血清反応陰性脊椎関節症
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/04/27 19:53:46」(JST)
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血清反応陰性関節炎(seronegative arthritis)は、亜急性に関節炎を発症し、関節内に菌が認められず(化膿性関節炎ではなく)、その上リウマチ因子が陰性である疾患群をあらわす。これは必要条件であり、たとえばリウマチ熱やライム病もこの条件を満たすが血清反応陰性関節炎とは言わない。欧米人の患者では共通の遺伝的背景(HLA-B27)をもつことが多いことからHLA-B27関連関節炎とも呼ばれるが、これは日本人のようなアジア人の患者には必ずしも当てはまらない。また関節の中でも脊椎に特徴的に関節炎をおこしやすいことから血清反応陰性脊椎関節炎seronegative spondylarthritides、あるいは単に脊椎関節炎spondylarthritides、脊椎関節症spondyloarthropathy、などとも言われる。
確定診断といえるものはなく、診断は困難である。反応性関節炎と呼ばれることもあるが、これはより細かい病名にも使われるのであまり適切ではないと思われる。線維筋痛症の患者には、少なからずこの疾患を背景にして二次的に発病している者が含まれていることが明らかになりつつある。
代表疾患
- 強直性脊椎炎 (Ankylosing spondylosis; AS)
- 重大な骨外合併症として、心ブロックと大動脈閉鎖不全症などがあり、失神をおこすこともあるので注意が必要である。
- 未分化型脊椎関節炎 (Undifferentiated spondylarthritis; USpA)
- かつては分類不能脊椎関節炎と訳されており、低い頻度で発生する疾患とされたが、強直性脊椎炎と同等の頻度で発生していることが明らかになりつつある。
- 反応性関節炎 (Reactive arthritis; ReA)
- 結膜炎、尿道炎、関節炎を合併するものを以前ライター症候群と呼んでいたものだが、現在は尿道炎や腸炎に続発する無菌性関節炎でHLA-B27陽性であるものを反応性関節炎と称する。
- 腸炎(赤痢菌、サルモネラ、エルシニア、キャンピロバクターなど)後のもの
- 尿道炎(クラミジア・トラコマティスなど)後のもの
- 乾癬性関節炎(関節症性乾癬、Psoriatic arthritis)
- 腸疾患性関節炎 (Enteropathic arthritis)
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)に伴うもの
- ウィップル病、SAPHO症候群を含めることもある(HLA-B27の頻度が高いらしい)。
治療法
病態によっては(反応性関節炎などは特に)自然寛解もありえる。いっぽう、強直性脊椎炎や乾癬性脊椎炎は難治性で、関節リウマチと同等の関節破壊を伴う。関節リウマチと同様にメトトレキサートを中心とした治療をおこなうほか、最近ではインフリキシマブやエタネルセプトを用いた抗TNF-α療法も効果を示している。
参考文献
浦野房三 『症例から学ぶ脊椎関節炎―強直性脊椎炎, 未分化型脊椎関節炎ほか―』 新興医学出版社、2008年。ISBN 978-4-88002-684-8。
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- Remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema (RS_3PE)症候群の7例
- 高橋 宏三,藤永 洋,小林 元夫,内藤 毅郎,飯田 博行,青木 周一
- 日本老年医学会雑誌 39(6), 643-647, 2002-11-25
- NAID 10010219559
- 病態解釈および診断と治療の進歩 RS_3PE症候群
- 福田 孝昭
- 日本内科学会雑誌 89(10), 2110-2115, 2000-10-10
- Remitting Seronegative Symmetrical Synovitis with Pitting Edema (RS3PE症候群)は,突然発症ながら予後良好で,リウマトイド因子陰性対称性多発滑膜炎(関節炎)及び手足のpitting edemaを特徴とし, NSAIDsもしくは少量のステロイドが著効を示す一つの症候群として1985年McCartyらが報告した.その疾患としての特徴を …
- NAID 10005229838
- 血清反応陰性関節炎患者の日本AS研究会第2回アンケート調査報告
- 福田 眞輔,三浪 三千男,斉藤 輝信,三井 弘,松井 宣夫,小松原 良雄,槙野 博史,柴田 大法,神宮 政男,酒勾 祟,七川 歓次
- 日本リウマチ・関節外科学会雑誌 18(4), 167-176, 2000-03-15
- NAID 10009789766
Related Links
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- 強直性脊椎炎とリウマチ反応が陰性の関節症状を伴う自己免疫疾患を扱うページ。
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★リンクテーブル★
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- 英
- seronegative spondyloarthropathy SNSA
- 同
- 血清反応陰性関節炎 seronegative arthritis ← こちらの方がよく使われている印象がある
- 関
- 脊椎炎、仙腸関節疾患
[show details]
- 強直性脊椎炎:リウマトイド因子陰性で脊椎と仙腸関節が侵される疾患。HLA-B27は95%前後陽性。若年男性に好発。骨性強直をきたす。ぶどう膜炎や大動脈弁閉鎖不全症を合併しうる。
- 乾癬性関節炎:リウマトイド因子陰性で乾癬と様々な多関節炎を呈する疾患。HLA-B27陽性が多く、性差はなく若~中年に好発。手指ではDIP関節を冒し、脊椎炎、仙腸関節炎もきたしうる。
- Reiter症候群 反応性関節炎:泌尿生殖器(尿道炎)ではクラミジア、消化管(細菌性下痢)ではサルモネラ、赤痢菌、エルシニア、カンピロバクターによる感染後、1-3週間で関節炎を生じる。HLA-B27陽性が多い。1-3の関節(大関節に多い)が非対称性に侵され、仙腸関節炎、脊椎炎、腱付着部炎を伴う。関節炎、結膜炎、尿道炎はライター三徴と呼ばれる。
- Crohn病:消化管のあらゆる部位に非連続性に起こる原因不明・全層性の慢性肉芽腫性炎症疾患である。10歳後半から20歳代の若年者に多く、また男性に多い。消化管外症状として関節炎、強直脊椎炎をきたしうる。
[★]
- 英
- joint joints, synovial joints
- ラ
- juncturasynovialis, articulationes synoviales
- 同
- 滑膜性の連結 synovial joint junctura synovialis
種類
[★]
- 英
- serum (Z), blood serum
- 血液を凝固させて生じた血餅を取り除いて得られる黄色い透明な液体 (SP.484)
- 血漿からフィブリノーゲンと凝固因子を取り除いたもの
関連
検査
保存
[★]
- 英
- (生物)response、(化学)reaction、respond、react、responsive
- 関
- 応答、応答性、反応性、返答
[★]
- 英
- negativity、negative、cryptic
- 関
- 潜在性、ネガティブ、負、隠れた、否定的
[★]
- 関
- 炎光、炎症