出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/11/04 19:55:23」(JST)
漂白剤(ひょうはくざい)とは、漂白に用いる薬剤の総称。衣料用・台所用・住宅用の漂白剤と食品添加物としての漂白剤がある。
衣類のシミや食器などを漂白する際に使用する薬剤のこと。日本では衣料用、台所用又は住宅用の漂白剤については「衣料用、台所用又は住宅用の漂白剤」として家庭用品品質表示法の適用対象とされており雑貨工業品品質表示規程に定めがある[1]。化学物質の酸化反応あるいは還元反応を利用して色素を分解する。この漂白の過程で殺菌作用が認められることから、食器や調理器具、布巾など台所用品に用いられることもある。ただし、衣類の汚れに対して万能と言うわけではなく、漂白剤が有効とされるシミ・汚れであっても完全に落としきるまで通常数回~十数回繰り返し漂白・洗濯する必要がある場合があるほか、こびりついた汚れの種類によっては漂白剤でも落とせないものがある[2]。
衣料用・台所用・住宅用の漂白剤は成分に従って区分される。
系別 | 成分の種類 | |
---|---|---|
酸化剤 | 塩素系 | 次亜塩素酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム(又はカリウム)など |
酸素系 | 過炭酸ナトリウム、過ほう酸ナトリウム、モノ過硫酸ナトリウム、過酸化水素など | |
還元剤 | 還元系 | ハイドロサルファイト(クリーニング店などで業務用漂白剤として使用される)、二酸化チオ尿素(市販の還元型漂白剤の主成分として利用される)など |
界面活性剤、りん酸塩、蛍光剤(蛍光増白剤)、酵素などを配合することもあり、雑貨工業品品質表示規程ではこれらについて一定の配合があれば表示しなければならないとしている[1]。
家庭用のうち塩素系の漂白剤とトイレ用洗剤などの酸性薬剤を混ぜて使用すると、塩素系漂白剤に含まれる弱酸である次亜塩素酸が遊離、分解し猛毒の塩素ガスが発生する。そのために消費者が死亡する事故が発生したこともある。
日本では雑貨工業品品質表示規程により塩素ガス発生試験(塩素系)において1.0ppm以上塩素ガスを発生するものについては、「まぜるな危険」や「塩素系」など「特別注意事項表示」と呼ばれる表示を規程に定められた色でかつ一定の大きさ以上の文字で表示しなければならないとしている[1]。
次亜塩素酸を含む漂白剤を酸性の溶液中に存在させることが問題なので、同系統の漂白剤を混ぜても塩素は発生しない。注意を要する例としては、塩素系漂白剤を嘔吐物に混ぜることで、含まれる胃酸と反応して塩素ガスが発生する。
漂白剤は塩素系・酸素系とも酸化性物質として航空危険物に該当する。
ほとんどの洗剤メーカーが、製造・販売を行っている。
食品添加物としての漂白剤は、食品中の天然色素、及び褐変物質を分解または変化させて脱色する目的で使用される。対象食品には、かんぴょう、コンニャク粉、水飴、寒天などがあり、それぞれ使用基準が設けられている。
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次亜塩素酸(じあえんそさん、Hypochlorous acid)は塩素のオキソ酸の1つで、塩素の酸化数は+1である。組成式では HClO と表わされるが、水素原子と塩素原子が酸素原子に結合した構造 H−O−Cl を持つ。不安定な物質であり水溶液中で徐々に分解する。次亜塩素酸および次亜塩素酸の塩類は酸化剤、漂白剤、外用殺菌剤、消毒剤として利用される。
実験室的には水酸化カリウム水溶液などに塩素を通じたりして調整した次亜塩素酸塩水溶液を硫酸で中和し、水蒸気蒸留して遊離酸の水溶液を得る。また、酸化水銀 の四塩化炭素懸濁液に塩素を通じた後に水で抽出したり、あるいは酸化ビスマスを水懸濁液中に塩素を通じることで遊離酸の水溶液を得る方法も知られている。
薄い水溶液としては存在するが、25%以上の濃度では一酸化二塩素に変化するので遊離酸を単離することはできない。濃厚水溶液は淡黄色である。また、遊離酸が弱酸 (pKa = 7.53)<ref>「次亜塩素酸」、『岩波理化学辞CD-ROM版』 第5版、岩波書店、1998年。</ref> のため、次亜塩素酸ナトリウムなどの次亜塩素酸塩水溶液はかなり強い塩基性を示す。
水溶液中でも不安定で、次のような不均化により塩化水素を放出しながら徐々に分解する。
次亜塩素酸やその塩の水溶液は、カルキ臭と呼ばれるプールの消毒槽のようなにおいを持つ。
また、塩素を水に溶かすと、次のような平衡により一部が塩酸と次亜塩素酸となる<ref>「次亜塩素酸」、『世界百科事典CD-ROM版』 V1.22、平凡社、1998年。</ref>。
{\rm Cl_2 + H_2O \ \overrightarrow\longleftarrow \ HCl + HClO} \quad K _{\rm w}=1.56 \times 10^{-4} </math> すなわち、中性~酸性条件ではこの反応はあまり進行しないが、アルカリ性条件では生成する遊離酸が次亜塩素酸塩となり平衡が右に偏るので、次亜塩素酸塩を製造する方法の1つとなる。
\rm Cl_2O + H_2O \longrightarrow 2HClO </math>
\rm HClO + H_2O_2 \longrightarrow HCl + H_2O + O_2 </math>
<references />
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