- 英
- vimentin
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ビメンチン(英: vimentin)は、間葉系細胞に特有の中間径フィラメント(英: intermediate filament)である。
ビメンチンは結合織を構成する線維芽細胞,血管内皮細胞,平滑筋細胞,横紋筋細胞,骨・軟骨細胞,神経鞘細胞など多様な細胞に分布する主要な細胞骨格蛋白である。結合織以外でもリンパ球やマクロファージなど血液細胞,中枢神経系のアストロサイトでの分布も確認されている。病理学的にはサイトケラチンとビメンチンに対するモノクローナル抗体を用いて,上皮性と非上皮性腫瘍の鑑別が行われている。
目次
- 1 ビメンチンの発見
- 2 ビメンチンに対する抗体
- 3 ビメンチンの生理的な役割
- 4 参考文献
- 5 関連項目
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ビメンチンの発見
ドイツのMax-Planck-Instituteの生物物理・化学グループのOsbornとWeberらのグループは,マウス線維芽細胞由来のNIH-3T3株化培養細胞を用いて界面活性剤Triton X-100と塩類処理による細胞質成分の除去を行ったのち,分子量57,000の細胞骨格蛋白を精製した。この蛋白に対する抗体を作製し,蛍光抗体法で培養細胞を染色したところ,上皮以外の間葉系細胞の中間径フィラメントと特異的に反応した。彼らは間葉系細胞に特有の中間径フィラメントとしてビメンチン(英: vimentin)と命名した(Franke WW et al, 1978).ケラチンやビメンチンを始めとする中間径フィラメントの多くがMax-Planck-Instituteのグループにより分離され,精力的な細胞生物学的研究が行われ今日まで発展してきた。精製された蛋白に対するモノクローナル抗体はその後全世界に普及し,細胞生物学の研究や病理診断学への応用に必須のツールとして用いられている。
ビメンチンに対する抗体
ブタ由来のビメンチンを特異的に認識するモノクローナル抗体が作製された(Osborn M et al, 1984)。この抗体は種を超えてヒト,マウス,ラット,鳥類のビメンチンとも反応する。市販のモノクローナル抗体としてはclone V9が汎用されている。マイクロウェーブによる抗原賦活化によりホルマリン固定パラフィン包埋された標本でも免疫組織化学的染色が容易になり日常的に診断に利用されるようになった。
ビメンチンの生理的な役割
中間径フィラメントは高等真核生物の細胞骨格として細胞の形態の維持を担う主要な構造蛋白として認知されてきた。特にビメンチンは生物の発生の初期段階から細胞や組織の分化成熟の段階まで多彩な細胞に発現しており,細胞機能に必須の構造蛋白であると考えられてきた。しかし,意外なことに遺伝子改変により作製したビメンチン欠損マウス(vimentin null mouse)は,胎生期に致死的影響を生ずることなく,ほぼ正常な個体として生まれ,細胞や組織の分化成熟を示すことが判明した(Galou et al, 1996; Colucci-Guyon et al, 1994)。GFAP欠損マウス,デスミン欠損マウスでも生存に影響するような重篤な病理変化を生じないことが報告されている。これらの事実は中間径フィラメントが単独で細胞の形態維持や機能を担っているという従来の発想の転換を促している。生体内で最も豊富に存在する細胞内構造蛋白でありながらビメンチンの詳細な細胞生理機能や病的過程での役割はいまだ謎に満ちている。
参考文献
- Franke WW, Schmid E, Osborn M, Weber K. Different intermediate-sized filaments distinguished by immunofluorescence microscopy. Proc Natl Acad Sci USA 1978; 75: 5034-5038.[1]PubMed Central
- Franke WW, Schmid E, Osborn M, Weber K. Intermediate-sized filaments of human endothelial cells. J Cell Biol 1979; 81: 570-580. [2]
- Osborn M, Debus E, Weber K. Monoclonal antibodies specific for vimentin. Eur J Cell Biol 1984; 34: 137-143.
- Colucci-Guyon E, Portier MM, Dunia I, Paulin D, Pournin S, Babinet C. Mice lacking vimentin develop and reproduce without an obvious phenotype. Cell 1994; 79: 679-694. [3]
- Galou M, Colucci-Guyon E, Ensergueix D, Ridet JL, Gimenez y Ribotta M, Privat A, Babinet C, Dupouey P. Disrupted glial fibrillary acidic protein network in astrocytes from vimentin knockout mice. J Cell Biol 1996; 133: 853-863. [4]
関連項目
- サイトケラチン(英 cytokeratin)
- デスミン(英 desmin)
- ニューロフィラメント(英 neurofilament)
- ネスチン (英 nestin)
- GFAP(英 glial fibrillary acidic protein)
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Japanese Journal
- 田中 隆光,新井 貴子,石川 武子,大西 誉光,渡辺 晋一
- Skin cancer : official organ of the Japanese Society for Skin Cancer = 皮膚悪性腫瘍研究会機関誌 25(2), 185-188, 2010-09-15
- … 免疫染色はGCDFP15,CK7,CAM5.2,CD99が陽性で,CK20,LCA,ビメンチン,S?100,HMB45,CD68,CEA,AFP,CD117は陰性。 …
- NAID 10027731704
- 20年の経過で局所再発を来した膵solid-pseudopapillary neoplasmの1切除例
- 間下 直樹,越川 克己,谷口 健次,望月 能成,横山 裕之,末永 裕之,桑原 恭子
- 日本消化器外科学会雑誌 43(9), 948-952, 2010-09-01
- … 腫瘍生検を施行,SPNと診断されたため,十二指腸を温存して腫瘍核出術を施行した.病理組織学的検査所見は小型類円形の核,好酸性の胞体をもつ細胞が充実性あるいは偽乳頭状に増生しており,免疫染色検査ではNSE,ビメンチン,PgR,シナプトフィジン陽性であった.術前の腫瘍生検と同様にSPNと診断され,20年前の膵腫瘍と同一であった.長期間の経過で局所再発を来したSPNの1切除例を経験したので,文献的考察を加えて報告する. …
- NAID 110007701027
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★リンクテーブル★
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- 英
- renal cell carcinoma RCC
- 同
- Grawiz腫瘍 グラヴィッツ腫瘍 Grawitz tumor
- 関
- 腎癌、腎臓、腫瘍
疫学
- 腎腫瘍の85%を占める (EPT.221)
- 転移のある人が3割
- 40-70歳代に多発 50-60歳(SURO.237)
- 男女比=2-3:1 (YN.E-84)
病因
- 遺伝子異常:VHL遺伝子の変異
- 癌原物質:タバコ、砒素、石綿、カドミウム、殺虫剤、真菌毒素
リスクファクターと相対危険度
- VHL病:100 ← VHL病の40%の症例で腎細胞癌を見る
- 透析患者:32 ← 長期透析患者では後天性嚢胞性腎疾患が見られ、これに合併しやすい
- 肥満:3.6
- 喫煙:2.3
- 高血圧:1.4
- ドライクリーニング:1.4
- 利尿薬常用者:1.3
- フェナセチン中毒:1.1
由来
分類
- 悪性-腎細胞癌 renal cell carcinoma
- 1. 淡明細胞癌 clear cell carcinoma ← RCCの3/4を占める(APT.260)
- 2. 顆粒細胞癌 granular cell carcinoma
- 3. 嫌色素細胞癌 chromophobe cell carcinoma
- 4. 紡錘細胞癌 spindle cell carcinoma ← 予後不良
- 5. 嚢胞随伴性腎細胞癌 cyst-associated renal cell carcinoma
- 6. 乳頭状腎細胞癌 papillary renal cell carcinoma ← 予後は比較的良好
病理
- 組織由来は近位尿細管上皮であり、一部に髄質集合管由来の物がある(YN.E-84)
- 異型性は軽度。
- 肉眼的所見は黄色、分葉、出血、偽膜、血管に富む、脂肪分に富む
- 血管性間質に被胞される→血行性転移しやすい
- 腫瘍細胞の細胞質は明るくぬける→脂肪と糖原が多いから
- 腎静脈内を発育し、下大静脈、右心房まで伸展する腫瘍塞栓を見ることがある。
症状
- 3主徴がそろうのは5%以下。実質に腫瘍ができるため、初期には症状がほとんど無い。
- 無症状で健康診断・人間ドックで見つかることが3割弱、他疾患治療中に見つかるのが5割弱。 → ほとんど気づかれない
- 血尿:40-50% (無症候性肉眼的血尿)
- 疼痛:10-40%
- 腹部腫瘤:20-40%
- 精索静脈瘤、発熱(10-20%)、全身倦怠感、体重減少、貧血(15-40%)、高血圧(15-40%)、転移症状
検査
診断
画像診断
- 最初にエコー、次にCT
- 腎の変形、腫瘍輪郭の不整、中心部エコー像の変形、可動性の制限、静脈腫瘍血栓像
- 診断上最も重要
- 造影CTでは腫瘍は造影早期に造影され、内部が不均一に造影される。 ← 腎臓より弱く造影される
- 腫瘍の有無と病気診断(静脈内腫瘍塞栓の有無、後腹膜リンパ節、隣接臓器への浸潤、多臓器への転移の有無)
[show details]
- 腫瘍血栓の進展の高さを診断するのに有用
- 腎細胞癌は下大静脈、腎静脈に腫瘍血栓を作る
臨床病気分類
- (腎癌取扱い規約 第3版 日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会/編 1999年金原出版(株) 東京)
- TX 原発腫瘍の評価が不可能
- T0 原発腫瘍を認めない
- T1 最大径が7.0cm以下で、腎に限局する腫瘍
- T1a 最大径が4.0cm以下で、腎に限局する腫瘍
- T1b 最大径が4.0cmを越えるが7.0cm以下で、腎に限局する腫瘍
- T2 最大径が7.0cmを越え、腎に限局する腫瘍
- T3 腫瘍は主静脈内に進展、または副腎に浸潤、または腎周囲脂肪組織に浸潤するが、Gerota筋膜を越えない
- T3a 腫瘍は副腎または腎周囲脂肪組織または腎洞脂肪組織に浸潤するが、Gerota筋膜を越えない
- T3b 腫瘍は腎静脈または横隔膜下までの下大静脈内に進展する
- T3c 腫瘍は横隔膜を越える下大静脈内に進展する
-
- NX 所属リンパ節の評価が不可能
- N0 所属リンパ節転移なし
- N1 1個の所属リンパ節転移
- N2 2個以上の所属リンパ節転移
-
- MX 遠隔転移があるかどうか評価不能
- M0 遠隔転移なし
- M1 遠隔転移あり
転移臓器
- 腎癌の剖検時の転移臓器と頻度
- 肺:50-60%
- 骨:30-40%
- リンパ節:30-55%
- 肝臓:20-40%
- 脳:5-8%
- 副腎:20-25%
- 対側腎:10-20%
治療
- 診断は画像診断のみ
- 組織診をしない→禁忌:転移したら有効な治療方法がないから(薬物療法はほとんど効かない)
- 既存の悪性腫瘍薬や放射線に抵抗性!!
- 1.手術療法、2.動脈塞栓術、3.免疫療法、4.分子標的薬
1.手術療法、
- 開放手術、体腔鏡(腹腔鏡、後腹膜鏡)、体腔鏡補助
- 到達法:経腹的が今のところ一般的:「経腰的」-腰部斜切開で後腹膜に入る、「経腹的」-腹腔を開く、「経胸腹的」-胸腔、腹腔共に開く
術式
- 腎動脈を処置、Georta筋膜ごと腎、周囲脂肪識、副腎をまとめて摘出 ← 経腰的だと腎門までの距離が長く適さない
- 腎部分切除術
- 核出術
- 追加の術式:リンパ節郭清(リンパ節転移が疑われる例に関しては推奨される(参考1))、腫瘍血栓摘除術(下大静脈腫瘍血栓を有する患者で、所属リンパ転移、遠隔転移を認めない例に対して推奨される(参考1))
進行期、病期別
- 参考1
- I期:T1a(腫瘍径4cm以下)であれば腎部分切除術が推奨される。
- I,II期:腹腔鏡下での腎摘除術が推奨される。
- M1:転移巣があっても、PSが良好でインターフェロンが可能な例では腎摘除術が推奨される。また、転移巣を有する患者で、PSが良好かつ転移巣が切除可能であれば、転移巣に対する外科治療が推奨される。
2.動脈塞栓術
3.免疫療法
- マクロファージの貪食作用増強、MHC class I分子発現増強
- 奏効率は10-15%程度
- 副作用:食欲不振、全身倦怠感、発熱、うつ症状
- T細胞の増殖、サイトカイン(IL-1, IL-6, INF-γ)の分泌誘導
- 奏効率は10-15%程度
4.化学療法(分子標的薬)
- いずれも完全寛解には至らない
- スニチニブ:部分寛解が5割弱。
- ソラフェニブ:部分寛解が1割。病状安定率が7割
- 副作用:手足症候群(疱疹など)、脱毛、骨髄抑制、下痢、高血圧、心血管系障害、甲状腺機能障害など
予後
- Robson分類による5年生存率
- Stage1:70-90%
- Stage2:60-70%
- Stage3:30-60%
- Stage4:10-30%
腎への転移 (1983-1985年日本病理解剖統計)
- 原発部位:リンパ系(30.0%)、精巣(28.6%)、骨髄(27.4%)、副腎(25.7%)、後腹膜(22.5%)、皮膚(20.5%)、対側腎(19.3%)、肝臓(19.0%)
参考
- http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0057/1/0057_G0000158_GL.html
- http://ganjoho.jp/public/cancer/data/renal_cell.html
- 4. 財団法人国際医学情報センター:がん Info / 腎細胞がん
- http://www.imic.or.jp/cancer/c2027.html
国試
[★]
- 英
- intermediate filament
- 同
- 中間径線維、10nmフィラメント、中間径繊維
- 関
- 細胞
- tonofilament
[★]
- 英
- plectin
- 関
- [[]]
臨床関連
[★]
- 英
- antivimentin antibody, anti-vimentin antibody
- 関
- ビメンチン、悪性黒色腫