アシクロビル
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アシクロビル
|
IUPAC命名法による物質名 |
IUPAC名
2-アミノ-9-(2-ヒドロキシエトキシメチル)-3H-プリン-6-オン
|
臨床データ |
胎児危険度分類 |
|
法的規制 |
- unscheduled/S4 (Au), POM (UK)
|
投与方法 |
経静脈、経口、局所 |
薬物動態データ |
生物学的利用能 |
10~20%(経口) |
血漿タンパク結合 |
9-33% |
代謝 |
Viral thymidine kinase |
半減期 |
2.2~20時間 |
排泄 |
腎臓 |
識別 |
CAS番号
(MeSH) |
59277-89-3 |
ATCコード |
J05AB01 (WHO) D06BB03 (WHO)、S01AD03 (WHO) |
PubChem |
CID: 2022 |
DrugBank |
APRD00567 |
KEGG |
D00222 |
別名 |
acycloguanosine |
化学的データ |
化学式 |
C8H11N5O3 |
分子量 |
225.21 g/mol |
物理的データ |
融点 |
256.5 °C (493.7 °F) |
アシクロビル (Aciclovir) は、ウイルス感染症の治療薬である。医薬品としては、ヘルペスウイルス感染症や帯状疱疹に適応がある。
目次
- 1 効果・効能
- 2 副作用
- 3 薬理
- 4 化学的性状
- 5 歴史
- 6 脚注
- 7 関連項目
効果・効能
ヘルペスウイルス及び水痘・帯状疱疹ウイルスに対して有効性を持つ。単純ヘルペスウイルス感染症(単純疱疹)の治療や骨髄移植時における発症抑制、水痘、帯状疱疹の治療等に使われる。注射薬はこれらのウイルスに因る脳炎・髄膜炎にも適応を持っている。
副作用
内用薬(注射剤、錠剤等)では下記の項目が重大な副作用に設定されているが、外用薬(軟膏、クリーム等)には設定されていない。
- アナフィラキシーショック、アナフィラキシー(呼吸困難、血管浮腫等)、
- 汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少、播種性血管内凝固症候群(DIC)(0.02%)、血小板減少性紫斑病、
- 意識障害(昏睡)、譫妄、妄想、幻覚、錯乱、痙攣、癲癇発作、麻痺、脳症等、
- 呼吸抑制、無呼吸(0.02%)、
- 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、
- 間質性肺炎、急性腎不全、肝炎、肝機能障害、黄疸、急性膵炎
副作用発現率は、注射剤で4.60%[1]、錠剤[2]・顆粒剤[3]で2.09%(単純疱疹、帯状疱疹、水痘の通算)、軟膏[4]で0.87%(治験と使用成績調査の通算)、眼軟膏[5]で13.57%であった。その他の剤形は後発品であるので頻度調査を実施しておらず不明である。
薬理
ヘルペスウイルス(HSV-1、HSV-2)又は水痘・帯状疱疹ウイルス(VSV)感染細胞内ではウイルス性のチミジンキナーゼ(英語版)(TK)が発現している。アシクロビルはウイルス性TKで一リン酸化された後、宿主(ヒト)細胞性キナーゼで三リン酸体(活性体)となり、ウイルスDNAポリメラーゼでウイルスDNAに取り込まれ、それ以上のDNA伸長を阻害し、ウイルスの増殖を防ぐ。
化学的性状
白色から微黄白色の結晶性の粉末で、においはなく、味は苦い。ジメチルスルホキシドに溶けやすく、酢酸 (100) にはやや溶けにくい。水に溶けにくく、メタノール・エタノール (95) に極めて難溶である。アセトン、1-プロパノール、ジエチルエーテル、ヘキサンにほとんど溶けない。希塩酸、希水酸化ナトリウム試液またはアンモニア試液に溶ける。
歴史
バローズ・ウェルカム研究所でガートルード・エリオンが開発した。
日本ではグラクソ・スミスクラインからゾビラックスが販売される。後発医薬品も様々に販売されている。剤形としては注射、錠剤、顆粒、シロップ、ゼリー、クリーム、軟膏、眼軟膏等がある。2007年に一般用医薬品として大正製薬よりヘルペシア軟膏、グラクソ・スミスクラインよりアクチビア軟膏が発売された。効能は口唇ヘルペス再発のみだが、受診を避けたい性器ヘルペス患者も気軽に買えるよう、承認条件として義務付けられた薬剤師による指導をあえて控えているのではないかと経済誌ZAITEN2009年2月号が問題提起した。
脚注
- ^ “ゾビラックス点滴静注用250 添付文書” (2014年11月). 2016年6月1日閲覧。
- ^ “ゾビラックス錠200/ゾビラックス錠400 添付文書” (2015年2月). 2016年6月1日閲覧。
- ^ “ゾビラックス顆粒40%” (2014年11月). 2016年6月1日閲覧。
- ^ “ゾビラックス軟膏5%” (2014年11月). 2016年6月1日閲覧。
- ^ “ゾビラックス眼軟膏3% 添付文書” (2015年2月). 2016年6月1日閲覧。
関連項目
- 抗ウイルス薬
- バラシクロビル - アシクロビルのプロドラッグ
抗DNAウイルス薬(ATCコード:J05、S01AD、D06BB) |
Baltimore I |
ヘルペスウイルス |
DNA合成
阻害剤 |
TK活性型 |
プリン誘導体 |
グアニン(アシクロビル#/バラシクロビル、ガンシクロビル/バルガンシクロビル、ペンシクロビル/ファムシクロビル)
アデニン(ビダラビン、シタラビン)
|
ピリミジン誘導体 |
ウリジン(イドクスウリジン、トリフルリジン、エドクスウジン)
チミン(ブリブジン)
|
|
TK不活性型 |
ホスカルネット
|
|
その他 |
ドコサノール · 初期タンパク質(ホミビルセン) · トロマンタジン
|
|
HPV/MC |
イミキモド/レシキモド · ポドフィロトキシン
|
ワクシニア |
会合阻害: リファンピシン
|
ポックスウイルス |
メチサゾン
|
|
B型肝炎 (VII) |
ヌクレオシド誘導体/NARTI: エンテカビル · ラミブジン · テルビブジン · クレブジン
ヌクレオシド誘導体/NtRTI: アデホビル · テノホビル
|
Multiple/general |
核酸阻害剤 |
シドホビル
|
インターフェロン |
インターフェロンα-2b · ペグインターフェロンα-2a
|
複合/不明 |
リバビリン#/タリバビリン†
|
ErbB2/PI3K経路 |
NOV-205§ · NOV-002†
|
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#WHO-EM. ‡市場から撤退。治験: †第III相。§第II相以下 |
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
グロスパールシロップ8%
組成
成分・分量
添加物
- 結晶セルロース、カルメロースナトリウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、グァーガム、クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物、プロピレングリコール、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、アスパルテーム(L-フェニルアラニン化合物)、香料
禁忌
- 本剤の成分あるいはバラシクロビル塩酸塩に対し過敏症の既往歴のある患者
効能または効果
[成人]
- 通常、成人には1回2.5mL(アシクロビルとして200mg)を1日5回経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
- ○造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症(単純疱疹)の発症抑制
- 通常、成人には1回2.5mL(アシクロビルとして200mg)を1日5回造血幹細胞移植施行7日前より施行後35日まで経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
- ○帯状疱疹
- 通常、成人には1回10mL(アシクロビルとして800mg)を1日5回経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
[小児]
- 通常、小児には体重1kg当たり1回0.25mL(アシクロビルとして20mg)を1日4回経口投与する。ただし、1回最高用量は2.5mL(アシクロビルとして200mg)とする。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
- ○造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症(単純疱疹)の発症抑制
- 通常、小児には体重1kg当たり1回0.25mL(アシクロビルとして20mg)を1日4回造血幹細胞移植施行7日前より施行後35日まで経口投与する。ただし、1回最高用量は2.5mL(アシクロビルとして200mg)とする。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
- ○帯状疱疹
- 通常、小児には体重1kg当たり1回0.25mL(アシクロビルとして20mg)を1日4回経口投与する。ただし、1回最高用量は10mL(アシクロビルとして800mg)とする。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
- ○水痘
- 通常、小児には体重1kg当たり1回0.25mL(アシクロビルとして20mg)を1日4回経口投与する。ただし、1回最高用量は10mL(アシクロビルとして800mg)とする。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
- ○性器ヘルペスの再発抑制
- 通常、小児には体重1kg当たり1回0.25mL(アシクロビルとして20mg)を1日4回経口投与する。ただし、1回最高用量は2.5mL(アシクロビルとして200mg)とする。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
- 腎障害のある患者又は腎機能の低下している患者、高齢者では、精神神経系の副作用があらわれやすいので、投与間隔を延長するなど注意すること。なお、本剤の投与間隔の目安は下記のとおりである。(参考)注)なお、腎障害を有する小児患者における本剤の投与量、投与間隔調節の目安は確立していない。(「慎重投与」、「重要な基本的注意」、「高齢者への投与」及び「過量投与」の項参照)
クレアチニンクリアランス(mL/min/1.73m2):>25
- 単純疱疹の治療:1回200mgを1日5回
帯状疱疹の治療:1回800mgを1日5回
クレアチニンクリアランス(mL/min/1.73m2):10〜25
- 単純疱疹の治療:1回200mgを1日5回
帯状疱疹の治療:1回800mgを1日3回
クレアチニンクリアランス(mL/min/1.73m2):<10
- 単純疱疹の治療:1回200mgを1日2回
帯状疱疹の治療:1回800mgを1日2回
- 注)外国人における成績である。
- 小児の性器ヘルペスの再発抑制においては、体重40kg以上に限り投与すること。
- 成人における性器ヘルペスの再発抑制に対する適応はない。
慎重投与
- 腎障害のある患者(〈用法・用量に関連する使用上の注意〉及び「重要な基本的注意」の項参照)
- 肝障害のある患者[肝障害が増悪するおそれがある。]
- 高齢者(〈用法・用量に関連する使用上の注意〉、「重要な基本的注意」及び「高齢者への投与」の項参照)
- 小児(「小児等への投与」の項参照)
重大な副作用
次のような症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
アナフィラキシーショック、アナフィラキシー様症状(呼吸困難、血管浮腫等)
頻度不明
汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少、播種性血管内凝固症候群(DIC)、血小板減少性紫斑病
頻度不明
急性腎不全
頻度不明
**精神神経症状
頻度不明
- 意識障害(昏睡)、せん妄、妄想、幻覚、錯乱、痙攣、てんかん発作、麻痺、脳症等
中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)
頻度不明
呼吸抑制、無呼吸
頻度不明
間質性肺炎
頻度不明
肝炎、肝機能障害、黄疸
頻度不明
急性膵炎
頻度不明
薬効薬理
- アシクロビルは、単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルスが感染した細胞内において活性化され、抗ウイルス作用をあらわす。
アシクロビルは、ヘルペス群ウイルス感染細胞に入ると、ウイルスに特異的なチミジンキナーゼにより一リン酸化され、その後細胞性キナーゼによりリン酸化されて、活性型のアシクロビル三リン酸になり、ウイルスDNAポリメラーゼの阻害作用をあらわす。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
略号
化学名
- 2-Amino-9-[(2-hydroxyethoxy)methyl]-1,9-dihydro-6H-purin-6-one
分子式
分子量
性状
- 白色〜微黄白色の結晶性の粉末である。
水に溶けにくく、エタノール(99.5)に極めて溶けにくい。
0.1mol/L塩酸試液又は希水酸化ナトリウム試液に溶ける。
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- acyclovir, ACV
- 同
- アシクログアノシン acycloguanosine
- 商
- アイラックス、アクチオス、アクチダス、アシクリル、アシクロビン、アシビル、アシロミン、アストリック、エアーナース、グロスパール、クロベート、ゾビクロビル、ゾビラックス、ナタジール、ビクロックス、ビゾクロス、ビルヘキサル、ビルレクス、ファルラックス、ベルクスロン
- 関
- 抗ウイルス薬、ウイルス
- グアノシンの誘導体で、糖の2'と3'を欠き、非環状となっている。
作用機序
- アシクロビルはHSVやVZVがコードするチミジンキナーゼによりアシクロビル一リン酸となる。次に宿主由来のチミジンキナーゼによりアシクロビル二リン酸、アシクロビル三リン酸となる。ウイルスDNAポリメラーゼによりアシクロビル三リン酸が取り込まれると、3'-OHを欠くためにDNA合成反応が停止する。これによりウイルスの増殖を抑制する。
- 宿主細胞のチミジンキナーゼはACVを一リン酸化できないので、非感染細胞ではDNA合成阻害は起こらない。
適応
- 単純ヘルペスウイルス感染症
- 水痘・帯状疱疹ウイルス感染症
- 予防のためには投与は適応外である。
- サイトメガロウイルスには無効である
注意
副作用
[★]
- 英
- spur
- 関
- 距状突起