- 英
- indwelling needle
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/05/25 22:05:20」(JST)
[Wiki ja表示]
点滴静脈注射(てんてきじょうみゃくちゅうしゃ、intravenous drip, DIV, IVD)とは、ボトルやバッグに入れて吊した薬剤を、静脈内に留置した注射針から少量ずつ(一滴ずつ)投与する方法で、経静脈投与(静脈注射、静注と略すことがある)の一種である。単に点滴とも称される。また、そのための医療機器である点滴装置も「点滴」と呼ばれることがある。輸液も参照のこと。
目次
- 1 目的
- 2 手技
- 3 静脈路
- 4 合併症
- 4.1 共通
- 4.2 末梢静脈路
- 4.3 中心静脈路
- 5 参考文献
- 6 関連項目
- 7 外部リンク
|
目的 [編集]
- 輸液・輸血を行う。
- 容量がおおよそ50 mLを超える注射製剤は点滴静注で投与される。
- 緩やかに、徐々に薬剤を投与する。
- 時間をかけてゆっくり投与することで、血中薬剤濃度の急激な上昇を抑え、副作用を回避する。一部の薬剤では致死的な不整脈(塩化カリウムなどで起きる)やアナフィラキシー・ショックを起こすことがあり、必ず点滴静注を行わなければならない。
- 持続的に薬剤を投与する。
- 持続的に薬剤を投与することで、薬理作用を保った血中濃度を維持することができる。
手技 [編集]
点滴装置 [編集]
点滴装置は、ガラス瓶或いは合成樹脂製バッグに無菌的に充填された薬液と、患者の静脈に刺入される注射針が、「点滴ライン」或いは「点滴セット」と称される専用のチューブで繋がれたものより成る(組み立てる順番は後述する)。静脈であっても相応の血圧が存在するので、圧力をかけるため薬液は高い位置に吊す必要がある。点滴ラインの途中には「チャンバー」と呼ばれる太くなった箇所があり、ここに薬液が滴下される(「点滴」という呼称はここから来ている)。これにより薬液中の微小な気泡が除去されると共に時間当たりの注入量(=注入速度)を測ることができる。注入速度は「ローラークレンメ」というころ状の部品でチューブを圧迫し、狭窄させることによって調節するが、正確な管理が要求される場合は輸液ポンプが用いられる。点滴ではないが、微量の薬剤を持続的に投与する方法としては注射器をすこしずつ押すシリンジポンプも用いられる。急速に薬剤を注入するときは、加圧バッグで薬液を圧迫する方法もとられる(野外での応急手当のような設備が存在しない環境の場合、手で押すこともある)。
注射針・カテーテル [編集]
- 翼状針
- 一時的かつ短時間の点滴静注には翼状針(翼付静脈針)が用いられる。注射針の両脇に体表に固定しやすくするための翼(ポリ塩化ビニル製)が付いている。容器・点滴ライン・翼状針を全て組み立てて中に薬液を通してから針を刺す。
- 留置針
- 持続的に点滴静注を行う場合には、留置針(金属製の注射針にテフロンないしポリウレタン製の柔らかい外筒を付けたもので、血管に刺入後に金属の針を抜くと外筒のみが留置される)を用い、これを留置した後で容器+点滴ラインを接続する。点滴静注終了後に留置針を残す場合は、閉塞を防ぐためにヘパリン(抗凝固薬)希釈液で点滴ルートを満たすヘパリンロックが行われている。また、ヘパリンの代わりに生理食塩液で満たす生食ロックも汎用されている。
- 中心静脈カテーテル
- 中心静脈から点滴静注を行う場合は、専用のカテーテルを留置する。中心静脈カテーテルは長さ30 - 70 cm程度の細い管で、静脈内に持続的に留置するため表面がコーティングされている。複数の内腔をもつカテーテルもあり(ダブルルーメンカテーテルなど)、混注不可能な薬剤を同時に投与するために用いられる。また皮下埋込式リザーバを用いるとカテーテル一式を完全に体内に埋め込むことが可能で、外来化学療法などに利用されている。
静脈路 [編集]
留置針やカテーテルによって確保された静脈内への薬剤投与経路を、静脈路(静脈ルート)という。静脈路は即効性を期待する投与経路として重要だが、血圧の急に下がるような緊急時にはむしろ確保が難しくなる(末梢の静脈が虚脱するため)。そのため、ルートが血栓で閉塞しないことだけを目的に少量の輸液を持続して行ったり、ヘパリンロックを行う場合もある。
末梢静脈路 [編集]
腕や脚などの皮下を走る静脈に留置するルート。手軽に確保できるため頻用されるが、浸透圧の高い輸液を行うと血管炎を起こしてしまうため、高カロリー輸液には適さない(末梢静脈路から投与できるブドウ糖液の濃度は、高浸透圧による血管障害のため10%程度が上限とされている)。末梢静脈から行う栄養はPPN(Peripheral Parenteral Nutrition)と呼ばれる。
中心静脈路 [編集]
上大静脈または下大静脈に留置するルート。これらは体内で最も太く血液量が多い静脈であり、中心静脈 (central vein; CV) と称される。高濃度の薬剤を投与することが可能であり、また血管外への逸脱を起こしにくく確実性の高い投与経路である。その特長を生かして高カロリー輸液 (TPN:Total Parenteral Nutrition) や、血管炎をきたし易い薬剤(一部の抗がん剤など)の投与に用いられる。またカテーテルを通して中心静脈の血圧(中心静脈圧)を測定することが可能であり、体液量の増減やうっ血性心不全の程度を把握するのに役立つ。
中心静脈カテーテルは大腿静脈、内頚静脈、鎖骨下静脈などから挿入し、中心静脈に留置される。手技はやや煩雑で、合併症の危険を伴う(後述)。また、中心静脈ルートが細菌等に感染した場合、致死的な敗血症の原因となることがある。正中静脈から挿入するキット(PICC; Peripherally inserted central catheter)も存在する。
合併症 [編集]
共通 [編集]
- カテーテル感染
- 共通して抱えているのが感染である。薬剤の調製や注入の際に混入した病原体が、プラスティックのルートに付着し繁殖する。末梢静脈では静脈炎が、中心静脈ではカテーテル熱と呼ばれる断続的な高熱が出現する。感染が疑われる場合には速やかにカテーテルを抜去する。ヘパリンロックに使う希釈液を病棟でまとめて調製し、使用都度ごとに注射器に取る使用法において、希釈液の汚染によりカテーテル感染が起こるとの報告がある。
末梢静脈路 [編集]
- 静脈炎
- 末梢静脈では高浸透圧の濃い輸液などで血管痛が生じ、ひいては血管炎に至る。
- 血管外漏出
- 血管への穿刺が不確実な場合や血管壁が脆弱な場合、薬液が血管外に漏れるいわゆる「点滴漏れ」が起こる。穿刺部周囲に浮腫を生じ、痛みを伴う。組織障害性の強い造影剤や化学療法剤が漏出した場合は壊死を起こす事もある。
中心静脈路 [編集]
- 誤穿刺
- カテーテルを挿入する際に体腔に誤穿刺する。鎖骨下静脈の穿刺では気胸を生じることがある。誤挿入したまま薬液を注入して、胸腔や腹腔・後腹膜腔に薬液貯留をきたす事もある。動脈を誤穿刺したあと血腫を生じ気管や食道を圧迫して呼吸困難になることもある。通常は入れないが右房までカテーテルを挿入しカテ先が貫いて心タンポナーデになったり、洞結節などを刺激して不整脈を生じる事もある。どんなに上手な人がやっても一定の確率で合併症は起こり得る。
- カテーテル切断
- カテーテルを引き千切った場合、カテーテルが心臓やその他の血管内に閉塞してしまう事があり、手術や血管内治療で取り出す必要がある。中心静脈圧は正常で10 cm水柱圧あるので、またサイフォンの原理もあり、カテーテルの切断部から失血する事故も報告されている。
参考文献 [編集]
この節は執筆中です。加筆、訂正して下さる協力者を求めています。
関連項目 [編集]
|
ウィキメディア・コモンズには、点滴静脈注射に関連するカテゴリがあります。 |
- 注射
- 静脈路確保
- 輸液
- 輸血
- 高カロリー輸液
- 点滴バー
- en:Central venous catheter
- en:Peripheral parenteral nutrition
- en:Peripherally inserted central catheter
- en:Total parenteral nutrition
外部リンク [編集]
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- 末梢静脈路確保 (特集 研修医のためのER診療マニュアル(2)基本手技・検査編) -- (血管)
- 福嶋 勇太,齋藤 和哉,塚尾 浩,苗村 潔
- Journal of Japan Society of Computer Aided Surgery : J.JSCAS 13(3), 424-425, 2011-11-22
- NAID 10030199616
Related Links
- 職業感染制御研究会ホームページ特設コーナー 安全器材と個人用防護具 ... リスク 静脈留置針の内針( スタイレット) は、口径が大きく血液を吸い上げているため、針刺しに伴なう血液媒介病原体の伝播リスクは比較的高い。
- コード番号 カラーコード カテーテルゲージ カテーテルの長さ OKフラッシュ カテーテルタイプ カテーテル外径 カテーテル内径 内針ゲージ 共通商品コード(JAN) SR-SOS1451L オレンジ 14G 2"(51mm) - ラジオペーク ストライプ 2.1mm 1 ...
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
[正答]
※国試ナビ4※ [108F008]←[国試_108]→[108F010]
[★]
- 74歳の男性。術中の血圧を測定するため、橈骨動脈に留置針を挿入する予定である。その可否をみるために次の手順で検査を行った。
- ① 母指を中にして手を強く握らせる。
- ② 橈骨動脈と尺骨動脈とを用手的に圧迫する。
- ③ 圧迫をしたまま手を開かせて色調が蒼白になっていることを確認する。
- ④ 橈骨動脈の圧迫を解除する。
- ⑤ 手の色調が速やかに赤色に戻ることを確認する。
[正答]
※国試ナビ4※ [101D022]←[国試_101]→[101D024]
[★]
- 成人男性の交通事故で救急患者受入の要請があった。事故現場到着時点での血圧は触診で 80 mmHgとのことである。救急外来で血管確保のために準備しておくべき留置針の太さ (G)で適切なのはどれか。
- a 14G
- b 18G
- c 24G
- d 30G
- e 34G
[正答]
※国試ナビ4※ [108H019]←[国試_108]→[108H021]
[★]
- 英
- needle
- 関
- 針状晶、ニードル、針葉
分類
目的別
- Tuohy針 トゥーイー針: 硬膜外麻酔によく用いられる針。硬膜外針とも。先端が彎曲してる。17-18Gがよく用いられる。
[★]
- 英
- placement、detention、indwell、detain、indwelling
- 関
- 配置、設置、放置