- 英
- Gerstmann's syndrome, Gerstmann syndrome
- 同
- Gerstmann症候群、頭頂葉症候群 parietal lobe syndrome
- 関
- 角回症候群、優位半球
概念
- 優位半球、頭頂葉・後頭葉病変(角回領域)による症状
ゲルストマン症候群の4症状
- 右左 手 書 きで 失算
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/07/15 01:47:40」(JST)
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主要な脳溝と大脳葉(外側面)。頭頂葉は黄色で示してある。
ゲルストマン症候群(げるすとまんしょうこうぐん、Gerstmann syndrome)は脳の特定の場所に病変が存在することによって起こると考えられている、後述の一連の症候を示す神経疾患である(伝染性海綿状脳症の一種であるゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群とは別の疾患なので注意)。オーストリア出身のアメリカの神経学者ヨーゼフ・ゲルストマンにちなんで命名されている[1]。
目次
- 1 主症候
- 2 原因
- 3 成人のゲルストマン症候群
- 4 小児のゲルストマン症候群
- 5 治療
- 6 予後
- 7 脚注
- 8 参考文献
- 9 外部リンク
|
主症候
ゲルストマン症候群は次の4つの主な症候で定義される。
- 失書 : 自発的に字を書くことも書き取りもできない。
- 失算 : 暗算も筆算もできない。
- 手指失認 : 指定された指を示せない。
- 左右失認 : 左右がわからない。
以上の4症候を満たさない不全型も多くみられる。これらの症候の中では手指失認がもっとも重要視されており、左右失認がこれに次いでいる[2]。
原因
この疾患は優位半球(通常は左大脳半球)頭頂葉の側頭葉境界に近い角回および縁上回という部分の病変と関係していることが多い。しかしゲルストマン症候群が本当に単一で理論的に誘導された症候群なのかどうかについては、科学文献上で多くの議論がある。そういうわけでこの診断の有用性については神経学者からも精神神経学者からも同様に疑問が呈されている。
成人のゲルストマン症候群
成人では、この症候群は脳卒中後やあるいは頭頂葉の損傷などに合併する。
こういった疾患では、前述のような症候を示す以外に失語を呈する場合が多い。すなわち会話の際に発語ができなくなったり、読み書きが困難になったりする。言語野も優位半球に存在し、病変が言語野にも及ぶことが多いためである。
小児のゲルストマン症候群
ごく稀に小児でもこの症候群の報告があり、発達性ゲルストマン症候群と呼ばれることもある。原因はわかっていない。ほとんどの症例は学齢に達した小児が書字や計算をしようとする際に発見されている。一般的には書字やつづりがうまくいかない、四則演算ができないという症状を示す。左右の違いがわからなかったり、個々の指を識別できなかったりという症候が明らかにわかる例もある。4主徴に加えて、多くの子どもが構成失行、すなわち簡単な線画の模写ができないという症候にも悩まされる。読みの障害も多い。脳障害を持った子どものみならず、知的能力の高い子どもでもこの疾患が起こりうる。
治療
ゲルストマン症候群に対する特効的な治療法はない。そのため治療は対症療法、支持療法となる。作業療法や言語療法によって、書字困難や失行を軽減できることもある。また学童については電卓やワードプロセッサで症状に対処しうることもある。
予後
成人では、症候の多くは時間の経過とともに軽快する。小児でも時間が経つにつれて症状が軽快すると考えられているが、ほとんどの子どもはこのハンディキャップを完全には克服できず、そのかわりこれらを補う手段を学んでいるようである。
脚注
- ^ Who Named It(エポニムに関する英文のサイト)
- ^ 田崎、斎藤 (2004) P.264
参考文献
- 田崎、斎藤著『ベッドサイドの神経の診かた』改訂16版、南山堂、2004年、pp.264-265 ISBN 9784525247164
外部リンク
- NINDS(米国国立神経疾患・脳卒中研究所)による解説(英文)
- GPノートブック(イギリスのプライマリー医向けサイト、英文)
UpToDate Contents
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- 1. 後方循環系の脳血管症候群 posterior circulation cerebrovascular syndromes
- 2. 同名半盲 homonymous hemianopia
- 3. 成人における精神状態検査 the mental status examination in adults
Japanese Journal
- ゲルストマン症候群を心的イメージの操作障害と捉えた作業療法
- 山田 裕子,外里 冨佐江,酒井 保治郎
- 作業療法 = The Journal of Japanese Occupational Therapy Association 29(3), 352-362, 2010-06-15
- NAID 10026407503
- 川合 紀宗,生柄 陽子
- 広島大学大学院教育学研究科附属特別支援教育実践センター研究紀要 (8), 21-31, 2010-03
- NAID 40017004618
- バリント症候群,ゲルストマン症候群とその評価法 (特集 認知症の診療に役立つ神経心理学)
Related Links
- ゲルストマン症候群 ゲルストマン症候群について 1. 定義 ゲルストマン症候群とは、失認症の両側性失認に分類される。手指失認、左右失認、失書、失算の4つの症状を併せ持つ症候群である。 この4つの症候をもつものが典型的である ...
- 世界大百科事典 第2版 ゲルストマン症候群の用語解説 - ... ... ゲルストマン症候群 Tweet 世界大百科事典内のゲルストマン症候群の言及 【失認】より …触覚失認は表在感覚にも深部感覚にも障害がないのに,触覚で対象を認識できない ...
- T905 頭蓋内損傷(脳損傷)の後遺症 ゲルストマン症候群 失算、失書、左右障害、手指失認の4症状を示す場合を、ゲルストマン症候群と呼ばれています。1999年になり、メイヤーと言う学者が、頭のなかでイメージを回転して操作する ...
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- dominant hemisphere
- 関
- 劣位半球
概念
- 利き手と反対側の大脳半球を指す。
- 右利き:優位半球は左半球
- 左利き:優位半球は右半球
疾患との関係
- 例えば、100F049で、右利きでかつ優位半球が左とすれば、左半球の脳梗塞により失語を呈するのも不思議ではない。
臨床関連
[★]
- 英
- angular artery, artery of angular gyrus
- ラ
- arteria gyri angularis
- 関
- 中大脳動脈
解剖
由来
走行
分布
臨床関連
[★]
- 英
- parietal lobe syndrome
- 関
- ゲルストマン症候群、頭頂葉
[★]
- 英
- angular gyrus syndrome
- 関
- 角回、ゲルストマン症候群
[★]
ゲルストマン症候群
[★]
- 英
- syndrome, symptom-complex
- 同
- 症状群
- 関
- [[]]
- 成因や病理学的所見からではなく、複数の症候の組み合わせによって診断される診断名あるいは疾患。
内分泌
先天的代謝異常
高プロラクチン血症
- 分娩後の視床下部障害によるプロラクチン分泌抑制因子の分泌抑制のため、高プロラクチン血症を呈する。
- 分娩に関係なくプロラクチン分泌抑制因子の分泌抑制をきたし、高プロラクチン血症を呈する。
性腺機能低下
- 嗅覚の低下・脱出、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症
- 肥満、網膜色素変性症、知能低下、低ゴナドトロピン性性器発育不全、多指症、低身長
性早熟
- 思春期早発症、多発性線維性骨異形成症、皮膚色素沈着
- 女性型の肥満、性器の発育障害の2主徴を示し、視床下部に器質的障害をもつ疾患群。
脳神経外科・神経内科
[★]
- 英
- group
- 関
- グループ、集団、分類、群れ、基、グループ化
[★]
- 英
- symptom and sign
- 関
- 症状, 徴候 兆候