悪性高血圧
概念
- 拡張期血圧が120-130mmHg以上であり、腎機能障害が急進行し、放置すると全身症状が急激に増悪し、心不全、高血圧性脳症、脳出血などを発症する予後不良の病態である。長期の高度の高血圧による細動脈の内皮障害、血管壁への血漿成分の浸入に続くフィブリノイド壊死、増殖性内膜炎が病理学的特徴であり、腎の病理所見は悪性腎硬化症と呼ばれる。腎臓の小動脈の狭窄・閉塞に伴い腎血流量が低下し、RAA系の亢進により血圧を生じるなど、この病態では進行性の腎機能障害と昇圧の悪循環を生じる。眼底では網膜出血、軟性白斑、網膜浮腫や乳頭浮腫を認める。脳においては、血管障害によって血流の自動調節能が破綻し、脳浮腫が生ずれば、高血圧性脳症となりうる。(参考1を改変)
疫学
- 高血圧患者の1%。(YN.C-165)
- 男性、黒人に多い。(YN.C-165)
- 男性で40-50に多い。女性で30-40歳代に多い。(YN.C-165)
基礎疾患
- 本態性高血圧症(腎硬化症)、慢性糸球体腎炎、慢性腎盂腎炎、糖尿病性腎症、褐色細胞腫、クッシング症候群、腎血管性高血圧症、レニン産生腫瘍、原発性アルドステロン症など
- 悪性高血圧症をきたしやすい病態:高レニン性本態性高血圧、腎血管性高血圧症、褐色細胞腫、末期腎不全、強皮症腎、妊娠高血圧症候群
- 悪性高血圧症に占める割合:本態性高血圧症(40%)、慢性糸球体腎炎(15%)、慢性糸球体腎炎(15%)(QB.C-525)
病態生理
診断基準
- 病態で定義され、臨床診断される。
- 血圧、眼、腎、全身(脳、心臓)で診断する。
- 高血圧の基礎疾患に関係なく、次の症候を示す重症高血圧をいう。
悪性高血圧A群
- 定型的悪性高血圧
- 下記1)~4)のすべてを満たすもの
- 1) 治療前の拡張期血圧が常に130mmHg以上
- 2) 眼底所見はキース・ワグナー分類(Kieth-Wagener分類) IV度で、乳頭浮腫及び網膜出血を示す。
- 3) 腎機能障害をきたし、腎不全(血清クレアチニン5.0mg/dl以上)に至ったもの
- 4) 全身症状の急激な悪化を示し、特に脳症状(運動失調、知覚障害、頭痛、めまい、悪心など)や心症状(呼吸困難、胸痛、不整脈など)を伴うもの
悪性高血圧B群
- 非定型的悪性高血圧
- 次の3つの条件のどれかに該当すれば
- 1) 拡張期血圧が120mmHg以上、130mmHg未満で、上記1の2)、3)、4)のすべてを満たすもの
- 2) KW III度の高血圧性網膜症(眼底写真添付)で、上記1の1)、3)、4)のすべてを満たすもの
- 3) 腎機能障害(血清クレアチニン3.0mg/dl以上)はあるが腎不全には至らないもので、上記1の1)、2)、4)のすべてを満たすもの
症状
診断基準以外
- 溶血性貧血
- Extrinsic nonimmune hemolytic anemia due to mechanical damage: Fragmentation hemolysis and hypersplenism - uptodate
診断基準の解説
- 眼底:高血圧により網膜細動脈の狭小に始まり、細動脈の攣縮、血管からの漏出による火炎状出血、軟性白斑、視神経乳頭浮腫をきたす(SOP.209)
- 腎機能:血清クレアチニン5.0mg/dl以上というと、GFRは20ml/min/1.73m2程度?CKDガイドラインでは<15で腎不全と定義していたが?
治療
- 高血圧:降圧薬。高血圧の病歴が長い患者が多いため,急速な降圧は重要臓器の虚血をきたす危険を伴う。最初の24時間の降圧は拡張期血圧100-110mmHgまでにとどめる(参考1)。
参考
- 1. 第11章 特殊条件下高血圧の治療 - 日本高血圧学会高血圧治療GL作成委員会/医療・GL(09年)/ガイドライン
- <click2in>http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0019/1/0019_G0000180_0072.html</click2in>
- 2. 診断基準