蛋白尿
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タンパク尿(たんぱくにょう、英: proteinuria)は、タンパク質を高濃度に含んだ尿であり、病的なものと生理的なものがある。
目次
- 1 診断的意義
- 2 分類
- 3 機序
- 4 原因
- 5 参考文献
- 6 関連項目
- 7 外部リンク
診断的意義[編集]
本来尿中にはほとんど出ないはずのタンパク質が多く検出される事は病気を示唆する所見と考えられる。しかし起立性タンパク尿・運動性タンパク尿や疾患を伴わないタンパク尿も存在するため、単独では疾病の存在を断定するには至らない。
分類[編集]
- 生理的タンパク尿
- 生理的タンパク尿は病的でない健常者に見られるタンパク尿。
- 体位性タンパク尿
- 体位性タンパク尿は、脊柱の前彎などにより腎静脈が圧迫され腎うっ血が惹起されて生じる、病的でない健常者に見られるタンパク尿。
- 運動性タンパク尿
- 運動性タンパク尿は運動によって病的でない健常者に見られるタンパク尿。
- 病的タンパク尿
-
- 病的タンパク尿はなんらかの病気によって見られるタンパク尿。
機序[編集]
腎前性、腎性、腎後性に分けて考えられる。
- 腎前性タンパク尿
- 分子量10000以下のタンパクは糸球体毛細管壁を通過するが尿細管で再吸収される。しかし、このような低分子量タンパクが過剰に産生され、尿細管の再吸収能力を超えるとタンパク尿が生じる。
- 腎性タンパク尿
- 腎臓の糸球体は血液を濾過する際に、血中のタンパク質を尿へ排泄しないようにフィルターとして働いている。しかしこの機能が破綻することにより、尿中へタンパクを多く排泄するようになる。
- 糸球体性タンパク尿
- 基底膜の小孔のサイズと糖タンパクの膜の陰性荷電により高分子量タンパクは糸球体毛細管壁を通過しにくくなっているが、糸球体腎炎などではその構造と機能が変化して糸球体を高分子量タンパクが通過しやすくなり、糸球体性タンパク尿を生じる。アルブミン主体の高分子量タンパクが大部分を占める。
- 尿細管性タンパク尿
- 低分子量タンパクは糸球体を容易に通過するが近位尿細管で再吸収される。しかし尿細管が障害されると低分子量タンパクが再吸収されず、尿細管性タンパク尿を生じる。
- 腎後性タンパク尿
- 尿路(尿管・膀胱・尿道)のいずれかの炎症、腫瘍、結石などで尿にタンパクが混入するもの。
原因[編集]
- 腎前性タンパク尿
- 多発性骨髄腫(multiple myeloma)
- マクログロブリン血症
- H鎖病
- 特発性L鎖病
- アミロイドーシス
- 腎性タンパク尿
- ネフローゼ症候群
- Alport症候群
- Goodpasture症候群
- ループス腎炎、皮膚筋炎、全身性硬化症などの膠原病
- 慢性腎臓病(Chronic kidney disease; CKD)
- 腎後性タンパク尿
参考文献[編集]
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
腎・泌尿器系の疾患 |
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疾患 |
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糸球体病変
|
急性糸球体腎炎 | IgA腎症 | 急速進行性糸球体腎炎 | 慢性糸球体腎炎
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|
ネフローゼ症候群
|
原発性
|
微小変化群 | 巣状糸球体硬化症 | 膜性腎症 | 膜性増殖性糸球体腎炎
|
|
|
遺伝性腎炎
|
アルポート症候群 | 良性家族性血尿
|
|
尿細管機能障害
|
ファンコニ症候群 | バーター症候群 | ギッテルマン症候群 | リドル症候群 | 尿細管性アシドーシス | 腎性糖尿 | 尿細管間質性腎炎
|
|
続発性腎障害
|
膠原病
|
全身性エリテマトーデス | 全身性強皮症 | シェーグレン症候群
|
|
糖尿病性腎症 | 痛風腎 | クリオグロブリン血症 | アミロイドーシス | 溶血性尿毒症症候群
|
|
|
腎循環障害
|
腎血管性高血圧症 | 腎梗塞 | クルミ割り現象
|
|
泌尿器疾患
|
機能障害
|
膀胱尿管逆流 | 神経因性膀胱 | 水腎症 |
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|
先天異常
|
多発性嚢胞腎(常染色体優性多発性嚢胞腎 | 常染色体劣性多発性嚢胞腎) | 尿管異所開口 | 重複腎盂尿管 |ポッター症候群
|
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感染症
|
腎盂腎炎 | 腎膿瘍 | 膀胱炎 | 腎結核
|
|
尿路結石
|
膀胱結石
|
|
腫瘍
|
腎細胞癌 | 腎盂腫瘍 | 尿管腫瘍 | 前立腺肥大症 | 前立腺癌 | 精巣腫瘍 | 陰茎癌 |腎芽腫
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性器の疾患
|
前立腺炎 | 停留精巣 | 精巣捻転 | 包茎 | 勃起不全
|
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|
|
|
病態・症状 |
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腎不全
|
急性腎不全
|
急性尿細管壊死
|
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慢性腎臓病
|
慢性腎不全 | 尿毒症
|
|
|
尿所見異常
|
乏尿 | 無尿 |多尿 |頻尿 |血尿 | タンパク尿 | 尿円柱
|
|
尿閉 |陰嚢腫大
|
|
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|
検査 |
|
腎機能検査
|
糸球体濾過量 | クレアチニンクリアランス | ナトリウムクリアランス | 尿中ナトリウム排泄率 | 腎不全指数
|
|
腹部X線写真 | 腎盂造影 | レノグラム | 腎生検
|
|
|
|
腎・泌尿器系の正常構造・生理 |
|
腎臓 |
肉眼解剖
|
尿細管
|
近位尿細管 - ヘンレのループ(下行脚 - 細い上行脚 - 太い上行脚) - 遠位尿細管 - 集合管 - 腎盤 ( - 尿管)
|
|
腎循環
|
腎動脈 - 傍尿細管毛細血管 - 輸入細動脈 - (糸球体) - 輸出細動脈 - 直細動脈 - 腎静脈
|
|
ゲロタ筋膜
|
|
|
顕微解剖
|
ネフロン
|
腎小体
|
糸球体
|
毛細血管 | 糸球体内メサンギウム細胞 | ボーマン嚢
|
|
傍糸球体装置
|
緻密斑 | 傍糸球体細胞 | 糸球体外メサンギウム細胞
|
|
|
尿細管
|
|
|
|
生理学
|
アシドーシスとアルカローシス | 膠質浸透圧 | 糸球体濾過量 | 腎血漿流量 | クレアチニンクリアランス
|
|
生化学
|
バソプレッシン | アルドステロン | 心房性ナトリウム利尿ペプチド | エリスロポエチン | レニン-アンジオテンシン系
|
|
|
尿路 |
肉眼解剖
|
尿管 - 膀胱 - 尿道
|
|
顕微解剖
|
移行上皮
|
|
|
生殖器系 |
|
女性器 |
尿道 - 陰核 - 陰裂 - 陰核亀頭 - 陰核亀頭冠 - 陰核包皮 - 陰核小帯 - Gスポット - 処女膜 - 陰唇 - 大陰唇 - 小陰唇 - 膣 - バルトリン腺 - スキーン腺 - 子宮頸部 - 子宮 - 子宮内膜 - 卵管 - 卵巣
|
|
男性器 |
尿道 - 陰茎 - 陰茎亀頭 - 陰茎亀頭冠 - 海綿体 - 陰茎ワナ靭帯 - 陰茎包皮 - 陰茎小帯 - 陰嚢 - 精索 - 精巣上体 - 精細管 - セルトリ細胞 - 精巣輸入管 - 輸精管 - 精嚢 - 射精管 - 前立腺 - 尿道球腺 - 精巣網 - 精巣
|
|
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Japanese Journal
- 危険因子の最新知見 慢性腎臓病(CKD) (冠動脈疾患(上)診断と治療の進歩) -- (虚血性心疾患--疫学・危険因子)
- 妊娠高血圧症候群の病態形成における絨毛細胞分化の役割とその調節メカニズム
- 福嶋 恒太郎,和氣 徳夫
- 福岡医学雑誌 102(7), 223-228, 2011-07-25
- … 妊娠高血圧症候群(Pregnancy induced Hypertension,PIH)は妊娠20 週以降の高血圧,タンパク尿を主張とする症候群である.現在でも依然,母児の周産期罹病の主因であること,様々な疫学的事実から本症は妊娠成立機構の根幹でもある母体の免疫学的寛容の破綻に端を発していること,からその病態については,「学説の病気」といわれるまでにさまざまな研究が行われてきたが,一定の見解はえられていなかった.しかし近 …
- NAID 40019060864
Related Links
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- 無症候性タンパク尿とは、尿タンパクの正常上限値1日150mgを超えているものの自覚症状がないものです。自覚症状がなくても、検診を行うと100人あたり数人が尿異常を指摘されることがあります。
- タンパク尿 | 詳細 | ニュース 検索 フレッシュアイペディアは、ウィキペディア財団が運営するウィキペディア日本語版に含まれるフリー百科事典の情報及びその関連情報を引用し、提供しております。
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- proteinuria
- 同
- タンパク尿
- 関
- 尿、タンパク尿症、蛋白尿症
- (臨床検査)尿蛋白
定義
- 蛋白質の尿中排泄量が150 mg/日(4mg/時/m2)を超えた尿 ⇔ 健常者 10-100 mg/日
分類
疾患と部位
- IMD.162
腎前性
|
多発性骨髄腫、横紋筋融解症、 不適合輸血
|
腎性
|
糸球体性
|
急性腎炎、慢性腎炎、 ネフローゼ症候群、糖尿病性腎症、 全身性エリテマトーデス、アミロイドーシス、 腎硬化症
|
尿細管性
|
Fanconi症候群、急性尿細管壊死、 慢性腎孟腎炎、痛風腎、 重金属中毒、アミノグリコシド系抗菌薬、 間質性腎炎
|
腎後性
|
尿路感染症、尿路結石症、尿路系腫瘍
|
- 出典不明
-
- 異常症タンパク質出現によるタンパク尿:多発性骨髄腫 BJP
- 100%が近位尿細管(特に曲部)における再吸収
- 刷子縁膜に共輸送体担体が存在する
- Kidney International, Vol. 63 (2003), pp. 1468?1474
- Proteinuria and the risk of developing end-stage renal disease
[★]
- 英
- dip stick test, dipand read test
- 関
- 尿検査、尿定性検査
概念
- 白血球、ウロビリノゲン、蛋白質、pH、潜血、比重、ケトン体、ブドウ糖を読み取ることができる。(参考1)
- pH:5-6
- タンパク尿:アルブミンと反応。Bence-Jones蛋白、β2マイクログロブリンは検出できない(偽陰性)
- 血尿:尿沈渣で、赤血球が1-2個以上/視野(x400)で陽性となる
タンパク尿
原理 LAB.172
- pH測定用のブロムフェノールブルー系のPH指示薬は蛋白が存在すると蛋白との複合体を形成して黄色より青色に変色し、これによって溶液のpHは真のpHよりも高い値を示す(pH指示薬のpH誤差)。
- 試験紙にはテトラブロムフェノールブルーとpH2.0-3.0のクエン酸緩衝液が含まれている。
注意 LAB.172
- 偽陽性反応:強アルカリ尿(長期放置によるアンモニア生成)
- 偽陰性反応:pH3以下の強酸尿(保存剤として塩酸を加えた場合)
参考
- http://www.aichi-amt.or.jp/labo/urine/2011nyouteiseikennsa.pdf
[★]
- 英
- renal biopsy, kidney biopsy
- 同
- 腎バイオプシー
適応
- タンパク尿が多い(1g/day以上)
- 活動性の腎炎所見(円柱、白血球)
- 急激な腎機能低下
- タンパク尿と血尿が持続
- 出典不明
- 適応:慢性腎炎、全身性の血管炎で腎合併症がある場合、遺伝性腎症、間質性腎炎、原因不明の腎不全
- 禁忌:出血傾向、悪性新生物、易感染性、慢性腎不全、高度の浮腫・腹水、片側腎
- 腎生検ガイドブック
- 適応:検尿異常(蛋白尿、血尿)、ネフローゼ症候群、急性腎不全、移植腎
- 禁忌:出血傾向、片腎、萎縮腎、管理困難な高血圧
参考
- 1. [charged] 腎生検の適応および合併症 - uptodate [1]
国試
- 101A037:末期腎不全患者では多嚢胞化萎縮腎となっており、腎生検は禁忌。
[★]
- 英
- albuminuria
- 関
- アルブミン、microalbuminuria、タンパク尿
[★]
- 英
- proteinuria
- 関
- タンパク尿、タンパク尿症、蛋白尿
[★]
- 英
- orthostatic proteinuria, orthostatic albuminuria
- ラ
- albuminuria orthostatica
- 同
- 体位性タンパク尿 postural proteinuria
- 関
- 生理的タンパク尿
[show details]
[★]
- 英
- proteinuria
- 関
- タンパク尿、蛋白尿、蛋白尿症
[★]
- 英
- prerenal albuminuria
- 関
- 尿タンパク分画
[★]
- 英
- urine
- ラ
- urina
- 関
- 尿浸透圧、尿量
臨床関連
尿中への代謝物質の異常排出
尿の色
- 決定する要素:ウロビリノゲン、ヘモグロビン、ミオグロビンなど