Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2018/05/05 21:40:56」(JST)
[Wiki ja表示]
|
この項目では、アメリカの心理学者について説明しています。スウェーデンの合唱指揮者については「エリク・エリクソン (合唱指揮者)」をご覧ください。 |
Erik Homburger Erikson
エリク・ホーンブルガー・エリクソン |
|
生誕 |
(1902-06-15) 1902年6月15日 [1]
ドイツ帝国 プロイセン王国
フランクフルト |
死没 |
(1994-05-12) 1994年5月12日(91歳没)
アメリカ合衆国
マサチューセッツ州・ハリッジ |
国籍 |
プロイセン王国
(1902-1939)
アメリカ合衆国
(1939-1994) |
職業 |
心理学者
大学教授(心理学) |
著名な実績 |
『発達心理学』
自己同一性 |
影響を受けたもの |
ジークムント・フロイト
アンナ・フロイト |
エリク・ホーンブルガー・エリクソン(英語: Erik Homburger Erikson, 1902年6月15日 - 1994年5月12日)は、アメリカ合衆国の発達心理学者で、精神分析家[1]。「アイデンティティ」の概念、エリクソンの心理社会的発達理論を提唱し、米国で最も影響力のあった精神分析家の一人とされる[1]。
目次
- 1 経歴
- 1.1 生い立ち
- 1.2 ウィーン時代
- 1.3 アメリカ時代
- 2 エリクソンの心理社会的発達理論
- 3 ジェネラティヴィティ
- 4 著作
- 5 脚注
- 6 参考文献
- 7 関連項目
- 8 外部リンク
経歴
生い立ち
ドイツ帝国のフランクフルトに生まれる[1]。母のカーラ・アブラハムセン(Karla Abrahamsen)はユダヤ系デンマーク人で、生後3年間はカーラと共にフランクフルトで過ごす。父親は定かではない。デンマーク人の芸術家だったのではないかと言われているが、カーラは最期まで息子にその父の名を明かさなかった。1905年にエリクソンの主治医も務めていた小児科医のテオドール・ホーンブルガーとカーラが結婚し、家族はフランクフルトからカールスルーエに引っ越す。なおミドルネームのホーンブルガー(Homburger)は母の再婚相手の苗字である。
エリクソンはその北欧系の風貌からユダヤ系社会やユダヤ教の教会で(逆)差別を受け、またドイツ人コミュニティからはユダヤ人であるという理由で差別を受け、二重の差別を受けて育った。実父の出自や所在が分からない状態で育った事も加え、彼の出自や生育歴がその後の理論・思想形成に大きな影響を及ぼしている。
カールスルーエのギムナジウムビスマルク校を卒業後は、芸術学院に進学するものの卒業はせず、その後各地を転々とし放浪生活を送った。エリクソン自身は画家を目指していたと語り、自身の特徴的な文章が画家を目指していたことと関係があると述べている。
ウィーン時代
友人の紹介で、アンナ・フロイトがウィーンの外国人の子弟を対象に始めた私立の実験学校で、教師を勤め、その経過の中でアンナの弟子となり、教育分析を受ける。エリクソンの面識のない実父に関して等、分析内容に違和感を残しつつも分析を終了する。その後、エリクソンはウィーン精神分析研究所の分析家の資格を取得する(当時のウィーン精神分析所で取得した資格は、同時に国際資格になる制度であった)。その後、ウィーンで後に結婚するカナダ人の舞踏家、ジョアン・セルソンと知り合う。
1933年、ドイツでナチスが政権を掌握すると、エリクソンはウィーンからコペンハーゲンへ、そしてアメリカへと渡り、1939年にアメリカでの国籍を取得する。当初、問題行動を起こす青年達の心理療法に従事し、他の治療機関の手に負えない難しい事例であったにも関わらず、高い治癒率を上げた為、注目を集め始めた。
アメリカ時代
エリクソンが有名な「アイデンティティ」の概念を思いついた背景には、マサチューセッツのオースティン・リッグス・センターにて同一性に苦しむ、境界例のクライアントに会っていた事が契機とされている。エリクソンは「アイデンティティ」という概念を極めて多義的、動的なものとして捉えており、複数の著作を当たっても定義が困難な非常に複雑な概念である。この事は、エリクソンがidentificationとidentityを並列し、「果たしてidentityがidentificationの総体なのか」と問うている所にも見受けられる。(青年と危機)しかしその後、心理学のみならず社会科学やあらゆる学問分野でアイデンティティ概念が多用されている事態を受け、エリクソン自身が困惑を隠し切れなかったと語っている。
大学の学位を持たずして、発達心理学者として知られるに至った。その後、アメリカへと移住し、イェール大学、カリフォルニア大学バークレー校、ハーバード大学の教員を歴任する。発達心理学者としては、幼児の心理の研究から始め、自分の年齢が上がっていくにつれて、青年期、成人期、老年期へとその関心を移していった。エゴ・アイデンティティ(自我同一性)・基本的信頼(感)という概念を提唱したことで知られる。
エリクソンの心理社会的発達理論
エリクソンは自我発達を以下8つの段階に区分した[1] 。
エリクソンの心理社会的発達段階 [1]
年齢 |
時期 |
導かれる要素 [1] |
心理的課題[1] |
主な関係性[2] |
存在しうる質問[2][出典無効] |
例[2] |
関連する精神病理[1] |
生後- |
乳児期 |
希望 |
基本的信頼 vs. 不信 |
母親 |
世界を信じることは出来るか? |
授乳 |
精神病、嗜癖、うつ病 |
18ヵ月- |
幼児前期 |
意思 |
自律性 vs. 恥、疑惑 |
両親 |
私は私でよいのか? |
トイレトレーニング、更衣の自律 |
妄想症、強迫症、衝動性 |
3歳- |
幼児後期 |
目的 |
積極性 vs. 罪悪感 |
家族 |
動き、移動し、行為を行ってよいか? |
探検、道具の使用、芸術表現 |
変換症、恐怖症、心身症、制止 |
5歳- |
学童期 |
有能感 |
勤勉性 vs. 劣等感 |
地域、学校 |
人々とものの存在する世界で自己成就できるか? |
学校、スポーツ |
創造的制止、不活発 |
13 歳- |
青年期(思春期) |
忠誠心 |
同一性 vs. 同一性の拡散 |
仲間、ロールモデル |
私は誰か? 誰でいられるか? |
社会的関係 |
非行、性同一性障害、境界性精神病性病態 |
20–39 歳 |
成人期 |
愛 |
親密性 vs. 孤独 |
友だち、パートナー |
愛することが出来るか? |
恋愛関係 |
シゾイドパーソナリティ障害、引きこもり |
40–64 歳 |
壮年期 |
世話 |
生殖 vs. 自己吸収 |
家族、同僚 |
私は自分の人生をあてにできるか? |
仕事、親の立場 |
中年期危機、早熟性虚弱 |
65歳 - |
老年期 |
賢さ・英知 |
自己統合 vs. 絶望 |
人類 |
私は私でいてよかったか? |
人生の反響 |
極度の孤立、絶望 |
ジェネラティヴィティ
ジェネラティヴィティ(generativity)とは、エリクソンが用いた精神分析学上の言葉。「次世代の価値を生み出す行為に積極的にかかわっていくこと」を意味する[3]。
著作
- Childhood and Society, W. W. Norton, 1950.
- 『幼年期と社會(前篇)性と文化の錯綜』、草野榮三良譯、日本教文社、1954年
- 『幼年期と社會(中篇)個性の成立』、草野榮三良譯、日本教文社、1955年
- 『幼年期と社會(後篇)英雄と精神異常の境』、草野榮三良譯、日本教文社、1956年
- 『幼児期と社会』、仁科弥生訳、みすず書房、1977年-1980年
- Young man Luther: a study in psychoanalysis and history, Faber & Faber Ltd, 1958.
- 『青年ルター――精神分析的・歴史的研究』、大沼隆訳、教文館、1974年
- 『青年ルター』、1-2巻、西平直訳、みすず書房、2002年-2003年
- Identity and the life cycle, International Universities Press, 1959.
- 『自我同一性――アイデンティティとライフ・サイクル』、小此木啓吾訳編、誠信書房、1973年
- 『アイデンティティとライフサイクル』、西平直・中島由恵訳、誠信書房、2011年
- Insight and responsibility, Norton, 1964.
- 『洞察と責任――精神分析の臨床と倫理』、鑪幹八郎訳、誠信書房、1971年
- Identity: youth and crisis, Norton, 1968.
- 『アイデンティティ――青年と危機』、岩瀬庸理訳、北望社、1969年
- Gandhi's truth: on the origins of militant nonviolence, Norton, 1969.
- 『ガンディーの真理――戦闘的非暴力の起原』、1-2巻、星野美賀子訳、みすず書房、1973年-1974年
- Play and development, Norton, 1972.
- 『遊びと発達の心理学』、赤塚徳郎・森楙監訳、黎明書房、1983年
- Dimensions of a new identity: the 1973 Jefferson lectures in the humanities, Norton, 1974.
- 『歴史のなかのアイデンティティ――ジェファソンと現代』、五十嵐武士訳、みすず書房、1979年
- Toys and reasons: stages in the ritualization in experience, Norton, 1977.
- 『玩具と理性――経験の儀式化の諸段階』、近藤邦夫訳、みすず書房、1981年
- The life cycle completed, Norton, 1982.
- 『ライフサイクル、その完結』、村瀬孝雄・近藤邦夫訳、みすず書房、1989年
共著
- Vital involvement in old age, with Joan M. Erikson, Helen Q. Kivnick, Norton, 1986.
- 『老年期――生き生きしたかかわりあい』、朝長正徳・朝長梨枝子訳、みすず書房、1990年
編著
- Youth: change and challenge, Basic Books, 1963.
- 『青年の挑戦』、栗原彬監訳、北望社、1971年
- 『自我の冒険――脱工業社会の青年たち』、栗原彬監訳、金沢文庫、 1973年
脚注
- ^ a b c d e f g h i B.J.Kaplan; V.A.Sadock 『カプラン臨床精神医学テキスト DSM-5診断基準の臨床への展開』 (3版) メディカルサイエンスインターナショナル、2016年5月31日、Chapt.4。ISBN 978-4895928526。
- ^ a b c Macnow, Alexander Stone, ed (2014). MCAT Behavioral Science Review. New York City: Kaplan Publishing. p. 220. ISBN 978-1-61865-485-4.
- ^ 清水書院『用語集 現代社会+政治・経済'12-'13年版』6ページ
参考文献
- ローレンス・J・フリードマン『エリクソンの人生』新曜社
関連項目
外部リンク
|
ウィキメディア・コモンズには、エリク・H・エリクソンに関連するカテゴリがあります。 |
- Erikson Institute website (英語)
- Austen Riggs Center (英語)
ヒトの生物的・心理的発達 |
出生前の発達 |
|
出生後の発達 |
|
発達におけるイベント |
- 在胎
- 出生前発達
- 分娩
- 子どもの発達 (発達段階理論)
- 幼児の認知発達
- 思春期
- 老化
- 死
|
発達段階理論 |
- ボウルビィ (愛着理論)
- ブロンフェンブレンナー (生態学的システム理論)
- エリクソン (エリクソンの心理社会的発達理論)
- フロイト (心理性的発達理論)
- コールバーグ (道徳性発達理論)
- ピアジェ (思考発達段階説)
- ヴィゴツキー (文化歴史的発達理論)
- 進化発達心理学(英語版)
|
|
愛着理論 |
理論 |
- 情緒的絆
- 成人における愛着
- 児童における愛着
- 愛着障害
- 愛着測定
- 愛着育児
- 愛着理論
- 人間的絆
- 母性剥奪
- 対象関係論
- 反応性愛着障害
- 分離不安障害
|
重要人物 |
- メアリー・エインスワース
- ジョン・ボウルビィ
- エリク・エリクソン
- ジークムント・フロイト
- ハリー・ハーロウ
- ジェローム・カガン
- メラニー・クライン
- コンラッド・ローレンツ
- メアリー・メイン
- ニコラス・ティンバーゲン
- ルネ・スピッツ
|
論争 |
|
臨床応用 |
|
|
典拠管理 |
- WorldCat
- VIAF: 4929517
- LCCN: n79026879
- ISNI: 0000 0001 1466 5693
- GND: 11853078X
- SELIBR: 223396
- SUDOC: 026852195
- BNF: cb11901827b (データ)
- NDL: 00438973
- NKC: jn19990002092
- ICCU: IT\ICCU\CFIV38569
- IATH: w6bv7fdz
|
38569
IATH: w6bv7fdz
</raw>
</toggledisplay>
Japanese Journal
- 自己愛の病理性の性差 : 他者への依存と自己誇大化
- 児童養護施設退所者へのアフターケアに関する研究 : 社会的自立を支えるための施設職員の役割を中心に
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- fundamental、essential、basic、elemental、cardinal、fundamentally、essentially、basically
- 関
- 塩基、塩基性、基礎、基礎的、基本、主要、重要、必須、必要、ベーシック、本質的、本態性、基数、根本的、必要不可欠
- 同
- ADL
[★]
- 英
- basis、bases、fundamentals、element、basic、basal、elementary
- 関
- エレメント、塩基、塩基性、基礎、基礎的、基底、基本的、元素、原理、根拠、初等、成分、ベーシック、要素、基盤
[★]
- 英
- confidence、trust、credibility、faith、rely、trust、reliably
- 関
- 確信、信用、確か、頼る、信頼度