加齢黄斑変性
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加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい、英: age-related macular degeneration、AMD)とは、加齢に伴い眼の網膜にある黄斑部が変性を起こす疾患である。失明の原因となりうる。以前は老人性円板状黄斑変性症と呼んでいた。またARMDと略していた頃もあった。難病情報センターのサイトにも本疾患の解説がある[1]。
目次
- 1 自覚症状
- 2 他覚所見
- 3 疫学
- 4 分類
- 5 検査
- 6 滲出型黄班変性の治療
- 7 根本医療
- 8 類縁疾患
- 9 脚注
- 10 関連項目
- 11 外部リンク
自覚症状
初期症状としては変視症を訴える人が多く、それをきっかけに眼科受診をし、この疾患に気づく方が多い。その後病状の悪化ともにゆがみが強くなり、眼底出血などにより視力低下、中心暗点がみられ、失明に至る場合もある。
他覚所見
眼底、特に黄斑部に病変を認める。
軟性ドルーゼン、網膜色素上皮剥離、黄斑下出血などを認め、黄斑変性にいたる。
萎縮型の場合には、ドルーゼンを伴い、徐々に黄斑変性に至るケースが多い。
疫学
近年高齢者に増加しており、アメリカでは中途失明原因の第1位である。男性の方が女性に比べ、3倍多い。
発生要因として
などがあげられている。遺伝子の関与という点では、日本人ではコンプリメント・ファクター H[2]よりもHTRA1とLOC387715の関与が強いことも示唆されている[3]。日本人の加齢黄斑変性の原因遺伝子としてHTRA1とLOC387715を初めて報告したのは、東京医療センター感覚器センターに所属していた 現衆議院議員の吉田統彦である[4]。
分類
滲出型
ウェット型[5]とも称されることがある。
脈絡膜から異常な脈絡膜新生血管を生じ、網膜面に進展する。新生血管は脆弱でありそのため出血、滲出物の貯留を認め、黄斑部の機能障害をきたし、偏視、視力低下などを来す。最終的には黄斑部に不可逆的な変性を起こし著しい視力低下となる。
脈絡膜新生血管(CNV[6])のタイプは以下のように別れる。
萎縮型
非滲出型とも。 dry typeとも称されることがある。
加齢に伴い黄斑部が変性を起こし、変性の範囲により急激な視力低下を認める。滲出型のような脈絡膜新生血管は認めない。現在のところ治療は有効なものはない。もしあえて行うのであれば、対症療法的な薬物又はサプリメントの投与がある。
検査
- 変視症の自己診断、変視の評価に使用する。
- フルオレセイン蛍光眼底造影
- インドシアニングリーン蛍光眼底造影
- 造影検査により、異常血管の検出を行い、治療方針を決定する。
滲出型黄班変性の治療
滲出型黄班変性には主にVEGF阻害剤投与、もしくは光線力学的療法が用いられるが、VEGF阻害剤投与のうちでも、ラニビズマブ、アフリベルセプトの投与の有用性が注目される[7]。欧米の多施設による試験では、光線力学的療法が視力低下を部分的にしか阻止しない一方、ラニビズマブには視力回復が期待できるという[8]。
- 加齢黄斑変性の発生に際し血管新生およびVEGFが関与しており、血管新生阻害薬の投与により進行を防止・改善する可能性がある。代表的薬剤としてラニビズマブ[9][10]がある。投与方法は硝子体内に注射。ラニビズマブは抗VEGF抗体のFab断片であり、2009年1月、製造販売承認を取得。販売元のノバルティスファーマによるサイトに総合製品情報概要などがある[11][12]。ベバシズマブは、加齢黄斑変性に対しては厚生労働省未認可の治療薬である。アイリーア(アフリベルセプト)は、VEGFR-1およびVEGFR-2の細胞外ドメインをもつ遺伝子組み換えたんぱく質であり、VEGFの作用を効率よく阻害するといわれる[13]。
- 光感受性物質であるベルテポルフィン[15]を静脈注射し、薬剤が脈絡膜新生血管に集積した際に、PDT専用のレーザー装置を用いて689nmのレーザー光を照射し、ベルテポルフィンが光活性化し脈絡膜新生血管を退縮させる治療。特にクラシックCNVに対して有効性を示す。少なくとも初回照射時、薬剤投与後48時間は遮光目的に入院が必要である。3ヶ月に一度造影検査を行い必要と認められれば、再度行う治療である。講習を受け試験に合格した認定医が施行する必要があり、また特殊な機器が必要であるため、施行施設は限られる。保険適用されているが薬剤が高く、高額な自己負担が必要になることもある。
- 日本での臨床試験(JAT study[16])では48ヶ月間に平均2.8回の治療が必要であった。また視力は2割の方に視力上昇を認め、2割に視力低下を認めた。海外での臨床試験(TAP study)では少なくとも24ヶ月観察期間中の視力の低下の抑制効果があると結論づけている。
- 新生血管が黄斑部に及んでいない場合に直接凝固を行う。その凝固斑により暗点が生じることがある。CNVが中心窩下に無い場合に適用になる。
- 外科的に新生血管を抜去する。CNVが中心窩下に無い場合に適用になる。抜去後暗点が生じることがある。
- 意図的網膜全剥離を起こし、痛んでいない色素上皮のところに網膜を回転させて黄斑部を移動させる。結果として斜視や複視になる。術後斜視手術又は同時手術が必要になることもある。
- 脈絡膜新生血管を退縮させる目的で放射線を照射する。
- 低エネルギーのレーザーを照射することにより温熱により、新生血管の破壊を促す治療法。厚生労働省未認可の治療法である。
- 徐放性ステロイド(トリアムシノロン アセトニド)をテノン嚢下又は硝子体内に投与し、新生血管の退縮を狙う。手術療法・PDT・VEGF阻害薬投与と同時に行うことがある。投与により緑内障を発症させる可能性がある。
- 糖質コルチゾール活性を有しない様に化学構造を変化させた合成ステロイド剤であるアネコルターブ・アセテート[18](Retaane)をテノン嚢下投与し、新生血管の退縮を狙う。
- VEGFに結合し、効果を発揮する。投与方法は硝子体内に投与である。代表的薬剤としてペガプタニブ[19](Macugen)があり、2008年7月、製造販売承認を取得。
- 止血剤
- 亜鉛、ルテイン、ビタミン類(A,C,E)、βカロチン[20]等
根本医療
高橋政代(神戸理化学研究所網膜再生医療研究開発プロジェクト代表)は、2014年9月12日に自己由来のiPS細胞から作成した網膜を患者へ移植する臨床研究を世界で初めて実施した[21]。これは加齢黄斑変性の治療を目的としたものである。これまで動物実験でのみ行われてきた人工的に作成した網膜を生体に移植する研究を実際に人体に応用した嚆矢である。
類縁疾患
脚注
- ^ [1]
- ^ 英: compliment factor H
- ^ Mol Vis. 2006 Mar 6;12:156-8.
- ^ Mol Vis. 2007 Apr 4;13:545-8.T.Yoshida
- ^ 英: wet type
- ^ 英: choroidal neovasucularization
- ^ http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/200904/510165.html
- ^ [2]
- ^ 商品名 ルセンティス、® 英: Lucentis®
- ^ 2006年、FDA承認済み。
- ^ [3]
- ^ [4]
- ^ [5]
- ^ 英: photo dynamic therapy
- ^ 英: verteporfin
- ^ Am J Ophthalmol. 2003 Dec; 136 (6): 1049-61. Japanese Age-Related Macular Degeneration Trial (JAT) Study Group.
- ^ 英: transpupillary thermo therapy
- ^ 英: anecortave acetate
- ^ 英: pegaptanib
- ^ 加齢黄斑変性には無効であるという報告もある
- ^ 理化学研究所 広報室 報道担当 2013-07-30
- ^ 英: tetinal angiomatous proliferation
関連項目
- 眼科学
- ロービジョンケア
- 青色光網膜傷害
- 抗老化医学
外部リンク
- 眼科PDT研究会
- 難病情報センター 「加齢黄斑変性」
- 加齢黄斑ドットコム ノバルティス ファーマ株式会社
UpToDate Contents
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- 1. 加齢黄斑変性:治療および予防 age related macular degeneration treatment and prevention
- 2. 加齢黄斑変性:臨床像、病因、および診断 age related macular degeneration clinical presentation etiology and diagnosis
- 3. 成人における白内障 cataract in adults
- 4. 慢性腎疾患関連眼疾患 eye disorders associated with chronic kidney disease
- 5. 疾患予防におけるビタミン補給 vitamin supplementation in disease prevention
Japanese Journal
- 大人の悠遊 からだチェック!(16)加齢黄斑変性症--ゆがんで見える
- カロテノイド(3)アンチエイジングとアスタキサンチンの観点から
Related Links
- 加齢黄斑変性. ■はじめに 年齢を重ねると身体のいろいろなところで病気がでてくる ことがあります。加齢黄斑変性もその一つで、加齢により網膜の中心部である黄斑に障害 が生じ、見ようとするところが見えにくくなる病気です。加齢黄斑変性は一般には ...
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★リンクテーブル★
[★]
- 英
- age-related macular degeneration, age related macular degeneration, ARMD, AMD
- 同
- 老人性黄斑変性 老人性黄斑変性症 senile macular degeneration、老人性円板状黄斑変性 senile disciform macular degeneration、加齢黄斑変性、加齢黄斑変性症、加齢黄斑症、加齢性黄斑症、加齢性黄斑変性症
- 関
- 黄斑、黄斑変性症。黄斑疾患
[show details]
加齢黄斑変性 : 約 49,500 件
加齢黄斑変性症 : 約 20,000 件
加齢黄斑症 : 約 36,600 件
加齢性黄斑症 : 74 件
加齢性黄斑変性症 : 約 25,700 件
加齢黄斑症 : 約 194,000 件
加齢性黄斑症 : 95 件
加齢黄斑変性症 : 約 197,000 件
加齢性黄斑変性症 : 約 225,000 件
概念
- 加齢に伴って生じる黄斑変性
- 主として網膜色素上皮細胞、ブルッフ膜、脈絡膜毛細血管板の加齢変化に関係した黄斑変性の総称
疫学
- 60歳以上の片眼に発生し、70歳までに両眼性となり失明(SOP.147)。
- 欧米で頻度が高く失明の原因の第一位(3)。日本でも増加傾向(3)。
- 放置すれば約90%の症例で視力が0.1以下となる (3)
- (日本)有病率:0.87%。(欧米の半分) (3)
- (日本)5年間の発症率:0.8%(欧米と同程度) (3)
病型
- 1. 萎縮型(dry type) :血管新生なし。網膜色素上皮細胞や脈絡膜毛細血管板の萎縮のみ。
- 2. 滲出型(exudative type):血管新生あり → これは脈絡膜に由来する ← こちらの方が治療の対象となる(3)。
- 2. = 老人性円板状黄斑変性症
病因
病態
2. 滲出型
- 黄斑部の加齢変性に基づいて脈絡膜新生血管, choroidal neovascularization, CNVが発生し、色素上皮状あるいは色素上皮下に伸びて出血・滲出を生じる。
[show details]
- 新生血管から出血や滲出(網膜。もちろん黄斑にも) → 瘢痕化 → 視力の著明な低下や中心暗点
- 新生血管から出血・滲出の繰り返視し → 網膜下血腫、硬性白斑、漿液性網膜剥離、網膜色素上皮剥離 → 線維性瘢痕 (3)
[show details]
病理
脈絡膜新生血管分類
- 脈絡膜神経血管と網膜色素上皮との位置関係で分類
- 1型:網膜色素上皮下
- 2型:網膜色素上皮の上に達したもの
症状
検査
- 本方法は一般的に色素上皮下の新生血管を検出する際に用いられる(3)。
- 特殊病型のポリープ状脈絡膜血管症と網膜血管腫状増殖の確定診断に有用(3)。
- 新生血管の有無、網膜剥離、上皮剥離の有無を観察 (3)
治療
萎縮型加齢黄斑変性
- 参考4
- 有効な治療が確立していない。
- ビタミンA,C,E、およびZnのサプリメント (中等度から重症の患者には病態の進行リスクを下げる作用が見られた)
- 手術療法:(ドルーゼンを有する高リスク群を対象とした)レーザー治療。有効性については相反する研究結果が出ておりやらない方がよい。
滲出型加齢黄斑変性
- 脈絡膜新生血管が中心窩から離れている場合に利用できる。新生血管全体にレーザー光凝固を行いこれを破壊する。(3)
- → 黄斑部は組織を損傷するので照射できない
- 2. (欧米)光感受性物質 + レーザー → 光線力学療法
- 日本における光線力学的療法の治療成績は、欧米のそれより良好(3)
- 脈絡膜には光感受性物質であるベルテポルフィンが集積しやすい(3)。この物質を静注後、病変に弱いレーザー光を照射することで新生血管を閉塞する(3)。網膜に障害を来すことなく中心窩のCNVを破壊できる(3)。2004年より認可
- 脈絡膜新生血管の発生にVEGFが重要な役割を果たしている(3)。抗血管新生薬によりCNVを押さえようとする治療が臨床応用されてきている。例えば抗VEGF薬がある
- 抗VEGF薬:VEGFは血管新生を促進するサイトカインで、増殖糖尿病網膜症や加齢黄斑変性の眼内新生血管の発生にも関与(3)。bevacizumabの硝子体内治療が前述の眼内血管新生性疾患の治療に応用されつつある(3)。日本では保険未収載(2010年現在)。加齢黄斑変性を対象としたpegaptanibやranibizumabがある(3)。
予後
- 萎縮型加齢黄斑変性の患者は5年間で7%が滲出性加齢黄斑変性に移行する (参考4)
参考
- 1. 加齢黄斑変性症に対する光線力学的療法のガイドライン
- http://www.nichigan.or.jp/member/guideline/karei.pdf
- http://www2.wind.ne.jp/tanakaganka/pdt.htm
- (3) 現代の眼科学 第10版第1刷 金原出版株式会社 ISBN 9784307351355
- 4. [charged] Age-related macular degeneration: Treatment and prevention - uptodate [1]
- 5. 難病情報センター | 加齢黄斑変性 - 難病情報センター
- http://www.nanbyou.or.jp/entry/228
臨床関連
- 黄斑下の脈絡膜新生血管は、網膜色素線条症、強度近視、眼ヒストプラスマ症、外相殿脈絡膜破裂などに続発(SOP.149)
国試
[★]
加齢黄斑症、加齢性黄斑変性症、加齢黄斑変性症、加齢性黄斑症
- 関
- age-related macular degeneration、AMD、macular degeneration
[★]
- 英
- senile macular degeneration
- ラ
- degeneratio maculae lutae senilis
- 関
- 加齢黄斑変性症
[★]
加齢黄斑変性症
- 関
- age-related macular degeneration、age-related maculopathy
[★]
- 英
- degeneration, denaturation
- ラ
- degeneratio
空砲変性
|
薬疹、皮膚科領域疾患
|
脂肪変性
|
脂肪肝、ネフローゼ症候群、筋脂肪変性
|
好酸性変性
|
ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎
|
硝子様変性
|
小動脈硬化。HE染色で均質な好酸性。
|
フィブリノイド変性
|
膠原病、アレルギー。HE染色でやや光沢のある不均質な好酸性物質。
|
粘液変性
|
HE染色で不均質な淡い好塩基性物質として見える。
|
[★]
- 英
- macula lutea (KH), macula, yellow spot
- ラ
- macula retinae
- 同
- 中心窩 fovea centralis
- 関
- Henle線維層
黄斑部の機能評価
黄斑疾患
硝子体手術
薬物療法/レーザー療法
硝子体手術/薬物療法/レーザー療法
[★]
- 英
- macular degeneration、macular dystrophy
- 関
- 黄斑変性症、黄斑ジストロフィー
- 黄斑部に限局した網膜の変性をいうが、網膜全体に変性があり、その変化が特に黄斑部に強いものも黄斑変性と呼ぶ場合がある。
[★]
- 英
- macular degeneration
- ラ
- degeneratio maculae luteae
- 関
- 黄斑変性、黄斑ジストロフィー、加齢性黄斑変性症 加齢黄斑症 加齢黄斑変性
[★]
- 英
- aging
- 関
- 高齢者、エージング、エイジング、高齢化、歳、年齢、老化、老齢化、熟成