ミネソタ多面人格目録
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/04/19 18:06:42」(JST)
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ミネソタ多面人格目録(ミネソタためんじんかくもくろく、Minnesota Multiphasic Personality Inventory)は、質問紙法の心理検査で、質問に対して「あてはまる」、「あてはまらない」、「どちらでもない」を選択する3件法が用いられる。英語名の頭文字をとってMMPIとも呼ばれる。
目次
- 1 作成の経緯と内容
- 1.1 開発の目的
- 1.2 項目の収集と臨床尺度の設定
- 1.3 妥当性尺度の設定
- 2 発表後の評価とその後
- 3 使用状況
- 4 日本版
- 5 参考文献
作成の経緯と内容
MMPIは、1943年にアメリカミネソタ大学病院の精神神経科の心理学者ハサウェイ(Hathaway, S. R.)と、精神科医マッキンリー(Mckinley, J. C.)によって開発された人格目録で、550の質問項目で構成されている。
開発の目的
MMPI開発の目的は、精神医学的診断の客観的尺度を作成することであった。これは、当時ハサウェイとマッキンリーが既存の尺度を使用してみたところ、それらが役に立たなかったことが影響している。
項目の収集と臨床尺度の設定
彼らは検査を作成するに当たって、1000以上の質問項目を集めることからはじめた。集めた質問項目の中から重複するものや、検査の目的と一致しないものを除いた結果、504項目が残った。そこで、彼らはその504項目を正常者に実施した。正常群はミネソタ大学病院の精神疾患を持たない患者や見舞い客、ミネソタ大学の入学前ガイダンスの出席者、事業促進局(Works Progress Administration)の労働者から選ばれた。これらの正常群はミネソタ正常群(the Minnesota normals)と呼ばれる。次いで、臨床群にも実施した。臨床群はミネソタ大学病院の精神科患者の中から、診断に疑問のある患者、二つ以上の診断名がつけられている患者などを除いたもの、つまり診断名が「抑うつ」のみや「統合失調症」のみのような患者が選ばれた。臨床群はさらに心気症、抑うつ、ヒステリー、精神病質的偏奇、パラノイア、神経衰弱、統合失調症、軽躁病の診断名ごとに分けられた。 MMPIは、これら正常群と臨床群を比較して応答に有意な差のあった項目をそれぞれの尺度の弁別に用いることにした。この結果、心気症尺度(Hs)、抑うつ尺度(D)、ヒステリー尺度(Hy)、精神病質的偏奇尺度(Pd)、パラノイア尺度(Pa)、神経衰弱尺度(Pt)、統合失調症尺度(Sc)、軽躁病尺度(Ma) の8つの臨床尺度が作成された。その後さらに、男性の同性愛者を弁別することが目的の男性性・女性性尺度(Mf)と、ドレイク(Drake, 1946)の作成した社会的内向性尺度(Si)が加えられ10尺度となった。これら10尺度は臨床尺度(clinical scales)と呼ばれる。また、Mf尺度は500余の項目に追加する形であったため、項目数は今日の総項目数と同じ550項目となった。
妥当性尺度の設定
MMPIには臨床尺度のほかに、検査の妥当性を測る、?、L、F、Kの4つの妥当性尺度(validity scales)が設定された。それぞれの詳細は以下の通りである。
- ?尺度(疑問点)
- 被験者が「どちらともいえない」と答えた項目の数を表しており、これが多い場合は妥当性が疑わしくなるため、判定の中止、あるいは再検査を検討する必要がある。
- L尺度(虚構点)
- Lはうそ(Lie)を表し、被験者が自分を好ましく見せようとすることによっておこる反応の歪みの程度を調べるものである。
- F尺度(妥当性点)
- 正常な成人においては出現率の低い回答をした数を表しており、これが多い場合は検査の結果の信頼性が低いと考えられる。
- K尺度(修正点)
- 自己に対する評価、検査に対する警戒の程度を調べるもので、これが高いほど自己防衛の態度が高いといえる。また自己に対する評価、検査に対する警戒による回答の歪みを修正するための点数としても扱われる。
発表後の評価とその後
MMPIの発刊後、実際に使用されるにつれて、検査に問題点があり、精神医学的診断の客観的指標を作成するという当初の目的をはたせていないことが明らかになってきた。その問題点とは、「特定の症状を持つ患者は対応する臨床尺度で高い得点をとることが多かったが、同時に他の臨床尺度でも高い得点をとることが多い」ということである。この問題をグレイアム(Graham,1997)は「臨床尺度がその尺度名が示す症状・症候群の純粋な尺度ではないのは明らかである」としたうえでその理由について、臨床尺度が相互に高い相関関係にあることを指摘した。しかし、これらの問題はMMPIの診断価値を完全に否定するものではなかった。それは、後の研究によってそれぞれの臨床尺度の程度よって起きやすい特徴が明らかにされ、新たな情報を引き出すことに成功したことにより、当初の目的とは異なった方向で役立つこととなったためである。しかし、こういった経緯により今日では臨床尺度の診断名はあまり重視されないようになっていることも事実である。また、これらの問題が重大視されない背景には精神医学的疾病分類がMMPIの開発された1940年代ほど有用視されていないということも関係している。そのため、精神医学的疾病分類が行われているという誤解を招かないようにするために、それぞれの項目を当初の臨床尺度名ではなく第1尺度、第2尺度といった風に表すことが一般的になってきている。
使用状況
MMPIは出版後、130の言語に翻訳され90以上の国で用いられている。また、研究文献数ではロールシャッハテストを超えているほか、ピオトロスキーら(Piotrowski et al., 1985)がアメリカ人格査定学会(Society for Personality Assessment)を対象にして行った調査によるとMMPIの使用頻度はウェクスラー成人知能検査やロールシャッハテストに次いで第3位であり、本国アメリカなど英語圏の国を中心に、世界的に使用頻度の高い検査である。しかし、この世界的な使用頻度と比べて、日本での使用頻度は日本語版が1963年に発刊されているにもかかわらず高くない。
日本版
前述のように日本版は1963年に阿部らによって発刊された(Hathaway & McKinley, 1943; 阿部・住田・黒田,1963)。しかし、阿部らが発刊した日本版には翻訳段階の誤りや、標準化作業における疑問などの問題点が指摘されていた[要出典]。そこで、 1990年からそれらの問題点を踏まえて翻案、標準化が始められ、1993年に発刊されたのが新日本版(MMPI新日本版研究会編,1993)である。この新日本版の発刊によって、これまで指摘されていた日本版の問題点はほぼ解決されたと言われている[要出典]。
参考文献
- 誠信書房『臨床心理検査技法』大塚義孝・岡堂哲雄・東山紘久・下山晴彦監修(ISBN 4414413265)
- 医学出版社『臨床心理検査入門-諸検査の施行とその解釈』松本啓・鮫島和子共著(ISBN 4870550164)
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MMPI may refer to:
- Minnesota Multiphasic Personality Inventory, one of the most frequently used personality tests in mental health
- Matrix metalloproteinase inhibitor, inhibits cell migration and has antiangiogenic effects
UpToDate Contents
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English Journal
- Empirical Correlates of Low Scores on MMPI-2/MMPI-2-RF Restructured Clinical Scales in a Sample of University Students.
- Avdeyeva TV, Tellegen A, Ben-Porath YS.Source1University of St. Thomas, St. Paul, MN, USA.
- Assessment.Assessment.2012 Sep;19(3):388-93. Epub 2011 Jun 21.
- In the present study, the authors explored the meaning of low scores on the MMPI-2/MMPI-2-RF Restructured Clinical (RC) scales. Using responses of a sample of university students (N = 811), the authors examined whether low (T < 39), within-normal-limits (T = 39-64), and high (T > 65) score lev
- PMID 21697138
- Curcumin: a potential candidate for matrix metalloproteinase inhibitors.
- Kumar D, Kumar M, Saravanan C, Singh SK.SourcePharmaceutical Chemistry Research Laboratory, Department of Pharmaceutics, Indian Institute of Technology (IIT-BHU) , Varanasi-221005 , India.
- Expert opinion on therapeutic targets.Expert Opin Ther Targets.2012 Aug 23. [Epub ahead of print]
- Introduction: Curcumin, a natural yellow pigment of turmeric, has become focus of interest with regard to its role in regulation of matrix metalloproteinases (MMPs). MMPs are metal-dependent endopeptidases capable of degrading components of the extracellular matrix. MMPs are involved in chronic dis
- PMID 22913284
Japanese Journal
- 8.MMPIからみた摂食障害患者の特徴に関する臨床的研究(一般演題,第67回日本心身医学会東北地方会プログラム・抄録集)
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- MMPIは、1943年にアメリカミネソタ大学病院の精神神経科の心理学者ハサウェイ( Hathaway, S. R.)と、精神科医マッキンリー(Mckinley, J. C.)によって開発された人格 目録 ... MMPI開発の目的は、精神医学的診断の客観的尺度を作成することであった。
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★リンクテーブル★
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- 40歳の男性。仕事がうまくできなくなったことを主訴に妻とともに来院した。1年前、夜間にロードバイクで走行中に転倒し、電柱で頭部を強打して救急搬送されて入院した。そのときの意識レベルはJCSⅢ-100。左鎖骨骨折がみられ、頭部CTで両側前頭葉の挫傷と脳梁、基底核の点状出血とを認めた。翌日夕方には会話が可能な状態にまで回復したが、その後約1週間の健忘を残した。鎖骨骨折の経過は良好で運動障害を残すことなく1か月後に退院した。しかし、妻によると入院中からめまいを訴えることが多く、不機嫌で人が変わったようになっていたという。めまいは徐々に軽快し、退院5か月後に職場に復帰したが、単純ミスが目立ち、注意されると激昂する。注意散漫で指示の理解も悪く、上司の勧めもあって受診した。患者自身は「困ることはない。仕事もまじめにやっている」と述べる。疎通性は比較的保たれているが、長い質問は十分理解できない。神経学的所見と血液生化学所見とに異常を認めない。頭部CTでは両側側脳室の軽度拡大が見られた。この患者の心理・精神機能評価に有用な検査はどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [110G058]←[国試_110]→[110G060]
[★]
- 30歳の女性。自閉的な生活を心配した両親に伴われて来院した。17歳ころ、周りの人が自分を避けるのは変な臭いがしているからだと言い始め、自室に閉じこもるようになったため精神科で治療を受けた。治療によって外出できるようになり作業所に通所していた。28歳ころから幻聴が出現し「噂話をされている。何かやろうとするといちいち文句を言われる」と言うようになり、再び外出することはなくなり、哲学書を繰り返し読むだけの生活になっていた。3か月前からは通院せず、服薬もしなくなったため、両親が転医を希望し新たな医療機関を受診した。診察時は感情表出に乏しく受動的で、断片的に幻覚や妄想を思わせる訴えが認められる。身体所見に異常を認めない。
- この患者に対する心理・精神機能検査として有用でないのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [109E050]←[国試_109]→[109E052]
[★]
- 68歳の女性。疑い深くなったことに気付いた家族に伴われて来院した。
- 半年前から、自分が置いた財布がみつからないと、「誰かが家に入り込み盗んだ。」と騒ぐようになった。実際には盗まれてはおらず、引き出しの中から出てきたりする。
- 食事を済ませた直後に、「嫁が意地悪で、食べさせてくれない。」と非難する。友人が訪ねてくると楽しそうに会話しているが、一人になると上の空で居間に腰かけていることが多い。
- 診断に有用な心理・精神機能検査はどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [098I037]←[国試_098]→[098I039]
[★]
- 65歳の女性。「嫁が財布をとった」と言っては騒ぐと家族に伴われて来院した。家族によれば、患者は最近わがままで短気になり、物忘れも目立つようになったと言う。財布は家族が一緒に捜すと、机の引き出しの中に見つかったりする。患者は憮然として、「嫁は意地悪だ」と言う。
- 診断に有用な検査はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [102A023]←[国試_102]→[102A025]
[★]
- 20歳の女性。言動の異常を心配した両親に伴われて来院した。家族によれば、「家の前の道路を通る人から悪口を言われている」、「盗聴されている」と言って騒ぎ、自宅に閉じこもり、昼夜は逆転し興奮をきたすという。
- 診断に有用な検査はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [104B040]←[国試_104]→[104B042]
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[正答]
※国試ナビ4※ [109G036]←[国試_109]→[109G038]
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- 統合失調症の心理・精神機能評価として適切でない検査はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [105B010]←[国試_105]→[105B012]
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- 決められた10枚の図版を順番に提示して施行する心理・精神機能検査はどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [110A060]←[国試_110]→[110B002]
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- 被験者が口頭で答える形式のものはどれか。2つ選べ。
[正答]
※国試ナビ4※ [108E033]←[国試_108]→[108E035]
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- 心理・精神機能検査のうち、直接患者に行わないのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [111G008]←[国試_111]→[111G010]
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[正答]
※国試ナビ4※ [103B003]←[国試_103]→[103B005]
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※国試ナビ4※ [106E035]←[国試_106]→[106E037]
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[正答]
※国試ナビ4※ [100G089]←[国試_100]→[100G091]
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- 英
- Minnesota multiphasic personality inventory, MMPI
- 同
- ミネソタ多面人格テスト
- 関
- 人格検査
[show details]
- 成人の人格を客観的に評価(客観的人格評価)するために用いられる方法の一つ。 ⇔ (投影的人格評価)ロールシャッハテスト
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- 英
- personality test
- 同
- 性格検査 character test、人格評価?
- ミネソタ多面人格目録 MMPI:550の質問からなり、様々な尺度を用いた性格検査
- 矢田部・ギルフォード性格検査 Y-G:120の質問からなる性格検査
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- 英
- anxiety scale Taylor's anxiety scale
- 関
- 顕在性不安尺度 MAS、ミネソタ多面的人格特性目録検査 MMPI Minnesota multiphase personality inventory
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- 英
- Minnesota Multiphasic Personality Inventory, MMPI
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- 英
- Minnesota multiphasic personality inventory MMPI
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マトリックスメタロプロテアーゼ matrix metalloproteinase