmHg上昇する毎に、罹患・死亡危険度は男性で20%、女性で15%増加する。久山町研究、端野・壮瞥町研究、NIPPON DATA 80のいずれにおいても、収縮期血圧140mmHg、拡張期血圧90mmHg異常の血圧は心血管病のリスクとされている(ガイドライン 外来診療2012)。
定義
- 収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上 (1999年改正)
原因による分類
高血圧の病因
PHD.319
exogenous cause
- 1. エストロゲン(避妊薬などに含まれる):肝臓でのアンジオテンシノゲンの産生量を増加させる。)
- 2. 糖質コルチコイド:鉱質コルチコイド作用
- 3. シクロスポリン
- 4. エリスロポエチン:赤血球を増加させることで、血液の粘稠度が上昇したり、末梢の虚血性の血管拡張が解除される事による。
- 5. 交換刺激刺激薬:例えば、普通感冒薬
- 6. コカイン・慢性のアルコール過剰摂取:どちらも交感神経の活動性をあげる。
renal cause
mechanical cause
endocrine cause
高血圧のリスクファクター
- 年齢、ナトリウム過剰摂取、飲酒、肥満、運動不足、妊娠中の高血圧、家族歴
高血圧がリスクとなりうる疾患
高血圧による病変
PHD.323
- 通常は無症候であるが、多くの臓器(血管、心臓、網膜、腎臓)に多大な影響を及ぼす
高血圧による細動脈変化 BPT.356
- hyaline arteriolosclerosis
- hyperplastic arteriolosclerosis
- 急激な血圧上昇をきたす病態に特徴的(例えば、悪性高血圧(拡張期血圧120mmHg以上))
- 組織的には細動脈のonion-skinningが特徴的。血管平滑筋の増生、基底膜の肥厚による(血管の構造→血管)
- 悪性高血圧ではこれらの過形成的な変化に加えて、フィブリノイドの沈着と血管壁の壊死(necrotizing arteriolitis)が特に腎臓で顕著に見られる。
症候
身体所見
- 胸部:II音の亢進(IIA音)、心基部の収縮期雑音
検査
心電図
- 左室肥大 ← 求心性左室肥大 ← 後負荷に打ち勝って左室が収縮できるように。
管理のための臨床検査
- 日本高血圧学会2009
- 1. 一般検査(初診時には必須、降圧治療中には少なくとも年1回程度)
- 血液検査:血算、BUN,Cre,UA,Na,K,Cl,空腹時血圧,脂質,GOT,GPT,GGT
- 尿検査:尿蛋白、尿糖、尿沈渣
- 胸部XP:心胸郭比
- 心電図
- 2. 推奨検査(初診時・降圧治療中共に適宜)
- 高血圧性臓器障害評価
- 眼底検査(糖尿病を合併する場合には必須)
- 脳:認知機能テスト、抑うつ状態評価、頭部MRI+MRA
- 腎臓:微量アルブミン排泄量(尿中アルブミン・クレアチニン比 mg/g・Cre)
- 心臓:心エコー
- 血管:頸動脈エコー、足首・上腕血圧比(ABI)、脈波伝播速度(PWV)、augmentation index(AI)
- 糖代謝評価:HbA1c,OGTT 75g
- 炎症リスク評価:高感度CRP
- 24時間自由行動下血圧測定
- 二次性高血圧スクリーニング:血漿レニン活性、血中アルドステロン、コルチゾール、カテコールアミン3分画(早朝安静時採血)、随時尿中メタネフリン分画(Cr補正)、24時間蓄尿中カテコールアミン、夜間経皮酸素分圧測定、腹部エコー(腎臓、副腎)
重症度と治療(QB.C-324)
| 重症度 | 血圧 | 治療 |
| I度高血圧 | 140/90mmHg | ライフスタイルの改善、半年-1年で改善しなければ降圧薬投与 |
| II度高血圧 | 160/100mmHg | 降圧薬投与(経口) |
| III度高血圧 | 180/110mmHg | 降圧薬投与(経口) |
| 高血圧緊急症 | 臓器障害(脳、心臓、腎臓など) | 降圧薬投与(経静脈) |
治療
- まず生活指導を行った上で、薬物治療の必要がある場合にこれを開始する。ただし、高リスク群に関しては直ちに薬物治療を開始する。
- 生活習慣の修正(参考1より)
| 1. 減塩(→ナトリウム) | 6g/日未満 |
| 2. 食塩以外の栄養素 | ・野菜・果物の積極的摂取* ・コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える ・魚(魚油)の積極的摂取 |
| 3. 減量 | ・BMI<25未満 |
| 4. 運動 | ・心血管病のない高血圧患者が対象で、中等度の強度の有酸素運動を中心に定期的に(毎日30分以上を目標に)行う |
| 5. 節酒 | ・エタノールで男性は20-30ml/日以下、女性は10-20ml/以下 |
| 6. 禁煙 | |
| 生活習慣の複合的な修正はより効果的である | |
| *重篤な腎障害を伴う患者では高K血症をきたすリスクがあるので、野菜・果物の積極的摂取は推奨しない。糖分の多い果物の過剰な摂取は、特に肥満者や糖尿病などのカロリー制限が必要な患者では勧められない。 | |
降圧目標
- 参考4 JSH2014
| 患者背景 | 年齢 | 診察室 | 家庭血圧 |
| 血圧 | |||
| 若年、中年、 | <75 | 140/90mmHg未満 | 5 ポ イ ン ト 低 く |
| 前期高齢者 | |||
| 後期高齢者 | ≧75 | 150/90mmHg未満 | |
| (忍容性があれば収縮期血圧140mmHgで) | |||
| 糖尿病 | 130/80mmHg未満 | ||
| 蛋白尿陽性の慢性腎臓病 | |||
| 脳血管障害 | 140/90mmHg未満 | ||
| 冠動脈疾患 | |||
- 参考1
| 診察室血圧 | 家庭血圧 | |
| 若年者・中年者 | 135/85mmHg未満 | 125/80mmHg未満 |
| 高齢者 | 140/90mmHg未満 | 135/85mmHg未満 |
| 糖尿病患者 腎臓病患者 心筋梗塞後患者 |
130/80mmHg未満 | 125/75mmHg未満 |
| 脳血管障害患者 | 140/90mmHg未満 | 135/85mmHg未満 |
注:診察室血圧と家庭血圧の目標値の差は、診察室血圧140/90mmHg、家庭血圧135/85mmHgが、高血圧の診断基準であることから、この二者の差を単純にあてはめたものである。
JNC-7
- 一般的:140/90mmHg未満
- DM,CKD:130/80mmHg未満
幼児・小児の高血圧
- 参考2 参考3
- 健診用の高血圧基準
| 収縮期血圧 (mmHg) |
拡張期血圧 (mmHg) | ||
| 乳児(注) | ≧110 | ≧70 | |
| 幼児 | ≧120 | ≧70 | |
| 小学校 | 低学年 | ≧130 | ≧80 |
| 高学年 | ≧135 | ≧80 | |
| 中学校 | 男子 | ≧140 | ≧85 |
| 女子 | ≧135 | ≧80 | |
| 高等学校 | ≧140 | ≧85 | |
- 注:乳児の値は検診用の基準かは不明
女性と高血圧
妊娠期間と降圧薬
ガイドライン
参考
- 1. 高血圧治療ガイドライン
- <click2in>http://www.jhf.or.jp/a&s_info/guideline/kouketuatu.html</click2in>
- 2. 高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)
- 3. 高血圧 日本高血圧学会高血圧治療GL作成委員会/医療・GL(09年)/ガイドライン 第10章 小児の高血圧
- <click2in>http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0019/1/0019_G0000180_0063.html</click2in>
- 4. 高血圧治療ガイドライン2014 電子版
- <click2in>http://www.jpnsh.jp/guideline.html</click2in>
高血圧と糖尿病を合併する病態
- クッシング症候群:糖質コルチコイドによる糖新生亢進・インスリン拮抗作用と鉱質コルチコイド様作用による。
- 先端巨大症:成長ホルモンの抗インスリン作用と電解質代謝作用(Na,K,Cl濃度増加、細胞外液増加)
- 褐色細胞腫:交感神経緊張亢進によるα1,β1作用による血圧上昇、α2, β2作用による血糖上昇
- 原発性アルドステロン症:過量のアルドステロンによるナトリウム再吸収、カリウム排泄亢進により体液量貯留、低カリウムによるインスリン作用低下
救急外来での高血圧
- 研修医当直御法度 第5版 p.33
救急
準急球
- 拡張期血圧115以上であるが、臓器障害がない。
- → 経口降圧薬を処方し外来受診。
| 収縮期高血圧 | 動脈コンプライアンス低下 | 動脈硬化 | |
| 大動脈の人工血管置換術後 | |||
| 心拍出量の変化 | 大動脈弁閉鎖不全症 | ||
| 甲状腺機能亢進症 | |||
| 発熱 | |||
| 動静脈瘻 | |||
| 動脈管開存症 | |||
| 過動心症候群 | |||
| 拡張期高血圧 | 体液量の増加 | 腎実質性高血圧 | 糸球体腎炎 |
| 糖尿病性腎症 | |||
| 慢性腎盂腎炎 | |||
| 多発性嚢胞腎 | |||
| 膠原病 | |||
| など | |||
| 副腎皮質疾患 | Cushing症候群 | ||
| 原発性アルドステロン症 | |||
| 薬物性 | 経口避妊薬 | ||
| 副腎皮質ステロイド | |||
| エリスロポエチン | |||
| レニン-アンジオテンシン系の亢進 (循環血液量・末梢血管抵抗の増大) |
腎血管性高血圧 | 腎動脈硬化症 | |
| 線維筋性異形成 | |||
| レニン産生腫瘍 | |||
| 血管抵抗の増大 | 交感神経系の亢進 | 褐色細胞腫 | |
| 急性ストレス反応 | |||
| 薬物中断症候群 | |||
| 多発性神経炎 | |||
| 大血管の狭窄・閉鎖 | 大動脈狭窄症 | ||
| 解離性大動脈瘤 | |||
| 原因不明(多因子) | 本態性高血圧 | ||