出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2017/01/04 23:39:00」(JST)
次亜塩素酸イオン | |
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IUPAC名
hypochlorite |
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識別情報 | |
CAS登録番号 | 14380-61-1 |
PubChem | 61739 |
ChemSpider | 55632 |
国連/北米番号 | 3212 |
ChEBI | CHEBI:29222 |
Gmelin参照 | 682 |
SMILES
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InChI
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特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
次亜塩素酸塩(じあえんそさんえん、英: hypochlorite)は、次亜塩素酸の塩である。次亜塩素酸イオン ClO- を含み、塩素の酸化数は+1である。
よく見られる例が、次亜塩素酸ナトリウム(塩素漂白や漂白剤)や次亜塩素酸カルシウム(粉末漂白剤やプールの消毒剤)である。次亜塩素酸塩は非常に不安定で、例えば NaClO 水溶液から水を除去すると塩化ナトリウムと塩素酸ナトリウムの混合物に不均化するため、固体を得ることはできない。NaClO 水溶液を加熱すると同様の反応が起こる。次亜塩素酸塩は日光によって塩化物と酸素に分解する。
その低い安定性のため、次亜塩素酸塩は非常に強い酸化剤である。有機化合物との反応は非常に発熱的で、発火することがあるため、次亜塩素酸塩は注意して取り扱う必要がある。これはマンガン化合物を過マンガン酸塩にまで酸化することができる。
次亜塩素酸メチルのような共有結合性化合物もまた知られており、一般に非常に不安定である。
室温で水酸化ナトリウム水溶液に塩素ガスを通じると、不均化によって次亜塩素酸イオンのナトリウム塩 NaClO が生じる。
Cl2 (g) + 2 NaOH (aq) → NaCl (aq) + NaClO (aq) + H2O (l)
熱濃水酸化ナトリウム水溶液と塩素の反応では、より高い酸化状態の塩素酸塩が生じる。
3 Cl2 (g) + 6 NaOH (aq) → 5 NaCl(aq) + NaClO3 (aq) + 3 H2O (l)
次亜塩素酸塩は、酸と混ぜると塩素ガスを発生する。次亜塩素酸イオンと塩化物イオンは塩素による平衡状態にある。
2 H+ (aq) + ClO- (aq) + Cl- (aq) → Cl2 (g) + H2O (l)
そのため、ルシャトリエの原理によって、高い pH では H+ イオンを消費して反応が左向きに進み、塩素の次亜塩素酸イオンと塩化物イオンへの不均化が促進されるのに対し、低い pH では反応が右向きに進み、塩素の発生が促進される。
次亜塩素酸塩は、染料を脱色するための漂白剤として使われる。
次亜塩素酸塩は塩素のオキソアニオンの中で最も速い酸化剤である[1]。Mn2+ を過マンガン酸イオンまで酸化する。
2 Mn2+ + 5 ClO- + 6 OH- → 2 MnO4- + 3 H2O + 5 Cl-
次亜塩素酸塩は塩素のオキソアニオンの中で最も不安定である[1]。多くの次亜塩素酸塩は、次亜塩素酸自身と同様に溶液中でのみ存在する。
次亜塩素酸塩は不均化に対して不安定である。加熱によって、これは塩化物、酸素ガス、塩素酸塩の混合物に分解する。
2 ClO- (aq) → 2 Cl- (aq) + O2 (g)
3 ClO- (aq) → 2 Cl- (aq) + ClO3- (aq)
次亜塩0.5%液「ヨシダ」
効能・効果 |
用法・用量 |
本品希釈倍数 |
手指・皮膚の消毒 |
有効塩素濃度100〜500ppm(0.01〜0.05%)溶液に浸すか、清拭する。 |
10〜50倍 |
手術部位(手術野)の皮膚の消毒、 |
有効塩素濃度50〜100ppm(0.005〜0.01%)溶液で洗浄する。 |
50〜100倍 |
医療機器の消毒 |
有効塩素濃度200〜500ppm(0.02〜0.05%)溶液に1分間以上浸漬するか、または温溶液を用いて清拭する。 |
10〜25倍 |
手術室・病室・家具・器具・物品などの消毒 |
有効塩素濃度200〜500ppm(0.02〜0.05%)溶液を用いて清拭する。 |
10〜25倍 |
排泄物の消毒 |
有効塩素濃度1,000〜10,000ppm(0.1〜1%)溶液を用いる。 |
原液〜5倍 |
HBウイルスの消毒 |
汚染がはっきりしないものの場合は、有効塩素濃度1,000〜5,000ppm(0.1〜0.5%)溶液を用いる。 |
原液〜5倍 |
患者用プール水の消毒 |
残留塩素量が1ppmになるように用いる。 | ― |
リンク元 | 「hypochlorite」 |
関連記事 | 「次亜塩素酸」「塩素」「塩素酸」「塩素酸塩」「次亜塩」 |
次亜塩素酸(じあえんそさん、Hypochlorous acid)は塩素のオキソ酸の1つで、塩素の酸化数は+1である。組成式では HClO と表わされるが、水素原子と塩素原子が酸素原子に結合した構造 H−O−Cl を持つ。不安定な物質であり水溶液中で徐々に分解する。次亜塩素酸および次亜塩素酸の塩類は酸化剤、漂白剤、外用殺菌剤、消毒剤として利用される。
実験室的には水酸化カリウム水溶液などに塩素を通じたりして調整した次亜塩素酸塩水溶液を硫酸で中和し、水蒸気蒸留して遊離酸の水溶液を得る。また、酸化水銀 の四塩化炭素懸濁液に塩素を通じた後に水で抽出したり、あるいは酸化ビスマスを水懸濁液中に塩素を通じることで遊離酸の水溶液を得る方法も知られている。
薄い水溶液としては存在するが、25%以上の濃度では一酸化二塩素に変化するので遊離酸を単離することはできない。濃厚水溶液は淡黄色である。また、遊離酸が弱酸 (pKa = 7.53)<ref>「次亜塩素酸」、『岩波理化学辞CD-ROM版』 第5版、岩波書店、1998年。</ref> のため、次亜塩素酸ナトリウムなどの次亜塩素酸塩水溶液はかなり強い塩基性を示す。
水溶液中でも不安定で、次のような不均化により塩化水素を放出しながら徐々に分解する。
次亜塩素酸やその塩の水溶液は、カルキ臭と呼ばれるプールの消毒槽のようなにおいを持つ。
また、塩素を水に溶かすと、次のような平衡により一部が塩酸と次亜塩素酸となる<ref>「次亜塩素酸」、『世界百科事典CD-ROM版』 V1.22、平凡社、1998年。</ref>。
{\rm Cl_2 + H_2O \ \overrightarrow\longleftarrow \ HCl + HClO} \quad K _{\rm w}=1.56 \times 10^{-4} </math> すなわち、中性~酸性条件ではこの反応はあまり進行しないが、アルカリ性条件では生成する遊離酸が次亜塩素酸塩となり平衡が右に偏るので、次亜塩素酸塩を製造する方法の1つとなる。
\rm Cl_2O + H_2O \longrightarrow 2HClO </math>
\rm HClO + H_2O_2 \longrightarrow HCl + H_2O + O_2 </math>
<references />
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