出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/09/28 23:00:45」(JST)
副腎 | |
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副腎の位置
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ラテン語 | glandula suprarenalis |
英語 | adrenal gland |
器官 | 内分泌器 |
動脈
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上副腎動脈
中副腎動脈 |
静脈
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副腎静脈
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神経
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腹腔神経叢
副腎神経叢 |
副腎(ふくじん)は、哺乳類などに存在する器官で、多種のホルモンを分泌する内分泌器の一つ。腎臓の隣にあることから、この名があり、腎上体(じんじょうたい)とも呼ばれる。実際には腎臓と直接の接続はない。
大きく2層構造をしており、中胚葉由来の副腎皮質および外胚葉由来の副腎髄質から構成される。副腎皮質からは、コレステロールを原料に多種のステロイドホルモンが分泌される。それらのホルモンをまとめて副腎皮質ホルモンと総称する。副腎皮質ホルモンは、その機能から大きく3つに分類される。体内での糖の蓄積と利用を制御する糖質コルチコイド、無機イオンなどの電解質バランスを調節する鉱質コルチコイド、そして生殖機能に関与する性ホルモン、特にアンドロゲンである。一方、副腎髄質からは、カテコールアミンホルモンであるエピネフリン(アドレナリン)、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)が分泌され、体のストレス反応などの調節を行っている。皮質と髄質とは発生学的にも機能的にも直接の関連性はない。
ヒトの副腎は、1個が5g前後で、径は数cm程度の扁平な円盤状ないし半月状をしており、これが中央付近で山型に折れたような形、あるいは中央部が厚くなった形をしている。厚さは厚い中央部では1~2cm程度、薄い周辺部では1cm以下のところもある。これが、全体として脂肪に包まれ、左右の腎臓の上端に帽子が乗るように隣接して存在する。断面を見ると、表面全体を覆う被膜の下には、かなりの厚さに渡り、黄色っぽい色をした油っぽい層、副腎皮質があり、中央部付近にある、暗い赤色をした薄い層が副腎髄質である。哺乳類以外の脊椎動物では、皮質と髄質は混ざり合っている場合もあり、またはっきりと分かれていることもある。分かれている場合には皮質にあたるものを腎間組織、髄質にあたるものをクロマフィン体と呼ぶ。
副腎を栄養している副腎動脈には変異が多いが、一般的なパターンとしては、下横隔動脈より分岐する上副腎動脈、大動脈より分岐する中副腎動脈、腎動脈より分岐する下副腎動脈の3本の枝があり、更にこれらが細い枝に分かれ副腎へと入る。
副腎の被膜直下にはこれらの動脈が被膜下動脈叢を形成しており、ここから2種類の動脈が出ている。短皮質動脈は皮質に入ると各層で洞様毛細血管を形成する。網状帯の洞様毛細血管は髄質の静脈叢と合流して細静脈を形成しており、髄質をも栄養しているのでこれを副腎門脈系ともいう。一方長皮質動脈は皮質内で分岐せずに髄質に入り、髄質を栄養する。このため副腎髄質は直接間接の2種類の栄養供給を受けている。
副腎から出て行く静脈を副腎静脈という。左右の静脈は走行が異なり、右副腎静脈は下大静脈へとつながっている。また、左副腎静脈は左腎静脈と合流し、下大静脈へと注ぐ。 副腎には自律神経が多く入るが、これも副腎動脈同様、副腎表面の数箇所から入る。
副腎皮質には、中胚葉由来の細胞が索状、または塊状に配列しており、それらの細胞が、副腎皮質ホルモンを分泌している。細胞の間には毛細血管が極めてよく発達しており、分泌されたホルモンが全身へと運ばれるのを助ける。
細胞の並び方とその他の外観上の特徴から、皮質は3層に分けられている。外側から、球状帯、束状帯、網状帯と呼ばれる。これらの層は、明確な境界をなさず、だんだんと移行するように見えるが、機能的には、それぞれ分泌する副腎皮質ホルモンの種類が異なると考えられている。しかしそれぞれの層にある細胞を分離して生体外におくと、すべて同じ物質を産生するようになる。このため生体内では、球状帯の細胞が産生するステロイドあるいは代謝副産物が、血流を通じて下流にある束状帯の細胞の何らかの酵素活性を抑えてアルドステロンの産生を不可能にしており、同様に束状帯の細胞が産生するステロイドや過酸化物が網状帯でのコルチゾールの産生や分泌を抑制しているという考えが示唆されている。
また最も外側の球状帯で新たな細胞分裂が起こり、古い細胞は順に内側の層へと押しやられながら、その性質が変化していく、とする説がある。
副腎皮質ホルモンの分泌が何らかの理由で急激に減少するのが「副腎クリーゼ」。処置が遅れると命に関わる病気である。
球状帯(羅: zona gromerulosa)は、一番外側の薄い層で、皮質全体の15%ほどを占める。細胞は球状やその他不規則な塊状に配列しており、外観は外分泌腺の腺房に似ている。細胞どうしの接着は主にデスモゾームを介して行われ、ギャップ結合は少ない。細胞内の核は不規則な形をしており、束状帯に近づくと球形になっている。細胞質には滑面小胞体が多いが、束状帯に比べると少ない。
球状帯から分泌されるのは、鉱質コルチコイドである。ここから分泌される主な鉱質コルチコイドには、アルドステロンなどがある。
束状帯(羅: zona fasciculata)は、皮質全体の78%を占める比較的厚い層で、細胞は列をなしてまっすぐな索状に並ぶ。細胞は球状帯のそれよりもやや大きく、細胞間接着は主にギャップ結合である。標本を作ると、細胞内に空胞がたくさん見えるのが特徴。この空胞は、細胞内にたくさん脂肪滴があることを示す(標本作成の際に脂肪滴が脱落してしまう)が、この脂肪滴はステロイドホルモンの原料となるもので、ホルモン分泌が盛んであることを示すと考えられている。ただし脂肪滴の量は種差があり、ヒトはハムスターやウシに比べて多い。また細胞内には滑面小胞体が極めて多く、細胞重量の40-45%を占めている。ミトコンドリアも細胞重量の25-30%と多いが、内部構造はやはり種差が大きい。しかしその理由ははっきりしていない。
束状帯から分泌されるのは、糖質コルチコイドである。ここから分泌される主な糖質コルチコイドには、コルチゾール(ハイドロコルチゾン)、コルチゾン、コルチコステロンなどがある。
最内層は、薄い網状帯(羅: zona reticularis)で皮質全体の7%ほどを占めており、細胞のつながった索は乱れて、お互いが絡み合った網目を作る。細胞は内部に行くほど小さくなり、また古い細胞の特徴である細胞質内へのリポフスチン顆粒の蓄積が見られる。核の変化やオルガネラの乏しさ、色素の蓄積から、網状帯では細胞の変性が起こっていると見られる。
網状帯から分泌されるのは、性ホルモン、主にアンドロゲンである。ここから分泌されるアンドロゲンには、デヒドロエピアンドロステロンなど。
副腎髄質を構成するクロム親性細胞は、末梢神経になる細胞と同様の神経堤に由来する細胞で、神経細胞と似た性質を持っている。大部分の細胞は軸索、樹状突起などは持たず、エピネフリンかノルエピネフリンかのどちらかの物質を分泌する細胞である。一部の細胞は、神経細胞としても性質を保持しており、大型で神経線維を持つ神経節細胞である。自律神経からの刺激が神経節細胞を介して、髄質の細胞に伝わり、これらのホルモンを分泌させる。
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