ジアルジア属
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ジアルジア |
ランブル鞭毛虫 Giardia lamblia
|
分類 |
ドメ
イン |
: |
真核生物 Eukaryota |
界 |
: |
エクスカバータ Excavata |
門 |
: |
メタモナス門 Metamonada |
目 |
: |
ディプロモナス目 Diplomonadida |
科 |
: |
ヘキサミタ科 Hexamitidae |
亜科 |
: |
ジアルジア亜科 Giardiinae |
属 |
: |
ジアルジア属 Giardia |
|
学名 |
Giardia Künstler, 1882 |
種 |
- Giardia agilis
- Giardia muris
- Giardia intestinalis
- Giardia psittaci
- Giardia ardeae
- Giardia microti
|
ジアルジア (Giardia) は、エクスカバータ メタモナス門ディプロモナス目ヘキサミタ科に分類される、原生動物の属である。
哺乳類、鳥類、爬虫類などの脊椎動物に寄生し、ジアルジア症を引き起こす。Giardia intestinalis のみがヒトに寄生する。
目次
- 1 発見と命名
- 2 生活環
- 3 分類
- 3.1 目以上
- 3.2 分類史
- 3.3 現在の分類
- 4 宿主との共進化
- 5 出典
発見と命名
ジアルジアは、1681年、ファン・レーウェンフックが、自らの下痢便を顕微鏡観察して、初めて記載した[1]。
1859年、ランブル (Vilém Dušan Lambl) によりケルコモナス Cercomonas の1種 Cercomonas intestinalis として、詳細に記載された。1879年、ランブルの記載に気づかなかったグラッシ Giovanni Battista Grassi により、齧歯類への寄生虫 Dimorphus muris が記載された[1]。
1882年と1883年、キュンストラー Johann Künstler が、おたまじゃくしへの寄生虫(G. agilis か)を Giardia として記載し、これが属名として使われた。しかし1888年 Blanchard は、Lamblia intestinalis として記載した[1]。
生活環
ジアルジアのシストは、宿主の糞便に混ざって排出される。シストは湿った涼しい環境では数ヶ月感染力を維持する[2]。
シストは経口摂取されると、十二指腸で有糸分裂しトロフォゾアとなる。そして、腸の粘液層の下の微絨毛に、腹部の吸盤で付着する。これで新しい宿主への感染が確立される[2]。
いくつかの主要な胆汁酸塩の存在など、腸内環境の変化により、次世代のシストが形成される。シストは糞便と共に排出さえ、汚染された水や食事、肉体の接触により、感染が拡大する[2]。
分類
目以上
ランブル鞭毛虫が所属するディプロモナス目は、古典的な分類体系では動物性鞭毛虫綱に含めていたが、分子系統解析によればエクスカバータのうちフォルニカータといる系統に属している。
分類史
ジアルジアの種分類はいくつかの理由で困難である[1]。
- 無性生殖のため、種の認定が難しい。
- 初期の分類では宿主ごとに過剰な種が認定され、その後は、光学顕微鏡での形態分類ではにより種の数は少なすぎた。
- 宿主間のクロス感染実験の結果に一貫性がない。
- 分子系統学以前には、適切な利用できる特徴がなかった。
Giardia の種は、宿主ごとに40種以上に分類された。一方、Simon は形態に基づき G. lamblia と G. muris に分類した。1952年 Filice は中央小体の詳細な形態分類により G. duodenalis、G. muris、G. agilis の3種に分類した[1]。
現在の分類
現在では形態観察や分子系統解析に基づいて、6種に分類される[2]。
- Giardia agilis Künstler, 1883
- 栄養型が縦に細長く、中央小体は棍棒状。両生類に寄生。
- Giardia muris (Grassi, 1879)
- 栄養型が小型で丸い、中央小体も小さく丸い。主として齧歯類に寄生。
- Giardia intestinalis (Lambl, 1859)
- Giardia duodenalis、Giardia lamblia はシノニム。
- 栄養型が洋梨形で、中央小体はかぎ爪状。ヒトを含む哺乳類に寄生。
- Giardia psittaci
- インコに寄生。
- Giardia ardeae
- サギ科に寄生。
- Giardia microti Kofoid & Christiansen, 1915
- ハタネズミなど齧歯類に寄生。
このうち G. intestinalis には宿主特異性の異なる複数の遺伝型があることが判明しており、将来にはこれに基づいた再分類が行われることが期待される[3]。現在では、A~Gの7つの遺伝型が確認されている[2]。
宿主との共進化
ヒトに寄生する G. intestinalis とサギ科に寄生する G. ardeae との間の遺伝的距離は、G. intestinalis 内部の遺伝的多様性より大きい。これは、ジアルジアと宿主との間の共進化が起こったことを裏付ける[1]。
しかし、齧歯類に寄生する G. muris は、共進化が起こった場合に予想される、G. intestinalis に遺伝的に近いという結果にはなっておらず、G. intestinalis と G. ardeae から離れている[1]。
出典
- ^ a b c d e f g Adam, Rodney D. (2001), “Biology of Giardia lamblia”, Clinical Microbiology Review 14 (3): 447–475, http://www.pubmedcentral.nih.gov/picrender.fcgi?artid=88984&blobtype=pdf
- ^ a b c d e Xiao, Lihua; Fayer (2008), “Molecular characterisation of species and genotypes of Cryptosporidium and Giardia and assessment of zoonotic transmission”, International Journal for Parasitology 38: 1239–1255, http://naldc.nal.usda.gov/download/18548/PDF
- ^ 阿部仁一郎 『ジアルジアの分類と分子疫学』生活衛生、第49巻、98–107頁、2005年。
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 伊藤 直之
- 日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association 66(10), 701-708, 2013-10-20
- NAID 10031201837
- 犬のジアルジア感染 (日本獣医師会学会学術誌) -- (小動物臨床関連部門)
- 伊藤 直之
- 日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association 66(10), 701-708, 2013-10
- NAID 40019830563
- 日本で使用されている動物用診断薬(III)犬感染症とその診断薬の概説ジアルジア症
- 落合 絢子
- 日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association 66(9), 588-589, 2013-09-20
- NAID 10031195039
Related Links
- ジアルジア症 Giardia lamblia の感染によって引き起こされる下痢性疾患である。本症の感染経路はいわゆる糞口感染で、ヒトとヒトの接触や食品を介した小規模集団感染と、飲料水を介した大規模な集団感染が知られている。
- 犬のジアルジア症は、ジアルジアと呼ばれる原虫による寄生虫症です。主に子犬に寄生して、下痢や体重の減少、発育不良などを引き起こします。なお、ジアルジア症は人にも感染するズーノーシスです。特に幼児に感染して下痢や ...
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- reemerging infectious disease, re-emerging infectious disease
- 関
- 感染症、新興感染症
- 再興感染症(re-emerging infectious diseases)とは、すでに知られてはいたもののその発生数は著しく減少し、もはや多くの人々にとって健康上の問題は少ないと考えられていた感染症のうち、再び出現し問題疾患として復活してきたものとされています
一覧
[★]
- 英
- giardiasis
- 同
- ランブル鞭毛虫症
- 関
- 旅行者下痢症、ランブル鞭毛虫 = Giardia lamblia
特徴
病原体
疫学
- 先進国での有病率は2-4%、発展途上国の小児では15%以上。
潜伏期間
感染経路
- 経口感染:汚染された飲食物からの嚢子(シスト)の摂取
- 性感染:男性瞳孔愛車間の感染
経過
- 発症後、数週間で自然に治癒することが多いが、一部は長期にわたって持続する。
症状
- 消化器症状(下痢(軟便、水様便から悪臭泡沫状の泥状便)、腹痛、鼓腸、倦怠感、悪心、食欲不振など)。
- 時に胆嚢炎。
検査
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診断
治療
予防
- 水道水、井戸水のそのままの摂取や不衛生な食品の摂取を避ける。十分な加熱によりシストを死滅させることが重要。
国試
[★]
- ラ
- Giardia
- 同
- Giardia属
ジアルジア属