出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/06/24 03:13:50」(JST)
ゲノム刷り込みまたはゲノムインプリンティング (英語: en:genomic imprinting,稀にgenetic imprinting)は、遺伝子発現の制御の方法の一つである。一般に哺乳類は父親と母親から同じ遺伝子を二つ(性染色体の場合は一つ)受け継ぐが、いくつかの遺伝子については片方の親から受け継いだ遺伝子のみが発現することが知られている。 このように遺伝子が両親のどちらからもらったか覚えていることをゲノム刷り込みという。
一方の親から受け継いだ遺伝子だけが選択的に発現することは、利用できる遺伝子が一つしかないため受け継いだ遺伝子に欠陥があった場合にそのバックアップがなく、流産または遺伝子疾患になってしまうことがある。 よく知られた例がPrader-Willi症候群であり、15番染色体にある遺伝子(セロトニン受容体かその近傍の遺伝子と考えられる)が父親由来の遺伝子のみが選択的に発現するため、父親の遺伝子に欠陥があった場合に(母親が正常な遺伝子をもっていても)、正常な個体発生ができなくなり、精神遅滞や生殖器の発生異常等の障害をもって産まれる。
上記のような問題点があるにもかかわらず、なぜゲノム刷り込みが必要であるか(なぜ哺乳類に備わっているか)については、いくつかの仮説が唱えられている。(外部リンク参照。)
仮説の一つとして、「単為発生を防ぐため」というものがある。この仮説のように「これこれのため」という目的説の妥当性は別として、ゲノム刷り込みがあるせいで哺乳類では単為発生が起こらないことは事実である。
仮説の一つとして、「全ての遺伝子を発現させるためだ」というものがある。この仮説に従えば、哺乳類のように高度に発達した生物に進化するには、ゲノム刷り込みが必要だったことになる。逆に言えば、ゲノム刷り込みがあったからこそ、哺乳類は(部分的に発現しない遺伝子をもって個体発生が成功するような危険を冒さずに)高度な個体組織をもつように進化できたことになる。
ゲノム刷り込みは、個体発生や胎盤形成と密接な関係があることもわかってきた。なお、ゲノム刷り込みが起こるのは、有袋類と有胎盤類である。単孔類は違う。また、有袋類と有胎盤類のあいだで、ゲノム刷り込みの機構は大きく進化した。
ゲノム刷り込みは分子生物学的な表現ではDNAのメチル化による転写調節異常[要出典]とされている。その機構はほぼ解明されているが、非常に複雑である。(外部リンクを参照。)
DNA配列自体には明らかな特徴がないため全ゲノム中でどの程度の遺伝子がこの作用をうけているのかは分かっておらず、現在知られているものはほぼ全て偶然発見された遺伝子である。
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リンク元 | 「プラダー・ウィリー症候群」「ゲノム刷込み」「ゲノム刷り込み」 |
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PWSに特徴的 | 共通症状 | ASに特徴的 | ||
高度肥満 | 11q11-a12の欠失 | 操り人形様の失調性歩行 | ||
異常な食欲 | 精神発達遅滞 | より高度 | 容易に誘発される発作的な笑い | |
乳幼児期の筋緊張低下 | 痛覚鈍麻 | 手足の振戦 | ||
小さな手足と先細りの指 | より高度 | 色素脱出 | 小頭症 | |
性腺機能低下 | 痙攣 | 高頻度 | 大きな突出した下顎 | |
より高度 | 肥満 | 流涎を伴う舌挺出 |
近位尿細管 | 70% |
遠位尿細管 | 20% |
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