- 英
- sarcopenia
- 関
- 筋肉減少症、筋肉減弱症
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/07/26 16:35:26」(JST)
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サルコペニア(sarcopenia)は、進行性および全身性の骨格筋量および骨格筋力の低下を特徴とする症候群。筋肉量の低下を必須項目とし、筋力または身体能力の低下のいずれかが当てはまればサルコペニアと診断される[1]。
目次
- 1 歴史的経緯
- 2 サルコペニアの分類
- 3 日本におけるサルコペニアの課題
- 4 評価方法
- 5 参考文献
- 6 関連項目
歴史的経緯
サルコペニアは、1989年にRosenbergによって「加齢による筋肉量減少」を意味する用語として提唱された。サルコペニアは造語で、ギリシア語でサルコ(sarco)は「肉・筋肉」、ペニア(penia)は「減少・消失」の意。当初は骨格筋肉量の減少を定義としていたが、徐々に筋力低下、機能低下も含まれるようになった。上述の定義はEuropean Working Group on Sarcopenia in Older People(以下「EWGSOP」)のものであり、身体機能障害、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)低下、死のリスクを伴う包括的な内容も含まれる。同年のヨーロッパ静脈経腸栄養学会(以下「ESPEN」)のコンセンサス論文では筋肉量減少と筋力低下を認める状態を、the Society of Sarcopenia,Cachexia and Wasting Disorders(以下「SCWD」)では筋肉量減少と身体機能低下を認める状態をサルコペニアと定義している。以上のように、サルコペニアの定義は現状では確定されたものはない。現段階での各学会の定義をまとめると、狭義では筋肉量減少のみが、広義では筋力低下や身体機能低下が含まれたものが「サルコペニア」と呼ばれている。
サルコペニアの分類
EWGSOPでは、サルコペニアを加齢に伴って生じる原発性(一次性)サルコペニア、活動、栄養、疾患に伴って生じる二次性サルコペニアと分類している。
原発性 |
|
加齢性サルコペニア |
加齢以外に明らかな原因がないもの |
二次性 |
|
活動に関連するサルコペニア |
寝たきり、不活発なスタイル(生活)、失調や無重力状態が原因となり得るもの |
疾患に関連するサルコペニア |
重症臓器不全(心臓,肺,肝臓,腎臓,脳)、炎症性疾患、悪性腫瘍や内分泌疾患に付随するもの |
栄養に関係するサルコペニア |
吸収不良、消化管疾患、および食欲不振を起こす薬剤使用などに伴う摂取エネルギーおよび/またはタンパク質の摂取量不足に起因するもの |
また、サルコペニアのステージ分類として、下記のような3段階を定義している。
ステージ |
筋肉量 |
筋力 |
|
身体能力 |
プレサルコペニア |
↓ |
|
|
|
サルコペニア |
↓ |
↓ |
または |
↓ |
重症サルコペニア |
↓ |
↓ |
|
↓ |
日本におけるサルコペニアの課題
- 現段階でサルコペニアの明確な定義はなく、それぞれの定義により別立てで新たな用語が使われることがある。サルコペニアを「加齢による」筋力低下・筋肉量低下とした場合、それ以外の要因の筋力低下・筋肉量低下をミオペニアと呼ぶことがある。また、加齢による「筋肉量減少」をサルコペニア、加齢による「筋力低下」をダイナペニアと定義する論文もある。ミオペニア、ダイナペニアともに各々においても定義が異なることがある。
- EWGSOPが提唱したサルコペニア診断のアルゴリズムでは、歩行速度、握力、筋肉量が用いられる。サルコペニア診断におけるカットオフ値は欧米のデータによる算出が多く、日本人に適さないものがほとんどである。日本人対象のカットオフ値については、真田[2]や下方[3]らの研究で簡易基準が提唱されている[4]。今後は、この診断基準が日本人のサルコペニア診断に有用であるか、検証する研究が求められる。
評価方法
サルコペニアの簡易な診断方法はいくつか提唱されている。
- 「指輪っかテスト」: 両手の親指と人差し指で輪を作り、ふくらはぎの一番太いところを輪で囲む。輪のほうがふくらはぎよりも大きければサルコペニアを疑う。[5]
- 「片足立ち」:
- 「DEXA・CTスキャン」:<身体画像イメージ法>2 つの画像イメージ法が筋肉量や除脂肪体重の測定に使用されてきた。コンピュータ断層撮影(CTスキャン)、二重エネルギー X 線吸収測定法(DEXA)である。CT および MRI は、体内の他の軟部組織から脂肪を切り離すことができる。非常に正確な画像システムであると考えられており、これらの方法は、研究において筋肉量を測定するゴールド・スタンダードとされている。
- 「BIA法」:<生体インピーダンス分析>生体インピーダンス分析(BIA)は、脂肪量と除脂肪量を測定するものである。テスト自体は高価ではなく、使いやすく、再現性も高く、歩行可能な患者にも寝たきりの患者にも適している。標準条件下で用いられてきた BIA 測定法は、10年以上研究されており、標準条件下での BIA 結果は MRI と良好な相互関係が認められてきた。[6]BIA機器はインボディ、タニタが販売している機器が主流となっている。
参考文献
- ^ “サルコペニア:定義と診断に関する欧州関連学会のコンセンサスの監訳とQ&A (PDF)”. 厚生労働科学研究補助金(長寿科学総合研究事業)高齢者における加齢性筋肉減弱現象(サルコペニア)に関する予防対策確立のための包括的研究 研究班. 2013年4月29日閲覧。
- ^ “日本人成人男女を対象としたサルコペニア簡易評価法の開発 (PDF)”. 真田樹義、宮地元彦、山元健太、ほか. 2013年5月5日閲覧。
- ^ “日常生活機能と骨格筋量、筋力との関連 (PDF)”. 下方浩史、安藤富士子. 2013年5月5日閲覧。
- ^ 葛谷雅文、雨海照祥編集 『栄養・運動で予防するサルコペニア』 (初版) 医歯薬出版株式会社、2013年。ISBN 978-4-263-70614-5。
- ^ 第56回日本老年医学会学術集会での飯島勝矢の報告 http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1406/1406068.html
- ^ http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/sarcopenia_EWGSOP_jpn-j-geriat2012.pdf
関連項目
- リハビリテーション栄養
- ダイナペニア
- ミオペニア
- フレイルティ
- サルコペニア肥満
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Japanese Journal
- 体力低下期の訪問リハビリテーションの特性 (特集 時期別フェーズに応じた訪問リハビリテーション)
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★リンクテーブル★
[★]
- 82歳の男性。歩行困難を主訴に来院した。IgA腎症による慢性腎不全で14年前から1回4時間、週3回の血液透析を受けている。2年前から歩行速度が低下し、最近は横断歩道を渡りきれないことがある。階段昇降も両手で手すりにつかまらないと困難で、通院以外の外出を控えるようになったという。体重は1年前から5kg減少し、このまま歩けなくなることを心配して受診した。身長 167cm、体重 47kg(透析直後体重 46kg)。脈拍 72/分、整。血圧 138/72mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。浮腫はない。徒手筋力テストで両下肢とも4である。その他、神経診察に異常を認めない。両足背動脈は左右差なく触知する。血液所見:赤血球 338万、Hb 11.0g/dL、Ht 33%、白血球 5,200、血小板 14万。血液生化学所見:総蛋白 6.8g/dL、アルブミン 3.6g/dL、AST 22U/L、ALT 18U/L、LD 178U/L(基準 120~245)、CK 38U/L(基準 30~140)、尿素窒素 72mg/dL、クレアチニン 7.8mg/dL、尿酸 7.4mg/dL、Na 138mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 101mEq/L、Ca 9.2mg/dL、P 5.6mg/dL。CRP 0.1mg/dL。
- 歩行困難の原因として考えられるのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [114C038]←[国試_114]→[114C040]
[★]
- 68歳の男性。皮膚の黄染と食欲不振を主訴に来院した。精査の結果、閉塞性黄疸を合併する膵頭部癌と診断された。身長 168cm、体重 53kg(3か月間で5kgの体重減少)。体温 36.6℃。脈拍 76/分、整。血圧 110/78mmHg。呼吸数 16/分。血液所見:赤血球 398万、Hb 11.9g/dL、Ht 39%、白血球 7,400、血小板 34万。血液生化学所見:総蛋白 6.0g/dL、アルブミン 3.4g/dL、総ビリルビン 2.7mg/dL、AST 56U/L、ALT 48U/L、γ-GTP 76U/L(基準 8~50)、尿素窒素 13mg/dL、クレアチニン 0.4mg/dL、血糖 84mg/dL、HbA1c 6.0%(基準 4.6~6.2)、総コレステロール 194mg/dL、トリグリセリド 78mg/dL、アミラーゼ 96IU/L(基準 37~160)、CEA 7.5ng/mL(基準 5以下)、CA19-9 107U/mL(基準 37以下)。内視鏡的に閉塞部胆管にステントを留置し、黄疸の軽減を待って膵頭十二指腸切除術を施行することとなった。
- この患者の周術期について正しいのはどれか。
- a 術前のサルコペニアは術後の経過に影響しない。
- b 術前1週間の絶飲食が必要である。
- c 術後早期は高血糖を呈しやすい。
- d 術後早期の疼痛緩和は回復を遅延する。
- e 術後1週間以内の経腸栄養は禁忌である。
[正答]
※国試ナビ4※ [113C044]←[国試_113]→[113C046]
[★]
- 56歳の男性。小腸切除術後のため入院中である。4日前に突然、腹部全体の疝痛が出現したため救急車で搬入された。上腸間膜動脈閉塞症と診断し緊急で小腸切除術を施行し、残存小腸は40cmであった。術後48時間までは循環動態の安定を目的に乳酸リンゲル液の輸液と昇圧薬の投与とを行った。術後72時間から高カロリー輸液の実施と経鼻胃管からの少量の経腸栄養剤の持続投与とを開始したところ、1日4、5回の下痢を認めた。
- この患者への対応として適切でないのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [112D036]←[国試_112]→[112D038]
[★]
- 70歳の女性。腰痛を主訴に来院した。2日前に屋内で段差につまずいて転倒した後から腰痛が出現した。歩行は可能である。下位腰椎に強い叩打痛がある。腰椎エックス線写真で第3腰椎の圧迫骨折を認める。
- この患者の今後の生活に対する指導をする際に考慮する必要性が低いのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [112C027]←[国試_112]→[112C029]
[★]
- a 水分の誤嚥は少ない。
- b 体位の影響を受けない。
- c 喉頭閉鎖不全を伴わない。
- d サルコペニアの要因ではない。
- e むせがなくても誤嚥を否定できない。
[正答]
※国試ナビ4※ [110G013]←[国試_110]→[110G015]
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