湿球黒球温度
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湿球黒球温度(しっきゅうこっきゅうおんど、英: Wet Bulb Globe Temperature)は、酷暑の環境下での行動に伴うリスクの度合を判断するのに用いられる指標。英称の頭文字を取ってWBGT(指数)とも呼び、また環境省ではこれを暑さ指数と称している[1]。人体の熱収支に影響の大きい湿度、放射、気温の3つを考慮しており、湿球温度、黒球温度、乾球温度の値を使って計算する。軍隊、スポーツや高温の職場などでの熱中症等を予防するために国際的に利用されており、ISO 7243、JIS Z 8504などとして規格化されている。
目次
- 1 算出式
- 2 熱中症予防
- 3 参考文献
- 4 外部リンク
算出式
- 屋外の場合
- 0.7 × 湿球温度 + 0.2 × 黒球温度 + 0.1 × 乾球温度
- 屋内及び日照していない場合
- 0.7 × 湿球温度 + 0.3 × 黒球温度
熱中症予防
熱中症を防ぐために、日本体育協会は、次のような指針を掲げている。
熱中症予防のための運動指針[2]
※これは湿球黒球温度との関係であり、気温との関係ではない。
湿球黒球温度
(℃) |
警戒レベル |
説明 |
31以上 |
運動は原則中止 |
皮膚温度より気温のほうが高くなり、体から熱を逃がすことができない。特別の場合以外は運動を中止する。 |
28~31 |
厳重警戒 |
熱中症の危険が高いので、激しい運動や持久走などは避ける。体力の低いもの、暑さに慣れていないものは運動中止。運動する場合は積極的に休息をとり、水分補給を行う。 |
25~28 |
警戒 |
熱中症の危険が増すため、積極的に休息をとり、水分を補給する。激しい運動では30分おきくらいに休息をとる。 |
21~25 |
注意 |
熱中症による死亡事故が発生する可能性がある。熱中症の兆候に注意しながら、運動の合間に積極的に水分を補給する。 |
21以下 |
ほぼ安全 |
通常は熱中症の危険は少ないが、水分の補給が必要。市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生するので注意する。 |
参考文献
- ^ 環境省熱中症予防情報
- ^ 財団法人日本体育協会(1994年) 熱中症予防のための運動指針
外部リンク
- 環境省熱中症予防情報 - 湿球黒球温度の観測値(全国で8地点)と予想値(全国各地)を閲覧できる
気象の要素と指標 |
|
温度・湿度 |
気温(乾球温度) • 湿球温度 • 露点温度 • 温位 • 相当温位 • 相当温度 • 気温減率(気温傾度) • 湿度(相対湿度) • 絶対湿度 • 湿数 • 蒸気圧 • 混合比 • 比湿 • 海水温
|
|
圧力・風 |
大気圧 • 気圧傾度 • 風向 • 風速(風力) • 渦度 • 大気安定度(CAPE • CIN • SSI ...)
|
|
降水・雲 |
降水量 • 積雪量 • 降雪量 • 雲形• 雲量 • 雲高
|
|
その他 |
日射量 • 日照時間 • 太陽放射 • 視程 • 滑走路視距離 • 天気
|
|
実用分野 |
体感温度 • 快適性指標(不快指数 • WBGT • ET • OT • PMV • MRT...) • 実効湿度
|
|
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WBGT may refer to:
- Wet-bulb globe temperature
- WBGT-CD, a class-A digital TV station (channel 40) licensed to Rochester, New York, United States
UpToDate Contents
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English Journal
- Comparing the physiological and perceptual responses of construction workers (bar benders and bar fixers) in a hot environment.
- Wong del PL1, Chung JW2, Chan AP3, Wong FK4, Yi W5.
- Applied ergonomics.Appl Ergon.2014 Nov;45(6):1705-11. doi: 10.1016/j.apergo.2014.06.002. Epub 2014 Jun 27.
- This study aimed to (1) quantify the respective physical workloads of bar bending and fixing; and (2) compare the physiological and perceptual responses between bar benders and bar fixers. Field studies were conducted during the summer in Hong Kong from July 2011 to August 2011 over six construction
- PMID 24980679
- Hydration kinetics and 10-km outdoor running performance following 75% versus 150% between bout fluid replacement.
- Davis BA1, Thigpen LK, Hornsby JH, Green JM, Coates TE, O'Neal EK.
- European journal of sport science.Eur J Sport Sci.2014 Oct;14(7):703-10. doi: 10.1080/17461391.2014.894578. Epub 2014 Apr 3.
- Abstract Current American College of Sports Medicine (ACSM) guidelines recommend replacing 150% of sweat losses between training bouts separated by ≤12 hours, but little evidence exists concerning the implications of this strategy for runners. Participants (n = 13) in this study replaced 75% (1637
- PMID 24697790
- Heat Stress Evaluation of Two-layer Chemical Demilitarization Ensembles with a Full Face Negative Pressure Respirator.
- Fletcher OM1, Guerrina R, Ashley CD, Bernard TE.
- Industrial health.Ind Health.2014 Sep 11;52(4):304-12. Epub 2014 Apr 5.
- The purpose of this study was to examine the heat stress effects of three protective clothing ensembles: (1) protective apron over cloth coveralls including full face negative pressure respirator (APRON); (2) the apron over cloth coveralls with respirator plus protective pants (APRON+PANTS); and (3)
- PMID 24705801
Japanese Journal
- 大学競泳選手の練習時における飲水量及び発汗量の実態調査
- 伊藤 僚
- 日本福祉大学全学教育センター紀要 (2), 53-59, 2014-03-31
- … かにすることを目的とし,5 月 (以下 May とする) と 8 月 (以下 August とする) に測定を行った.その結果,水中運動時も陸上で行う夏季部活動練習時の発汗量と同等となり得ることが明らかとなった.また,気温,水温,WBGT は May が August と比較して低い値であったにも関わらず,May の発汗量は August と比較して有意に高い値を示し,その原因として運動強度の違いが示唆された.さらに両調査日において多くの選手が発汗量に見合っ …
- NAID 110009726055
- 通常観測気象要素を用いたWBGT(湿球黒球温度)の推定
- 小野 雅司,登内 道彦
- 日本生気象学会雑誌 = Japanese journal of biometeorology 50(4), 147-157, 2014-01
- NAID 40019947970
- ある大学体育館における環境温,風速および体感覚についての一考察
Related Links
- 気温 (参考) WBGT 温度 熱中症予防運動指針 35 以上 31 以上 運動は原則中止 WBGT31 以上では、特別の場合以外は運動を中止する。特に子どもの場合は中止すべき。 31~35 28~31 厳重警戒 (激しい運動は中止) ...
- WBGT指標とは WBGT(湿球黒球温度)とは、人体の熱収支に影響の大きい湿度、輻射熱、気温の3つを取り入れた指標で、乾球温度、湿球温度、黒球温度の値を使って計算します。 ※WBGT(湿球黒球温度)の算出方法 屋外 ...
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- heat illness, heat stroke( → 熱射病という意味で使う(YN.K-38))
- 関
重症度による分類
- 熱疲労と熱射病の違いは中枢神経障害の有無(beyond resident 2-156)
- WMM.707
- ICU.607
- YN.K-38改変
- beyond resident 2-154
- 研修医直御法度第5版 155
- 研修医直御法度症例帳 143
- マイナーエマージェンシー 6
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熱痙攣
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熱疲労
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熱射病
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heat cramp
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heat exhaustion
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heat stroke
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古典的熱射病
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努力性熱射病
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疫学
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幼小児、老人 基礎疾患(脳血管障害、虚血性心疾患、アルコール依存症) 薬剤性(フェノチアジン系(抗精神病薬)、抗コリン薬、利尿薬) 死亡率:40%
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小児~成人 死亡率:10% 横紋筋融解症、DIC、MOF合併多い
|
原因
|
電解質喪失
|
脱水
|
温熱中枢障害
|
熱産生>>熱放射
|
病態生理
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|
細胞外液の減少(≒循環血漿量の減少)→頻脈、
|
高温により熱中枢が障害される あるいは、心拍出量、発汗能力、血管調節能力の低下により体温調節能が失われる ↓ 汗が出ないことがある。
|
|
意識
|
|
|
意識障害あり
|
体温
|
→
|
↑~↑↑
|
↑~↑↑↑
|
↑↑↑
|
血圧
|
|
低血圧
|
?
|
低血圧
|
発汗
|
++
|
+++
|
-~+++
|
+++
|
筋肉
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有痛性筋収縮
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筋肉崩壊
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その他症状
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悪心・嘔吐、頭痛、めまい
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治療
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ストレッチ、マッサージ 経口補液(飲めねば静注)
|
冷却(外部冷却)。⇔冷却は必要なし(ICU.607)
|
冷却(外部冷却・内部冷却)
|
熱中症の新分類
- 内科救急診療指針1st
身体所見
- まず、バイタル!ショックを評価。心不全はあるかどうか?
検査
- 血液検査(生化学(浸透圧も評価)、血算、凝固(熱射病疑いとして))
- 尿検査(尿ミオグロビンを捕まえる → 赤血球(-)かつ潜血(+) )
治療
- (心不全症状なければ)輸液 ← 末梢静脈ラインを確保すると同時に採血
- YN.K-39
- (血漿浸透圧330mOsm未満)生理食塩水 尿あれば乳酸リンゲルでok
- (血漿浸透圧330mOsm以上)生理食塩水+5%ブドウ糖
死因
救急外来stragegy
- 1. バイタルチェック(体温、血圧、脈拍) → 熱中症に合致しそうか? ちなみに直腸温はかれないときはどうする?
- 2. 現病歴 → ひととおりさらっと聴く
- 3. 現症
- 発汗の有無、皮膚の乾燥・湿潤、
- 筋痙攣 → 熱痙攣を疑いたくなる
- 悪心、嘔吐、頭痛、倦怠感 → 熱疲労~熱射病を疑いたくなる
- 筋肉痛、筋攣縮、中枢神経機能異常(譫妄、運動失調、昏睡、痙攣)、DIC、MOF → 熱射病を疑いたくなる
- 感染症による発熱を疑いたくなったら、頚部リンパ節、咽頭所見、感冒症状、関節痛、呼吸音、尿回数・量、CVA叩打痛、項部硬直、Jolt accentuationをチェック
- 古典的熱射病で心不全を有している場合、輸液不可より昇圧剤を使えと(beyond resident 2-154)
- 5. 末梢静脈ルート確保して採血(生化学、血算、凝固)し、まずは生理食塩水を落とす。血漿浸透圧高値が明らかになれば1/2生理食塩水に切り替え。
- 6. 尿検査提出
- 7. 適切なクーリングをしつつ、結果を待つ。
職場における予防
- 職場における熱中症予防対策マニュアル - 厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課
- https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/manual.pdf
- WBGT値の低減
- 休憩所などの整備:高温多湿作業場所の近隣に冷房を備えた休憩場所、あるいは風通しのよい日陰等の休憩場所を整備する。氷、冷たい飲料が摂取でき、水風呂やシャワーを浴びることができる設備を設置。
- 作業時間の短縮:休憩時間を確保し、熱暑での作業が連続しないようすること、身体作業強度が高い作業を避けること、作業場所を変更すること。
- 熱への馴化:7日以上かけて熱暑への暴露時間を長くしていく。
- 水分及び塩分の摂取
- 服装・帽子:熱を吸収し熱を蓄えやすい服装を避け、透湿性・通気性の良い服装を装着させるようにする。
- 作業中の巡視
- 健康診断の結果などによる対応
- 日常の健康管理など
- 労働者の健康状態の確認
- 自発的脱水
- 予防的・定期的な水分・塩分補給:口渇、口腔内乾燥、尿量減少、体温・心拍の増加は脱水に夜体重減少が2-5%になると自覚されるが、既に脱水に陥っていることになる。そのため、口渇を感じなくても定期的に水分・塩分を摂ることが必要である。
- 身体の状況の確認
- 労働衛生教育
参考
- http://www.nies.go.jp/health/HeatStroke/
- 2. 熱中症環境保健マニュアル 2018 - 環境省
- https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf
- 3. 暑さ指数と熱中症救急搬送者数との関係 - 環境省
- http://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_report.php
- 4. 熱中症を防ごう / スポーツ医・科学 - 日体協
- http://www.japan-sports.or.jp/medicine/guidebook1.html
- 5. 熱中症診療ガイドライン2015 - 厚生労働省
- https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/heatstroke2015.pdf
- 6. 「日常生活における熱中症予防指針」Ver.3確定版 日本生気象学会
- http://seikishou.jp/pdf/news/shishin.pdf
- http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%86%B1%E4%B8%AD%E7%97%87
[★]
- 英
- wet-bulb globe temperature, WBGT
- 関
- 熱中症