- 27歳の女性。持続する咳を主訴に工場の健康管理室を受診した。患者は研究開発部門に勤務しており、外国から来日した研修生に対し、暗室で電子顕微鏡の操作を2か月前まで指導していた。この研修生は咳と微熱による体調不良で欠勤がちになり、6か月の研修期間の半分を残して帰国してしまった。その後患者自身も咳と倦怠感とを感じるようになり、夕方には37.2℃の微熱もあることに気付いた。身長160cm、体重42kg。呼吸数24/分。脈拍84/分、整。胸部聴診では異常所見はない。尿所見:蛋白(-)、糖(-)。血液所見:赤沈42mm/1時間、赤血球430万、白血球8,800、血小板30万、血清生化学所見:総蛋白6.4g/dl、尿素窒素16mg/dl、クレアチニン1.0mg/dl、AST28単位、ALT32単位、Na144mEq/l、K3.7mEq/l、Cl 100mEq/l。免疫学所見:ツベルクリン反応14×12/28×25、CRP2.0mg/dl、喀痰塗抹検査で一視野に数個の抗酸菌を認める。胸部エックス線写真で左上肺野に径2cmの辺縁不鮮明な陰影を認める。医師の対応として適切でないのはどれか。
- a. 患者への入院指示
- b. 保健所への届け出
- c. 勤務職場の消毒指示
- d. 労働災害補償保険の申請指導
- e. 職場同僚の胸部エックス線撮影指示
[正答]
※国試ナビ4※ [099G057]←[国試_099]→[099G059]
★リンクテーブル★
[★]
- 32歳の男性。嘔吐、腹痛および下痢を主訴に来院した。5月の連休中、1泊旅行した帰途、朝食後3時間で悪心、嘔吐、腹痛および下痢が突然始まった。体温37.1℃。脈拍88/分、整。血圧118/68mmHg。心・肺に異常所見を認めない。腹部は平坦、軟で、圧痛を認める。肝・脾を触知しない。神経学的所見に異常を認めない。尿所見:蛋白(-)、糖(-)。血液所見:赤血球550万、Hb17.0g/dl、白血球8,000、血小板35万。血清生化学所見:総蛋白7.0g/dl、クレアチニン1.0mg/dl、総ビリルビン0.8mg/dl、AST38単位、γーGTP40単位(基準8~50)、Na145mEq/l、K4.0mEq/l、CRP0.2mg/dl。輸液を行い帰宅させた。2日後に再来院した時点で症状は軽快していた。原因として最も可能性が高いのはどれか。
[正答]
※国試ナビ4※ [099G058]←[国試_099]→[099G060]
[★]
- 6か月の乳児。激しい咳を主訴に来院した。保育所に通っている。2週前から咳が徐々に強くなってきた。今朝早く、激しく咳き込んだ後、笛がなるような音がした。声が少し嗄れている。呼吸数32/分。心拍数120/分。両眼瞼はやや浮腫状。心雑音を聴取しない。肺野にラ音を認めない。腹部は平坦で、肝を右肋骨弓下に2cm触知する。脾は触知しない。咽頭は軽度発赤しており、舌圧子を入れると咳き込む。血液所見:赤血球420万、Hb12.5g/dl、Ht38%、白血球20,000(桿状核好中球5%、分葉核好中球20%、単球2%、リンパ球73%)。この疾患について正しいのはどれか。
- (1) 新生児も罹患する。
- (2) 高熱がみられる。
- (3) 咽頭側壁に偽膜が付く。
- (4) CRPは陽性になる。
- (5) ワクチンがある。
- a. (1)(2)
- b. (1)(5)
- c. (2)(3)
- d. (3)(4)
- e. (4)(5)
[正答]
※国試ナビ4※ [099G056]←[国試_099]→[099G058]
[★]
- 英
- tuberculosis, TB
- 同
- 結核症
- 関
- 結核菌 Mycobacterium tuberculosis、抗結核薬
- 肺結核、腸結核、脳結核腫
- 感染予防学 080423I,II
- first aid step1 2006 p.135,137,143,162,172,173,181
- Pott's disease = vertebral tuberculosis. constrictive pericarditis = tuberculosis
概念
病原菌
疫学
平成21年
- 参考3
- 結核患者の発生は未だ2万4千人以上である。結核罹患率は引き続き減少傾向にあるが、減少率は2%台と低い。
- 新登録結核患者数 24,170人
- 罹患率(人口10万人対の新登録結核患者数) 19.0 (対前年比0.4減)
- 80歳以上の結核罹患率は横ばいないし増加し、70歳以上の高齢結核患者は新登録結核患者の半数以上となった。
- 80歳以上の罹患率 88.3 (H20 87.6、H19 90.5、H18 93.0)
- 70歳以上の新登録結核患者の占める割合 50.1%(H20 48.9%、H19 47.9%、H18 47.0%)
- 世界的に見て、日本は依然として結核中まん延国である。
- 日本の罹患率(19.0)は、米国(4.3)の4.4倍、カナダ(4.7)の4.0倍、スウェーデン(5.4)の3.5倍、オーストラリア(5.5)の3.5倍。
感染の型
- SPU.178
一次感染
- 初感染患者に形成される初期変化群の増悪による病変:全身性血行性散布(粟粒結核など)、肺原発巣の空洞化、リンパ節の穿孔による吸引性結核性肺炎、結核性胸膜炎
二次感染
症状
結核の皮膚病変
検査
- 「喀痰の抗酸菌検査では1日1回、連続して3日間検査することが推奨されている。抗酸菌検査では通常、塗抹検査と培養検査の2項目をオーダーするが、結核の疑いが強い場合には、健康保険診療上、結核菌核酸増幅法検査を1回行うことができる。」(ガイドライン1より引用)
診断
- 結核菌の診断を行う上では、あくまでも細菌学的検査(塗沫検査、培養検査)によることが原則である。(IRE.1034)
- 結核の疑いが強い場合にはPCR法により確定して、直ちに保健所に届けるのがよい。
治療
- 標準治療法:最初2ヶ月間4剤、次の4ヶ月間2-3剤の計6ヶ月間の治療
- 例:INH,RFP,EB,PZAで2ヶ月間(bactericidal phase) → INH,RFP(,EB)で4ヶ月間(continuation phase)
- 多剤耐性結核菌:少なくともINHとRFPに同時耐性を示す菌株
2009年に厚生労働省告示
- ピラジナミド(PZA)を使用できる場合には、まずイソニアジド(INH)、リファンピシン(RFP)およびPZAにストレプトマイシン(SM)またはエタンブトール(EB)を加えた4剤併用療法を2カ月間行い、その後INHおよびRFPの2剤併用療法を4剤併用療法開始時から6カ月を経過するまで行う。
- PZAを使用できない場合には、まずINHおよびRFPの2剤にSMまたはEBを加えてた3剤併用療法を2ないし6ヵ月間行い、その後INHおよびRFPの2剤併用療法を3剤併用療法開始時から9ヶ月を経過するまでに行う。INHまたはRFPを使用できない場合、症状が著しく重い場合、治療開始から2カ月を経ても結核菌培養検査陽性の場合、糖尿病、じん肺、HIV感染症等の疾患を合併する場合、または副腎皮質ホルモン剤を免疫抑制剤を長期にわたり使用している場合、などでは治療期間を3ヵ月間延長できる。
感染経路
公衆衛生
参考
- http://www.kekkaku.gr.jp/
- http://www.jatahq.org/about_tb/index.html
- 3. 結核登録者情報調査【平成18年まで結核発生動向調査】|厚生労働省
- http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/kekkaku_tourokusya.html
ガイドライン
- 1. 結核診療ガイドライン(の要点抜粋) 山岸文雄 独立行政法人国立病院機構千葉東病院 病院長
- http://www.kekkaku.gr.jp/ga/ga-59.htm
国試