出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/06/30 16:46:22」(JST)
この項目では、血筋・血脈の意の「家系(かけい)」について説明しています。
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家系(かけい)とは、血筋、血脈のことを指す。一定の血族集団の中で一定の階級または氏、家名、家格、家業、家財を世襲で継承する場合、或いは先祖伝来の地位或いは家業を受け継ぐ場合につかわれることが多い。類似概念としては家柄などがある。
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封建時代には、洋の東西を問わず広く普及していた概念であった。 古代、それぞれの文明圏において村落社会が形成され、侵略や服属による勢力拡大により勢力圏が形成されると、その首長の地位は、優れた者を選挙により選出する民主主義を有した国を除いて、その多くが父系または母系により形成された氏族により世襲に基づく継承がなされていった。 やがて、君主を頂点とする国家が成立するようになると、君主とその臣下の地位は世襲化されていった。 その国家における皇帝ないし国王の地位・領土を継承する皇族や王族。さらに、臣下の位にあり、一定の領土を継承する公爵はじめとした爵位を継承する貴族や諸侯。さらに貴族・諸侯の配下として領土を保有した西欧の騎士、或いは中国の卿士大夫などといった豪族など、その地位や勢力により、血族集団間の階級が生まれ、重層的な身分制を敷く封建社会が成立するようになった。このように一定の血族集団が特権的かつ優位性を有する地位・名声を連綿と継承していることを家系という。 中華文明圏の諸国を始め、儒教的価値観の影響を受けた国々や地域では、家系を重んじる価値観が強く、例えば韓国では族譜として、先祖伝来の記録を書き残す習慣が残存している。日本でも家系図に系譜を記す習慣があったが、近年では薄れてきている。 日本においても、天皇の地位は代々皇族により世襲され、摂政関白大臣や将軍の地位を世襲した公卿や武士など、特定の氏や家名や階級を代々継承した血族集団により独占されてきた歴史を有する。また、氏と家の概念が区別されており、家系に関する研究も盛んである。
また、次に家系の概念の代表的な用法として挙げられるのが、職業上の家系である。「代々、学者・教育者の家系」「代々、医者の家系」「政治家の家系」「実業家の家系」「芸道武道の家系」などというように、一定の職業を家業としている場合や、親族で類似した職業選択が行われている場合、その傾向を指して使われる。
日本においては、あらゆる職業はその貴賎を問わず、家系により世襲されてきた。主に貴族層においては、古来より公卿や武士、僧の地位、官職、役職をはじめとし、武道芸道などひとつの家系により技術などを伝承することで家業となし、その伝統をつないできた。今日では、職業選択の自由が保障されており、求人に民主的な公平公正さが求められる時代であることから、職業を世襲するということは一般的通念ではなくなったといってよい。 しかし、農業や商店など零細企業をはじめ、株式公開をしていない企業等では、未だ家業が残っており、さらに伝統芸能の分野において宗家・家元制度をとるものについては、ほぼ同一の家系により家業となっていることがほとんどである。
今日、事実上とはいえ、このような職業の世襲が可能な背景としては、特に特定の職業に就く上で、必要となる教養をみにつけなければならず、そうした教育を施す環境や経済力が必要となる場合がある。例えば、政治家の場合は、選挙に立候補する場合、得票するための支持基盤や莫大な選挙費用などを負担し得るだけの経済的基盤があることが前提とされやすく、そうした基盤のない者が政治家を志すことは困難である場合が多かった。これを「地盤(後援会組織)・鞄(資産)・看板(知名度)」といった。対して、両親ないし血族内に政治家がいる場合、支持基盤や経済基盤を得るのが比較的容易であり、結果として政治家の二世、三世、四世といった世襲議員が輩出されやすい傾向がある。事実、政治家の家系を見ると近遠の差はあるが、他の政治家と親類に当たる者も多い。今日、選挙の立候補において幅広い人材を議政壇上に上げようと、政党が一般市民から公募することが次第に定着している他、国民の間にも必ずしも旧来の政党や候補者にしばられない無党派層の拡大によって、世襲議員の温床である「地盤・鞄・看板」が必ずしも通用するとは限らない時代情勢となりつつあるが、世襲議員を輩出する土壌は未だ厳然と存在することも事実である。
また、同じく職業上の家系として代表的なものは、医師や教師、その他弁護士、司法書士、税理士、公認会計士など、いわゆる士業を営む個人事務所などでは、その職業や分野に精通した親族が多い場合、親族の職業に情報を得やすい環境にあることから親の事務所を継ぐよう促される場合もある。
冒頭に挙げたように、古来からの慣習により、武道・芸道など特定の家系が宗家・家元としてその流派や伝統を継承している場合も、職業上の家系にあたるものである。武道でいえば剣術・居合道その他にその例をみることが出来、芸道でいえば能楽や歌舞伎もそのひとつである。または、表千家や裏千家をはじめとする茶道、華道、或いは礼法の分野でも特定の家系による伝統の継承が見受けられる。今日では、二世タレントというように、伝統芸能によらない俳優や歌手、タレントなどの芸能人にも二世、三世が登場するようになり、あたかも職業上の家系のように見受けられる傾向もある。
こうした古典芸能の分野はともかく、民主主義社会においては、職業選択の自由や機会の均等が重んじられることから、一定の職業に就く者が何らかの強制が働く場合や他者よりも圧倒的優位に立つことで機会の不平等が起きることは好ましくないとする場合も多いが、実際にはこうした家系というものが多く存在する。
親族内で性格や素養、或いは身体的な特徴などを共有する場合が多く、代々類似した個性を受け継ぐ場合、家系という概念が用いられる。 特に身体面においては医学的には遺伝により、親族で代々一定の病気が発症しやすい場合も存在し、そのような場合、「癌の家系」などと家系という概念がしばしば用いられる。
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