- 英
- erlotinib
- 商
- タルセバ
- 関
- 上皮成長因子受容体阻害薬
- 上皮成長因子受容体のチロシンキナーゼ阻害薬
- 切除不能な再発・進行性で化学療法後に増悪した非小細胞肺癌に適応
- ゲフィチニブに似た経口の低分子EGFR阻害薬。
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2018/07/24 22:48:03」(JST)
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エルロチニブ
|
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IUPAC命名法による物質名 |
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IUPAC名 N-(3-ethynylphenyl)-6,7-bis(2-methoxyethoxy) quinazolin-4-amine |
臨床データ |
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ライセンス |
EMA:リンク、US FDA:リンク |
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胎児危険度分類 |
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法的規制 |
- UK: 処方箋のみ (POM)
- US: ℞-only
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投与方法 |
経口 |
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薬物動態データ |
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生物学的利用能 |
60% |
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代謝 |
肝臓(主にCYP3A4。CYP1A2も関与) |
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半減期 |
36時間 |
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排泄 |
糞便中83%、尿中8% |
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識別 |
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CAS番号
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183321-74-6 |
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ATCコード |
L01XX34 (WHO) |
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PubChem |
CID: 176870 |
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DrugBank |
APRD00951 |
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KEGG |
D07907 |
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化学的データ |
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化学式 |
C22H23N3O4 |
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分子量 |
393.436 g/mol |
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エルロチニブ (Erlotinib) はゲフィチニブと同様、上皮成長因子受容体 (EGFR) のチロシンキナーゼを選択的に阻害する内服抗がん剤。分子標的治療薬のひとつである。非小細胞肺癌患者に対し、ゲフィチニブが示せなかった延命効果を示した。
IUPAC命名法ではN-(3-ethynylphenyl)-6,7- bis(2-methoxyethoxy)-4-quinazolinamineと表記され、分子量は393.436 g/mol。エルロチニブ製剤中にはエルロチニブ塩酸塩として存在し、分子量は429.90 g/molである[1]。
エルロチニブ製剤は切除不能又は再発した非小細胞肺癌および膵臓癌に対する治療薬として用いられる。製造元は米国OSIファーマシューティカルズ (OSI Pharmaceuticals Inc.)、販売元は米国ジェネンテック社 (Genentech, Inc.) で、商品名は「タルセバ® (Tarceva®)」。タルセバ®錠は3種類の用量の剤形があり、エルロチニブとして一錠25 mg、100 mg、150 mg(エルロチニブ塩酸塩としてそれぞれ27.3 mg、109.3 mg、163.9 mg)を含有する。
2004年11月19日米国食品医薬品局 (FDA) は非小細胞肺癌に対する治療薬として本薬剤を認可し[2]、さらに2005年11月2日膵臓癌の治療薬としてゲムシタビンとの併用療法において承認した[3]。日本では中外製薬が2006年4月14日厚生労働省に販売製造承認申請を行い[4]、2007年10月19日に承認された[5]。
目次
- 1 作用機序
- 2 薬物動態
- 3 効果
- 4 参考文献
作用機序
上皮成長因子受容体 (EGFR) は正常細胞および癌細胞表面に発現し、細胞の発達・増殖に関与する。エルロチニブはゲフィチニブ同様EGFRの働きを阻害して癌細胞の増殖を抑制する。ゲフィチニブ同様、癌細胞がEGFR遺伝子変異を持つ場合、腫瘍縮小効果が高いと報告される[6]が、臨床効果とEGFR遺伝子変異は相関しないという報告もある[7]。
薬物動態
エルロチニブ150 mg内服後のバイオアベイラビリティ(生物学的利用能)は約60%で、最高血中濃度到達までの時間 (Tmax) は4時間。血中蛋白結合率は93%、分布用量は232リットルである。代謝は主に肝代謝(チトクロームP450 3A4、一部CYP1A2も関与)により、83%が糞便中、8%が尿中に排泄される。半減期は36.2時間。血中濃度が定常状態に達するまでの期間は連日内服で7 - 8日要する。喫煙者はエルロチニブのクリアランスが24%速く、非喫煙者がエルロチニブ150 mg内服して得られるAUCを得るためには、喫煙者では300 mgの内服を要する[8]。
効果
延命効果
既治療非小細胞肺癌を対象にした第III相無作為化比較臨床試験にて、エルロチニブはプラセボと比較して生存期間中央値を2ヶ月間延長させ(エルロチニブ群6.67ヶ月、プラセボ群4.70ヶ月、P <0.01)、延命効果が証明された。また奏功率(腫瘍の最長径が30%以上小さくなった患者の割合)は8.9%、無増悪生存期間は2.2ヶ月で、これらについてもプラセボ群を上回った[7]。また、多変量解析では、腺癌、非喫煙者、EGFR発現が腫瘍縮小と相関していた[7]。
作用機序の同じゲフィチニブは延命効果を証明できなかった[9]が、その違いとして、エルロチニブが最大耐用量 (MTD) を投与されるのに対し、ゲフィチニブはMTDの3分の1量が投与されるという用量の違いによる可能性が指摘されている[8]。
参考文献
- ^ Tarceva® Description
- ^ FDA Approves New Drug for the Most Common Type of Lung Cancer
- ^ FDA Approval for Erlotinib Hydrochloride - National Cancer Institute
- ^ 抗悪性腫瘍剤エルロチニブ塩酸塩 厚生労働省へ製造販売承認申請 - 中外製薬
- ^ 抗悪性腫瘍剤「タルセバ錠」の製造販売承認の取得について - 中外製薬
- ^ Pao W, Miller V, Zakowski M, et al. "EGF receptor gene mutations are common in lung cancers from "never smokers" and are associated with sensitivity of tumors to gefitinib and erlotinib." Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 101, 2004, 13306-13311. PMID 15329413
- ^ a b c Shepherd FA, Rodrigues Pereira J, Ciuleanu T, et al. "Erlotinib in previously treated non-small-cell lung cancer." NEJM., 353, 2005, p.p. 123-132. PMID 16014882
- ^ a b Comis RL. "The current situation: erlotinib (Tarceva) and gefitinib (Iressa) in non-small cell lung cancer." Oncologist, 10, 2005, p.p. 467-470. PMID 16079313
- ^ Thatcher N, Chang A, Parikh P, et al. "Gefitinib plus best supportive care in previously treated patients with refractory advanced non-small-cell lung cancer (Iressa Survival Evaluation in Lung Cancer; ISEL)." Lancet, 366, 2005, p.p. 1527-1537. PMID 16257339
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 症例 Beyond PD治療中に腸管気腫症を発症した原発性肺癌の1例
- 山本 愛,菊池 直,磯部 和順 [他]
- 日本呼吸器学会誌 = Annals of the Japanese Respiratory Society 3(4), 548-552, 2014-07-10
- NAID 40020168786
- 研究・症例 ゲフィチニブからエルロチニブへの翌日からの切り替えにより全例で脳転移が改善した肺腺癌5例に関する検討
- 告知欄 治癒切除不能な膵癌を適応とするエルロチニブ塩酸塩製剤の使用に当たっての留意事項の一部改正について
- 日本薬剤師会雑誌 = Journal of the Japan Pharmaceutical Association 66(7), 949-951, 2014-07
- NAID 40020145595
Related Links
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- タルセバ」(一般名エルロチニブ)は、それに続く分子標的薬として2007年10月に承認 され、進行・再発肺がん(非小細胞肺がん)の第2、第3次治療に用いられている。作用 メカニズムはイレッサと同じだが、海外の臨床試験で生存期間の延長が認められるなど 、 ...
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
- 抗悪性腫瘍剤
- 上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤
販売名
タルセバ錠150mg
組成
成分(1錠中)
有効成分・含有量
- エルロチニブ塩酸塩 163.93mg
(エルロチニブとして150mg)
成分(1錠中)
添加物
- 乳糖水和物、結晶セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、マクロゴール400、酸化チタン
禁忌
効能または効果
- ○切除不能な再発・進行性で、がん化学療法施行後に増悪した非小細胞肺癌
- 切除不能な再発・進行性の非小細胞肺癌に対する一次化学療法として本剤を使用した場合の有効性及び安全性は確立していない。
- 術後補助化学療法として本剤を使用した場合の有効性及び安全性は確立していない。
- 通常、成人にはエルロチニブとして150mgを食事の1時間以上前又は食後2時間以降に1日1回経口投与する。なお、患者の症状により適宜減量する。
- 副作用の発現により用量を変更する場合には、50mgずつ減量すること。
- 高脂肪、高カロリーの食後に本剤を投与した場合、AUCが増加するとの報告がある。食事の影響を避けるため食事の1時間前から食後2時間までの間の服用は避けること。
- 他の抗悪性腫瘍剤との併用について、有効性及び安全性は確立していない。
慎重投与
- 間質性肺疾患(間質性肺炎、肺臓炎、放射線性肺臓炎、器質化肺炎、肺線維症、急性呼吸窮迫症候群、肺浸潤、胞隔炎等)、肺感染症等のある患者又はその既往歴のある患者[間質性肺疾患が増悪し、死亡に至る可能性がある(「重要な基本的注意」、「重大な副作用」の項参照)。]
- 肝機能障害のある患者[肝機能障害が増悪することがある(「重大な副作用」の項参照)。本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。]
- 消化管潰瘍、腸管憩室のある患者又はその既往歴のある患者[消化管穿孔があらわれることがある(「重大な副作用」の項参照)。]
重大な副作用
間質性肺疾患
(4.5%)
- 間質性肺疾患(間質性肺炎、肺臓炎、放射線性肺臓炎、器質化肺炎、肺線維症、急性呼吸窮迫症候群、肺浸潤、胞隔炎等)があらわれることがあり、死亡に至った症例も報告されている。異常が認められた場合には本剤の投与を中止し、ステロイド治療等の適切な処置を行うこと。
肝炎、肝不全(以上頻度不明注2))、肝機能障害(2.0%)
- ALT(GPT)、AST(GOT)、ビリルビンの上昇等を伴う重篤な肝機能障害があらわれることがあり、肝炎、肝不全により死亡に至った症例も報告されているので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には本剤の投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
重度の下痢
(1.1%)
- 下痢があらわれることがあるので、患者状態により止瀉薬(ロペラミド等)の投与、補液等の適切な処置を行うとともに、本剤の減量又は休薬を考慮すること。なお、重度の下痢、悪心、嘔吐、食欲不振により脱水症状をきたし、腎不全に至った症例も報告されていることから、必要に応じて電解質や腎機能検査を行うこと。
急性腎不全
(0.1%)
- 急性腎不全等の重篤な腎機能障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には本剤の投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(0.1%未満)、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)(頻度不明注2))、多形紅斑(0.1%未満)
- 皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症、多形紅斑等の重篤な水疱性・剥脱性の皮膚障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には本剤の投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
消化管穿孔(0.1%未満)、消化管潰瘍(0.2%)、消化管出血(0.1%未満)
- 消化管穿孔、消化管潰瘍、消化管出血があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、内視鏡、腹部X線、CT等の必要な検査を行い、本剤の投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
角膜穿孔(頻度不明注2))、角膜潰瘍(0.1%未満)
- 角膜穿孔、角膜潰瘍があらわれることがあるので、眼痛等の異常が認められた場合には本剤の投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
薬効薬理
抗腫瘍効果
- In vitro系において、エルロチニブはヒト由来大腸癌細胞株DiFi及び頭頸部癌細胞株HN5の増殖を阻害した[DiFi細胞株でのIC50:100nM、HN5での100%阻害:250nM]15)。
ヒト由来頭頸部癌細胞株HN5、外陰部癌細胞株A431及び非小細胞肺癌細胞株(H460a、A549)を用いたヒト悪性腫瘍移植ヌードマウス系において、エルロチニブは腫瘍増殖抑制作用を示した16,17)。
作用機序
- エルロチニブは上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ(EGFR-TK)を選択的に阻害した。IC50は精製全長型EGFR-TKに対し2nMであり、組換え型EGFR細胞内ドメインのチロシンキナーゼに対し1nMであった。一方、他のチロシンキナーゼ、c-src及びv-ablに対する阻害活性は全長型EGFR-TKの1/1000以下であり、ヒトインスリン受容体及びI型インスリン様増殖因子受容体の細胞内ドメインのキナーゼに対する阻害活性は細胞内EGFR-TKの1/10000以下であった。また、エルロチニブによる細胞周期のG1期停止及びアポトーシス誘導作用が確認された15)。
エルロチニブはEGFRチロシンリン酸化の阻害を介し、細胞増殖の抑制及びアポトーシスの誘導に基づき腫瘍増殖を抑制すると推察される。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
- エルロチニブ塩酸塩
(Erlotinib Hydrochloride)(JAN)
化学名
- N-(3-Ethynylphenyl)-6,7-bis(2-methoxyethoxy)quinazoline-4-amine monohydrochloride
分子式
分子量
性 状
- 白色〜微黄色の粉末又は塊のある粉末である。水及びエタノール(99.5)に極めて溶けにくく、メタノールに溶けにくく、アセトニトリル及びシクロヘキサンにほとんど溶けない。
融 点
★リンクテーブル★
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nib
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- 英
- epidermal growth factor receptor inhibitor
- 関
- 上皮成長因子受容体
薬理学
- rapamycin(sirolimus)
- temsirolimus(CCI-779)
- everolimus(RAD001)