心室頻拍
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心室頻拍 |
|
分類および外部参照情報 |
診療科・
学術分野 |
循環器学 |
ICD-10 |
I47.2 |
ICD-9-CM |
427.1 |
DiseasesDB |
13819 |
eMedicine |
emerg/634 med/2367 ped/2546 |
MeSH |
D017180 |
心室頻拍(しんしつひんぱく、VT: Ventricular Tachycardia)は、心室の一部から連続して起こる異所性刺激によって頻脈を呈する病態。心室細動に移行する恐れがあるため、危険である。
目次
- 1 病態
- 2 治療
- 3 出典
- 4 関連項目
- 5 参考文献
病態
心電図
心電図所見では、頻拍を示し(100拍/分以上)、QRS波は幅広く(0.12秒以上)、RR間隔は一定である。また、持続時間とQRS波形によって細分類がなされる。
- 持続性と非持続性
- 発作の持続時間が30秒以内か否かで、持続性心室頻拍(SVT)と非持続性心室頻拍(NSVT)とに分類される。また、NVSTが数拍の洞性心拍をはさんで出現する反復型心室頻拍もある。SVTは自然停止しないため、薬物やペーシング、電気ショックなどの治療を必要とする。
- QRS波形による分類
- QRS波形が単一の単形性、2種類以上の多形性、またその派生型としてtorsade de pointes、2つの異なった波形が交互に出現する2方向性がある。torsade de pointesは、QRS軸が時間とともにねじれるように周期的に変化するもので、心室細動に至る危険が高い。
- 診断
- QRS幅が0.14秒以上であればVTの頻度が高い。特に右脚ブロック型で0.14秒以上、左脚ブロック型で0.16秒以上であればVTの可能性が高い。[1]
- 心室頻拍では、QRS電気軸において、左軸偏位や、左脚ブロック型を伴う右軸偏位を示すことが多い。
- 現時点(2013)ではブルガダ・アルゴリズムを使って診断する頻度が増えてきた。ACCアルゴリスムも使われる。J Am Coll Cardiol 2003 Oct 15; 42(8) 1493-531.wide QRS tachycardiaの鑑別手順を示している。すなわち、ventricular tachycardiaであるかsuperventricular tachycardiaのwide QRSか鑑別する。治療法が異なる点も多いので重要となる。
臨床像
心室頻拍は重症不整脈と位置づけられるが、経過観察でよいものから緊急措置を要するものまで幅広い。その重症度は、
- 症状: 特にAdams-Stokes発作の有無
- 基礎心疾患の有無とその重症度
- 心機能低下の有無: 左室駆出率40%以下となると危険信号
などによって総合的に評価される。一般的に、もっとも重篤と見なされるのは、血行動態の破綻をきたすSVTである。
治療
治療法は、脈拍が触れるか否か、触れる場合には血行動態が安定しているか否かによって変化する。これらの治療は、頻拍発作の停止と予防、頻拍による突然死予防に大別される。
- 頻拍発作の停止
- (一般的) ボーン・ウイリアムス分類 I群 (Naチャネル遮断薬)の薬剤
- (基礎心疾患を有する場合) リドカイン、プロカインアミド
- (心機能低下を伴う場合) ニフェカラント
- (右脚ブロックと左軸変位) ベラパミル
- (右脚ブロックと右軸変位) ATPとβ遮断薬
- (先天性QT延長症候群) β遮断薬、マグネシウム、イソプロテレノール、心臓ペーシング
- 電気的除細動: カルディオバージョン(QRS波同期による電気ショック)
- 心臓ペーシング
- 頻拍予防
- (基礎心疾患のない場合) Ia群薬 (活動電位持続時間を延長させるNaチャネル遮断薬)
- (ベラパミル感受性VT) IV群薬 (カルシウム拮抗薬)
- (先天性QT延長症候群) β遮断薬
- (心機能低下を伴う場合) III群薬、とくにアミオダロン
- 頻拍による突然死予防
安易な抗不整脈剤の治療は薬剤自身が催不整脈性があるため致死的になる。また、不整脈を誘発する可能性がある薬剤も多いため注意が必要となる。
出典
- ^ Ann Intern Med 1988; 109: 905-12.
関連項目
- QT延長症候群
- 不整脈原性右室心筋症
- 偽性心室頻拍
- 大鵬幸喜
参考文献
- 杉本恒明, 矢崎義雄 『内科学 I (第9版)』 朝倉書店、2007年、475-479頁。ISBN 978-4254322316。
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治療 |
外科的治療 |
冠動脈バイパス術(CABG) |
CABG | off-pump CAB(OPCAB) | MIDCAB(en) | TECAB(en)
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弁膜症手術 |
弁置換術(en) | 弁形成術(en) | 弁輪形成術 | 交連切開術(en)
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小児心臓外科 |
動脈管結紮術 | BTシャント | 肺動脈絞扼術(en) | ノーウッド手術 | グレン手術 | フォンタン手術 | ジャテン手術 | ラステリ手術 | ロス手術
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心不全外科 |
心移植術 | 補助人工心臓装着術 | 左室形成術(Dor・SAVE・Overlapping)
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不整脈外科 |
メイズ手術(en) | 心臓ペースメーカー | 植え込み型除細動器
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大動脈手術 |
大動脈人工血管置換術 | 大動脈基部置換術 (Bentall, David) | ステントグラフト内挿術(en)
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末梢血管手術 |
末梢動脈血行再建術 | 末梢静脈血行再建術 | 静脈抜去術(en) | 静脈血栓摘除術(en) | 内シャント作成術 | 肢切断
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内科的治療 |
循環作動薬 |
抗不整脈薬 |
Ia群: プロカインアミド, キニジン
Ib群: リドカイン, フェニトイン
Ic群: フレカイニド(en), プロパフェノン(en)
II群: 交感神経β受容体遮断薬(プロプラノロールなど)
III群: アミオダロン, ソタロール(en)
IV群: カルシウム拮抗剤(ベラパミル, ジルチアゼムなど)
|
心不全治療薬(en) |
利尿薬 | 血管拡張薬 | 強心配糖体 | 強心剤 | PDEIII阻害薬
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狭心症治療薬 |
交感神経β受容体遮断薬 | 硝酸薬
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高血圧治療薬 |
利尿薬 | 交感神経β受容体遮断薬 | レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系 (ACE阻害薬、ARB、レニン阻害薬(英語版)) | カルシウム拮抗剤 | アドレナリン作動薬 | 脂質降下薬
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血管内治療 |
経皮的冠動脈形成術
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循環器系の正常構造・生理 |
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UpToDate Contents
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- 1. 非持続性心室頻拍:臨床症状、評価、マネージメント nonsustained ventricular tachycardia clinical manifestations evaluation and management
- 2. 心筋梗塞既往患者における持続性単形性 心室頻拍:治療および予後 sustained monomorphic ventricular tachycardia in patients with a prior myocardial infarction treatment and prognosis
- 3. 明らかな器質的心疾患のない患者の単形性心室頻脈 monomorphic ventricular tachycardia in the absence of apparent structural heart disease
- 4. カテコラミン誘発多形性心室頻拍および他のQT間隔正常の多形性心室頻拍 catecholaminergic polymorphic ventricular tachycardia and other polymorphic ventricular tachycardias with a normal qt interval
- 5. 持続性単形性心室頻拍:臨床症状、診断、評価 sustained monomorphic ventricular tachycardia clinical manifestations diagnosis and evaluation
Japanese Journal
- 麻酔導入時の高度徐脈に伴い多型性心室性頻拍を生じた1症例
- QT延長を伴った脳動脈瘤クリッピング術の麻酔中に多型性心室性頻拍を発症した1症例
Related Links
- 心室期外収縮が引き金となり、突然、発作的に頻拍となる。QRSは幅広く、脚ブロック型となる。 P波は、ほとんどの場合、確認できない。 血圧は低下することが多く、頻拍状態が著しいほど、血圧は、より低下する傾向にある。
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★リンクテーブル★
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- 38歳の男性。頻回に生じる動悸発作を主訴に来院した。以前から年に数回、1~2時間持続する動悸を自覚していたが自然に消失するために放置していた。意識を消失したことはない。血圧126/72mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。非発作時の心電図を以下に示す。
- 動悸発作の原因と考えられる不整脈はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [101G019]←[国試_101]→[101G021]
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- 21歳の男性。動悸発作を主訴に来院した。以前から年に数回、1~2時間持続する動悸を自覚していた。失神発作はない。血圧126/74mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。非発作時の心電図(別冊No.11)を別に示す。
- 動悸発作の原因として最も考えられる不整脈はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [105I048]←[国試_105]→[105I050]
[★]
- 38歳の男性。頻回に生じる動悸発作のため来院した,以前から年に数回、1~2時間持続する動悸を自覚していたが自然に消失するために放置していた。意識を消失したことはない。血圧126/74mmHg。胸部の身体所見に異常はない。非発作時の心電図を以下に示す。
- 動悸発作の原因と考えられる不整脈はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [096A016]←[国試_096]→[096A018]
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- 英
- ventricular tachycardia, VT
- 同
- 心室性頻拍,
心室頻脈, 心室性頻脈
[show details]
概念
検査
[show details]
ガイドライン
- 不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版)
- http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_kodama_h.pdf
治療
- DCショックによる再同期 cardioversion
-
- 血行動態不安定な心房細動 unstable AF 120-200J
- 血行動態不安定な単型心室頻拍 unstable monomorphic VT 100J
- その他循環動態不安定な上室性頻拍/心房粗動 other unstable SVT atrial flutter 200J
- 循環動態不安定な心室頻拍 polymorphic and unstable VFとして扱う。
- PALS:初回0.5-1J/kg 2回目以降2J/kg
国試
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- 英
- unsustained ventricular tachycardia
- 関
- 非持続性心室頻拍、非持続性心室性頻脈、非持続性心室頻脈
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- 英
- sustained ventricular tachycardia
- 関
- 持続性心室頻拍、持続性心室性頻脈
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心室性頻脈性不整脈
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- 英
- ventricle (KH)
- ラ
- ventriculus
- 関
- 心房
生理学
- 循環血液量↑、心室拡張性↑ → 拡張期心室容量↑
- 循環血液量↓、心室拡張性↓ → 拡張期心室容量↓
- 末梢血管抵抗↑、心室収縮性↓ → 収縮期心室容量↑
- 末梢血管抵抗↓、心室収縮性↑ → 収縮期心室容量↓
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- 英
- tachycardia
- 関
- 頻脈、頻脈性不整脈、頻拍症、頻脈症
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- 英
- ventricular
- 関
- 室、心室、脳室